###### tags: `awesome-list` `食` `健康食品` `機能性食品` `機能性オリゴ糖` `炭水化物` # 優しい砂糖 身体へ負担のない、むし歯といった有害な性質を持たない、人が食べるのに適したもの う蝕性 : 虫歯の原因となるか : スクロースのようにプラークと酸を作り出すものはう蝕性が高い、不可逆的に作られていくプラークによって頻度によらず虫歯を作る、歯磨きによってプラークを取り除く必要がある : 中含有率IMOのように酸は作るがプラークは作らないものもあり、歯磨きは不要だが頻繁に食べると虫歯になる : プラークも酸も作らないものを**低う蝕性**とする。GTF阻害作用によりある程度ならう蝕性のものと混ぜても低う蝕性を維持する : 虫歯の原因菌に対して抗菌作用を持つものを**抗う蝕性**とする 吸収速度 : 小腸から門脈へ入る早さ : ある程度遅いと小腸通過(約6時間前後)までに吸収しきれず、一部が大腸に到達して腸内細菌によって代謝されるものは**部分消化性**となる : 小腸では代謝されず(生体本来の酵素では加水分解できず)、大腸で腸内細菌によって代謝されるものは**食物繊維**となる : 腸内細菌によって代謝されるといくつかの理由でエネルギーが失われ、部分消化性の場合は大体約3kcal/gになり、全量がそうなる(食物繊維である)と半分の2kcal/gになる : 腸内細菌によって代謝された場合、単糖類ではなくビタミンや短鎖脂肪酸を放出する(炭水化物はビタミンや脂質になりうる) : ※スクロースは一見穏やかに吸収されるように見えるが、実際には酸に弱いため胃で加水分解されることに注意する必要がある。ということはつまり酵素による加水分解活性が「スクロースの何分の一」という表現であっても耐酸性があるなら実際にはそれ以上にもっと遅いことになる ## トレハロース 👑 ###### tags: `非還元糖` `結晶性` `調味料` `機能性オリゴ糖` | 項目 | 値 | | -------- | --------------------------------------------------- | | 熱量 | 3.61kcal?(トレハロース二水和物) | | 甘味度 | ~0.45[^trehalose-sweetness] | | う蝕性 | <span class="text-success">低い</span>[^trehalose-cariogenicity] | | 吸収速度 | <span class="text-success">穏やか</span> 部分消化性 | [^trehalose-cariogenicity]: [Low-cariogenicity of trehalose as a substrate - ScienceDirect](https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0300571200000385) *α,α-トレハロース*、*マッシュルーム糖(キノコ糖)*、*海藻糖*、*トレハ®*の別名を持つ α-グルコースとα-グルコースが1,1-グリコシド結合した2糖類 還元基同士が結合しているため還元性を持たない、非還元糖 キノコやパン酵母、トレハラマンナ、紅藻や幼い海藻に多く含まれるほか[^trehalose-containing-1]、ほとんどの昆虫の血糖である(還元性を持たず糖化反応を起こさないため血液に大量に貯められる) トレハラマンナに多く含まれるためトレハロースと名付けられた みりん、復活植物、生長後期の海藻、カニ、エビ、などの様々な食べ物に微量含まれる[^trehalose-containing-1] [^trehalose-containing-1]: [食品中のトレハロース含量](https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk1995/45/6/45_6_381/_article/-char/ja/) 無水トレハロースは湿度30%以上でトレハロース二水和物に変化する 一般にトレハロースとされるものはトレハロース二水和物である α-グルコースとβ-グルコースが1,1-グリコシド結合したものはネオトレハロース(α,β-トレハロース)と言い、蜂蜜に微量含まれる ネオトレハロースはラットではスクロースの約2倍早く加水分解されてしまう 甘味度は22%以上の濃度では0.45だが、それ未満の濃度では急速に低下する 2.3%の濃度では甘味度0.15となる[^trehalose-sweetness] (スクロースなど他の糖は濃度によらずほとんど一定) そのため、濃度による甘味度の変化は急勾配になる そして最大でも0.42のため甘さはかなり控えめ ```vega { "$schema": "https://vega.github.io/schema/vega-lite/v5.json", "description": "トレハロースの甘味度特性", "data": { "values": [ {"Concentration": 0, "Sweetness": 0}, {"Concentration": 2.3, "Sweetness": 0.1538461538461538}, {"Concentration": 4.6, "Sweetness": 0.2}, {"Concentration": 6.9, "Sweetness": 0.2857142857142857}, {"Concentration": 9.2, "Sweetness": 0.4}, {"Concentration": 22, "Sweetness": 0.42} ] }, "mark": "line", "encoding": {"y": {"field": "Sweetness", "type": "quantitative", "title": "甘味度"}, "x": {"field": "Concentration", "type": "quantitative", "title": "濃度(%)"}} } ``` [^trehalose-sweetness]: <https://books.google.com/books?id=coDPwzFX7rAC&pg=PA444> スクロースより温度による溶解度の変化が大きい 80℃以下ではスクロースより溶けないが、80℃以上ではスクロースより溶解度が高くなる 水に溶かしたときの粘度は比較的低い^[要出典]^ 強い右旋光である トレハロースの溶けた水を凍らせると氷は小さく丸い結晶を成す 氷結晶の成長を抑制するためで、粒の小さいキメの細かい結晶になる これは食品を冷凍保存するときに組織の損傷や離水を抑えられ劣化防止になる[^trehalose-function-6] [^trehalose-function-6]: <https://treha.jp/knowledge/function/6.php> 水のクラスター構造によく似ている 親水性と疎水性の2つのポケットを持つ二枚貝構造をしている 小腸でトレハラーゼによってゆっくりグルコースへ加水分解され吸収される 加水分解速度は不明だが、イソマルツロースと同程度と推測されている^[要出典]^ 大量摂取すると一部が大腸まで到達するほど吸収はゆっくりだが、ラクトースよりは吸収が早い[^trehalose-trehalase-1] トレハラーゼ活性は人によって異なり、人によっては最小で体重1kgあたり0.65g以上を摂取するとお腹がゆるくなる(最大無作用量: 0.65g/kg) ヒトのトレハラーゼ活性は離乳期に高まり生涯変わらない トレハラーゼのない環境での加水分解の半減期は670万年[^trehalose-trehalase-2]、ゆっくりと言っても大幅に加速された結果である 腸内細菌の{Ruminococcus|ルミノコッカス} {gnavus|ナーバス}を増殖させる それによってCD8陽性制御性T細胞(CD8Treg)が誘導されて1型糖尿病の発症を抑制する[^trehalose-1] [^trehalose-trehalase-1]: <http://media.iupac.org/publications/pac/2002/pdf/7407x1253.pdf> [^trehalose-trehalase-2]: [Rates of Spontaneous Cleavage of Glucose, Fructose, Sucrose, and Trehalose in Water, and the Catalytic Proficiencies of Invertase and Trehalas | Journal of the American Chemical Society](https://pubs.acs.org/doi/10.1021/ja802206s) [^trehalose-1]: [寄生虫が自己免疫疾患の発症を抑える仕組みを解明 | 理化学研究所](https://www.riken.jp/press/2020/20200422_1/index.html) 猫はトレハロースの豊富な昆虫を好んで食べるが、トレハラーゼ活性が低く糖としてはほとんど吸収できない[^trehalose-trehalase-cat] そのため猫にとっては栄養上は食物繊維だと考えられる 逆にうさぎはトレハラーゼ活性が特に高い[^trehalose-trehalase-mammal] [^trehalose-trehalase-mammal]: [ほ乳動物における小腸および腎臓の刷子縁膜トレハラーゼ](https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200902038808326140) [^trehalose-trehalase-cat]: [異なる炭水化物源が健常猫の糖代謝に与える影響について](https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpan/20/2/20_122/_article/-char/ja/) 互いの還元基同士が結合している(1,1-グリコシド結合)ため空いた還元基はなく、たんぱく質に対して糖化(メイラード)反応を起こさない 保水力が高く、食品のほかに化粧品にも使われる 優れた性質と多機能性のため幅広い調理で役立つ 特殊な甘味度特性のため甘味料としては使いづらい(なかなか甘くならず、そうかと思えば少し多くしただけで急に甘すぎるようになる) トレハロースの上質な甘味を求めるなら、他の甘味料に加えることでその甘味をトレハロースの甘味に上書きさせることができるのでそうするとよい すっきりした味わいで、グルコースのみを提供し、2023年現在スローカロリーの中では最も安価と、運動のエネルギー補給に適している ### 機能 :::warning 加筆して **<i class="fa fa-pencil"></i>** ::: 高い保水力をはじめ、たくさんの機能がある - デンプンの老化防止・タンパク質の変性抑制・脂質の変敗抑制[^trehalose-function-12]など、食品の老化を防止する - 不飽和脂肪酸の不飽和二重結合部分に入り込んで酸化から守る - 野菜や果物の{褐変|かっぺん}・変色・変形の抑制 - 高い保水力 - 冷凍による劣化の防止[^trehalose-function-6] - 矯味・矯臭[^trehalose-function-11] [^trehalose-function-12]: [トレハロースによる不飽和脂肪酸のラジカル酸化抑制作用](https://www.jstage.jst.go.jp/article/jag/52/4/52_4_381/_article/-char/ja/) [^trehalose-function-11]: [矯味・矯臭作用(マスキング) | TREHA Web -トレハウェブ- ](https://treha.jp/knowledge/function/11.php) ### 体への影響のまとめ :::warning 加筆して **<i class="fa fa-pencil"></i>** ::: アポトーシスを誘導する インスリン抵抗性の進行を強力に抑える[^trehalose-2] [^trehalose-2]: [Trehalose prevents adipocyte hypertrophy and mitigates insulin resistance - ScienceDirect](https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0271531710002101) 神経変性疾患を治す^[要出典]^ 骨密度の低下を抑える^[要出典]^ ### 関連リンク - <https://treha.jp/knowledge/substance/> - <https://treha.jp/knowledge/function/> - [炊飯米のテクスチャーに及ぼすトレハロースの影響](https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/383502.pdf) - [Trehalose: a review of properties, history of use and human tolerance, and results of multiple safety studies - ScienceDirect](https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S027869150200011X) ## イソマルツロース 👑 ###### tags: `還元糖` `二糖類` `結晶性` `甘味料` `機能性オリゴ糖` | 項目 | 値 | | -------- | --------------------------------------------------------------- | | 熱量 | 3.15kcal[^isomaltulose-energy] | | 甘味度 | 0.42 | | う蝕性 | <span class="text-success">低い</span> | | 吸収速度 | <span class="text-success">穏やか</span> (スクロースの約5分の1) | [^isomaltulose-energy]: [Effects of Dietary Palatinose and Reduced-Palatinose on Body Energy Composition](https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcbn1986/13/2/13_2_117/_article) *isomaltulose*、*6-O-α-D-グルコピラノシル-D-フルクトース*、*イソマルチュロース*、*パラチノース®*の別名を持つ α-グルコースとフルクトースが1,6-グリコシド結合したもの 一般にイソマルツロースとされるものはイソマルツロース一水和物である サトウキビに含まれるほか、蜂蜜にも微量含まれる 工業的には酵素(イソマルツロースシンターゼ)によりスクロースを発酵して作る この時、副産物として少量のトレハルロースも生じる スクロースと同じ味で性質も似ているため代替えしやすい[^isomaltulose-substance] 酸性条件下でも安定しており加水分解されない[^isomaltulose-substance] 小腸ではイソマルターゼによって[^isomaltulose-hydrolysis]スクロースの約5分の1の速度でゆっくりと加水分解され吸収される トレハルロースやイソマルトースなどに変化しながら加水分解されフルクトースとグルコースをゆっくりと放出する[^isomaltulose-2] [^isomaltulose-hydrolysis]: [ラット小腸粘膜の二糖類水解酵素によるパラチノースの水解について](https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs1983/36/3/36_3_169/_article/-char/ja/) [^isomaltulose-2]: [小腸刷子縁膜小胞からのグリコシダーゼの加水分解と糖転移活性【JST・京大機械翻訳】 | 文献情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター](https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=202102282294765489) 同時に摂取した他の糖質の吸収をゆるやかにする効果がある これはイヌリンのそれよりも効果が強い^[要出典]^ ただしラクトース、トレハロース、トレハルロースには効果がないものの[^isomaltulose-1]、これらは元からゆっくり加水分解される性質を持っている セカンドミール効果を持っている 水分の吸収をゆるやかにする効果がある 満腹感を感じさせ、インスリン抵抗性を改善させるホルモン GLP-1 を多く放出させる^[要出典]^ *[GLP-1]: Glucagon-like peptide-1 血中トリグリセライドを増加させ、脂肪の代謝を促す これはイソマルツロース縮重合物の方がより強く起こる 微生物に発酵されにくい難発酵性である[^isomaltulose-substance] 結晶性が高い スクロースより冷水に溶けにくい 温度による溶解度の変化が大きく、温度が下がるほどスクロースとの差がひらいていく[^isomaltulose-substance] イソマルツロースを加熱して作るカラメルは消臭活性が強い[^isomaltulose-caramel-1] [^isomaltulose-caramel-1]: [パラチノース糖類加熱物の消臭効果と活性成分](https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk1995/51/4/51_4_187/_article/-char/ja) ### イソマルト スクロースとは異なり還元性があり、還元基に水素をつけてアルコール基にすると**イソマルト**という糖アルコールになる 別名は*パラチニット*、*還元パラチノース*、*イソマルツロース還元物*、*イソマルチトール*、*E953* 2つの立体異性体( GPS と GPM )の等量混合物である *[GPS]: グルコピラノシルソルビトール *[GPM]: グルコピラノシルマンニトール イソマルトは糖としては吸収されないが、イソマルツロース同様に他の糖質の吸収をゆるやかにする効果を持つ 大腸でビフィズス菌に代謝され主に酪酸になる[^isomalt-1] 熱量は(ラットにとっては)2.18kcal[^isomaltulose-energy] 透明度の高い飴を作ることができるため、お菓子作りにおいてスノードームクッキーなどに使われる [^isomalt-1]: <https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200902212977119480> #### 関連リンク - [パラチニット | 化学物質情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター](https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907078124923211) ### イソマルツロース縮重合物 イソマルツロースが2~4個結合したもの フルクトース部分がα-2,1-グリコシド結合またはβ-2,1-グリコシド結合して集まっている (グルコースの縮合は起こらない) つまりイヌリンの外縁部にグルコースが付いた形 別名は*パラチノース縮重合物*、*PC*、*イソマルツロースオリゴ糖*、*パラチノースオリゴ糖* クエン酸の存在下でイソマルツロースを130~150℃で加熱濃縮させると、脱水縮重合によって生成される 耐酸性はスクロースと同程度である イソマルツロースより消化性が低く、小腸でイソマルツロースと同程度の速度で部分分解される 高い濃度になるとグルコアミラーゼによっても加水分解される[^pc-2] グルコースとイヌリンに分解され、イヌリンは分解できないため大腸へ行く 腸内細菌はBifidobacterium属のみを増やし、不要な細菌を増やさずビフィズス菌だけ増やせる[^pc-1] [^pc-2]: [ラット小腸粘膜の二糖類水解酵素によるパラチノース縮合物水解反応の速度論的解析](https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs1983/44/5/44_5_395/_article/-char/ja/) [^pc-1]: <https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs1983/44/1/44_1_54/_article/-char/ja/> イソマルツロースの結晶化を抑える #### 関連リンク - [パラチノースとその縮重合物投与におけるヒト腸内フローラの比較](https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnfs1983/43/3/43_3_175/_article/-char/ja/) ### 関連リンク - <https://www.mitsui-sugar.co.jp/products/pala_nose/special.html> - [パラチノース ガイドブック](http://slowcalorie.jp/pdf/palatinose_guidebook.pdf) - <https://de.wikipedia.org/wiki/Isomaltulose> - [パラチノース | 化学物質情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター](https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907089285834229) - [小腸刷子縁膜小胞からのグリコシダーゼの加水分解と糖転移活性【JST・京大機械翻訳】 | 文献情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター](https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=202102282294765489) - [ビスケットの品質・嗜好性にパラチノース<sup>®</sup>が及ぼす影響](https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/48/1/48_9/_article/-char/ja) - [業務用商品:パラチノース加熱物|健康食品|商品情報|お口の恋人 ロッテ](https://www.lotte.co.jp/products/catalogue/kenko/business/palatinose.html) [^isomaltulose-substance]: <https://www.mitsui-sugar.co.jp/products/pala_nose/special.html> [^isomaltulose-1]: <https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200902207491015310> ## トレハルロース ###### tags: `還元糖` `二糖類` `非結晶性` `甘味料` | 項目 | 値 | | -------- | --------------------------------------------------------------- | | 熱量 | 4kcal? | | 甘味度 | 0.70[^trehalulose-sweetness] | | う蝕性 | <span class="text-success">低い</span> | | 吸収速度 | <span class="text-success">穏やか</span> (スクロースの約3分の1) | [^trehalulose-sweetness]: <https://link.springer.com/article/10.1007/s12010-009-8899-y> α-グルコースとフルクトースが1,1-グリコシド結合したもの つまりトレハロースの片方のグルコースがフルクトースになったもの フルクト++ピラノース++型(※メジャー)とフルクト++フラノース++型(※マイナー)の2種類の異性体がある ハリナシミツバチの蜂蜜の主成分であり、特にマレーシアのハリナシミツバチの蜂蜜(Kelulut honey)に多い(総糖含有量の84%(w/w))[^trehalulose-2] 通常の蜂蜜にも0.5-2.5%と微量含まれる[^trehalulose-3] [^trehalulose-2]: [Stingless bee honey, a novel source of trehalulose: a biologically active disaccharide with health benefits | Scientific Reports](https://www.nature.com/articles/s41598-020-68940-0) [^trehalulose-3]: [蜂蜜中のトレハルロースの存在](https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk1962/37/7/37_7_554/_article/-char/ja) 酵素的には、イソマルツロース生成酵素によるイソマルツロース生産の副産物として得る方法と、トレハロース生成酵素にスクロースを反応させて作る方法の主に2つがある 前者は、精製し他の不純物から単離することが難しいという問題がある イソマルツロースとトレハルロースは物理化学的に似ていて分離が難しいとか? 後者は、トレハルロースのみを得られるため有力視されている トレハロースのように1,1-グリコシド結合だが、フルクトースのアノマー炭素はグリコシド結合に関与していないため、還元性を持つ還元糖である (1,2-グリコシド結合のスクロースが非還元糖) イソマルツロースに似ていながら溶解度は顕著に異なり、溶かしやすく冷水でもよく溶ける 非結晶性であり、結晶性の高いイソマルツロースとは対照的 小腸でイソマルターゼによって加水分解されスクロースの約3分の1の速度で吸収される 抗酸化作用のある抗酸化物質である トレハロースと同様に不飽和脂肪酸の酸化もやはり抑制する イソマルツロースと混在することで相乗的に強くなる 2022年現在、精製品の量産化は実現していないため一般に流通しておらず入手が難しい ハリナシミツバチの蜂蜜も高価である ### 関連リンク - [トレハルロース | 化学物質情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター](https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200907086999153714) - [Stingless bee honey, a novel source of trehalulose: a biologically active disaccharide with health benefits | Scientific Reports](https://www.nature.com/articles/s41598-020-68940-0) ## イソマルトース | 項目 | 値 | | -------- | ---------------------------------------------------------------------------- | | 熱量 | ? | | 甘味度 | ? | | う蝕性 | <span class="text-success">低い</span> | | 吸収速度 | <span class="text-success">穏やか</span> (トレハロースと同程度?)、部分消化性 | α-グルコースの1位とグルコースの6位がグリコシド結合した二糖類(α-1,6結合) 小腸ではそれ自体が穏やかに加水分解されるだけでなく、スクロースの加水分解を抑制する イソマルトースとイソマルトトリオースはトレハロースと同程度の速度で加水分解される 面白いことにより重合度の高いイソマルトテトラオースは早く加水分解される 大腸ではビフィズス菌を選択的に増やす 甘味を持つほか、塩カドや酢カドを取る効果、旨味を強くする効果がある そのため調味料として役立つ (甘さ控えめでアルコール分のない特濃のみりんみたいな感じ) ## イソマルトオリゴ糖 | 項目 | 値 | | ------ | ----------- | | 熱量 | 2.7~3.3kcal | | 甘味度 | 0.4~0.5 | グルコースの水溶液にグルコアミラーゼを反応させたもの 主にイソマルトース・イソマルトトリオース・イソマルトテトラオース(=イソマルトース縮重合物)とパノースと残糖のグルコースが混在する未精製の液糖 少量のコージビオースとニゲロースも含まれる とある市販品100g(固形分75.6g)の分析結果は 1. イソマルトース 19.2g 2. イソマルトトリオース 10.3g 3. パノース 4.9g 5. コージビオース 3.5g 6. イソマルトテトラオース 2.8g 7. ニゲロース 2.0g であった[^imo-1] [^imo-1]: [標準試薬を用いた検量線による市販イソマルトオリゴ糖製品中のイソマルトオリゴ糖の定量改良法](https://www.jstage.jst.go.jp/article/jag/53/3/53_3_215/_article/-char/ja/) 別名は*IMO* エタノールやアミノ酸を含む低含有率のものは*みりん*や*本みりん*とも呼ばれる グルコースとイソマルトオリゴ糖の比率などによって大まかに3つに分けられる - 低含有率(みりん) - イソマルトオリゴ糖は10%程度 - 残りの大半の糖はグルコース - エタノールを14%前後含む - アミノ酸を含む - 中含有率 - イソマルトオリゴ糖は50%以上 - 低含有率と同程度の価格 - gあたり0.5円、甘味度当たり1円 - 高含有率 - 中含有率からイオン交換クロマト法でグルコースを除去したもの - イソマルトオリゴ糖は80%以上 - 価格は高い(固形分換算でイソマルツロースより少し安い程度) - gあたり約1.7円、甘味度当たり3.4円 粘度はスクロースと同程度 熱や酸に安定 デンプンの老化抑制、たんぱく質の変性抑制、保水力がある 畜肉・魚の臭みをマスキングする(臭み取り) > 鶏肉40gを水またはイソマルトオリゴ糖3%添加溶液100gでボイルし、煮汁のにおい強度を測定しました。 においセンサーにて分析を行った結果、イソマルトオリゴ糖を添加した鶏肉の煮汁は、無添加と比較してにおい強度の低下が見られました。 イソマルトオリゴ糖は、肉の臭みをマスキングする効果があります。また、イソマルトオリゴ糖を添加することで、肉質がしっかりし、ジューシーになる効果も確認されています。 > 鯖をそれぞれ水、砂糖5%溶液、イソマルトオリゴ糖5%添加溶液でボイルし、鯖の水煮を作製し、におい強度を測定しました。 においセンサーにて分析を行った結果、イソマルトオリゴ糖を添加した魚の煮汁は、無添加や砂糖区と比較してにおい強度の低下が見られました。 イソマルトオリゴ糖は魚の臭み低減にも有効です。また、イソマルトオリゴ糖を添加することで、魚の煮崩れを防止する効果もあります。 脂質の変敗を抑制する (ただし効果はトレハロース・トレハルロースの半分?) パノースは比較的急速に加水分解されるが、高い抗GTF作用を持ち低う蝕性である 全体としては比較的穏やかに吸収され、口内では酸は生産するものの歯垢はあまり作らない う蝕性はグルコースの量に依存する グルコースが多い低~中含有率のものでは歯垢も生成されてしまう 残糖グルコースの少ない高含有率のものほど高価格になる グルコースの除去を行わない含有率50%程度のものは簡単に作れ安価 しかし怪しい商品や、しれっと果糖ぶどう糖液糖などを加え自ら含有率を下げている粗悪品もあり注意が必要 高含有率のものは値段が高く、イソマルツロースと大差がない *オリゴタイム*や*パノラップ®*という名前で販売されている ### 関連リンク - [糖化製品 | でん粉・糖化製品 | 業務用商品 | 昭和産業株式会社](https://www.showa-sangyo.co.jp/pro/carbohydrate/product02/) - [I. 加熱とおいしさ | 機能性糖化製品のご案内 | でん粉・糖化製品 | 業務用商品 | 昭和産業株式会社](https://www.showa-sangyo.co.jp/pro/glucose/isomalto03.html) - [パノラップ® - 株式会社 林原 食品素材事業サイト](https://www.food.hayashibara.co.jp/product/panorup/) - [標準試薬を用いた検量線による市販イソマルトオリゴ糖製品中のイソマルトオリゴ糖の定量改良法](https://doi.org/10.5458/jag.53.215) ### みりん 含有率が10%代と低くエタノールを含むイソマルトオリゴ糖 代わりにグルコースが大部分を占める主成分となっている ## エルロース ###### tags: `還元糖` `三糖類` `甘味料` | 項目 | 値 | | -------------- | -------------------------------------- | | 熱量 | 4kcal | | 甘味度 | 0.42 | | う蝕性 | <span class="text-success">低い</span> | | 吸収速度 | ? | *グリコシルスクロース*、*グルコシルスクロース*、*スクロシルグルコース*の別名を持つ スクロースのグルコースにもう1つグルコースがマルトースのような形でくっついたもの つまりスクロースとマルトースが融合したもの 珍しい3糖類 「カップリングシュガー®」としてスクロース約10%との混合シロップが売られている しかしスクロースの影響で特徴の低う蝕性を損なっている ### 関連リンク - [カップリングシュガーについて](https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience1968/13/1/13_15/_pdf/-char/ja) - [カップリングシュガー® - 株式会社 林原 食品素材事業サイト](https://www.food.hayashibara.co.jp/product/coupling-sugar/) ## ラクトース ###### tags: `甘味料` | 項目 | 値 | | -------- | --------------------------------------------------------------------------- | | 熱量 | ? | | 甘味度 | 0.4 | | う蝕性 | やや低い | | 吸収速度 | <span class="text-success">穏やか</span> (スクロースの約12分の1) 部分消化性 | *乳糖*の別名を持つ グルコースとガラクトースがβ-1,4グリコシド結合した2糖類 ミルクに含まれ、牛乳の炭水化物の99.9%がラクトースである 小腸ではとてもゆっくりとグルコースとガラクトースに加水分解されて吸収され、加水分解が間に合わなかった一部は大腸まで到達しビフィズス菌を増やす 最も吸湿性の低い糖である そのため糖衣錠などコーティングによく使われる プラークを生成しないため基本的にはう蝕性は低いが、スカルドビア菌のビフィドシャントによって効果的に利用され酢酸に代謝されてしまうため(すでにミュータンス菌などによって作られたプラークが存在する場合は特に)虫歯になる 酢酸はミュータンス菌の乳酸よりも歯へのダメージが大きく、ラクトースを多く摂取する乳児は深刻な虫歯(早期小児齲蝕)を起こしやすい 加熱するとグルコースがフルクトースへ変化(異性化)し**ラクチュロース**となる 別名は*ラクツロース* ### 関連リンク - <https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%B9> ## クラスターデキストリン | 項目 | 値 | | -------- | ---------------------------------------- | | 熱量 | 4kcal? | | 甘味度 | 0 | | う蝕性 | ? | | 吸収速度 | <span class="text-success">穏やか</span> | 略して*CD*とも 水溶性が高く、安定性も高い すべての種類の味と香りを消し去る さらに増粘剤の効果も打ち消す これ自体も味や香りがほとんどない 糖質ではあるが胃の排出速度を低下させない特徴を持っている ゆるやかに吸収されるため、純粋な良質のエネルギー源として、スポーツドリンクに使われる 運動など大量にエネルギーを補給する必要がある場合に味を持つトレハロースやイソマルツロースは大量に溶かすと味が濃くて飲みづらく、また胃がもたれるためこちらも使われる ### 関連リンク - [クラスター デキストリン®(食品用原料)](https://www.glico.com/nutrition/product/ingredient/cdextrin/) - [クラスター デキストリン Ⓡ-SE の開発とその利用](https://www.jstage.jst.go.jp/article/bag/10/2/10_109/_pdf/-char/ja) ## グリセロール | 項目 | 値 | | -------- | ------------------------------------------ | | 熱量 | 4.3kcal | | 甘味度 | 0.60 | | う蝕性 | <span class="text-success">抗う蝕性</span> | | 吸収速度 | <span class="text-success">穏やか</span> | *グリセリン*、*E422*の別名を持つ 最も単純な糖アルコール 無色透明の液体 抗菌性・抗ウイルス性がある 水に溶けやすい 保湿性が高い ほぼ非結晶性で、難しい条件を満たさないと結晶化しない そのため一部の生物は寒さに耐えるために不凍液として用いる(天然の不凍液) 経口摂取すると一時的に素早く眼内圧を低下させる 血管拡張作用がある 利尿作用がある 腸内でロイテリ菌によって抗菌物質ロイテリンに代謝されるため、アンチバイオティクス効果がある[^glycerol-1] [^glycerol-1]: [Next-Generation Probiotics Targeting Clostridium difficile through Precursor-Directed Antimicrobial Biosynthesis - PMC](https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5607411/) 食品以外では、洗口液や化粧水に使われていることが多い 脂肪酸を3つまで結合させることができ、1つ以上結合したものは**中性脂肪**と呼ばれる 3つ結合すると**トリグリセリド**となる 中性脂肪はリパーゼによってグリセロールと脂肪酸に分解される ## コージビオース | 項目 | 値 | | -------- | ------------------------------------------------------------------------------------------------ | | 熱量 | ? | | 甘味度 | ? | | う蝕性 | <span class="text-success">低い</span> | | 吸収速度 | <span class="text-success">イソマルトースより遅くニゲロースより速い[^imo-digestibility-1]</span> | [^imo-digestibility-1]: [Determination of glucose generation rate from various types of glycemic carbohydrates by mammalian glucosidases anchored in the small intestinal tissue - ScienceDirect](https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0141813020309065) グルコースとグルコースがα-1,2グリコシド結合したもの その名の通り、{麹|こうじ}によって作られる2糖類 酒、みりん、キャラメルなどに含まれる 小腸ではマルターゼによって加水分解される 加水分解活性は文献によって異なっておりはっきりしない 精製が難しく1gで100万円前後の価格が付けられている ## ニゲロース α-グルコースとグルコースが1,3-グリコシド結合したもの 別名は *{酒|サケ}ビオース* 甘味度は0.45 低う蝕性 イソマルトオリゴ糖、清酒、味噌に含まれる 芳醇な甘味を有する 塩や酸やアルコールの刺激を弱める 果汁感を向上させる 日持ち向上、天然色素の退色防止の効果がある 粘度・浸透圧・水分活性・凍結温度はスクロースと同程度 小腸でマルターゼによってマルトースより遅い程度の速度で加水分解される Tリンパ球やBリンパ球などの免疫担当細胞を活性化する免疫賦活効果がある[^nigerose-1] [^nigerose-1]: [Immunopotentiating activity of nigerooligosaccharides for the t helper 1-like immune response in mice — 九州大学](https://kyushu-u.pure.elsevier.com/ja/publications/immunopotentiating-activity-of-nigerooligosaccharides-for-the-t-h) ニゲロオリゴ糖液糖490gが2970円で販売されている ### 関連リンク - [日食テイストオリゴ|糖化製品|食品用素材|製品情報|日本食品化工株式会社](https://www.nisshoku.co.jp/product/food/saccharify/tasteoligo.html) ## パノース | 項目 | 値 | | -------- | ----------------------------------------------------- | | 熱量 | 4kcal? | | 甘味度 | ? | | う蝕性 | <span class="text-success">低い</span> | | 吸収速度 | イソマルトースより早い[^isomaltoligo-digestibility-1]、完全消化性 | グルコースがα-1,6結合、α-1,4結合で3つくっついたもの グルコースとグルコースがα-1,6結合したもの(イソマルトース)にグルコースがα-1,4結合でくっついたもの つまりイソマルトースとマルトースが融合したもの 珍しい3糖類 別名は*イソマルトシルグルコース* 蜂蜜や日本酒に少量含まれる 加水分解でマルトースとグルコースに分かれる 小腸でイソマルターゼによって急速に加水分解され吸収される ~~その速度はラクトース(スクロースの約12分の1)より速いとされているが詳細は不明[^trehalose-trehalase-1]~~ イソマルトースよりかなり早い イソマルトオリゴ糖の構成要素である ### 関連リンク - [パノース - Wikipedia](https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%82%B9) - [パノラップ® - 株式会社 林原 食品素材事業サイト](https://www.food.hayashibara.co.jp/product/panorup/) ### 関連リンク - [乳果オリゴ® - 株式会社 林原 食品素材事業サイト](https://www.food.hayashibara.co.jp/product/lactosucrose/) - [商品・製品紹介 乳糖果糖オリゴ糖(ラクトスクロース)の詳細データ](http://oligo.jp/products/nyuka_oligo2.html) [^isomaltoligo-digestibility-1]: [In vitro digestibility of commercial and experimental isomalto-oligosaccharides - ScienceDirect](https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0963996920302751) ## 関連リンク - <https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan/106/12/106_818/_pdf> - [血糖コントロールにおけるイソマルツロース,d-タガトースおよびトレハロースの生物学的および毒物学的研究の頭-頭比較レビュー【JST・京大機械翻訳】 | 文献情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター](https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=202202269500159685) - [トレハロースおよびイソマルチュロース摂取後の血糖値およびインスリン応答の減少:耐糖能損傷患者における食後基質利用への関与 | 文献情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター](https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201202243385131701) - [小腸刷子縁膜小胞からのグリコシダーゼの加水分解と糖転移活性【JST・京大機械翻訳】 | 文献情報 | J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター](https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=202102282294765489) - [Temporal sweetness and side tastes profiles of 16 sweeteners using temporal check-all-that-apply (TCATA) - ScienceDirect](https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0963996919301632)