owned this note
owned this note
Published
Linked with GitHub
---
title: 'クラスター対策班による日本のクラスターの分析'
description:
lang: ja-jp
---
[新型コロナ(COVID-19)嫌儲対策本部](/@covid19-kenmo/SARS-Cov-2/)
# 厚労省クラスター対策班による日本のクラスターの分析
Early Release - Clusters of Coronavirus Disease in Communities, Japan, January–April 2020 - Volume 26, Number 9—September 2020 - Emerging Infectious Diseases journal - CDC.
日本におけるコロナウイルス感染症のクラスター 2020年1月〜4月4日[https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/26/9/20-2272_article](https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/26/9/20-2272_article)
Yuki Furuse, Eiichiro Sando, Naho Tsuchiya, Reiko Miyahara, Ikkoh Yasuda1, Yura K. Ko, Mayuko Saito, Konosuke Morimoto, Takeaki Imamura, Yugo Shobugawa, Shohei Nagata, Kazuaki Jindai, Tadatsugu Imamura, Tomimasa Sunagawa, Motoi Suzuki, Hiroshi Nishiura, and Hitoshi Oshitani
6月11日(日本時間)発表
[TOC]
## 要約
日本における新型コロナウイルス感染症3,184例から、61のクラスターを同定した。クラスターは医療機関やその他の介護施設、レストランやバー、職場、音楽イベントなど。また、院内感染以外のこれらのクラスターから、最初の1人となるプライマリーケースであると思われる22人の患者を同定した。大半は20~39歳で、クラスター内で二次感染が生じた際は発症前(presymptomatic)または無症候性(asymptomatic)が多かった。
## 対象
1月15日〜4月4日までに新型コロナ患者3184例が報告された。61% (1,760/2,875)が疫学的なリンクがあり、61のクラスターと接触者調査からクラスターの最初の1人であるプライマリーケース22人を特定した。
クラスターの定義は、日本の厚労省独自のものであり、共通のイベントや場所で5例以上の症例で、家族クラスターは除外される。また、クラスターからそれ以外への二次感染も除外される。
## クラスターの傾向
![](https://i.imgur.com/GGoHCwM.jpg)
図1 Analysis of 61 clusters of coronavirus disease (COVID-19) cases in communities in Japan, January 15–April 4, 2020. A) Cumulative number of COVID-19 cases, including the proportion of local cases with epidemiologic links to known confirmed cases. B) Distribution of clusters by number of cases in a cluster by category. C) Incidence of clusters of cases according to epidemiologic week as determined by date of confirmation of the first case in a cluster. Incidence of COVID-19 cases (weekly number of newly reported cases) in Japan and timing of two importation waves are also displayed. Epidemiologic week 3 corresponds to January 15, 2020, in panel A. The data and trend of imported cases were previously reported and described by Furuse et al. (8).
医療機関18(30%)、老人ホームやデイケアなどの介護施設10(16%)、レストラン・バー10(16%)、職場8(13%)、ライブコンサートや合唱団のリハーサル、カラオケパーティーなどの音楽関連7(11%)、ジム・フィットネスクラブ、体育館等5(8%)、冠婚葬祭2(3%)、飛行機内での発生1(2%)。
5~10症例のクラスター(64%、39/61)が多く、20症例以上のクラスターでは医療機関、介護施設の割合多くなる。最大のクラスターでは、院内感染や職員感染を含む病院内で100件以上発生した例があった。医療関連以外の最大のクラスターは、音楽ライブコンサートに参加した30人以上のクラスターで、演奏者、観客、イベントスタッフなどが感染した。また、期間で見ると第11週、第14週では医療機関と介護施設がクラスターの50%以上を占めていた。
## クラスターの最初の1人
![](https://i.imgur.com/XYSpiBu.jpg)
図2 Analysis of probable primary cases of coronavirus disease (COVID-19) among 22 clusters in communities, Japan. A) Age ranges of probable primary COVID-19 cases in clusters. Age distribution among all COVID-19 cases in Japan is provided as reference. B) Proportions of symptoms among probable primary cases of COVID-19 clusters at transmission (n = 16) and among at laboratory confirmed diagnosis (n = 22). 1, Asymptomatic; 2, fever; 3, fatigue; 4, cough; 5, sore throat; 6, headache; 7, arthralgia or myalgia; 8, runny nose; 9, diarrhea; 10, difficulty breathing. C) Distribution of probable primary cases of COVID-19 clusters by time of transmission compared with illness onset by age groups (n = 16). Six cases were excluded because the time of transmission was undetermined.
クラスターの他の患者と接触する前に症状があった、またはクラスターと接触する以前にその他の場所で疫学的なリンクあった症例から、22人のプライマリーケースである可能性の高い症例を同定した。院内感染クラスターのプライマリーケースの可能性が高い症例については同定しなかった。
22人は9人(41%)が女性、13人(59%)が男性であった。年齢層は、20代(n=6、27%)、30代(n=5、23%)の若年層が多かった。
16のクラスターにおいて、プライマリーケースからクラスター内の他の患者への感染日を調べたところ、プライマリーケースの41%(9/22)が感染時は発症前(presymptomatic)または無症候性(asymptomatic)であり、(他の患者への)感染日に咳症状があったのは1人だけであった。プライマリーケース22人のうち、45%(10/22人)は診断時に咳があった。
感染日が確定した16人のプライマリーケースの可能性が高い患者のうち、45%(10/22)が診断時に咳をしていた。5 人(31%)の症例は発症1日前に、4 人(25%)の症例では発症当日に感染させていた。発症前日に感染させたケースが最も多くなっている。すべての年齢層で、発症前または無症候性の感染が認められた。
## 結論
日本では中国からの輸入例と、ヨーロッパを中心とした輸入例の2回の波があり、その後、国内での感染が発生し流行が拡大した。注目すべきは、第11週(3月9日~15日)と第14週(3月30日~4月4日)に医療機関・介護施設でのクラスター発生が顕著であったことである(図1、C)。医療機関や介護施設でのクラスターが明らかになったのは、国内での感染が持続してから数週間後であったため、国内の感染連鎖の末端に位置している可能性がある。
COVID-19クラスターの多くが、カラオケでの歌唱、クラブでの歓声、バーでの会話、ジムでの運動など、密接した場所での激しい呼吸(heavy breathing)と関連していることに気が付いた。他の研究でも、このような活動が感染のクラスター化を促進する可能性があると指摘されている (9,10)。日本の首相官邸と厚生労働省は、COVID-19の感染リスクを高める可能性のある3つの状況を発表し、「3つのC(密)」である換気の悪い密閉空間、混雑した場所(密集)、密接な接触環境を避けるよう国民に助言しました(11)。
我々が院内感染クラスター以外から同定したCOVID-19のプライマリーケースの可能性が高い症例のうち、半数(11/22)が20-39歳であり、これは日本におけるCOVID-19全症例の年齢分布よりも若くなっている(図2、A)。若年者と高齢者の感染パターンの違いは、社会的要因、生物学的要因、あるいはその両方の要因が関与しているのかどうかは不明である。また、プライマリーケースは、咳などの明らかな呼吸器症状がなくてもウイルスを伝播し、クラスターを形成している可能性がある。
## 研究の限界
疫学的調査はほとんどが自発的な協力に依存していた。接触歴を開示しない症例もあったため、疫学的なリンクやクラスター化した症例を見逃した可能性がある。日本では面接調査のみで情報が得られていたため、リコールバイアスがかかっている可能性がある。また、プライマリケースの可能性が高い症例から二次感染率を算出できなかったのは、分母となるデータがないためであり、例えばクラスターが検出された場所に何人いたかなどのデータがないためである。
## 簡単にコメント
家族以外、5人以上のクラスターについて網羅的に調査、その特徴を記述的に報告したものでその意義は大きい。また、クラスターの最初の1人が発症前に感染させていた例が多いということが示されたのも重要(これは二次感染を起こした最初の日であって、発症後の感染が少ないとは言えないことには注意が必要。また、この報告に限らず、発症後は積極的に対策が取られるということも考慮すべきだろう)。この報告では特に書かれてはいないが、症状が無くてもマスクを付けることの必要性を支持すると言えるのではないか。院内感染の蔓延が、感染連鎖の末端に位置するという指摘は、市中感染の拡大が院内感染に現れていると解釈でき、院内感染を防ぐためには市中での抑えることが重要と思われる。逆に、複数の院内感染が発生しているという状況は、見えないクラスターが背景にある可能性が高いのではないだろうか。
ハイリスク環境への注意喚起という観点では、1、2程度のクラスターの報告でも良いのでもっと早くに査読誌への掲載を目指すべきだったと思う。単独のクラスターの記述的研究は既にいくつも出ている。
また方法はもう少し詳細に記述すべき。3184例というのは期間中に確認された全症例の人数であり、分析対象である61のクラスターの総例数は書かれていない。院内感染クラスターにおいて、プライマリーケースの同定を行わなかったのはなぜか?研究限界として、面接調査のためリコールバイアス(思い出しバイアス)があると述べられいてるが、濃厚接触者の定義により、追跡不可能な例、場所については経路不明としてカウントされるというのも大きな制限であると考えられる。現場の裁量や調査の効率性にも配慮しなければならないが、現在マスク着用者や接触15分未満は濃厚接触者ではないとしている。日本では接触追跡アプリの導入が検討されているが、積極的疫学調査に関わる疫学調査員の増強も急務だろう。
## 参考文献
Zhu N, Zhang D, Wang W, Li X, Yang B, Song J, et al.; China Novel Coronavirus Investigating and Research Team. A novel coronavirus from patients with pneumonia in China, 2019. N Engl J Med. 2020;382:727–33.
Huang C, Wang Y, Li X, Ren L, Zhao J, Hu Y, et al. Clinical features of patients infected with 2019 novel coronavirus in Wuhan, China. Lancet. 2020;395:497–506.
World Health Organization. WHO Director-General’s opening remarks at the mission briefing on COVID-19—11 March 2020 [cited 2020 Jun 6]. https://www.who.int/dg/speeches/detail/who-director-general-s-opening-remarks-at-the-media-briefing-on-covid-19---11-march-2020External
World Health Organization. WHO Director-General’s opening remarks at the mission briefing on COVID-19—26 February 2020 [cited 2020 May 3]. https://www.who.int/dg/speeches/detail/who-director-general-s-opening-remarks-at-the-mission-briefing-on-covid-19---26-february-2020External
Pung R, Chiew CJ, Young BE, Chin S, Chen MI, Clapham HE, et al.; Singapore 2019 Novel Coronavirus Outbreak Research Team. Investigation of three clusters of COVID-19 in Singapore: implications for surveillance and response measures. Lancet. 2020;395:1039–46.
Shim E, Tariq A, Choi W, Lee Y, Chowell G. Transmission potential and severity of COVID-19 in South Korea. Int J Infect Dis. 2020;93:339–44.
Ministry of Health. Labour and Welfare. About coronavirus disease 2019 (COVID-19) press conference June 2, 2020 [cited 2020 Jun 6]. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/newpage_00032.htmlExternal
Furuse Y, K Ko Y, Saito M, Shobugawa Y, Jindai K, Saito T, et al.; National Task Force for COVID-19 Outbreak in Japan. Epidemiology of COVID-19 outbreak in Japan, January–March 2020. Jpn J Infect Dis. 2020; Epub ahead of print.
Jang S, Han SH, Rhee J-Y. Coronavirus disease cluster associated with fitness dance classes, South Korea. Emerg Infect Dis. 2020 May 15 [Epub ahead of print].
Hamner L, Dubbel P, Capron I, Ross A, Jordan A, Lee J, et al. High SARS-CoV-2 attack rate following exposure at a choir practice—Skagit County, Washington, March 2020. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2020;69:606–10.
Prime Minister’s Office of Japan; Ministry of Health, Labour and Welfare. Avoid the “three Cs”! [cited 2020 May 27]. https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000615287.pdf
Frieden TR, Lee CT. Identifying and interrupting superspreading events—implications for control of severe acute respiratory syndrome coronavirus 2. Emerg Infect Dis. 2020;26:1059–66.
###### tags: `Documentation`