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第4回:主成分回帰の実施とコンジョイント分析の計画

tags: service-data-science-2023

今回の内容

  1. 各グループのテーマと主成分分析の結果の報告と主成分の解釈の確認
  2. 主成分による製品・サービスのポジショニング
  3. 主成分の回転
  4. 主成分回帰
  5. コンジョイント分析
  6. グループワーク:コンジョイント分析のための準備(計画、分担?)次回までにコンジョイント分析のためのデータ収集とコンジョイント分析の結果を報告して頂く予定です。

この後は次のように続きます。

グループワークの内容
第5週 第2回目の調査の結果の分析と検討
第6週 第3回目の調査の結果による確認
第7週 グループごとの最終的な提案までの流れの確認

テーマの変更や調整は、今週のうちに行なってください。

今回の資料一式はこちらに置きました。

前回と今回の調査について

すべての調査には次の属性がある。

属性 内容
調査目的 調査の目的
対象母集団 調査の対象
調査母集団と標本抽出法 調査が可能な対象と、そこからの標本の選び方
調査項目 この調査で尋ねる項目
分析手法と分析手順 分析手法と分析手順が決まらないと、各項目の尋ね方が決まらない
調査票 各項目の尋ね方

調査票は調査目的に即した調査項目を問うように設計しなければならない。なるほど統計学園を参考にすると良い。より網羅的な書籍として、国立教育政策研究所が公開している社会教育調査ハンドブック第3版を推薦しておく。

前回の調査は、次のようであった。

属性 内容
調査目的 ターゲットとした製品・サービスの選好の構造を明らかにする
対象母集団 潜在的な顧客層
調査母集団と標本抽出法 同級生(ずれてる)から、 協力してくれる人を募る(ランダムではない)
調査項目 ラダリング法を用いて分析した結果を参考に、 選好の差異の要素となりそうな属性を選定する
分析手法と分析手順 5段階評価から7段階評価を主成分分析してから、 購買行動に結びつくように回帰分析で評価
調査票 評価者全員に既存の製品・サービスを一つずつ提示して、 各属性を5段階から7段階で評価してもらう

今回は、前回の結果を分析して抽出した、既存の製品・サービスと差別化を図ることに使える属性の効用を定量的に評価するための調査を行う。

属性 内容
調査目的 ターゲットとした製品・サービスの選好の構造を明らかにする
対象母集団 潜在的な顧客層
調査母集団と標本抽出法 同級生(ずれてる)から、 協力してくれる人を募る(ランダムではない)
調査項目 主成分分析の結果を参考に選定した属性と、 直交表を用いて作成したプロファイルの間に、 重複を許さない順位づけを行ってもらう
分析手法と分析手順 順位と属性の関係をコンジョイント分析(後述)
調査票 作成したプロファイルすべてを、 なるべく写真や絵など誤解なく伝わるように提示して、 順位をつけてもらう

製品の企画に関するマーケティングリサーチでは、潜在顧客層をすべてカバーする調査母集団の設定や、そこからの無作為な標本抽出は困難である。あまり大規模に調査を行うと、調査票から企画の意図が漏れてしまう可能性もある。より少ないターゲット層を絞り込んだ対面での対話方式や、グループでの自由発言方式などの調査も用いられる。

主成分回帰







PCR



主成分分析

主成分分析



主成分数の選択

主成分数の選択



主成分分析->主成分数の選択





(主成分の回転)

(主成分の回転)



主成分数の選択->(主成分の回転)





主成分の解釈と名前づけ

主成分の解釈と名前づけ



(主成分の回転)->主成分の解釈と名前づけ





既存の商品・サービスのポジショニング1

既存の商品・サービスのポジショニング1



主成分の解釈と名前づけ->既存の商品・サービスのポジショニング1





既存の商品・サービスのポジショニング1->主成分数の選択





主成分を説明変数とした回帰分析

主成分を説明変数とした回帰分析



既存の商品・サービスのポジショニング1->主成分を説明変数とした回帰分析





選好ベクトルの抽出

選好ベクトルの抽出



主成分を説明変数とした回帰分析->選好ベクトルの抽出





選好ベクトルの抽出->主成分数の選択





既存の商品・サービスのポジショニング2

既存の商品・サービスのポジショニング2



選好ベクトルの抽出->既存の商品・サービスのポジショニング2





既存の商品・サービスのポジショニング2->主成分数の選択





コンジョイント分析

コンジョイント分析



既存の商品・サービスのポジショニング2->コンジョイント分析





コンジョイント分析に抜け出るために検討するアウトプットは次の通り。

  1. 既存の商品・サービスに関する評価の観点(評価軸)をまとめる
  2. 購入意欲など結果や目的に結びつく評価軸を抽出する
  3. 評価マップ上で選好の方向性を検証する

以上から「理想の●●」の検討に用いる十分な数の評価軸が得られたと判断できたら、コンジョイント分析に移行する。コンジョイント分析では、それらの評価軸を用いて、理想の●●の案の候補を服数考える。コンジョイント分析は、次のような流れの手法である。

  1. 直交表を用いて、比較可能な少数の候補を掲げる。(コンジョイントカードの作成)
  2. 候補全体の順序付け、または一部のペア同士の一対比較の結果、などを調査する。(第2回アンケート)
  3. 回帰分析、ロジスティック回帰分析などを用いて部分効用値を推定する。(アンケートの分析)
  4. 効用の高い組み合わせに基づいて、理想の●●を提案する。

なお、コンジョイント分析において、主成分回帰で現れなかった評価軸を追加しても良い。

主成分分析

相関のある変数群を、互いに独立な変数の線形結合に分解する手法。

  • 情報の縮約ができる
  • 無相関、すなわち独立な成分 (軸)を作ることができる
  • 主成分軸を使って、主成分得点を散布図にプロットすることで、近い対象同士を集めた分類ができる
  • 負荷量プロットにより変数の分類ができる

主成分分析は実際には、統計分析ソフトウェアを使ってコンピュータで分析する。したがって、出力結果の用語の意味を正しく理解することが必要である。

用語 意味
固有値 主成分の分散
累積寄与率 降順での主成分の分散の累積割合
固有ベクトル 主成分の重み係数
主成分得点 主成分軸上での各ケースのスコア
因子負荷量 もとの変数と主成分の間の相関

最低限必要な出力は次の4つ。

  1. スクリープロット:主成分の分散である固有値を降順に並べ、寄与率や累積寄与率を示したもの。グラフを併用するのが一般。分散が1以上、累積寄与率が80%以上などの主成分数の選択基準があるが、必ず従わないといけない訳ではない。
  2. 負荷量行列:元の変数(行)と各主成分(列)の相関係数。相関の大きな箇所を濃く表示すると、主成分の解釈に便利である。
  3. 統計ソフトウェアによる出力ではないが、主成分軸の解釈(意味)を示すための表があるといい。正の相関と負の相関の元の変数名を対応させる。
  4. 因子(主成分)負荷量プロット:主成分の組合せ(縦軸と横軸)で、元の変数との相関係数がプロットされている

今回のデータには、ラダリング法の結果を参考に設定した評価項目と、総合評価項目があるが、主成分分析は前者のみで行う。これは評価項目のばらつきをまず、互いに独立な成分に変換するためである。

属性のポジショニング

教科書p.57を見ると、負荷量の散布図を用いて、変数の分類(グルーピング)ができる(こともある)。種成分名をつけるにあたって、次のような表の作成を、渡辺美智子先生は推奨している。

主成分X
主成分名
+-
負荷量が正で大きい変数負荷量(大きい順)負荷量が負で小さい変数負荷量(小さい順)
負荷量が正で大きい変数負荷量(大きい順)負荷量が負で小さい変数負荷量(小さい順)
負荷量が正で大きい変数負荷量(大きい順)負荷量が負で小さい変数負荷量(小さい順)

それぞれ上位3位以内を用いることを示唆しているように読めるが、元のデータにある変数の数にもよるものと思われる。

製品・サービスのポジショニング

教科書p.58に、得点の散布図を用いて、既存の商品・サービスのポジショニングを行うことの説明がある。

  • 各主成分(評価)軸に対して、それぞれの評価者が各サンプル(番号)に対して何点の評価得点を与えたことになるのかの値が、主成分得点として出力される。
  • 主成分得点の平均は0である。
  • 主成分得点をサンプル商品毎に平均をとり、散布図上に示したものが、商品得点マップ (右下図)である。性別など属性でグループ分けした平均を示すことで、性別による評価の違いを見ることができる。
  • 主成分得点による得点マップは、主成分の分散に手を加えずに作成する場合と各主成分得点を標準 化 (基準化)して、分散を1にして作成する場合の2通りがある。
  • 前者では、高次の主成分になるほど分散が小さくなり差が見えにくくなるが、後者では、商品に対する評価の相対的な位置関係が見えやすい

主成分の回転

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回転を行った場合には、ポジショニングはやり直すことになる。

主成分回帰分析

主成分分析の結果から主成分得点を保存する。それを説明変数に用いて重回帰分析を行う。この時の分析手順は、通常の重回帰分析と変わりはない。

得た回帰係数を、主成分得点の散布図に矢印で追記する。矢印は、総合評価が高まる方向を表す。これを選好ベクトルという。第一主成分の回帰係数が0.82、第二主成分の回帰係数が-0.30の時に、原点(0,0)と座標(0.82, -0.30)を結んで更に伸ばした矢線が、p.59、p.64の主成分得点の散布図に描かれている。

選好の方向性の検討

主成分得点の散布図上に、既存の製品・サービスを並べ、また選好ベクトルを描き、選好の方向性を検討する。

調査の尺度

  • リッカート法:あらかじめ用意した文に対して、全く同意できない(1点)、同意できない(2点)、どちらともいえない(3点)、同意できる(4点)、非常に同意できる(5点)の5段階などで態度を表明してもらう。3段階や7段階が用いられることもある。
  • SD法:弁別される概念とそれを弁別するための、良い-悪いなど、相反する形容詞対の尺度を被験者に呈示し、5~7段階程度で評定してもらう。
  • 等現間隔法:1. 移民が自分の国に住むことに同意できますか? 2. 移民が自分の地域に住むことに同意できますか? 3. 移民が自分の近所に住むことに同意できますか? 4. 移民が自宅の隣に住むことに同意できますか? 5. 自分の子どもが移民と結婚することに同意できますか?のように、多数の意見項目を,たとえば保守的→進歩的などのような特定の一次元上に等間隔になるように配列して、最も同意できる項目を選択してもらう。3に同意すると、1と2にも同意したことになる。この手法を用いるには、調査の前に多くの意見を集めて、一次元を作る必要がある。
  • スケーログラム・アナリシス:被験者と項目を行と列に配置し、各項目に対する反応の一覧表 (スケーログラム) をつくり、態度尺度の一次元性を検討する。各項目は,たとえば,意見項目に対する「大いに賛成」「どちらかといえば賛成」「どちらでもない」「どちらかといえば反対」「全く反対」の五つのカテゴリーに尺度化されているとする。

態度測定

態度や価値態度体系の調査法の一つで,主として社会心理学の領域で発達した。態度測定は質問紙法によって得られる言語的な反応を素材にしているため,表面的な意識しかとらえられない危険があるが,この欠点を修正するために,測定尺度の開発がいくつか試みられている。 L.L.サーストンの等現間隔法,R.リッカートのリッカート法,L.ガットマンのスケーログラム・アナリシス,P.ラザースフェルドの潜在構造分析などが代表的。なお最近では,態度測定の考え方に,対象を多次元的,動的に,全体としての構造連関のなかでとらえようとする傾向が支配的になってきている。(コトバンク)

態度尺度

進歩的,保守的など特定の次元について,社会的態度を計量的に扱うために,主として質問紙法によって構成した尺度。あらかじめ用意した多数の質問項目に対する反応のパターンをそのうえに位置づけ,個人の尺度値を求めるために等現間隔法,評定尺度法,スケーログラム・アナリシス,潜在構造分析などがある。(コトバンク)

リッカート法

R.リッカートが 1932年に作成した態度尺度の一つ。同種類の内容にかかわるさまざまな意見を多数集めて,それらを3ないし7段階の連続体尺度上のスコアにあてはめ,その合計点をもって態度のスコアとする相加評定尺度と,項目分析によって作成する内的一貫性尺度とを結合させた態度測定法。リッカート法はサーストン法 (等現間隔法 ) のように,専門の判定者グループを用いる煩雑さがなく,手軽に測定,処理ができること,理論と実際との破綻が比較的少いことなどから,態度測定では最も広く使用されている。しかし測定理論そのもの,また項目に付与されるウエイトなどに問題があり,これらの欠陥は,40年代に考案された L.ガットマンのスケーログラム・アナリシスや P.ラザースフェルドの潜在構造分析などにより批判,克服されている。(コトバンク)

リッカート・スケール法

調査の対象にした事物に対し回答してもらう場合、回答者に応えてもらう一群の質問に、好意的反応から非好意的反応にいたる普通5段階に回答を前もって準備し、各段階に連続した数値ウェイトを与え、すべての質問に対する回答の得点典総和を、その回答者の個人的な好意度とするリッカート法に用いる尺度。(コトバンク)

等現間隔法

L.L.サーストンの考案した態度尺度構成法で,サーストン法とも呼ばれる。多数の意見項目を,たとえば進歩的→保守的などのような特定の一次元上に等間隔になるように配列し,それぞれに尺度値を与えることによって態度測定の尺度をつくる。(コトバンク)

スケーログラム・アナリシス

スケール・アナリシスともいう。 L.ガットマンによる態度尺度分析のための技法の一つ。被験者と項目を行と列に配置し,各項目に対する反応の一覧表 (スケーログラム) をつくり,態度尺度の一次元性を検討する。(コトバンク)

セマンティック・ディファレンシャル法

意味差別法。 SD法ともいう。 C. E.オズグッドらによって開拓された多変量解析法の1種。多数の両極的な評定尺度によって評定されたいくつかの概念を,意味空間と呼ばれる多次元のユークリッド空間における点として位置づけ,相互の間の関係を距離的関係として定量的にとらえる技法。意味空間の主要な次元として評価,潜勢力,活動性の3つの直交する座標軸が認められるといわれている。態度測定や動機調査などに広く利用されている。

コンジョイント分析

  • これまでに行った既存商品やサービスに関する評価者(消費者)の選好に関する主成分回帰分析の結果を踏まえて、新しく商品やサービスを設計することを考える。
  • 設計に際しては、商品やサービスを具体的な属性や機能の組み合わせで捉える必要がある。消費者は、組み合わせの全体で便益を総合的かつ相対的に評価し、選好行動に結びつけている。設計する立場では、商品やサービスに盛り込む属性や機能をどれにするのかについての優先順位の情報が必要となる。
  • この情報を得るための手法としてコンジョイント分析を紹介する。






PCR



コンジョイントカードの作成

コンジョイントカードの作成



アンケートの実施

アンケートの実施



コンジョイントカードの作成->アンケートの実施





部分効用値の推定

部分効用値の推定



アンケートの実施->部分効用値の推定





理想の●●の提案

理想の●●の提案



部分効用値の推定->理想の●●の提案





提案の検証

提案の検証



理想の●●の提案->提案の検証





コンジョイント分析

  • コンジョイント分析では、実験的に作成された商品やサービスのサンプルプロファイル(プロファイルカード)をいくつか回答者に示し、その評価データに基づいて、プロファイルに盛り込まれた属性や機能の重要度と効用値を分析によって求める。プロファイルカードは実験計画(デザイン)に沿って作成されていなければならない。
  • 評価の仕方には、5段階や7段階のスケールやプロファイルの順位化などの方法がある。

ここでは主成分分析と主成分回帰の結果を参考に、選好に影響を与える因子(属性)を選ぶ。

コンジョイント分析に用いる因子(属性)の選定手順については、2014年度にファイザー株式会社に宛てて発表された資料のp.11〜p.17が参考になる。

コンジョイントカードを作る

  • 植物の成長に、日光の有無や水やりの有無がどう影響するのかを調べる場合、右下の図のように、4つの実験条件のすべての観察結果を得ることで、日光の効果と水の効果を分離できる。
  • 影響の程度を調べたい要因を因子、各因子が持っているカテゴリーを水準という。この例では、日光や水が要因(因子)で、それぞれ、有るか無いかの2カテゴリーなので、2水準の因子ということになる。
  • それぞれの因子の効果を分離できる実験を直交(実験)計画という。直交実験計画には、すべての水準の組合せを実験する完全実施要因計画と直交表を利用する一部実施要因計画がある。

コンジョイントカードの例

4つのマンションについて価格、駅からの時間、駐車場の有無の情報を記したカードがある。
マンションを探している4人に、4枚のカードを見せ、購入してみたい度合いを7段階で表かしてもらった。

カード No.1
項目属性
価格3500万円未満
駅からの徒歩5分未満
駐車場あり
カード No.2
項目属性
価格3500万円未満
駅からの徒歩5分以上
駐車場なし
カード No.3
項目属性
価格3500万円以上
駅からの徒歩5分未満
駐車場なし
カード No.4
項目属性
価格3500万円以上
駅からの徒歩5分以上
駐車場あり

組み合わせを整理する。

カード 価格 駅からの時間 駐車場の有無
カード1 3500万円未満 5分未満 あり
カード2 3500万円未満 5分以上 なし
カード3 3500万円以上 5分未満 なし
カード4 3500万円以上 5分以上 あり

コンジョイントカード(プロファイルカード)の作り方

すべての組み合わせを作ると、項目の数をpとして、2のp乗の組み合わせがあり、数限りない。順位をつける場合も、評点をつける場合も、評価者はそれほど多くのプロファイルの間の比較を正確に行えると期待してはいけない。一説には、20から32程度のプロファイル数が最大とのことである。そのために、不必要な比較や評価をさないようにプロファイル数を減らしても、必要な効果(効用値)を推定できるような工夫が必要になる。

ここでは組み合わせの数を劇的に減らして、効果的な比較を行うために、田口の直交表を用いる。

列番号 1 2 3
1 1 1 1
2 1 2 2
3 2 1 2
4 2 2 1

これは4組の組み合わせに最大3個の要素を含めることができる表である。L4直交表と呼ばれる。この表の使い方は、プロファイルに用いる属性が3つまでなら、各列をそれぞれの項目として、1は水準1、2は水準2に取る。マンションの例では次のように設定した。

属性 水準1 水準2 列番号
価格 3500万円未満 3500万円以上 1
駅からの時間 5分未満 5分以上 2
駐車場の有無 あり なし 3

属性が4つ以上7つまでのときには、次の直交表を用いると良い。

列番号 1 2 3 4 5 6 7
1 1 1 1 1 1 1 1
2 1 1 1 2 2 2 2
3 1 2 2 1 1 2 2
4 1 2 2 2 2 1 1
5 2 1 2 1 2 1 2
6 2 1 2 2 1 2 1
7 2 2 1 1 2 2 1
8 2 2 1 2 1 1 2

この直交表を用いると、8組の組み合わせに最大7個の属性を含めることができる。L8直交表と呼ばれる。

さらに8つ以上15個までのときには、16組の組み合わせに最大15個の要素を含めることができる次の直交表を用いると良い。

列番号 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
2 1 1 1 1 1 1 1 2 2 2 2 2 2 2 2
3 1 1 1 2 2 2 2 1 1 1 1 2 2 2 2
4 1 1 1 2 2 2 2 2 2 2 2 1 1 1 1
5 1 2 2 1 1 2 2 1 1 2 2 1 1 2 2
6 1 2 2 1 1 2 2 2 2 1 1 2 2 1 1
7 1 2 2 2 2 1 1 1 1 2 2 2 2 1 1
8 1 2 2 2 2 1 1 2 2 1 1 1 1 2 2
9 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2
10 2 1 2 1 2 1 2 2 1 2 1 2 1 2 1
11 2 1 2 2 1 2 1 1 2 1 2 2 1 2 1
12 2 1 2 2 1 2 1 2 1 2 1 1 2 1 1
13 2 2 1 1 2 2 1 1 2 2 1 1 2 2 2
14 2 2 1 1 2 2 1 2 1 1 2 2 1 1 2
15 2 2 1 2 1 1 2 1 2 2 1 2 1 1 2
16 2 2 1 2 1 1 2 2 1 1 2 1 2 2 1

これはL16直交表と呼ばれる。

コンジョイントカードを評価してもらう

作成したプロファイルを評価者に提示するために、コンジョイントカードと呼ぶカードに一つずつ記していく。調査者の意図をなるべく正確に汲み取ってもらうために、写真や図など、評価者へ対象のイメージを誤解なく伝える工夫が望まれる。

評点

購入してみたい度合いは次のように評価してもらうようにお願いした。

とても 購入したい 購入したい やや 購入したい どちらとも いえない あまり 購入したくない 購入したくない まったく 購入したくない
7 6 5 4 3 2 1

これらのカードに対して、4人に評価してもらったデータが次の通り。

カード1 カード2 カード3 カード4
A 7 6 6 5
B 6 7 5 4
C 6 5 3 5
D 5 4 5 4

順位

購入してみたい度合いを、順位で表してもらうようにお願いした。
これらのカードに対して、4人に購入したい順位を評価してもらったデータが次の通り。

カード1 カード2 カード3 カード4
A 1 2 3 4
B 2 1 3 4
C 1 3 4 2
D 2 4 1 3

選択型

購入してみたい度合いを、ペアを作って比較して回答してもらうようにお願いした。
これらのカードに対して、4人に購入したい方を評価してもらったデータが次の通り。

1 vs 2 3 vs 4 1 vs 3 2 vs 4
A 1 3 1 2
B 2 3 1 2
C 1 4 1 4
D 1 3 3 4

この比較を一対比較と言う。〔実験計画法(DOE)〕の中の〔選択モデル計画〕で作成できる。

効用値を推定するための準備

片方の水準を1、もう一方の水準を-1にしてから、変数の尺度を連続尺度にする。
そして順序ロジスティック回帰を行うために、評価を順序尺度にする。(評点の例)

カード 価格 駅からの時間 駐車場 評価 人数
1 1 1 1 1 0
1 1 1 1 2 0
1 1 1 1 3 0
1 1 1 1 4 1
1 1 1 1 5 0
1 1 1 1 6 2
1 1 1 1 7 1
2 1 -1 -1 1 0
2 1 -1 -1 2 0
2 1 -1 -1 3 0
2 1 -1 -1 4 1
2 1 -1 -1 5 1
2 1 -1 -1 6 1
2 1 -1 -1 7 1
3 -1 1 -1 1 0
3 -1 1 -1 2 0
3 -1 1 -1 3 1
3 -1 1 -1 4 0
3 -1 1 -1 5 2
3 -1 1 -1 6 1
3 -1 1 -1 7 0
4 -1 -1 1 1 0
4 -1 -1 1 2 0
4 -1 -1 1 3 0
4 -1 -1 1 4 2
4 -1 -1 1 5 2
4 -1 -1 1 6 0
4 -1 -1 1 7 0

次のようにデータの形状を変更する。評価は連続尺度にする。(順位の例)

評価者 カード 価格 駅からの時間 駐車場 評価
A 1 1 1 1 1
A 2 1 -1 -1 2
A 3 -1 1 -1 3
A 4 -1 -1 1 4
B 1 1 1 1 2
B 2 1 -1 -1 1
B 3 -1 1 -1 3
B 4 -1 -1 1 4
C 1 1 1 1 1
C 2 1 -1 -1 3
C 3 -1 1 -1 4
C 4 -1 -1 1 2
D 1 1 1 1 2
D 2 1 -1 -1 4
D 3 -1 1 -1 1
D 4 -1 -1 1 3

選択型の場合は、比較したペアごとに選択した方を1、選択しなかった方を0で評価する。

評価者 試行 カード 価格 駅からの時間 駐車場 評価
A 1 1 1 1 1 1
A 1 2 1 -1 -1 0
A 2 3 -1 1 -1 1
A 2 4 -1 -1 1 0
A 3 1 1 1 1 1
A 3 3 -1 1 -1 0
A 4 2 1 -1 -1 1
A 4 4 -1 -1 1 0
B 1 1 1 1 1 0
B 1 2 1 -1 -1 1
B 2 3 -1 1 -1 1
B 2 4 -1 -1 1 0
B 3 1 1 1 1 1
B 3 3 -1 1 -1 0
B 4 2 1 -1 -1 2
B 4 4 -1 -1 1 0
C 1 1 1 1 1 1
C 1 2 1 -1 -1 0
C 2 3 -1 1 -1 0
C 2 4 -1 -1 1 1
C 3 1 1 1 1 1
C 3 3 -1 1 -1 0
C 4 2 1 -1 -1 0
C 4 4 -1 -1 1 1
D 1 1 1 1 1 1
D 1 2 1 -1 -1 0
D 2 3 -1 1 -1 1
D 2 4 -1 -1 1 0
D 3 1 1 1 1 0
D 3 3 -1 1 -1 1
D 4 2 1 -1 -1 0
D 4 4 -1 -1 1 1

効用値の推定

コンジョイント分析の各因子(属性)の主効果の推計は、評価データのタイプに応じて提案されているが、評価を計量値とみなせば、最も簡便には重回帰分析でも求めることができる。

  • 順位なら〔モデルのあてはめ〕を用いて、順序ロジスティック回帰を行う。
  • 評点なら〔モデルのあてはめ〕を用いて、通常の重回帰分析を行う。
  • 選択型なら〔消費者調査〕の中の〔選択モデル〕を用いて、条件付きロジスティック回帰を行う。

いずれでも、推定した回帰係数がそれぞれの項目の効用値である。

更にまとめる

まず次のようにコンジョイント分析の結果表を作成する。

因子水準効用値相対重要度
因子1水準1(従来)効用値1相対重要度1
水準2(新規)効用値2
因子2水準1(従来)効用値1相対重要度2
水準2(新規)効用値2
因子3水準1(従来)効用値1相対重要度3
水準2(新規)効用値2

効用値について:

  • 効用値は、重回帰分析の出力で、各因子(ダミー変数)に掛かる回帰係数が符号も含めて、対応する属性の主効果に相当する。ダミー変数で0を水準1、1を水準2に対応させた場合は、"水準1"の効用値=0、"水準2の効用値=回帰係数となる。
  • 一般には、これを各水準の効用値の平均=0となるように変換して、効用値のグラフを作成する(右表とグラフ参照)。例では、パンツタイプのダミー変数に対する回帰係数の推定値が、-030であつたので、"ゴム"の効用値=+0。15、"スキニー"の効用値=-0。15となっている。

相対重要度について:

  • 各因子(属性)の重要度は、効用値の範囲(レンジ)で測られる。範囲とは最大値―最小値のことである。水準が2つの属性では、大きい方の効用値-小さい方の効用値で求める。
  • 各因子(属性)の相対重要度は、各因子の重要度を用いて、因子の重要度の重要度の合計の中の比で求められる。
  • 重要度および相対重要度には、重回帰分析での各因子(属性)の寄与率(分散比)に基づく計算方法もある。

コンジョイント分析の次

コンジョイント分析の結果に基づいて、新しい製品・サービスを立案し、改めて総合評価項目を問うて、確認する。これが3回目の調査になる。