probability-theory
事象とは、起こり得る事物である。事象は一つの要素からなる場合と、複数の要素からなる場合、また数えられない数の要素からなる場合がある。
確率論は、事象が起こる確率に関する数学である。
すべての事象が部分集合であるような集合を、標本空間という。標本空間は大文字のスクリプト体、また場合によってはギリシャ文字の大文字で記す。
すべての事象を順不同で列挙する。
これを事象の列という意味で、事象列と呼ぶ。標本空間には、
が成り立つ場合と、これは成り立たず、
となる場合がある。
有限個の要素からなる集合を有限集合という。標本空間が有限集合の場合を考える。すべての要素に番号を付ける。
標本空間の部分集合の中から、一部を選んで集合族
を作る。この集合族が
という性質を持つとき、これを加法族という。
コイン投げでは、標本空間は
となる。この標本空間のすべての部分集合は
であり、これらを要素とする集合族
は加法性を持つ。
例えば、天気予報を論じるために、天気を要素とする集合を
と定める。ただし、興味があるのは降水の有無の場合には、事象を
のみとしても良い。これらを含む集合族
もやはり加法性を持つ。
可算個の要素からなる集合を可算集合という。標本空間が有限集合の場合を考える。すべての要素に番号を付ける。
標本空間の部分集合の中から、一部を選んで集合族
を作る。この集合族が
という性質を持つとき、これを可算加法族という。
整数集合は可算集合である上に、順序と距離が定義できる。順序とは、要素間の順序関係であり、数字に自然な順序の一つは、大小関係である。
数字の間の距離もさまざまあるが、一つのよく用いられる距離は差の絶対値である。
方向を表すために、符号付き距離が用いられることもある。
たとえば正の整数の場合、
標本空間の部分集合の中から、一部を選んで集合族
を作る。この集合族が
という性質を持つとき、これを可算加法族という。
順序と距離が定められた集合で、任意の2点の間に別の2点が存在するような集合を、連続集合という。実数全体の集合は、連続集合の一例である。連続集合の要素は、数え上げることができない。
たとえば のすべての要素に
のように番号をつけて、それらの総和
を計算することができない。そもそもすべての要素に一意に定まる番号付けを定義できない。
そのため事象としての部分集合を、次のような範囲で定める。
このような範囲を表す集合を集めて、加法族を作る。
標本空間が連続集合の場合には、要素に番号づけができないのと同様、事象にも番号づけができない。