probability-theory
時間軸上で繰り返し、しかしぽつぽつと生じる特定の種類の出来事を考える。英語ではeventと呼び、通常は事象と訳すが、ここでは出来事と呼ぶ。標本空間の加法族に含まれ、確率を評価できる部分集合も英語ではeventと呼び、事象と訳されているが、それとは区別して考えて欲しい。
想定する出来事の例を掲げる。
以下では、これらの出来事を念頭に、発生確率を考えたり、極限を取ったりするが、元の出来事に手を加えることはないことを、始めに記しておく。
ここからは特定の種類の出来事を単に、事象と言い換える。
任意の間隔の目盛で時間軸を、区切った時に、目盛と目盛の間の各区間において、事象の期待発生頻度は、次のように表現できる。
ただしは、区間の幅を変えても、一定の長さの区間における発生頻度が変わらないように設定する。観測される事象に手を加えては、何をしようとしているか分からない。
こう設定すると、例えば長さがの区間の事象の発生頻度の平均は常に
となる。
以上のモデル化は、この発生頻度の平均は、時刻に依存して変化することがないことを暗に仮定している。
事象の発生は互いに独立とする。例えば、必ず同時に複数発生する事象は、対象としない。また、単独の発生と複数の事象が混在する事象も対象としない。観測時においても、相異なる区間での事象の発生は互いに独立とする。
任意の区間での事象の発生回数は、につれて次の性質を有する。
事象が2回以上発生する確率は、が小さくなるととなる。
期間を等分すると、一つの区間の幅は
となる。この時、区間の事象の発生回数は、それぞれの区間の発生回数の和となる。
添え字はをつけると区間数、をつけると区間幅を表す。とは一対一の関係にある。
さて、が十分に大きく、が十分に小さいと、 は互いに独立に、ベルヌーイ分布に従うようになる。
数え方の違いでしかないやの変化に応じて、期間中の事象発生の総回数が変化するはずはない。そのため、このパラメータは
という条件を満たさなければならない。これより、期間中の事象発生回数の期待値をと置くと、
を満たす。
以上からは二項分布に従う。
が従う二項分布の確率関数は
である。これを少し変形すると、
ここで
および
より、の の極限は
となる。
変数の代わりにを、の添字をなくすと
となる。この確率関数を持つ確率分布を、ポアソン分布という。
期間を等分すると、一つの区間の幅は
となる。この時、区間の事象の発生回数は、それぞれの区間の発生回数の和となる。
添え字はをつけると区間数、をつけると区間幅を表す。とは一対一の関係にある。
今、が十分に大きいとする。事象を観測する試行は、互いにベルヌーイ分布に従う。この確率も、先の議論と同様
である。この時、最初に事象が発生した試行から、次に事象が発生する試行までの間の、発生が観測されない試行の回数を考える。それをと置くと、これは幾何分布に従う。
このままを考えると、と発散してしまう。そのためを大きくしても単位が変わらないように、間隔を試行回数から間隔の長さに変更する。
こうしたが従う確率関数を求めると
ここで、
である。またでが連続な変数となる。が有限の値では不要だが、の極限では、確率密度関数は積分に用いる被積分関数であることから
が成り立たなければならず、
のように、変換のヤコビアンをdyにかける必要がある。以上から
を得る。
変数の代わりにを、の添字をなくすと
となる。この確率密度関数を持つ確率分布を、ポアソン分布という。