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確率ベクトルとその変換

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注意

この箇所は、高校の数学や理工系の大学生が1年で学ぶ、多変数関数の微積分の習得を前提としている。確率分布に関する変数変換は、定積分の値である確率

Pr[\boldsymbolXA]=\boldsymbolxAfX(\boldsymbolx)dx1dxp
を保存しなければならない。変換
\boldsymbolY=T(\boldsymbolX)
の後の確率を保存するために、ヤコビアンが必要となる。
Pr[\boldsymbolYT(A)]=\boldsymbolyT(A)fY(\boldsymboly)dy1dyp=\boldsymbolyT(A)fX(T1(\boldsymboly))|\boldsymbolx\boldsymboly|dy1dyp

1組の確率変数

(X,Y)

  • XY
    の分布
  • X/Y
    の分布

の導出に2変量の確率ベクトルを用いる。

  • 多変量正規分布
  • 楕円分布

これらの導出に

p変量の確率ベクトルを用いる。

2変量

確率ベクトル

X1,X2 を確率変数の組とする。これらを要素に持つベクトル
\boldsymbolX=(X1X2)

を、確率ベクトルという。確率ベクトルは太字
\boldsymbolX
で表すことも、標準の書体
X
で表すこともある。

定数ベクトル

\boldsymbolxは太字で表すように教わることが多い。しかしこれも標準の書体
x
で表すことがある。ベクトルとスカラーを誤認識しようがない状況では、これらを区別しない流儀もある。

確率ベクトルの1対1の変換

R2から
R2
への1対1の変換
\boldsymbolT
を考える。
x1,x2R,\boldsymbolx=(x1x2),\boldsymboly=(T1(x1,x2)T2(x1,x2))=\boldsymbolT(\boldsymbolx)R2

この変換
\boldsymbolT
は、ベクトルの各要素について微分可能とする。
xiT1(x1,x2),xiT2(x1,x2)

この変換には逆変換
T1
がある。
y1,y2R,\boldsymboly=(y1y2),\boldsymbolx=(T11(y1,y2)T21(y1,y2))=\boldsymbolT1(\boldsymboly)R2

変換のヤコビアン

多変数関数の重積分

\boldsymbolxAf(\boldsymbolx)dx1dx2
を、変数変換
\boldsymboly=T(\boldsymbolx)
で表現し直すには、変換のヤコビアンを用いて
\boldsymbolyT(A)f(T1(y1,y2))|y1T11(y1,y2)y2T11(y1,y2)y1T21(y1,y2)y2T21(y1,y2)|dy1dy2

とする必要がある。

重積分の例

ガウス関数の定積分

ex2dx

を求めるのには、次のように定積分の二乗の計算と、

(x,y)の極座標
(rcosθ,rsinθ)
への変数変換を用いる。

{ex2dx}2=ex2dx×ey2dy=ex2ey2dxdy=ex2y2dxdy=e(x2+y2)dxdy=02π0er2cos2θr2sin2θ|rcosθrrcosθθrsinθrrsinθθ|drdθ=02π0er2|cosθrsinθsinθrcosθ|=02π0er2|r(cos2θ+sin2θ)|drdθ=02π0er2rdrdθ=02πdθ0rer2dr=2π[er22]0=2π[0212]=2π12=π

積の分布

(X,Y)
(U,V)=(XY,Y)
に変換する。逆変換は
(X,Y)=(U/V,V)

であり、この変換のヤコビアンは
|1/vu/v201|=|1v|

である。

fU,V(u,v)=fX,Y(uv,v)|1v|

この後に

Vを積分して、
U
の周辺分布を導く。

fU(u)=fX,Y(uv,v)|1v|dv

比の分布

(X,Y)
(U,V)=(X/Y,Y)
に変換する。逆変換は
(X,Y)=(UV,V)

であり、この変換のヤコビアンは
|vu01|=|v|

である。

fU,V(u,v)=fX,Y(uv,v)|v|

この後に

Vを積分して、
U
の周辺分布を導く。

fU(u)=fX,Y(uv,v)|v|dv

p
変量

確率ベクトル

X1,X2,,Xp を確率変数の列とする。これらを要素に持つベクトル
\boldsymbolX=(X1X2Xp)

を、確率ベクトルという。確率ベクトルは太字
\boldsymbolX
で表すことも、標準の書体
X
で表すこともある。

定数ベクトル

\boldsymbolxは太字で表すように教わることが多い。しかしこれも標準の書体
x
で表すことがある。ベクトルとスカラーを誤認識しようがない状況では、これらを区別しない流儀もある。

確率ベクトルの1対1の変換

Rpから
Rp
への1対1の変換
T
を考える。
\boldsymbolxRp,\boldsymboly=T(\boldsymbolx)Rp

この変換
T
は、ベクトルの各要素について微分可能とする。
xi=xiT(\boldsymbolx)|\boldsymbolx

この変換には逆変換
T1
がある。
\boldsymbolyRp,\boldsymbolx=T1(\boldsymboly)Rp

変換のヤコビアン

多変数関数の重積分

\boldsymbolxAf(\boldsymbolx)dx1dxp
を、変数変換
\boldsymboly=T(\boldsymbolx)
で表現し直すには、変換のヤコビアンを用いて
\boldsymbolyT(A)f(T1(\boldsymboly))|\boldsymbolT1\boldsymboly|dy1dyp

とする必要がある。