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ベイズの定理

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確率の算法に、2種類のベイズの定理を掲げた。それらを少し詳しく説明する。

ベイズの定理 (その1)

二つの事象

A,
B
を考える。条件付き確率
Pr[B|A]
と周辺確率
Pr[A]
Pr[B]
が与えられたとき、
B
を条件とした
A
の条件付き確率を次のように計算できる。

Pr[A|B]=Pr[B|A]Pr[A]Pr[B]

条件と結果を逆にした条件付き確率を逆確率ということもある。

これは確率の乗法法則

Pr[AB]=Pr[A|B]Pr[B]=Pr[B|A]Pr[A]
から直ちに
Pr[A|B]=Pr[B|A]Pr[A]Pr[B]

と導かれる。分子は同時確率を乗法法則で計算しているので、条件付き確率の定義
Pr[A|B]=Pr[AB]Pr[B]

そのものでもある。

ベイズの定理は、次のような状況で用いる。事前に

Bという現象を観測すると、
A
も観測できる、というジンクスがある。その確からしさはおよそ
Pr[B|A]=0.8
とのことである。
B
が観測される周辺確率は
0.3
と少し稀であり、
A
の観測に気づかずとも確率
0.3
B
は生じる。
A
が観測される周辺確率は
0.25
で、生じない確率の方が大きい。

このとき、

Bを観測できたという条件の下で、
A
も生じていた確率を求めると
Pr[A|B]=Pr[B|A]Pr[A]Pr[B]=0.8×0.250.3=0.667

となる。

ベイズの定理 (その2) (再掲)

事象列

A1,A2,,An を標本空間
X
の被覆とする。被覆とは、互いに素
AiAj=,ij

かつ、事象列の総和集合
A1A2An=j=1nAj=X

が標本空間に一致するような事象列である。

また、この事象列とは別の事象

Bを考える。このとき、次の定理が成り立つ。

Pr[Ak|B]=Pr[B|Ak]Pr[Ak]l=1nPr[B|Al]Pr[Al]

このベイズの定理は、分子が同時確率

Pr[B|Ak]Pr[Ak]=Pr[AkB]
であることと、分母が
B
の周辺確率
l=1nPr[B|Al]Pr[Al]=l=1nPr[AlB]=Pr[(l=1nAl)B]=Pr[XB]=Pr[B]

であることを用いて、証明できる。

ベイズの定理は、例えば次のような状況で用いる。

ある検査方法

Dは、複数の疾患に反応を見せる。

確率 疾患A 疾患B 疾患C 疾患なし
D
に反応あり
0.7
0.8
0.6
0.1

またそれぞれの疾患に罹患する確率は、次の表で与えられている。

確率 疾患A 疾患B 疾患C 疾患なし
罹患確率
0.2
0.1
0.2
0.6

検査

Dに反応があった場合に、それぞれの病気に罹患している確率は、次のように求めることができる。

Pr[疾患A|D]=Pr[検査Dに反応あり|疾患A]Pr[疾患A]Pr[D|A]Pr[A]+Pr[D|B]Pr[B]+Pr[D|C]Pr[C]+Pr[D|なし]Pr[なし]=0.7×0.20.7×0.2+0.8×0.1+0.6×0.2+0.1×0.6=0.140.14+0.08+0.12+0.06=0.140.40=0.35

他の疾患の確率も同様に

Pr[疾患B|D]=0.080.14+0.08+0.12+0.06=0.2Pr[疾患C|D]=0.120.14+0.08+0.12+0.06=0.3Pr[疾患C|D]=0.060.14+0.08+0.12+0.06=0.15
と求まる。