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合計の分布と平均の分布

tags: probability-theory

四則演算による変換の分布

X を確率分布
F
に従う確率変数とする。この分布が確率密度関数
f(x)
を持つとき

Y=X+af(ya)

Y=Xaf(y+a)

Y=aX1af(ya)

Y=Xaaf(ay)

となる。標本空間が有界の場合は、標本空間も対応する変換を受ける。

合計の分布

確率変数列

X1,X2,,Xn, を、互いに独立に同一の確率分布
F
に関する試行の列とする。最初の
n
個の合計を

Sn=X1+X2+Xn=i=1nXi

と記す。確率分布

Fのモーメント母関数を
MX
と記すと、
S
が従う確率分布のモーメント母関数は

MS(t)={MX(t)}n

となる。

平均の分布

さて、

MX(t)
t=0
の周りでのテイラー展開が

MX(t)=1+E[X]t+E[X2]2!t2+E[X3]3!t3+

であった。

Xの期待値
μ
からの偏差
D=Xμ
のモーメント母関数には、

MD(t)=1+E[(Xμ)]t+E[(Xμ)2]2!t2+E[(Xμ)3]3!t3+=1+E[(Xμ)2]2!t2+E[(Xμ)3]3!t3+

のように中心モーメントが現れる上に、

tの一次の項が消える。次に
D
1/n
した
D/n
が従う確率分布のモーメント母関数が

MD/n(t)=1+E[(Xμ)2/n2]2!t2+E[(Xμ)3/n3]3!t3+

となることから、

D1,,Dnの平均
Dn
が従う確率分布のモーメント母関数は、

MDn(t)={1+E[(Xμ)2/n2]2!t2+E[(Xμ)3/n3]3!t3++}n=1+O(1n)

となり、

nで確率分布が縮退しまうことが分かる。

ところで

Snμ
n
ではなく、
n
で割ると
M(Snμ)/n(t)={1+E[Xμn]t+E[(Xμ)2/n]2!t2+E[(Xμ)3/n3/2]3!t3++}n={1+E[(Xμ)2/n]2!t2+o(1n)}n={1+E[(Xμ)2/n]2!t2}n+no(1n)

となる。ここで
n
の極限を求めると

limn{1+E[(Xμ)2/n]2!t2}n+no(1n)=eμ2t2/2

となる。これが平均と期待値の差を

nで割った分布のモーメント母関数の極限である。