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確率変数の変換 (1次元)

tags: probability-theory

確率変数の変換

確率変数

Xが確率分布
F
に従っているとき、
X
を関数
g(x)
で変換する。このとき、新たな確率変数
Y=g(X)

が従う確率分布を考える。

まずは変換の種類を整理する。

単調変換

写像

gが単調とは、次のいずれかが成り立つことをいう。
x1,x2Xs.t.x1x2g(x1)g(x2)

または
x1,x2Xs.t.x1x2g(x1)g(x2)

文字で書くと

x1x2を満たす
x1,x2X
に対して、常に
g(x1)g(x2)
が成り立つか、または常に
g(x1)g(x2)
が成り立つことをいう。どちらか一方のみが常に成り立つのであり、いずれかが成り立つとは異なることを追記しておく。

写像

gが単調ならば、
X
の標本空間
X
g
による写像
g(X)
のすべての要素は、
X
の要素と1対1の対応を持つ。
g
の逆写像
X=g1(Y)

も存在して、
Y
の標本空間
Y
g1
による写像
g1(Y)
は、元の標本空間
X
と一致する。

位置変換

確率変数

X が確率分布
F
に従って分布するとする。しかしこれを観測する際に、
b
だけずれて観測してしまうとき、観測されるのは下記のように定められた
Y
の値となる。

Y=X+b

これを位置変換という。

Xの分布から
Y
の分布を導くには、
X=Yb

を元の分布の表現に代入する。

fY(y)=fX(yb)pY(y)=pX(yb)FY(y)=FX(yb)

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標本空間が有界ならば、その境界も位置変換によって移動する。

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尺度変換

確率変数

X が確率分布
F
に従って分布するとする。しかしこれを観測する際に、正の定数
a
による
a
倍の値を観測するとき、観測されるのは下記のように定められた
Y
の値となる。

Y=aX

これを尺度変換という。

Xの分布から
Y
の分布を導くには、
X=Y/a

を元の分布の表現に代入する。

fY(y)=fX(y/a)/apY(y)=pX(y/a)FY(y)=FX(y/a)

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分布の平均が原点でない場合は、尺度変換は平均も動かす。

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位置・尺度変換

確率変数

X が確率分布
F
に従って分布するとする。しかしこれを観測する際に、正の定数
a
による
a
倍してから
b
を加えた値を観測するとき、観測されるのは下記のように定められた
Y
の値となる。

Y=aX+b

これを位置・尺度変換という。

Xの分布から
Y
の分布を導くには、
X=(Yb)/a

を元の分布の表現に代入する。

fY(y)=fX((yb)/a)/apY(y)=pX((yb)/a)FY(y)=FX((yb)/a)

もう一つの位置・尺度変換

確率変数

X が確率分布
F
に従って分布するとする。しかしこれを観測する際に、正の定数
a
による
a
倍してから
b
を加えた値を観測するとき、観測されるのは下記のように定められた
Y
の値となる。

Y=a(X+b)

Xの分布から
Y
の分布を導くには、逆変換

X=Y/ab

を元の分布の表現に代入する。位置変換してから尺度変換なので、こちらの方が位置・尺度変換と呼ばれそうだが、実際にはあまり見られない順序である。

原点以外からの尺度変換

原点以外の点

x=bの周りの尺度変換は、一度、原点への位置変換
Xb
を施してから、尺度変換
a
を施し、最後に位置を
b
に戻す。

Y=a(Xb)+b

この逆変換は

X=(Yb)/a+b

となる。これはほとんど用いられない。

確率分布が確率関数で与えられている場合

確率分布

Fが確率関数
pX(x)
で与えられている場合、
F
に従う確率変数
X
g(x)
で変換する。このとき、新たな確率変数
Y=g(X)

が従う確率分布を考える。

g
が単調関数

gが単調関数ならば、
X
の標本空間
X
g
による写像
g(X)
のすべての要素は、
X
の要素と1対1の対応を持つ。
g
の逆変換
X=g1(Y)

も存在して、
Y
の標本空間
Y
g1
による写像
g1(Y)
は、元の標本空間
X
と一致する。

このとき

Y の確率関数は
pY(y)=pX(g1(y))

となる。

確率分布が確率密度関数で与えられている場合

確率分布

Fが確率密度関数
fX(x)
で与えられている場合、
F
に従う確率変数
X
g(x)
で変換する。このとき、新たな確率変数
Y=g(X)

が従う確率分布を考える。

g
が単調関数

gが単調関数ならば、
X
の標本空間
X
g
による写像
g(X)
のすべての要素は、
X
の要素と1対1の対応を持つ。
g
の逆変換
X=g1(Y)

も存在して、
Y
の標本空間
Y
g1
による写像
g1(Y)
は、元の標本空間
X
と一致する。

このとき

Y の確率密度関数は
fY(y)=fX(g1(y))ddyg1(y)

となる。

確率分布が累積分布関数で与えられている場合

確率分布

Fが確率関数
p(x)
で与えられている場合、
F
に従う確率変数
X
g(x)
で変換する。このとき、新たな確率変数
Y=g(X)

が従う確率分布を考える。

g
が単調関数

このとき

Y の累積分布関数は
FY(y)=FX(g1(y))

となる。

変換が単調でない場合

非単調変換

gが非単調とは、
g
が単調でないことを言う。
g
が単調でなければ、
X
の標本空間
X
g
による写像
g(X)
の要素の中に、元の標本空間
X
の複数の要素の変換に対応するものが存在する。

非単調変換の分布を導くには、変換が単調となる区間に標本空間を分割する。

  1. A1,,Ams.t.AiAj=
  2. g:Aig(Ai),g1s.t.gAi1:gAi1(g(Ai))Ai

そして、変換の密度関数は

i:yg(Ai)fX(gAi1(y))ddygAi1(y)
となる。確率関数は
i:yg(Ai)pX(gAi1(y))

累積分布関数も
i:yg(Ai)FX(gAi1(y))

となる。

例えば、確率変数の絶対値の分布が必要なとき、

Y=|X|
という変換を考える。この変換は
X>0
および
X<0
それぞれの範囲で単調となる。
A1={x;x0},A2={x;x<0}

それぞれの範囲での
Y
の確率分布は
fY|XA1=fX(y),fY|XA2=fX(y)

なので、
Y
が従う確率分布は
fX(y)+fX(y)

と導かれる。

例:半正規分布

確率変数

Xが平均
0
で分散が
σ2
の正規分布に従っているとする。
XN(0,σ2)

この
X
の絶対値の分布を考える。
Y=|X|

この変換は
X<0
の範囲で単調減少、
X0
の範囲で単調増加となる。そのため標本空間を、この二つに分ける。
A1={x;x<0},A2={x;x0}

さて
XA1
のとき
y=x

であり、
dxdy=1

となる。この範囲での密度関数は
fY|A1(y)=fx(y)=12πσ2exp{y22σ2}×|1|

である。

次に

XA2のとき
y=x

であり、
dxdy=1

となる。この範囲での密度関数は
fY|A2(y)=fx(y)=12πσ2exp{y22σ2}×|1|

である。

よって

Yの従う確率分布は、
y0
の範囲で
fY(y)=fY|A1(y)+fY|A2(y)=22πσ2exp{y22σ2}

という確率密度関数を持つ。