probability-theory
確率変数が確率分布に従っているとき、を関数で変換する。このとき、新たな確率変数
が従う確率分布を考える。
まずは変換の種類を整理する。
写像が単調とは、次のいずれかが成り立つことをいう。
または
文字で書くとを満たすに対して、常にが成り立つか、または常にが成り立つことをいう。どちらか一方のみが常に成り立つのであり、いずれかが成り立つとは異なることを追記しておく。
写像が単調ならば、の標本空間のによる写像のすべての要素は、の要素と1対1の対応を持つ。の逆写像
も存在して、の標本空間のによる写像は、元の標本空間と一致する。
確率変数 が確率分布 に従って分布するとする。しかしこれを観測する際に、だけずれて観測してしまうとき、観測されるのは下記のように定められたの値となる。
これを位置変換という。の分布からの分布を導くには、
を元の分布の表現に代入する。
標本空間が有界ならば、その境界も位置変換によって移動する。
確率変数 が確率分布 に従って分布するとする。しかしこれを観測する際に、正の定数による倍の値を観測するとき、観測されるのは下記のように定められたの値となる。
これを尺度変換という。の分布からの分布を導くには、
を元の分布の表現に代入する。
分布の平均が原点でない場合は、尺度変換は平均も動かす。
確率変数 が確率分布 に従って分布するとする。しかしこれを観測する際に、正の定数による倍してからを加えた値を観測するとき、観測されるのは下記のように定められたの値となる。
これを位置・尺度変換という。の分布からの分布を導くには、
を元の分布の表現に代入する。
確率変数 が確率分布 に従って分布するとする。しかしこれを観測する際に、正の定数による倍してからを加えた値を観測するとき、観測されるのは下記のように定められたの値となる。
の分布からの分布を導くには、逆変換
を元の分布の表現に代入する。位置変換してから尺度変換なので、こちらの方が位置・尺度変換と呼ばれそうだが、実際にはあまり見られない順序である。
原点以外の点の周りの尺度変換は、一度、原点への位置変換を施してから、尺度変換を施し、最後に位置をに戻す。
この逆変換は
となる。これはほとんど用いられない。
確率分布が確率関数で与えられている場合、に従う確率変数をで変換する。このとき、新たな確率変数
が従う確率分布を考える。
が単調関数ならば、の標本空間のによる写像のすべての要素は、の要素と1対1の対応を持つ。の逆変換
も存在して、の標本空間のによる写像は、元の標本空間と一致する。
このとき の確率関数は
となる。
確率分布が確率密度関数で与えられている場合、に従う確率変数をで変換する。このとき、新たな確率変数
が従う確率分布を考える。
が単調関数ならば、の標本空間のによる写像のすべての要素は、の要素と1対1の対応を持つ。の逆変換
も存在して、の標本空間のによる写像は、元の標本空間と一致する。
このとき の確率密度関数は
となる。
確率分布が確率関数で与えられている場合、に従う確率変数をで変換する。このとき、新たな確率変数
が従う確率分布を考える。
このとき の累積分布関数は
となる。
が非単調とは、が単調でないことを言う。が単調でなければ、の標本空間のによる写像の要素の中に、元の標本空間の複数の要素の変換に対応するものが存在する。
非単調変換の分布を導くには、変換が単調となる区間に標本空間を分割する。
そして、変換の密度関数は
となる。確率関数は
累積分布関数も
となる。
例えば、確率変数の絶対値の分布が必要なとき、
という変換を考える。この変換はおよびそれぞれの範囲で単調となる。
それぞれの範囲でのの確率分布は
なので、が従う確率分布は
と導かれる。
確率変数が平均で分散がの正規分布に従っているとする。
このの絶対値の分布を考える。
この変換はの範囲で単調減少、の範囲で単調増加となる。そのため標本空間を、この二つに分ける。
さてのとき
であり、
となる。この範囲での密度関数は
である。
次にのとき
であり、
となる。この範囲での密度関数は
である。
よっての従う確率分布は、の範囲で
という確率密度関数を持つ。