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福岡教育大学付属福岡小学校 公開研究会メモ

オープニング(子どもの発表)

  • ダンスや科学実験発表など、こどもたちのやりたいことをのびのびと表現している。
  • 「○○チャレンジ」という活動。

校長挨拶

  • 研究開発校の指定は8年目。1度延長。今年が最後。

全体研究構想(研究部長 井出先生)

  • 学校で楽しいと感じるときはどんなときか?

    • 健康の学習で体を動かす
    • 先生が優しい
    • みんなとなかよく
    • みんなで話し合って大きな答えが浮かぶから
    • 行事で高学年がおもしろいことをやってくれる
    • 同じチャレンジの人と一緒にできる
    • 自分たちで学級目標を考える
    • 自分たちで自由に授業を作ることができる
    • 学校が考えた単元があり、より深く考えることができる
    • 自分がやりたいことが追求できる。仲間や先生と一緒にできる。
    • 人と人の意見がつながっていく
    • 教科書タイプじゃない
  • テーマ:学校を楽しい場所にしたい、そして未来へ羽ばたく力を引き出したい

    • そのためには、カリキュラムからのアプローチが大切
    • カリキュラムはビジョンの実現のtあめに存在する
    • 創造性・省察性・協同性
      • 創造性のような認知的なものは一体として考えている
      • 非認知能力を、自己に向かう省察性と他者に向かう協同とにわけている
    • 研究の主題と学校教育目標が一緒
  • 資質能力を育成する独自のカリキュラム

    • コンテンツベースではなく、子どもの文脈を中心にしたコンピテンシーベース
    • 子どもの文脈を中心にするためには、シンプルな教科編成が必要
    • 7つの教科編成
  • 教科が変われば内容が変わる。

    • 方略と概念(○○を通して、☓☓に気づく、理解する)
  • 3つの学びのデザイン

    • テーマ:1年でこのようになりたい
    • リレーション:1つの教科では解決しない
    • フォーカス:この教科の学びを深めるぞ
    • 子どもの文脈を重視しながら、年間の計画を育てるためのカリキュラムデザインの手順が必要
  • 子どものカリキュラムを公開する

    • 先輩たちのやったことを見せながら、自分たちで単元計画を作っていく。
    • 年間を通して見通しを持てるようにする
  • カリキュラムの改善サイクル

    1. 検証する単元を決定
    2. モデレーションタイム
      • 目指す目標の基準を照らし合わせる時間
    3. 授業実践
    4. 授業整理会
    5. カリキュラムの変更・更新
  • チャレンジ:子どもの文脈を中心にした個の資質能力を育成する時間

明らかになってきたこと

  • 認知に関する資質能力を一体的に設定したことにより、子どもの姿が捉えやすくなった。探究を重視した学習デザイン。

  • 非認知能力を自己と他者でわけたことで、よりわかりやすくなっている。

  • 教科の内容を見方。考え方を軸に方略と概念で整理

    • 学習内容の重なりを減らすことができる
    • 質の高い問いを軸にした探究ができる
  • 基準合わせに特化した事前協議

    • こどものすがたをもとにした協議会の実施
    • 手立ての有効性のみを論じない
    • 子どもの文脈をより重視しようとする

授業公開(別

教科研究発表

数学科と創造性

  • 数学科が目指す子どもの姿

    • 自照を数学的にとらえる
    • 目的に応じて子どもが
    • 論理的嗜好を育むこと
  • 論理的思考

    • 量から数への抽象化
      • 2年生:分割分数の理解
      • 3年生:1をつくる意識(数としての分数)量から数への抽象化
      • これをどのように考えるか?
    • 芸術科の音楽づくり、リレーション学習としておこなう
    • 芸術科のリズムうち
      • 抽象化された分数の世界から、具体化されたリズムの世界へ
      • 論理性と規則性。具体的な場面(リズムを打ちたい)から生まれる必要性が、分数の理解をたやすくする
        • -> 創造的な学びそのもの。構成主義・構築主義的な学習。
      • 子どもの文脈(よりよい曲を作りたい、秘密を探りたい)を落とし込む
    • 事例)同じリズムだと変化がなくておもしろくない(気づき)、どうすればいろいろなリズムになるんだろう?(問い)
      • 1/4と1/8を使って1を作れるかどうかをたしかめる(自分の活動として行う、算数の授業)
      • 大きさを視覚的のあつかう(ブロックのようなものを使っている)
  • 論理的思考を働かせるためのポイント

    1. 具体と抽象の往還
    2. 問いの連続発展
    3. 6年間での発展の可能性
  • 宮島感想:これは学びの作品化そのもの、作品を作るためになにかをする。

芸術科:自分の思いを音・形・色に表す

  • 芸術家で育む資質・能力:創造性

    • 思いを持ち、協同性(よさを共有する)と省察性(学習を調整する)を発揮する
    • 思いを持つことは創造性の第一歩
  • 4年生:これが私のアレンジ風景

    • 1枚の写真をみせ「教室から見える風景の写真があるけれど、何かみんなのちからでおもしろくできないかな?」と問いかける。
    • 自分たちの力でなにかできそう!と答える。その裏側には、表現との関わりの積み重ねがある。
    • 自分たちで学習計画をたて、おもいをつくっていく
  • 3年生:音楽づくり

    • 物語に音楽をつけたい。映画を作ったらおもしろそう。
    • 「自分が作った絵本は悲しい物語だから、悲しい雰囲気の曲を作りたい」
      • 教科の学習とリレーション学習がうまく作られている
    • 他教科との関連はすでに何度も行っている。
    • 表現へのこだわりが学習内容のこだわりになっている
  • 成果

    • 芸術家における創造性を発揮するためには思いを持つことが必要
    • 表現との関わりの積み重ね、他教科との関連、カリキュラムデザインが必要
    • 思いを持ってひょうげんするために、子どもの価値ある姿をどのように評価していくかを検討する必要がある

特別支援教育部

  • 知的障害をもつ子どもが、自立して、社会参画していくために必要なことはなにか?という問から、「たくましく生活を広げていく子供」の育成を考えている。

    • 自発性、自己発揮性、成就性の3つが必要
    • 子どもの実態をもとに、単元レベルではなく年間を通した子どもの姿を考える必要がある
  • 子どもの姿をもとにしたカリキュラム・マネジメント

    • 子供の指導計画のPDCAサイクル
      • Plan: 目指す子供の姿
      • Do:実践
      • Check, Action: 目指す姿の評価・改善
    • Google Site を活用して、eポートフォリオを作成する。
      • 学びの履歴を教師と保護者で共有していく
  • 山場で輝く授業づくり

    • 実態におうじた意図的な山場の設定が必要
    • できることを活かし、山をのり超えて輝く経験

授業研究会

  • 主題:たくましく生活を広げていく子ども
  • 副主題:子供の姿をもとにしたカリキュラム・マネジメント
  • 自立活動
    • グループ別の自立活動
    • 学級での自立活動という2つを設定している

本題材について

  • 協力してゴールをめざせ!〜プログラミングにチャレンジ〜
  • 動機(導入)→熱中(展開)→発展(まとめ)

指導助言(中山先生)

  • 子どもたちの実態通りの授業。
  • Cこそ協同で学ぶべきだった。言葉を使って課題を立てていくこと。
  • ルート上にプログラムがあると、捉えやすいし思考に直接つながるのではないか。
  • 人は素手で他者と交わることはない。道具を媒介とする。
  • 学習過程について
    • はじめの話し合いがよかった→自立活動だから
    • チャレンジ1とチャレンジ2のあいだがよかった → 将棋の感想戦みたい
  • 子どもの言葉から
    • E: 頭の中でこうしよう、こうしたいと考えたことが、そのとおりになる(はずだ)と考える。
      • 見ていない, 確かめようとしない
    • D: 「んー、なんか難しい」:ここに自己調整の姿が現れている
    • B: 「こういって、こうなったら、こうなる」こそあど言葉が多い。具体的にしてく必要あり。
    • A: 「他の人達ががんばったらいい。ときどき2ポイントにしたらいい」
  • そのタイミングの、その時に、記録するのではなく、手を差し伸べる場面があるのでは?
    • 特使の教員としての資質能力になっている
    • その場面を見極めてほしい

指導助言(牛島先生)

  • eポートフォリオの可能性
    • 言葉だけでは伝えきれないものを画像や動画により記録することで、伝えることができる
    • では、どのような場面を取ればいいのか?
  • 山場の場面を設定していく必要がある

シンポジウム「これからの学校教育の在り方 〜福岡小の研究が世に問うたこと〜」

  • コーディネーター:福本徹(国教研), シンポジスト:那須(上智大), 田村(国学院), 石井(京大)

現在の教育における課題はどのようなもので、福岡小の研究で有効な部分はあったか

  • 那須

    • カリキュラムは2つある。1つは学習指導要領の研究。目標や内容の水準。
    • もう1つは、単元単位のカリキュラム。年間指導計画。学校のカリキュラムは年間指導計画のこと。活動教材水準のカリキュラム。
    • 日本では、目標内容水準のカリキュラムは現場では触らない。しかし、福岡小はここをいじった。
    • カリキュラムオーバーロードの問題について、通常は活動教材水準をいじるが、福岡小は目標内容水準の次元でかいけつしようとしている。
      • カリキュラムオーバーロードは各国でおこる。なぜなら、学問は前に進んでいくから。
      • Scrap and Build の精神でやっていかなければいけない。
    • なぜ福岡小でできたのか? → コンテンツベースからコンピテンシーベースに変わったから
      • 873時間の時数削減を達成している。
    • 教科とはなにか、を今一度考える必要がある。本来ならば全国の附属がここを変えなければならなかった。
  • 田村

    • 資質能力を新たに規定すること
      • 省察性, 創造性, 協同性
      • 現行の学習指導要領よりもいいまとめ方なのかも?(思考判断表現、学びに向かう態度〜)
    • 学習指導要領、とりわけ内容の基準の表現様式を統一したこと
      • カリキュラムをデザインするときに有効になってくるのかもしれない
      • すべての教科で同じような表現様式になれば、接続性が増す
  • 石井

    • 現在は、主体的・対話的で深い学びが置き去りにされている感じがする。令和の日本型学校教育しかり。
    • 改めて、資質能力ベースとはなにかを問い直す契機として福岡小の実践はある。
    • ねらいの先に願いを持っているかどうか。
    • 今の改革は、これまでの授業をベースにカリキュラムを変えて教育方法のレベルでお茶を濁している。
    • コンピテンシーベースの改革は、教科の再編を超えて、教科の必要性、本質とはなにかを考える必要がある。
      • 「教科の当たり前をゆさぶる提案」
    • 現実世界のなかで数学や科学が果たしている役割はイノベーティブ。その躍動感がいまの理科にはない。新しい科学教育として提案されている。
  • 田村:既存の教科の内容を再編するとき、2つの方向性がある。どちらを志向する?

    • よりテクノロジーをいれたようなもの
    • より暮らしや社会のなかにあるもの
  • 石井

    • 結果としてテクノロジーが入っていく。社会に近づけていこうとすればするほどそうなっていく。
    • CHATGPTはスーパー素人。モデルを作っていくことが重要。
  • 奈須

    • これまではわかりやすくするために単純化してきた。それは、文脈が断片化されているということ。これは子どもからすると、考えるための材料が少ないということ。いろいろなものが入り込んでくると、考えるための足場になっていく。脱文脈化されたものを積み上げてもどうしようもない。
    • 具体的な文脈のなかで要素をつなぎ合わせることが重要。
    • 発展性のある教材である必要がある。大人がみてもおもしろい教材でないと、子どももおもしろくない。わかりきったことをずっとやっていく学習はなにもおもしろくない。
  • 田村

    • リアルな体験を通していくことのほうが色々学ぶことには同意。しかし、一定程度習得学習も必要なのか?
  • 奈須

    • 一定程度は必要だが、それをその場で全員わかるようにしようという考え方は必要ないしそもそも無理。
    • 「ちゃんとやるのは5年生だけど、使えるようになるのは2年生」のようなものでいい。
    • 反復というよりは、子どもの文脈でなんどもくりかえせばいい。
  • 石井

    • 本物であれば何度も何度も繰り返し楽しめる。ここがポイント。
  • 奈須

    • コンピテンシーをどのように評価する?子どもの学びの深まりをどう見ていくか。
  • 石井

    • 目標に準拠した評価だけでない、個人内評価という方法があるし、それをやる必要がある。教師が1人1人の子どもを固有名で見ていく必要がある。
  • 奈須

    • そう考えると日常的に子どもたちは学校で学んだことを生活のなかで表出させている。しかし、いまの教師はそこに興味がない。
    • これまで福岡小がやってきたことは「文脈」を大事にすること。どんな文脈でも使えるような知識を覚えるために文脈を破壊してしまった。それは間違いだった。
    • 幼稚園や特別支援教育は文脈を持った学びをしている。その子の文脈を大切にしている。
    • 幼児教育は育ちという言葉を使う。必然性のある学びの連続が育ち。
  • 田村

    • 学んでいる子どもは没頭している。自覚することが重要。本人のものにしていくためのポイント。自覚と実感をするためには、教師が理解している必要がある。意図的に設計デザインした授業と子どもが呼応し合う。
  • 石井

    • どこかで力を試される瞬間が大切。生活や仕事のなかにもそういった場面がある。
    • 真正な評価、パフォーマンス評価
    • 具体があれば、自分の力や手応えを感じることができる。
    • リフレクションしたくもないのに書かされている。これは形だけの学力。
    • 文脈が大事なのだけど、それは複雑になっていることでもある。
    • 生活 → 科学 → 生活(挑戦)。生活に戻る必要がある。そして、それは挑戦として提起。
      • Image Not Showing Possible Reasons
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        学びの作品化って生活文脈に戻ることなんじゃないか?
  • 奈須

    • 生活だけでは思いつかないような視点を得ることが、教科の学習(科学的概念の習得)の大事なこと。
    • 科学的知識は生活を生き抜く武器になる。
  • 田村

    • テーマ学習は文脈的、フォーカス学習は脱文脈的。
    • 法令上はテーマ、リレーション、フォーカスはやっていい。むしろやるべき。だけどやってない。
    • 学習指導要領の書き方も、内容の記述をあわせていく必要がある
  • 奈須

    • 教科書と地域教材の療法を見比べながら作っていく、という感覚が重要。やる必然性がないものをやる必要はない。

    • これでいいだろう、という覚悟が重要。

    • 「業者テストは、教科書を教科書どおりなんの工夫もせずやったときに一番点が取れるテスト」

      • teacher proof curriculum
      • 仮設実践授業などもそう。
    • 教師の専門性は、テーマやリレーションをどう作るかによって発揮される。

  • 石井

    • 方略と概念だけで終わってしまうのはもったいない。その先に生活の戻す必要がある。
  • 田村

    • 方略の部分はもう少し書き換えることができそう。活動だけじゃない。
    • 非認知能力の部分が含まれていない。
  • 研究主任

    • 福岡小は教科担任制。だからできている部分もある。リレーション

今後の学校教育はどうあるべきか

  • 奈須

    • 次の指導要領は「多様性と包摂」がキーワードになってくる(中教審部会より)
    • 多様な子どもに応じていくだけではただのお客様になってしまう。包摂していくことが重要。
    • 1人1人が自立した学び手になっていくことが大切。いつか手を離れていく子どもたちは、コンピテンシーがあれば大丈夫。
    • 個別最適と協同はすこし具体的だったかもしれない。丁寧な育て方をするということ。
    • 子どもが自分で学習内容。方略を決めている。
  • 田村

    • 福岡小は背景にあるカリキュラムオーバーロードについて誠実に向き合っている。
    • 内容をどう見直していくか、という観点から福岡小の実践は貴重。
      • 横断することによって内容をコンパクトにできる
      • 最小公倍数ではなく最大公約数的な考えをするといいかもしれない
  • 石井

    • 真正な学びはインクルーシブな観点ももっている。ゴールが大きければ大きいほど多様性が増す。

    • テーマを軸にすると何を学んだかわかりづらい、逆に学んだことを軸にすると文脈が失われれる。

    • シンパシーではなくエンパシー。異質な他者だからこそ対話して理解していく。

    • カリキュラムを作ることは教師の学びである。