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小論文の詳細については[こちらのPDF](https://www.naist.jp/admission/exam/guidelines/files/youkou/2021/5.pdf#page=6)にて
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# 奈良先端大 適性審査 小論文 6

### 1. これまでの修学内容
　私は現在ヒューマンインターフェースの研究室で1行のみを表示する読書UIの効果を調べる研究をしている。UIデザインに興味があったためにこの研究テーマを指導教員に提案した。
　日本では2.5％の小中学生に難読症があると推定されており、リーディングトラッカーという読書補助器具の普及が進んでいる[1]。リーディングトラッカーは読書時に上下の行を隠し、読みたい行に視点を集中させることができるため、難読症の人には特に効果がある[1]が、効果に関する具体的な議論や報告はほとんどない[2]。一方で、中心窩以外の有効視野内に文字や文章がある場合には、読み速度や眼球運動を妨害することが知られている[3]。また、読んでいる行より先の行から情報を得られるかについて実験が行われたが実証されていない[4]。以上より1行のみを表示するリーディングトラッカーは読み速度の向上に効果があると考えた。従ってリーディングトラッカーを模した読書UIシステムをPCモニタ上に構築し、まず難読症ではない人を対象に読み速度向上の効果検証を行った。

　約1000文字の物語を8話用意し、被験者17名に読ませる実験を行った。図1のように、マウススクロールによって行を移動する方法（全体表示UI）と、リーディングトラッカーを模したキーボードの上下キーで一行ずつ読んでいく方法（一行表示UI）の2種類の読み方で1話ずつ読ませた。順序効果を考慮し、UIの順序と物語はランダムに変更する。被験者の疲労による影響をなくすため休憩時間を挟み、1被験者につき最大4回同じ実験を行った。実験時の視線移動と読み速度は解析ソフトTobiiと自作プログラムを用いて測定した。実験の結果、1文字あたりの読み速度の平均値は一行表示UIが90msec、全体表示UIが74msecであったが、t検定の結果、p値が0.077で有意な差は現れなかった。つまりこの実験では読み速度が向上する効果は認められなかったため、今後の課題である。被験者のデータを個別に見ると、一行表示UIの方が速く読める人と、全体表示UIの方が速く読める人に分かれていた。全体表示UIでは読み返しや読み飛ばしが視線の移動だけで行えることから、読み返しと読み飛ばしの多さが原因だと考えた。以上の点を明確にするために専攻科2年生もこの研究を続ける。
　高専本科5年生の時は別の研究室に所属していた。画像分類器構築サービスCustom Vision[5]を用いて、ユーザーが描いた車の絵に対して自動で前方へ進むアニメーションを自動付与するWebアプリを制作した。分類器で車の絵を学習させ、前方と後方の特徴を検出することで絵の中心から前方方向ベクトルを割り出した。そのベクトルに沿って車が進むアニメーションをWebアプリ上に実装した。
### 2. 取り組みたい研究分野・課題
　ソフトウェア工学研究室では、熟練者の開発手順分析とコーディングのスキルアップ手法の考案に取り組みたい。現在アルバイト等でWebサービスの設計を行ったり、レビューを受けたりしている。その実体験から開発経験の少ない者にとっては、コードの品質を上げるだけでなく、そもそも開発手順を考えることが難しいと痛感している。効率的で分かりやすい開発手順を辿るスキルの習得には時間と経験を要するものであるが、開発の現場では必要とされるスキルであるため、教育が必要不可欠である。熟練者の考え方やコーディングのコツを効率良く学ぶことができれば、開発経験の少ない者のスキル向上だけでなく、悩む時間や教える側の負担が軽減し、ソフトウェア開発全体の生産性の向上に繋がると私は考えている。
　私は実務経験から、熟練者の開発ノウハウはバージョン管理システムGitのコミットメッセージに現れるという仮説を立てた。この仮説の下では、熟練者のコミットメッセージを分析して得られる細かな設計手順のパターンに開発ノウハウが詰まっており、教育に活用できる可能性が高い。これらの分析した設計手順を分かりやすくまとめることができれば、開発経験の少ない者に対して順序立てて機能を作成するための開発サポートに応用できると考える。しかし、仮説の検証方法や開発手順のパターンの定義、分析した開発手順をどのように表示すれば開発経験の少ない者のサポートになるのかなどの課題が想定される。
　この研究に取り組みたい理由はプログラミング教育に興味があるからである。私は「楽しく学ぶ」をテーマに商品を作った関係で[6]、Gitに関する初心者向け技術本[7]を執筆したことがある。私が理解に苦労したポイントを踏まえて、デザインの経験を生かしイラストを交えながら丁寧に解説した。文系大学の学生にもわかりやすいと好評で、非常に嬉しく思った。後輩等にGitやJavaScriptを教える機会が増えたこともあり、プログラミング教育や学習ツールの作成に興味を持った。
　ソフトウェア工学研究室では、脳波計測やGitHubの活動履歴等を用いて開発者のスキルやソースコードの品質を上げるための研究が多く行われており、私の希望する研究テーマとの関連性が非常に高い。また、過去には新卒社員のコーディング研修や学生のプログラミング演習などに関わる研究が行われており、仮説の検証実験等を行う際に必要なリソースや研究ノウハウを多く持っている先生の指導を受けられるため、私はソフトウェア工学研究室を志望する。

文 献
1. 野口武悟(2019). 知って・使って・リーディングトラッカー　
2. 森田愛子・岡崎善弘(2011). 読み速度研究の現在 広島大学大学院教育学研究科紀要 第三部 第60号 137-146
3. 浅野倫子・横澤一彦(2006). 読みにおける有効視野内周辺部の寄与　基礎心理学研究 第25巻 第1号 p.148
4. The Use of Information Below Fixation in Reading and in Visual search | Alexander Pollatsek, Gary E. Raney, Linda Lagasse, and Keith Rayner | Canadian Journal of Experimental Psychology, 1993, 47:2, 179-200
5. Custom Vision | Microsoft Azure (2020/4/2 閲覧) https://azure.microsoft.com/ja-jp/services/cognitive-services/custom-vision-service/
6. プログラミング言語かるた, Gitコマンドかるた(2020/4/2 閲覧) https://booth.pm/ja/items/908770
7. Gitコマンドかるた 学習ガイドブック(2020/4/2 閲覧) https://booth.pm/ja/items/1031866