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Victrix Gambit アナログスティック交換

序論

アナログスティックに使われるスイッチ

ゲームパッドのアナログスティックに使われるスイッチは、ALPS 製のものか Favor Union 製のものに限られると考えてよい。ただし、ALPS 製スイッチについては、Amazon などで多くのコピー品を見つけることができる。
純正ゲームパッドで使われているスイッチに関しては、Amazon の ElecGear の商品ページの情報がわかりやすい。
https://amzn.to/3yyjxzp
なお、この部品は「ジョイスティックコントローラー」とも呼ばれるが、この文章においては、ゲームパッド本体を意味する「コントローラー」と区別するため、「アナログスティックスイッチ」と呼ぶことにする。
Victrix Gambit で使われているのは Favor Union 製スイッチである。

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左から、Favor Union 金属軸、Favor Union 樹脂軸、ALPS RKJXV122400R

アナログスティックスイッチの構造

アナログスティックスイッチは、中央のレバー部、その軸に取り付けられるポテンショメーター(可変抵抗)、押し込みのスイッチであるタクトスイッチの三つに分けて考えることができる。ポテンショメーターは取り外すことができ、ポテンショメーターのみを交換することも可能である。
なお、アナログスティックの不具合の多くはポテンショメーター部の不具合であり、ポテンショメーターを清掃するだけで問題が解決することもある。
アナログスティックスイッチには金属軸のものもあるが、多くは生産終了となっており、メインは樹脂軸である。純正ゲームパッドで採用しているスイッチも樹脂軸のものである。

ALPS スイッチ

多くの純正ゲームパッドが採用しているスイッチである。
メーカーが公表している情報は
https://go.alpsalpine.jp/l/506151/2020-05-11/37c888

https://tech.alpsalpine.com/prod/j/html/multicontrol/potentiometer/rkjxk/rkjxk_list.html
にあるが、純正ゲームパッドには専用のスイッチを使っているものもあり、メーカーカタログのものと完全に一致するとは限らない。
スイッチ底面のパターンには注意が必要である。RKJXV1224005 と後継品の RKJXV122400R には底面の樹脂部分に突起がある。基板にはこの突起の位置に穴が開いている必要がある。
ポテンショメーターは、緑か黒である。秋月電子通商で売られている RKJXV122400R のポテンショメーターは黒である。色の違いは性能の違いを意味するものではない。同じ緑でも 10kΩ のものと 2.1kΩ のものがある。
ALPS スイッチにはロック機構があり、上限まで倒すとその位置で固定される。ゲームパッドに取り付ける場合には、上限位置まで動作させないようにしてロックを防いでいる。Amazon にはロックすることを根拠に偽物としているレビューがあるが、ロックするのは正常な動作である。

Favor Union スイッチ

純正ゲームパッドでの採用例は少ない。ALPS スイッチとほぼ同じ外形であり、同じ基板パターンで Favor Union スイッチに置き換えることが可能になっている。
メーカーが公表している情報は
http://www.polyshine.cn/ProductDetail-336.html
にある。
底面は平らで、RKJXV122400R のような突起はない。
ポテンショメーターはオレンジである。

ALPS と Favor Union の比較

私の主観では、ALPS の方が若干軽く感じる。とくにセンター付近の動かしはじめの感触が軽い。
その結果として、センターがずれないのは Favor Union となる。ALPS はレバーを挟むように組まれている白色の樹脂部品がやや緩く、これによりセンターが若干不安定になることがある。ただし、これによりもたらされる不安定さは非常に微量であり、いわゆるスティックドリフトの原因となるものではない。スティックドリフトの多くは、汚れなどによってポテンショメーターの抵抗値が狂うことで生じる。
押し込みは、ALPS の方が明確に重い。好みの問題だろうし、ゲームによってはそもそも使わないだろう。私は背面ボタンにスティック押し込みを割り当てることが多い。
SONY も Microsoft も任天堂も ALPS スイッチを優先して使っている。ALPS を使うことにはそれなりの理由があると推測できる。

Victrix Gambit でしばしば発生する不具合

検索すると、左スティックの動作不良が多く見られる。私の場合も左スティックの動作不良で、最大限まで入力しているのに上限値で安定することがないというものである。ゲーム中だと、前方向に移動しているのに急に立ち止まることになる。
左スティックで多く問題が発生するのは、ほとんどのゲームで左スティックをより多く使うからであると思われる。多く使うことで不具合が発生するというのであれば、部品の耐久性、つまり使われている Favor Union 製スイッチの耐久性に問題があると推測できる。
Victrix Gambit の基板を確認すると、RKJXV122400R の底面の突起に相当する位置に穴が開いていることがわかる。基板を設計する段階では ALPS 製スイッチの採用が検討されていたということである。最終的に Favor Union を選択した理由は不明だが、ALPS を採用していたら多くの不具合は発生しなかったのではないだろうか。
RKJXV122400R は非常に入手難易度が低い。秋月電子通商に行くことが可能なら、店頭で1個単位で購入できる。そして、値段も安い。2022年5月時点で190円である。
https://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-15951/

交換作業の実際

https://youtu.be/MfpSlDOSy8A
秋月電子通商で ALPS スイッチを入手し、左スティックの Favor Union スイッチを換装することにした。
Victrix Gambit は非常に分解のしやすいゲームパッドである。隠しネジは一切なく、使われているネジも普通の+ネジである。
はんだごてと吸い取り線で部品を外す。使われているはんだは溶けにくいはんだなので、共晶はんだなどをなじませて溶けやすくして吸い取る。先に3か所のはんだで固定されているポテンショメーター部分だけを取り外すと作業がやりやすい。左アナログスティックの場合、同じ場所にトリガー用のスイッチもあるので、ヒートガンの使用は念のため避けた。
RKJXV122400R は、想定したとおり完全に基板のパターンに一致する。底面の突起も完全に嵌まる。基板から浮いてないことを確認しながらはんだづけして終了である。仮組みの段階で動作確認をしておくとよい。

交換後

キャリブレーション

ALPS スイッチは若干抵抗値の変動幅が狭めである。交換直後の状態では上限値までの入力ができない。そのため、キャリブレーションは必須である。専用ソフトウェアの Victrix Control Hub は簡単にキャリブレーションができ、アナログスティックをくるくる回していればすぐに終わる。

動作確認

https://gamepad-tester.com/ で動作を確認する。キャリブレーション後は、きちんと上限値まで入力される。

交換後の感想

2022年5月交換で、今(2023年11月)のところ非常に快適である。
デッドゾーンゼロ設定で Flight Simulator を遊んでも全く問題ない。
もし不具合が起きても、190円の部品代で簡単に交換できるのは安心である。
部品を交換する前提なら、Victrix Gambit は非常におすすめできるゲームパッドといえる。

タクトスイッチ故障

2023年9月になって LB のタクトスイッチが壊れた(チャタリング的な動作になった)
秋月電子通商で10円のスイッチを買ってきて交換。このゲームパッドは部品の交換が圧倒的に楽である。
LB が壊れた原因は、100時間を超える Sekiro 周回で弾きすぎたため。

RB 破損

2023年11月、RB の樹脂の付け根部分が割れた。修理不可能。構造的に寿命が短そうな部品である。Microsoft のコントローラーより、ずっと寿命は短いだろう。