# 人を動かす
## 2021/07/19 羽山
## 書籍情報
[人を動かす 文庫版 Ｄ・カーネギー (著), 山口 博 (翻訳)](https://www.amazon.co.jp/dp/B01ASX39NS/)

## どんな本？
- 1936年に初版が発売され版を重ねるごとに改訂を続けられた、デールカーネギーの没後もカーネギー協会によって1981年に改訂版が出版された。
- ベースの「教え」があって、その例となるエピソードが数多く紹介される形式。100通りの「北風と太陽」の話が紹介されているだけとも言える

## 参考にすべきトピック
### 二丁ピストルのクローレー
- 「針の先ほどのきっかけ」からでも簡単に人を殺す凶悪な犯罪者であるクローレーが電気椅子で処刑される瞬間に「自分の身を守っただけのことで、こんな目にあわされるんだ」と呟いた。
- シン・シン刑務所で、自分のことを悪人だと考えている受刑者はほとんどいない。
- これほどの凶悪犯罪者でも「自分が正しい」と考えているなら、一般人は自分のことを「悪い・間違っている」と考えるケースはほとんどない。
- 客観的に見て相手が間違っている状況でも本人はそう認識していないので、批判によって正そうとしてもうまくいかない

今現在は発刊当時よりも自己の客観視がしやすい状況になっているものの、ここで書かれている本質は変わらないと思われる。

### 人を非難するのは、ちょうど天に向かってつばをするようなもので、必ず我が身に返ってくる。
- 批判ではなにも解決しないこと、相手に対しても自身に対してデメリットしかないこと。

### 人を動かす秘訣は、間違いなく、一つしかないのである。すなわち、自ら動きたくなる気持ちを起こさせること
- 相手のことを考え、相手の立場に立った行動原理から気持ちを動かすこと

### しばらく自分のことを考えるのをやめ、他人の長所を考えてみることにしてはどうだろう。他人の長所がわかれば、見えすいた安っぽいお世辞などは使わなくても済むようになるはずだ。
- 本書ではお世辞の有害さについても説かれている。
- お世辞: 真実ではない、誰からも嫌われる
- 感嘆: 真実である。誰からも喜ばれる

### 私はイチゴミルクが大好物だが、魚は、どういうわけかミミズが好物だ。だから魚釣りをする場合、自分の好物のことは考えず、魚の好物のことを考える。イチゴミルクを餌に使わず、ミミズを針につけて魚の前に差し出し、「一つ、いかが」とやる。
- 相手の立場に立って考えることの重要性

### 人間の行動は、心の中の欲求から生まれる……だから、人を動かす最善の法は、まず、相手の心の中に強い欲求を起こさせることである。
- 人は他人の批判や強制からでは真に変わらない。自分から変える気持ちになってもらう

### 中国で百万人が餓死する大飢饉が起こっても、当人にとっては、自分の歯痛のほうがはるかに重大な事件なのだ。首にできたおできのほうが、アフリカで地震が四十回起こったよりも大きな関心事なのである。
- 人は誰しも自分自身について最大の興味を持っている。その相手を動かすためにはその人を理解してその人の行動原理を想像する必要がある。

### 議論に勝つ最善の方法は、この世にただ一つしかないという結論に達した。その方法とは──議論を避けることだった。
> 議論に勝つことは不可能だ。もし負ければ負けたのだし、たとえ勝ったにしても、やはり負けているのだ。

- 禅問答のように聞こえるが真理
- 「議論に負けても、その人の意見は変わらない」

### 市民たちが市長に面会を求めると、いつも秘書や役人たちが門前払いをする。市長は、この問題の解決策として、市長室のドアを取り外させた。これで、市長の真意が遠まわしに下僚に伝わり、市民に開かれた行政が実施されることになったのである。
- 門戸開放を目指した市長だが、部下が市長の忙しさから気を遣って市民からの面会を断ってしまう。
- 解決策として自然に状況を作ること。（河川の周辺に文明が起きるようなもの）

### もし、わずか十パーセントでも成功の確率を高めたとしたら、十パーセントだけ人を変える能力を高め得たことになる。
- 即座に現れる効果を期待するのではなく積み重ねが大切

## 所感
- 時間の流れに打ち勝っている書籍のため今後100年後でも有効な内容だと思える
- 内容をそのまま現代に置き換えれば良いかと言えばそうとも言えない、時代背景は考慮の必要がある
- 今よりも価値観の多様性が少なかった時代であることを考慮が必要、2021年に読むとそれほど革新的とは言えない
- 80年間の時代の流れに対してカーネギー氏の考え方や教えが正しかったのかを答え合わせをしながら読むことができる点で貴重
- 1936年の本書の教えを2021年で受け止めると当時からしたら先見性が見いだせるのと、両者に共通する部分は今後も長く生きるコアになりえる。※[山立て](http://www.turikichi.biz/2013/04/11/15650/)

## お勧め度（☆☆☆☆☆）
★★★★☆

人生経験が長い人は本書に書かれていることをすでに知っていそう、実践できているかどうかは別として。とはいえ生きた例を沢山紹介されるのは実践的で参考になるのでオススメ。
一方で若者はまだこういった原則を理解する前のステージだと思うので一読の価値あり。ひろゆき氏と対極にある本書は若者に不足しがちな栄養素として有効だと思われる。

## 質疑応答