# 菊と刀 > 降伏させられるのか?本土へのプロパガンダ方法は?戦後、日本の秩序はどう保つべきか?皇居は爆撃すべきか?日本人捕虜はどう行動するか? 日本人論/日本文化論 『文化の型』 「Japanese Behavior Patterns (『日本人の行動パターン』)」 行動パターン=文化 行動には「機能」があり文化も機能である なぜ市民革命が起きないか 精神論的「体育会的/筋肉的」 絶対的な価値観軸がない - 儒教/朱子学 - 神道・仏教 - 農耕民族 - 封建(武士)社会 - 地理 - 島国 - 災害が多い(壊れたら立て直せばいいプレハブ思想) ### 調査方法 - アメリカの日系人に面接する - 日本で生活したことのある欧米人に聞く - 日本人をテーマとする文献を読む->予備知識が欠けているが故に理解できない事柄に注意を払った - 日本で製作された映画を日系人と一緒に見た ## 階層的な上下関係に対する信仰 > 日本人の不幸の原因は中国から伝わる儒教・朱子学の思想にある 先輩〜後輩〜上司部下などの絶対的な上下関係は儒教によるもの 「動」よりも「静」を美徳とする思想 自由と平等とは対局 「応分の場」 ## 日本人の行動は「義理・恥・恩」がドライバーとなっている ### 2種類の「恩」が行動規範・原理になっている **恩1** 天皇陛下や両親に対する恩(忠・孝). 無制限, 無際限. **恩2** 金銭の貸し借りのような恩. それをいかに返すかが大切. 日本の「恩」とは与えられたことにたいする同量またはそれ以上の「強制された感謝」である。一方的に与えられて、一方的な債務を履行しなければならない「義理」が発生する。 → 庶民が好んで築き上げた文化ではなく、封建社会が強制した文化 → 御恩と奉公、鶴の恩返し、報恩、我が師の恩、親の恩、一宿一飯の恩義、恩に着る、恩着せにする、恩知らず、恩返し、恩を仇で返す、謝恩会 #### 恩返しとしての孝と忠 忠や孝は、尊敬すべき対象に従うという意味であり、何らかの論理的な主義主張ではない。「尊敬すべき対象」という他者が介在するために、日本人の主義主張はその他者に応じて変化するものだ(あれだけ徹底抗戦を叫んでいた日本人が敗戦と同時に従順になったのは、忠の対象である天皇陛下が終戦を宣言したからである) #### obligation/duty > も義務という点では同じであるが、dutyが自らの意志で果たす義務に対して、obligationは他から強制されてはたす義務である。国民の納税義務はobligationにあたる。日本人が他人から恩を受けるとその恩に報いなければならない義理という報いるべき義務が発生するので、「有難迷惑」を警戒して、簡単に人の世話になることは警戒する。欧米人は、恩に対する義理は感じないが、自らの意志のdutyとして「借り」を返すことはある。しかし、好意に対して恩義を背負うことはない。 #### 夏目漱石の小説「坊ちゃん」 > 腹黒い教頭赤シャツに坊ちゃんが、山嵐が坊ちゃんの悪口をを言ったと告げ口され、山嵐に一銭五厘の氷水をおごってもらったことのある恩義が夜も眠れず気になり始めるのである。裏表のある詐欺師に恩義があったのでは一生悔いが残るというのである。数セント程度が一生の問題となるのが日本人の恩と義理、すなわち「恩義」なのである。 #### 例 > 本来は相互扶助の一環として、慈しみの心(仁)をもって義理を果たすことを「仁義を守る」というが、いつの間にか過大な負担に感じるだけの義務であることが多い。田舎の家には、常に「ご仏前」、「お祝い」の熨斗袋類を常備し、仁義倒れすると内心悲鳴を上げている。これらの根底にあるのが、義理を欠くと何を言われるかわからないと、他人の目を恐れるからである。他人の目が個人の行動を左右する自由のなさの裏返しが日本人の恩義であり仁義なのである。お上に決めてもらう、集団の意思に従う、みんながやることに倣う。隣がテレビを買ったからうちも買うのである。日本で自由という言葉を初めて使ったのは福沢諭吉だろう。福沢は日本人に独立自尊を説いたが、自由という概念を初めて聞く者には独立自尊とは、己独り自らに由って立てと訴えたのである。 ### 「無我」「死んだつもりになって生きる」 仏教的(禅) ### 行動を律するもの 日本人:「**恥**の意識」 西洋(キリスト)人:「**罪**の意識」 人間の中心は善. ただしその周りに煩悩があり, 行動は煩悩を通じて現れる. その煩悩を制御するのは「他人からどう見られるか」という相対的な「恥の意識」である. 対称的に西洋人は絶対的な罪の意識が行動を規定する > 日本人が敗戦を受け入れ、何なら米兵を笑顔で迎え入れた理由は、 > ①終戦を天皇陛下が決めたから > ②敗戦を認めることが名誉を保つ唯一の手段だから > である。 二元論(?)的 > 「死んだつもりになって生きる」というフレーズに対する捉え方は、欧米と日本で大きく異なる。 > > 欧米→人間の自我が滅び、この世の足手まといになる死体を残したということ。不快な表現。 > > 日本→自己観察を一切やめて、不安と警戒心悉く取り払う。行動について思い煩う必要を超越する。悟った人が行きつける境地、というポジティブな表現。 ## 『日本人は集団主義的』という通説は誤り **『「集団主義」という錯覚 ― 日本人論の思い違いとその由来』** 高野陽太郎 https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/p01_200930.html > - 集団主義・個人主義の程度を測定するための調査研究が11件 > - 自分の意見を曲げて集団の意見に従うという「同調行動」に関する実験研究が(高野自身の研究も含めて)5件 > - 自分の利益を犠牲にしてでも集団に献身するという「協力行動」に関する実験研究が6件 > 通説に反して「日本人とアメリカ人とのあいだには明確な差はない」という結果を報告していた研究が16件, 通説とは正反対に「アメリカ人の方が日本人より集団主義的」という結果を報告していた研究が5件もあった. 一方, 通説どおり「日本人はアメリカ人より集団主義的」という結果を報告していた研究は, わずか1件(調査研究)しかなかった #### 『日本語から見た日本人―主体性の言語学 (開拓社言語・文化選書)』 廣瀬幸生/長谷川葉子著 > 日本語は「他者とは明確に切り離された自己」の存在を示している >「私は寒い」という文の中の心理述語「寒い」は, 話し手の心理状態を表すために用いられるが, 同じ内集団に属する他者の心理状態を表すために用いることはできない. たとえば, 「母は寒い」とは言えない. 日本語は, 内集団の中でも自己と他者を明確に区別する特性を備えているのである. #### 教育学 「いじめ」は欧米でも発生している #### 経済学 - 小池和男「「終身雇用」や「年功賃金」が事実ではない、あるいは、欧米諸国とのあいだに明確な差異がない」 - 三輪芳朗/マーク・ラムザイヤー 「「系列」にはまったく実体がなかったことを明らかにした/国内産業を保護するために政府が設定する関税率を比較したところ、歴史的にみると、日本よりアメリカの方がずっと高かったことも判明」 #### エピソード - 「個人主義的な日本人」や「集団主義的なアメリカ人」を表すエピソードも多数見つかる #### 過去の日本人 - 「学校紛擾」 #### オリエンタリズムとしての「日本人 = 集団主義」説 欧米人によるレッテル貼 #### 「日本人 = 集団主義」説が広まった理由 戦時中「対応バイアス」 #### 文化ステレオタイプ 「文化差」の危険性