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Interactive Music: ビデオゲームにおけるオーディオ演出

この記事はデジクリアドベントカレンダー11日目の記事です。
こんにちは。石田です。

いわゆる「インタラクティブミュージック」に関して、どのように解釈するのが妥当か検討する記事となっています。

はじめに

「インタラクティブミュージック」と聞いて、どのようなものを想起するでしょうか。ミュージックという言葉から音楽(≒楽曲)に関連する何かしらの言葉である、ということは想像できると思います。では、インタラクティブとは何でしょうか。Interactiveの日本語訳では「相互に作用するもの」とされます。では「相互に作用する音楽」という意味となります。私はこの「相互に作用する音楽」という言葉だけでは理解できなかったので、この記事ではインタラクティブミュージックはどのようなものか、具体例と共に実際に考えていこうとおもいます。

インタラクティブミュージックの仮定

本記事において、インタラクティブミュージックとは、ビデオゲーム作品におけるインタラクティブなオーディオ演出 と仮定します。オーディオ演出という言葉に言い換えている理由ですが、たいていのビデオゲーム作品では楽曲(BGM)の変化のみならず、効果音(サウンドエフェクト)の変化も行っているためです。

ビデオゲーム作品の定義

また、同時にビデオゲーム作品という言葉の定義もします。
松永伸司さんによる著書『ビデオゲームの美学』にならい、ビデオゲーム作品を以下のように定義されたものとして扱います。

ビデオゲーム作品とは、(1)視覚的デジタル媒体を通して実現される人工物であり、かつ、(2)娯楽的に、あるいは、芸術的に受容されることを意図された(あるいは慣習的にそのようなものとして見なされている)ものであり、かつ、(3)その需要のあり方が以下のいずれかであるように意図された(あるいは慣習的にそのようなものとして見なされている)ものである。(3a)ゲームのプレイ、(3b)インタラクティブなフィクションの受容、(3c)シミュレーションの受容
松永伸司. 2018.『ビデオゲームの美学』慶応義塾大学出版会. 34-35貢.

※余談となりますが, 『ビデオゲームの美学』、大変良著なので是非読んでください。是非。

インタラクティブの定義

さらに、インタラクティブとは何か、とりわけ、インタラクティブな芸術作品とは何かを定義する。こちらも『ビデオゲームの美学』に則り、フロムの定義とスマッツの定義を支持し、「インタラクティブ」を以下のように定義します。

あるものは以下のとき、またそのときに限り、インタラクティブである。(a)それが反応を示すものであり、(b)(相手を)完全にコントロールするものではなく、©(相手によって)完全にコントロールされるものでもなく、そして、(d)完全にランダムな仕方では反応しないときに、(1)その需要者が、自身が関わりあっている芸術作品の美的構造を変化させることができ、かつ、(2)その受容者がその作者によって意図された仕方でその芸術作品の美的構造を変化させることができ、かつ、(3)その需要者が(1), (2)の両方に自覚的であるとき。

具体的なインタラクティブミュージックの紹介

さて、必要となる言葉の定義が終わったので、インタラクティブミュージックの具体例に移ります。

まず、インタラクティブミュージックについて、どのように解釈することで理解につながりやすいかという点に関して説明します。プレイ中の音楽の変化を指す場合、大きく分けて、以下の2つに分類できます。

  1. 音楽のアレンジの変化 (縦の遷移)
  2. 音楽の展開の変化 (横の遷移)

このような縦の遷移、横の遷移に関する詳しい説明はFFXVのサウンドエンジン「MAGI」の開発者であるじーくどらむす氏の連載が大変素晴らしいので、是非読んでみてください。また、CEDEC+KYUSHU2019の登壇の際の資料も素晴らしいので是非併せて読んでみてください。

ゲーム音楽演出を進化させる「インタラクティブミュージック」と「音楽的ゲームデザイン」
{https://www.slideshare.net/geekdrums/ss-196989931}

縦の遷移、横の遷移の他にも楽曲の再生と効果音の再生を同期させるような演出もインタラクティブミュージックと呼ばれます。

ゲーム音楽って面白いんです!
http://techblog.sega.jp/entry/2018/09/25/100000
PSO2 SYMPATHYシステム リングの同期
https://www.youtube.com/watch?v=1s3unK5i3D0

また、縦の遷移であるが、トラック数(鳴らす楽器の数)を増減させるという変化ではなく、トラックにエフェクトをかけることで変化を与える演出も存在する。

例えば NieR:Automataでは、ハッキングの際に楽曲を変化させる演出がある。この際、現在流れている楽曲に対応する8bitバージョンの楽曲が存在する場合と存在しない場合とで変化の方法を変えている。
8bitバージョンが存在する場合、演算を挟みながら8bitバージョンへ遷移する

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8bitバージョンが存在しない場合、演算とオリジナルバージョンを混ぜている。
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ゲームメカニクスとしてのインタラクティブミュージック

ここまで紹介した内容はビデオゲーム作品におけるフィクションとして、行動や状態に応じて楽曲や効果音が変化するインタラクティブミュージックです。つまり、フィードバックの演出の1つとして用いられているものです。この他にもゲームメカニクスへ強く影響するインタラクティブミュージックもあります。

WarframeのOctaviaでは、用意されたフレームワークを用いて4小節のループを作成します。作成した楽曲のノートの配置に応じて行動する事でスキルの効果が発揮されるというゲームメカニクスになっています。

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結局、インタラクティブミュージックとは何なのか

さて、インタラクティブミュージックの仮置き、「ビデオゲーム作品におけるインタラクティブなオーディオ演出」が適切なものか再度検討します。

まず、インタラクティブとは簡単に言うと自覚したうえで関わりあっている美的構造を変化させることが可能であり、その作者によって意図された仕方の範囲内で変化することでした。このことから考えると、インタラクティブなオーディオ演出という仮定は誤りだと考えられます。なぜなら、受容者はあくまでビデオゲーム作品をプレイすることが目的(プレイすることに関して自覚的)でありインタラクティブにオーディオ演出を変化させることが目的ではなく、オーディオ演出の変化に関してその受容者(プレイヤー)が自覚的でなくても、ビデオゲーム作品における状態や行動に応じたオーディオ演出はたいていインタラクティブミュージックとされるからです。
この点に注意してインタラクティブミュージックを再度、検討すると、ビデオゲーム作品が持つインタラクティブ性に付随する演出の一つとして、オーディオを変化させていると考えられます。

つまり、インタラクティブミュージックとは、ビデオゲーム作品が持つインタラクティブ性に応じて、オーディオが変化する演出である。という解釈が妥当だと考えます。

おわりに

さて、ここまででインタラクティブミュージックとは何なのかを自分なりに捉えることができるようになったので記事は終了となります。

最後に、インタラクティブミュージックを「どうやって実装するのか」「どうやって設計するのか」に関して、前者は紹介と後者はちょっとした自論を述べて記事をしめようと思います。

「どうやって実装するのか」ですが一般に、サウンドミドルウェアを用いて実装されています。
CRI ADX2, Audiokinetic Wwiseといったものがありますのでそちらを参考にしてみてください。

「どうやって設計するのか」に関しては、先ほどの解釈から、ビデオゲーム作品が持つインタラクティブ性を基に設計しなければならないことが考えられます。つまり、ゲームデザインを基にインタラクティブミュージックという演出を用いるのが適切か検討を行うはずなので、インタラクティブミュージックが先行してゲームをデザインすることは困難だと思われます。
(あくまでインタラクティブミュージックを先行させたデザインが困難というだけで、音楽のムードや, 音楽の展開に沿ってビジュアルやストーリーをデザインすることは否定しませんし、オーディオ先行によるビデオゲームの開発に関してはむしろ指示しています。)
あと、最近はこういう背景から、ビデオゲームのデザインについてたくさん気になる点があるので、いつかゲームデザインについても記事するなりどこかで発表するなりして、議論したいなあとふわふわ考えています。フィクションやナラティブについて大変気になっているので。

さて、長くなってしまった。こんなインタラクティブミュージックあったよとか、インタラクティブミュージックに似ている概念がビジュアルにもあるよとか、ゲームデザインならこの本おすすめだよとかあったら教えてください。私はゲームデザインバイブルをおすすめしておきますね。(多少日本語訳について物議を醸しておりますが)

というわけで、デジクリアドベントカレンダー11日目の記事でした。
あした12日は河野くんの記事です。音楽という点で少し似ているかも?それでは。