ここではUDデジタル教科書体の筆順フォントについてまとめてみます。
筆順フォントを理解するには、常用漢字と教育漢字の知識が前提になります。
筆順フォントにある漢字は、義務教育(小中学校)で習う漢字のみです。
義務教育で習う漢字は、常用漢字のみとされています。
小学校で習う漢字は、文部科学省の「学年別漢字配当表」に記載されています。通称で教育漢字と呼ばれています。UDデジタル教科書体の筆順フォントでは、ウェイト名「E12」「E34」「E56」が小学校用です。数字は学年です。
中学校で習う漢字は、とくに決められていません。義務教育で習う漢字は常用漢字なので、UDデジタル教科書体の筆順フォントでは「小学校で習う漢字(教育漢字)以外のすべての常用漢字」を中学校用としています。ウェイト名「J1」「J2」「J3」がそれに当たります。数字は学年ではなく、便宜上3つに分けてあるだけです。
常用漢字は2010年に改訂されています。UDデジタル教科書体とその筆順フォントはこの改訂に基づいています。例えば、「葛󠄀」ではなく「葛󠄁」、「叱」ではなく「𠮟」なのは、この改訂の影響です。
学年別漢字配当表は、2017年に改訂され、2018年度と2019年度を移行措置期間とし、2020年度に完全施行されました。小学校4~6年の漢字に影響がありました。UDデジタル教科書体とその筆順フォントはこの改訂に基づいています。
UDデジタル教科書体の筆順フォントのTrueType版は「MORISAWA BIZ+」で使用できるフォントです。主に教育関係者が教材を作成するときに使われると考えられます。
Aタイプ 書き順を一画ずつ順番に表示 |
Bタイプ 書き順を一画ずつ順番に追加して表示 |
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小学校 | UD 筆順A E12 UD 筆順A E34 UD 筆順A E56 |
UD 筆順B E12 UD 筆順B E34 UD 筆順B E56 |
中学校 | UD 筆順A J1 UD 筆順A J2 UD 筆順A J3 |
UD 筆順B J1 UD 筆順B J2 UD 筆順B J3 |
UDデジタル教科書体の筆順フォントのOpenType版は「Morisawa Fonts」で使用できるフォントです。主にDTPで学参などを作成するときに使われると考えられます。
Aタイプ 書き順を一画ずつ順番に表示 |
Bタイプ 書き順を一画ずつ順番に追加して表示 |
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小学校 | UD 筆順A Std E12 UD 筆順A Std E34 UD 筆順A Std E56 |
UD 筆順B Std E12 UD 筆順B Std E34 UD 筆順B Std E56 |
中学校 | UD 筆順A StdN J1 UD 筆順A StdN J2 UD 筆順A StdN J3 |
UD 筆順B StdN J1 UD 筆順B StdN J2 UD 筆順B StdN J3 |
TrueType版とOpenType版は、収録文字、筆順文字に違いはありません。品質も同等なので、どちらを使っても全く問題はありません。
OpenType版はAdobe-Japan1-3で、小学校用はStd、中学校用はStdNと区別されています。中学校用がN付きなのは、常用漢字の改訂で中学校用の漢字の一部がJIS04字形であるためです。
この3文字は、UDデジタル教科書体ではデフォルトグリフが1点之繞です。常用漢字表の例示字形は2点之繞ですが、許容字体として1点之繞が併記されており、UDデジタル教科書体は1点之繞をデフォルトにしています。筆順フォントには1点之繞と2点之繞の両方が収録されており、使い分けが可能です。
この2文字の食偏は、UDデジタル教科書体ではデフォルトグリフが「𩙿」です。常用漢字表の例示字形も「𩙿」ですが、許容字体として「飠」が併記されており、筆順フォントには「𩙿」「飠」の両方が収録され、使い分けが可能です。
この20文字は、学年別漢字配当表の改訂で、教育漢字に都道府県用の文字をすべて収録するため新しく小学校4年に追加されたものです。改訂前は中学校で習う漢字であり、UDデジタル教科書体の筆順フォントでは小学校4年用と中学校用の両方に収録されています。
Ten Aさんが開発した「筆順変換ユーティリティー」は、UDデジタル教科書体の筆順フォントの文字をWebブラウザで簡単に検索できるツールです。
筆順フォントの文字は、探すのに手間がかかります。このツールは、教育関係者が教材作成時に筆順文字を効率よく得られるように設計されています。
PCにTrueType版がインストールされていれば、そのフォント(Bタイプ)で筆順文字が表示されます。OpenType版では表示されませんが、筆順文字自体は同一なので問題なく利用できます。
このツールは単一のHTMLファイルだけでできており、ローカル環境にダウンロードしてもすぐに利用できるように配慮されています。さらに、漢字の異体字や重複も並べて表示され、ボタンを押すだけで簡単に切り替えられる機能も備えています。
詳細:筆順変換ユーティリティー