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tags: TrRun2
id: ProbCHL-B04.md
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$\newcommand{\In}{\mbox{ in }}%
\newcommand{\On}{\mbox{ on }}%
\newcommand{\Iff}{\Leftrightarrow}%
\newcommand{\To}{\Rightarrow}%
\newcommand{\cat}[1]{\mathcal{#1}}%
\newcommand{\R}{ {\bf R} }%
\newcommand{\Set}{ {\bf Set}}%
\newcommand{\WeWillDefine}{\mbox{WeWillDefine }}%
\newcommand{\WeDefine}{\mbox{WeDefine }}%
\newcommand{\For}{\mbox{For }}%
\newcommand{\conc}{\mathop {\#}}%
\newcommand{\If}{\mbox{if }}%
\newcommand{\Then}{\mbox{ then }}%
\newcommand{\Else}{\mbox{ else }}$
# 檜山トレラン2 B04 数理科学のコミュニケーション
数理科学〈STEM \| Science, Technology, Engineering and Mathematics〉におけるコミュニケーションの形態・構造
```graphviz
digraph {
subgraph cluster_0 {
label="コミュニティと文化〈スタイル | フレーバー〉"
content1[label="概念的\n内容"]
content2[label="概念的\n内容"]
repr[label="表現\n(主にテキスト)"]
content1 -> content2 [label="伝達", style=dotted]
content1 -> repr [label="記述\n書き下し\nエンコード"]
repr -> content2 [label="解釈\n読み解き\nデコード"]
}
}
```
コミュニティ〈分野〉ごとに、記述/表現/解釈の方法は違う。専門性が高くなるほどにコミュニティは細分化され、小さなコミュニティと方言〈ジャーゴン〉の数は膨大になる。
我々は、必然的に==多言語・多文化コミュニケーション==を強いられる。語学(方言の学習)と社会学(文化・習慣の学習)が必要になる。
十分に抽象化された概念的内容は、表現の多様性に比べれば==極めて少数==である。少数の概念的内容を多数の表現により語っている。したがって、単一の同じ概念的内容に対して、==実にたくさん==の語り方がある。
表現の多様性に慣れるためのトレーニングは:
- [基本スキルの確認と練習](https://m-hiyama-second.hatenablog.com/entry/2019/11/17/134521)
### 追記: 語学的障害
語学(用語と記法の約束)に起因するコミュニケーション上の障害・困難を<strong style="color:crimson">語学的障害</strong>と呼ぶことにする。具体的には:
1. 用語の国語辞書的意味と形式的な定義があまりにもかけ離れている。ときに真逆。例:「確率変数」「三角関数」
2. 用語の国語辞書的意味を拡大解釈/抽象化しすぎていて違和感を抱く。例:「n次元キューブ」「n次元球面」「チャンネル(マルコフ核と同義)」
3. 用語・記法のデキが悪すぎる、意図が不明すぎる。例: カン拡張の Ran, Lan(ダジャレから、日本人は発音にも困る)
4. 記号が、手描きやテキストエディタ入力が困難。例: アレフא、メムמ(ヘブライ文字)。ベキ集合のペー𝔓(ドイツ花文字〈フラクトゥール〉)。
5. 用語・記法の運用に関して、誤解・混乱をまねくような悪習が蔓延〈はびこ〉っている。「[B03 悪習と戦い、そして抱きしめる](https://hackmd.io/@m-hiyama/Hyj1vn1eO)」参照。
6. テキスト記法と図式で左右が逆。[左右盲](https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1906/08/news007.html)の檜山には辛い。
多数のコミュニティごとに別言語(用語・記法の語彙と文法)でコミュニケーションしていることは、多言語習得の労力・負担を強いることになるのだが、これは諦めるしかない。次の記事に「諦める心得」が書いてある。
- [焼畑農業式コミュニケーション](https://m-hiyama-memo.hatenablog.com/entry/2020/03/09/171747)
専門用語・記法の体系が不適切・不合理であることが語学的障害の原因だが、個人の問題と社会の問題もある。
- 個人の問題: 国語辞書的な意味に執着する。語源やエピソードなどを要求する。形式的定義を覚えない。
- 社会の問題: “教育的配慮”の名目で国語辞書的な意味を優先する。形式的な定義をないがしろにする。
専門用語としての形式的定義を覚えたら覚えたで、特定の専門用語の辞書(語と意味の対応)にまた執着する傾向はある。多かれ少なかれ、誰もが==辞書執着症==を持っているのだろう。多言語・多文化環境は“群れる動物の本能”と対立するように思える。
### 追記: それは命題の真偽の問題ではない
命題の論理的真偽の話と、言葉使いの日常的・国語的な習慣・お作法を守るかどうかが混同されている。日常語と専門語の違いへの無頓着、構文(文言の字面)と意味の混同もある。
1. TTYさん情報: 問題:次の式のなかから多項式を選べ。(単項式を選ぶとバツ)
2. TKICさん情報: 問題:「駐車場や車庫などの出入口から5メートル以内の場所には駐車をしてはならない」は正しいか?(マチガイ、なぜなら「5メートル」ではなくて「3メートル」だから)
3. 問題: 関数 $f(x) = 1/(x - 1)(x - 2)$ の定義域を求めよ。($\{x\in {\bf R}\mid x \ge 10\}$ と答えるとバツ)(「域」、「定義域」の言葉の問題もある)
4. <https://twitter.com/Yuryu/status/1356780800860016643> より引用
> はてぶで「ソフトウェアエンジニアなのにエンジニアと略すな」といっぱい書かれてしまいましたが、ソフトウェアエンジニアはエンジニアの一種なので、「私がエンジニアになった」は間違っていないと思います。傲慢だとか言われる筋合い無いです。
### 事例 1 引き戻し
$\require{AMScd}
\begin{CD}
\{0, 1\} @= \{0, 1\} \\
@A{?}AA @AA{p}A \\
X @>{f}>> Y
\end{CD}\\
\In \Set$
上の図式を可換にする“?”をどう書くか?
$f^\ast(p) = f^\ll(p) = f \ll p := f;p = p\circ f$
左から順に:
1. 一般的・汎用的な引き戻し記法
2. 引き戻しに上付き $\ll$、前送りに下付き $\gg$
3. $\ll$ を中置演算子として使う(ジェイコブス達、プログラミング言語想定)
4. 結合〈合成〉の図式順記法
4. 結合〈合成〉の反図式順記法
### 事例 2 ラムダ記法
#### $\lambda$スタイルのラムダ記法
オリジナルの型付きラムダ記法
1. $\lambda\, x\in X.(E \,\in Y)$ Eは何らかの式
1. $\lambda\, x\in X.(E )$ 余域を省略
1. $\lambda\, x\in X.E$ 余域と括弧を省略
1. $\lambda\, x.(E \,\in Y)$ 域を省略
1. $\lambda\, x.(E )$ 域と余域を省略
1. $\lambda\, x.E$ 域と余域と括弧を省略 例:$\lambda\, x.x^2$
$\in$ の代わりにコロンもよく使われる。
- $\lambda\, x : X.(E \,: Y)$
#### アロースタイルのラムダ記法
アロー式〈arrow expression〉、アロー項〈arrow term〉と呼ばれる。
1. $(x\in X \mapsto E \,\in Y)$
1. $(x\in X \mapsto E)$ 余域を省略
1. $(x \mapsto E)$ 域、余域を省略 例:$(x \mapsto x^2)$
アローのバリエーション
1. $(x\in X \to E \,\in Y)$
1. $(x\in X \To E \,\in Y)$
1. $(x\in X \vdash E \,\in Y)$
囲み括弧のバリエーション
1. $[x\in X \mapsto E \,\in Y]$
1. $\langle x\in X \mapsto E \,\in Y \rangle$
1. $x\in X \mapsto E \,\in Y$ 括弧無し
見栄えをよくするためのバリエーション
- $(X\ni\, x \mapsto E \,\in Y)$
混合変形したスタイル
- $\lambda\, (x : X) : Y \To E$
ギリシャ文字の代わりにキーワードを使う(主にプログラミング言語)
- $lambda\, (x : X) : Y \To E$
- $fun\, (x : X) : Y \To E$ 例:$fun\, (x : Real) :Real \To x^2$
#### 囲みとスクリプトスタイルのラムダ記法
1. $(E\,\in Y)_{x\in X}$
1. $(E)_{x\in X}$ 余域を省略
1. $(E)_{x}$ 域と余域を省略 例:$(x^2)_{x}$
1. $(E)$ ラムダ変数〈束縛変数〉と域と余域を省略(式と括弧のみ)
1. $E$ 括弧とラムダ変数〈束縛変数〉と域と余域を省略(式のみ) 例:$x^2$
==何もかも省略してしまった形==(究極に横着な形式、もはやラムダ記法とは言えない)が最もよく使われている。
囲み括弧のバリエーション
1. $[E\,\in Y]_{x\in X}$
1. $\langle E\,\in Y \rangle_{x\in X}$
上付きもあり得る。
1. $(E\,\in Y)^{x\in X}$
1. $[E\,\in Y]^{x\in X}$
1. $\langle E\,\in Y \rangle^{x\in X}$