--- tags: TrRun4 id: Theo-E05_wording.md --- # 檜山トレラン4 E05 基本用語 刷り込み回避バージョン マクラ用小ネタではないが、冒頭でやる話題。今後使う用語の非形式的解説。最重要な用語。 まとめが [D02 セオリー論の重要概念 まとめ](https://hackmd.io/@m-hiyama/rJuObkBRY) にある。 --- 圏論を多少なりとも真面目にやると、早晩高次圏との遭遇は避けられない。圏の圏は2-圏だし、順序を扱う状況でも2-圏に出会う。 ==集合圏刷り込み==(固定観念、先入観、間違った思い込み)があると、一般的な圏論の学習の障害になる。同様に、通常圏=1-圏 の==刷り込み==があると高次圏の学習が困難になる。早い段階で高次圏も一緒に学習するのが得策。なので、今クール・セミナーでは高次圏も積極的に取り入れる。 既に==1-圏刷り込み==があるだろうから、用語法・記法の工夫で出来るだけ刷り込みの影響を回避したい。あるいは新たな刷り込みをしないように注意したい。 以下の用語がカタカナ語ばかりなのは不本意だが、翻訳語がなかったり、日本語の言霊が懸念されるから。 ## 次元ごとの概念 セオリー論(檜山のローカル用語では**ドミニオン論**)で使うn-圏関連概念・用語を非形式的に導入する。(形式的導入はいずれ。) [A00 導入 // 具体的な目標](https://hackmd.io/@m-hiyama/BJYkXGAKY#%E5%85%B7%E4%BD%93%E7%9A%84%E3%81%AA%E7%9B%AE%E6%A8%99) より: > スキルとしては、指標を使いこなせるようになるのが目標。 > … > セオリー/セオリーフレームワークの一般論の話は今日(ガイダンス回)が一番多いかも知れない。一般論の追求は目的にしない。事例中心。 セオリー論を知識として学習するというより、セオリー論を==道具・武器として使いこなせる==のが目的。剣と盾が道具・武器の象徴↓ ![fighting-arms.jpg](http://www.chimaira.org/img-sem/fighting-arms.jpg) <https://www.amazon.co.jp/dp/B07FZVP67W> コスプレ用商品 nは圏の<strong style="color:crimson">次元</strong>〈dimension〉を表すとして、n = 0, 1, 2 だけ考える。n-圏の射の次元kは、 0 ≦ k ≦ n + 1 に制限される。n が付く概念は: 1. n-圏 → [A01 描画法と高次圏](https://hackmd.io/@m-hiyama/rJzJZgJiY)、[B01 高次圏の補遺](https://hackmd.io/@m-hiyama/BkOz1vYit)、[等式的推論と高次圏論](https://m-hiyama.hatenablog.com/entry/2021/12/30/135109) 1. n-指標 → [A02 指標](https://hackmd.io/@m-hiyama/Hktz1p2qt) 1. n-モデル → 今後 1. n-{構成}?手続き → 今後(coming soon) n ごとに k (0 ≦ k ≦ n + 1)が付く概念は: 1. k-射 (n-圏のk-射) 1. k-シング (n-圏のk-シング) 1. k-ラベル (n-指標のk-ラベル) 1. k-コンビネーション (n-指標のk-コンビネーション) 1. k-プロファイル (n-指標のk-プロファイル) ## コメンタリー 特に注釈が必要そうな言葉を取り上げて補足: ### シング 形式的には、k-シングとk-射は==完全に同義語==。形式的には、「シング〈thing〉」なんて変な言葉を導入する意味はない。 が、==1-圏刷り込み==があると、「射」でイメージするのは1-射だけだろう。0-圏の0-射は集合の要素だし、集合の要素は1-圏の特別な1-射でもあるし、1-圏の2-射は1-射の等式だし、“圏達の2-圏”の0-射は圏になる。**要素**、**値**、**命題〈述語〉**、**等式**、**不等式**、**圏**、**関手**、**自然変換**なども、==すべて“射”== になる。なんでも“射”だと言える。 こういう「**なんでもあり**」の「射」の用法に慣れてない人のために、あえて<strong style="color:crimson">シング</strong>〈thing〉を導入した。英文内での使用は無理そうだが、日本語内でカタカナ書きすればテクニカルタームだと分かる。 ==語学的注意:== stuff(staffではない!)は、英語文脈内でもテクニカルタームに使えそうだ(使ってる例もある)が、構成素の意味でstuffが使われることが多いので、単なる「モノ」じゃなくて「構造物の部品としてのモノ」と解釈されそう。 ### ラベル <strong style="color:crimson">ラベル</strong>〈label〉は、記号〈シンボル〉、文字〈字 \| レター〉、識別子、不定元、プレースホルダーなどとも呼ばれる構文的対象物で、シングを名指す目的で準備された名前である。名前=ラベル の実体は単に集合の要素、人が目で読める綴りを持つ必要などない。 k-シングをネーミングするためのラベル〈名前〉がk-ラベル。k-ラベルによって名指されている対象物であるk-シングを、ラベルの<strong style="color:crimson">デノテーション</strong>〈denotation〉または<strong style="color:crimson">レファレント</strong>〈referent〉という。 ラベルとラベルのデノテーションを混同する、あるいは、そもそもラベルとそのデノテーションの区別が出来ない人は多いが、==ラベルとデノテーションの区別==は [ドライ&クリア](https://hackmd.io/@m-hiyama/ByI-9Z22F) の出発点。 例文: - 長いは短い。 - 大きいは別に大きくない。 - <span style="font-size:x-large">小さい</span>は大きい。 - 「そのXはなんですか?」「Xはエックスだが」 - 「山田は8画だ」「山田は身長172cmだ」 ### コンビネーション <strong style="color:crimson">コンビネーション</strong>〈combination〉は、通常は式〈expression \| formula〉とか項〈term〉と呼ぶ。が、式/項の用法は安定してない。それと、式/項はテキスト表現の意味が強く、ペースティング図やストリング図を式/項とは(ほとんど)呼ばない。 コンビネーションはラベルを含む記号的表現のことだが、テキストである必要はない。==グラフィカルな表現でもよい。== つうか、グラフィカルが多いかな。 コンビネーションは、テキストであれグラフィカルであれ文法規則で支配される。文法に則った表現。 ラベルにデノテーション(名指すシング)がないとき、ラベルを含むコンビネーションが特定のナニカを指し示すことはない(==ここ大事==)。が、ラベルがデノテーションを持つとき、ラベルのデノテーションをもとに、コンビネーションのデノテーション(指し示すシング)を==計算することができる==。計算法則は文法規則と一体化している。 多くの人が誤解・混乱していることは; コンビネーションにデノテーションがなくても、コンビネーションそれ自体がシングであること。もし、デノテーションがあると、コンビネーションの解釈は、「指し示す先のシング」と「それ自体としてのシング」の二面性を持つことになる。 同一物に対する==解釈のスイッチング==、==同時複数解釈==を必要とするが、このスキルもトレーニングしないと身につかない。 ### 初等的な例 線形代数ドミニオン: - シング: ベクトル、等式 - ラベル: 生成系〈基底〉の要素 - コンビネーション: 線形コンビネーション〈線形結合〉 多項式ドミニオン: - シング: 実数値、等式 - ラベル: 不定元 - コンビネーション: 実数係数多項式 集合ドミニオン: - シング: 集合と写像、写像の等式 - ラベル: ソート記号、オペレーション記号、等式記号 - コンビネーション(グラフィカル): ドット&アロー図、可換図式