--- tags: TrRun2 id: ProbCHL-A13.md --- # 檜山トレラン2 A13 学習障害と対策 (2) 雰囲気と先入観への対策 ケーススタディ、離散キューブの次元。 ## 離散キューブとその次元が分かりにくい理由 次のヒントは出しておいた。 1. 連続の場合は、「次元」に紛れはない。離散だと紛らわしい。→ [A06 多配列](https://hackmd.io/@m-hiyama/SJLxh4bl_) の冒頭。 2. 格子点〈lattice points ←複数〉とは、連続空間(${\bf R}^n$)に埋め込まれたパランパランな点達。 3. 有限キューブは格子点の有限個の集まり(格子点全体の部分集合)で、直積の形をしているもの。 連続なら紛れないのだから、離散キューブも連続空間に埋め込んで考えれば問題ないはず。 「分からない“感じ”がする」という印象・雰囲気に支配されて、何の確認作業もしないと、分かる事も分からない。次を確認しよう、絵を描けば明らか(このテの==作業==はやっていると期待したい)。 1. 2次元で単元集合であるある離散キューブ $\{1\}\times \{1\}$ 2. 2次元で空集合であるある離散キューブ $\{\}\times \{\}$ 3. リスト $(1, 1, 1)$ に対応する離散キューブ 4. リスト $(5, 0, 1)$ に対応する離散キューブ 離散キューブは“連続キューブの**箱**”のなかにあると考え、箱により次元を判断すると考えれば、「n次元の単元集合」や「n次元の空集合」も別に変ではない。 - ==対策:== 分かるために**何かしよう**。 ## 化身と実身を取り違えるな 化身は、 - 実身〈実体〉ではない。実体を表現・表示する何か。 - 一時的に生じるニセモノ。本質的ではない。 テンソルの圏 ${\bf Tens}$ の対象は自然数のリストである。前節の説明で0を入れても解釈可能なことは分かったろうから、もう0も許すことにする。次のように考えてないだろうか? - テンソルの圏の対象はホントは離散キューブで、自然数のリストはそれを表現するだけのもの。 **違う**。話は逆で、実身はリストで、離散キューブは一時的に使うだけ。もし、離散キューブが実身なら、それを対象にする -- がそうはしてない。 次の注意をした。 1. 圏の対象が集合とは限らない。 2. 圏の射が写像とは限らない。 3. 圏の対象が集合でも、射が写像とは限らない。 4. 圏の射が写像でも、対象が集合とは限らない。 5. 圏の射が写像で、圏の対象が写像でも、射としてのプロファイルが写像としてのプロファイルと一致しないかもしれない。 6. 変わった例として、対象が自然数で、射が punctured surface の例を出した。 7. 要するに、**先入観を持ってはいけない**。 にもかかわらず、集合が出てくると実体である感じがするので、リストのほうを化身だと思ってしまう -- それは誤解だ。離散キューブは、ホムセットを定義する際に必要だから使う一時的手段。 テンソルの域・余域はリストだからこそ**階数**が重要になる。 - ==対策:== 定義は、そのまま素直に解釈・理解しよう。見落としがあってもまずいし、余計な連想や思い込みを入れるのもダメ。 ## 追記: チェックリスト 自然言語による連想、感情的先入観が“大きな障害”になるが、他にハマリ所と対処のリスト。 1. 抽象的・公理的な一般論(例: 群のはなし)をしているのか、具体的な実例(例: 群の実例として非ゼロ実数の乗法群)を扱っているのかを区別する。抽象的議論での「1」は自然数や実数の「1」を指してない。 2. 名前や記号が、実体〈概念的に存在するモノ〉を指しているのか役割〈構造・組織体のなかでの肩書き〉を指しているのか区別する。前項の抽象的「1」は単位元という役割、自然数の「1」は実体。「ひとつの実体が複数の役割」、「ひとつの役割に複数の実体」は普通にある。 3. 語・記号のオーバーロード〈多義的使用〉に注意して、適切に解決できるようにする。同じ語・記号が文脈で違う意味を持つ。 4. 語・記号のコンフリクト〈意図せぬ偶然による一致〉に注意する。概念に対して語・記号が不足しているので、コンフリクトは珍しくはない。 5. 変数の変域や、射のアビタ〈生息域〉/プロファイルを常に強く意識する。文字・記号の意味・定義を曖昧にしたままで扱わない。 6. 日本語に冠詞と複数形がないので、単数複数、a/the の区別を意識する。必然性があるtheと、無根拠・恣意的に選択して固定した結果のtheがあることにも注意。 7. コミュニケーションが、分野・集団・文脈に強く依存するので、セットアップ(会話の状況設定、事前合意)をシッカリおこなう。