# まえがき サブカルチャー > ある文化の、支配的・中心的文化ではなく、一部の人々を担い手にする文化。都市文化・地方文化・若者文化などの類 > 2023年12月14日木曜日、こちらクリスタンブラーだ。ラボでは各々ニックネームがあるようだが、ここではクリスタンブラーと名乗らせてくれ。 ひとつよしなに。 > この記事は、[法政大学アドベントカレンダー2023](https://adventar.org/calendars/8853)の14日目の記事である。 # パンクをもっと見せてよ 早速本題に移ろうと思う。みんなパンクと聞いて何を思い浮かべる?インターネットで検索するとこんな説明が出てくるだろう。 ![スクリーンショット 2023-12-10 15.17.12](https://hackmd.io/_uploads/r16Lu0GUa.png) 私が想定するここでのパンクとは2番目の服装・髪型・音楽などのスタイルの方を指している。人間は、一人一人に何か惹かれるものがあり、好きな服装、好きな髪型、好きな音楽があるだろう。そして似かよったものがあれば人は集まり、団体を形成し、無数のコミュニティが生まれる。この"パンク"という言葉は、サブカルチャー的要素を多く含んでいる。常にパンクは熱を帯びている。私にも特に惹かれるパンクが2つある。 * サイバーパンク * スチームパンク これらの言葉を聞いたことがある人もいるだろう。1980年代に人気を博したアメリカの小説のサブジャンルである。現代では映画のジャンルとしても多く存在し、近未来、SF、ファンタジーなどの様々なシーンでサイバーパンクとスチームパンクの要素は取り込まれている。 本記事では、私はこれら事例の個人的観点からの紹介並びある疑問を提示する。 パンクをもっと見せてよ # サイバーパンク まずサイバーパンクだ。私は幼い頃からサイバーパンクの作品の虜であった。サイバーパンクとは、cybernetics(サイバネティックス)+punk(過激なロックスタイル)で構成される。起源としては、確かにサイバネティクスやサイボーグといった概念から派生する。またサイバーパンクは、従来のSFとは異なる点で注目されているものである。従来のSFは、未来の科学技術の進化やその社会への影響を描写することが多かったのに対し、サイバーパンクはその未来社会がどのようにして不均衡で過剰なまでに技術が進んだ状態に至ったかを問いかける。 サイバーパンク作品では、技術の進歩が社会や人々の生活に及ぼす負の側面、個人のプライバシーや自由が技術の進展とどのように対立するか、といった点が強調されている。**機械と人間の融合や情報処理の融合**により、新たな問題や不均衡が生まれるという視点が、サイバーパンクの特徴の一つである。 私が弊研究室に入った理由は、ここではI教授のもと実用的なAIの研究が盛んに行われ、数多くの優秀な研究者を輩出し、きっと大きな学びがあると思ったからである。また我々にしか作れないAIシステムで世界に影響を与え、新たな価値観を作り出したいという大きな野望?っていうのは大袈裟だが、幼い頃からのある種の思想に取り憑かれた自分に導かれたのである。もとを言えば、我々が所属する応用情報工学科もサイバーパンクなのかもしれない。 話を戻すが、またサイバーパンクは従来のSFとは違い、社会構造や経済システムといったメタ的な側面にフォーカスし、その中で技術がもたらす影響を探求する。このような特徴が、サイバーパンクを他のSFと差別化させる重要な要素である。 このサイバーパンクを取り込んだ作品の中で私が特に好きな作品が『AKIRA』だ。 ## AKIRA 『AKIRA』は、大友克洋(おおとも・かつひろ)によって制作された日本の漫画作品である。1982年から1990年まで週刊ヤングマガジンにて連載され、後に6つの巻にまとめられた。物語は第三次世界大戦から38年後の世界、近未来の架空の都市ネオ東京を舞台にしており、超能力者や政治的陰謀、都市の崩壊と再生などを描いている。 この作品は、特にその先鋭的なアートスタイルや豊かな物語性、そしてサイバーパンクの要素を含んだストーリーテリングで評価されている。超能力者である主要キャラクター達が人間の限界を超えた能力を持ち、政府の陰謀や都市の混乱に巻き込まれていく姿が描かれている。 初見、私はこの作品に登場する主人公・金田の乗る両輪駆動のバイクのメカニックなデザインや近未来的な形に衝撃を受けた。いつかネオ東京でこのバイクを乗れものなら乗ってみたい。金田の有名な台詞“欲しけりゃデカいのぶんどりな!”である。冒頭、街を暴れ回る金田たちのバイクのヘッドライトの残像がまるでナルガクルガの双眸のようにカッコイイのも注目だ。 ![scene-1](https://hackmd.io/_uploads/Sy5OT1X8T.png) 引用:AKIRA Official(https://v-storage.bnarts.jp/sp-site/akira/introduction/) <iframe width="560" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/18kvp-DVd3s?si=s2cTkolLZSyTcwna" title="YouTube video player" frameborder="0" allow="accelerometer; autoplay; clipboard-write; encrypted-media; gyroscope; picture-in-picture; web-share" allowfullscreen></iframe> また、『AKIRA』はアニメーション映画化もされ、1988年に公開された。ここで日本が誇るスタジオジブリとのある関わりがある。大友克洋にとって自身初のSF長編映画であり、佳境を迎えた現場は、クリエイター不足に陥っていた。そんな中、救いの手を差し伸べたのがジブリのアニメーターたちであった。当時、ジブリでは『となりのトトロ』と『火垂るの墓』の制作が終盤に差し掛かっており、手の空いた人が『AKIRA』の現場へ手伝いに来てくれたのである。日本アニメとしては異例の巨額な制作費10億円を投じ、日本中から一線級のスタッフを集めて制作された。その結果、『AKIRA』は制作期間3年で日本で公開された後も世界中で高い評価を受け、SFアニメーション作品の金字塔となった。 [Netflix](https://www.netflix.com/jp/title/60021103)では無料で配信されているので、ぜひ見ていただきたい作品である。 # スチームパンク 次にスチームパンクだ。スチームパンクもまたSFジャンルの一つとして、「スチーム(蒸気機関)」と「サイバーパンク」を組み合わせてつくられた造語である。またスチームパンクは、19世紀の産業革命時代の技術や文化を基盤にしたフィクションのジャンルである。このジャンルでは、蒸気機関や歯車、クロックワーク(歯車などを使用した機械装置)など、**産業革命期の技術が未来的な要素と融合**した世界が描かれる。 スチームパンクの作品では、しばしばヴィクトリア朝時代風の衣装や建築物、その時代の雰囲気を取り入れつつ、未来の技術や空想的な要素を組み合わせている。また蒸気機関や機械が主要な動力源となっており、その技術が進んだ世界観が特徴である。 このジャンルの作品には、『シャーロック・ホームズ』や『ハーバート・ジョージ・ウェルズ』の小説、また近年では映画や漫画、ゲームなどでもスチームパンクの要素が取り入れられている。これらは独特なデザインや技術が魅力であり、ファンタジー要素やレトロフューチャーな世界観を楽しむことができる。 そんなスチームパンク作品で私が特に好きな作品が『天空の城ラピュタ』である。 そう、『天空の城ラピュタ』はスチームパンクだ。 ## 天空の城ラピュタ この作品に関しては、みんな一度は観たことがあるだろう。観たことなくても内容はなんとなく知っていると思う。簡単なあらすじとしては、空から女の子(シータ)が降ってきて、男の子(パズー)がナイスキャッチ。そこからあれやこれやで独断と偏見で二人の中を引き裂こうとしてくる金髪グラサン紳士(ムスカ大佐)、最後はツイッター(現X)破壊の呪文「バルス」でさよならバイバイだ。 もちろん、内容はとても面白い作品だが、私が注目する部分は、この作品にもスチームパンク要素が取り組まれている所だ。 具体例を申し上げると、あのオープニングにしか出てこない宮崎駿監督が好きな空飛ぶでっかい船だ。なんせあのオープニングはスチームパンクが好きな私にとってワクワクするよ、ほんとに。 <blockquote class="twitter-tweet"><p lang="ja" dir="ltr">「<a href="https://twitter.com/hashtag/%E5%A4%A9%E7%A9%BA%E3%81%AE%E5%9F%8E%E3%83%A9%E3%83%94%E3%83%A5%E3%82%BF?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#天空の城ラピュタ</a>」のOPはラピュタの興亡史を表しています。ラピュタ人は最初は慎ましく地上で暮らしていましたが、工業化が進むと多くの飛行機械を空に飛ばし、最盛期には幾つもの空中都市が存在していました。しかし、やがて文明が滅びると墜落した空中都市から人々が地上に戻ってきました。 <a href="https://t.co/331iTU7PUN">pic.twitter.com/331iTU7PUN</a></p>&mdash; キャッスル@ジブリフリーク (@castle_gtm) <a href="https://twitter.com/castle_gtm/status/1167407855785263104?ref_src=twsrc%5Etfw">August 30, 2019</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> ジブリはしっかりと語られないにも関わらず、目的と用途の説明が設定資料などから拝見できるから面白い。パズーのゴーグルも欠かせない。ゴーグルはできれば付けたい。ゴーグルは良い。 またしても余談だが、前述したサイバーパンクの作品『AKIRA』とスチームパンクの作品『天空の城ラピュタ』に共通する部分がある。それは映画制作で特効を担当した瀬山武司さんだ。瀬山さんは、どちらの作品にも特効という動画や背景美術に描かれているもの以外の光やぼやけの表現など、映像効果を加える作業を担当した。すなわち瀬山さんは、『AKIRA』の助っ人に入ったジブリのクリエイターの一人だ。日本のアニメーションはジブリのクリエイターが支えていると言っても過言ではない。スタジオジブリは2014年に映画制作部門を解体し、ちりちりになって多くの優秀なクリエイターが日本や世界のアニメーションスタジオに入所した。新海誠監督『天気の子』の作画監督もスタジオジブリ出身の方だ。 アニメーションも語り出したらキリがないので今回はここまでにしとこう。 兎に角、『天空の城ラピュタ』の世界には私が好きなスチームパンクの要素が取り込まれており、是非その部分にも注目して観ていただきたい。また東小金井の大学に通っているみんなに三鷹の森ジブリ美術館にもぜひ行ってみてほしい。愛知県のジブリパークにも。 …バルス。 # 近年の作品への提言 急にだが提言を語るとしよう。私は、サイバーパンク、スチームパンクの要素が好きではあるが、なんでも好きとは限らない。紹介した2つの作品に登場するこれらの要素の通じるものとして、どちらも目的と用途が決まっているという点が挙げられる。個人の見解、個人の見解。しかしながら私は、最近の映画に増えている取り敢えず歯車を頭に付けてみるデザインなどを少し苦手な傾向がある。率直に言ってしまえば、ただ消費されるのではなく、もっと作り込んでほしいと感じてしまっている。以下のポストを見てほしい。 <blockquote class="twitter-tweet"><p lang="ja" dir="ltr">スチームパンクって言葉をよくわからずに使ってる人が多い。機械なら何でもいいわけじゃなく、あくまで産業革命時代(18~19世紀)の技術や色調をベースにした空想世界だから、蒸気機関や飛行船、銅の歯車や計器などがモチーフで、服装も主にヴィクトリア朝時代のドレスやハットなどを使うのが正解</p>&mdash; TAKUMI™ (@takumitoxin) <a href="https://twitter.com/takumitoxin/status/692383880788250624?ref_src=twsrc%5Etfw">January 27, 2016</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> 確かに多くの解釈はあるが、もっとも我々が普段使っているものにはなんらかの理由があり、その形になったのではないのかと思う、それらのパンクは悪魔でフィクションかもしれないが、私が紹介した作品には、ある合理的な背景がある。それはどちらも現代社会からの延長線上で生まれたものである。『AKIRA』では、科学技術の過剰な進歩による不均衡な社会に巻き込まれる少年たち、『天空の城ラピュタ』では、人類は地上で暮らしていたが工業化が進み多くの飛行機械を空に飛ばし始めた。私が言いたいことは、多くの要素を孕むコミュニティにどれほどその"好き"を許容できるかだ。私のパンクはそれなのかもしれない。自己中心的な考え方ではあるが私の好きなパンクをもっと見せてほしいのだ。これが私の近代作品への提言である。 以上。 パンクをもっと見せてよ # あとがき 僭越ながら自由に記事を書かせてもらったが、どうだったか皆々の感想を聞きたいものだ。私はこのような機会がなければこう言った記事を書かないため、今年、弊研でアドベントカレンダーを復活させたM氏に感謝したい。これから本格的に冬が始まりあっという間に来年になってしまう。読者の皆々は、どんな大学生活を送って来たのだろうか?中にはもっと有意義な大学生活を満喫していたかもしれない。と悶々としておられる者もいるのではないだろうか?そんな時におすすめする私が読んだ作品『四畳半神話大系』の樋口師匠の一節を残して去ろう。 > 「可能性という言葉を無限定に使ってはいけない > > 我々という存在を規定するのは、我々がもつ可能性ではなく、我々がもつ不可能性である。 > 君はバニーガールになれるか? > 君はパイロットになれるか? > アイドル歌手に、必殺技で世界を救うヒーローになれるか? > 七つの海を股にかける海賊になれるか? > ルーブル美術館の所蔵品を狙う世紀の大怪盗になれるか? > > > > > ・・・なれるかもしれん。 > しかしありもしないものに目を奪われてもどうにもならん。 > > 大方の苦悩は、あり得べき別の人生を夢想することから始まる。自分の他の可能性という当てにならないものに望みを託すことが諸悪の根源だ。今ここにある君以外、ほかの何者にもなれない自分を認めなくてはいけない。 > > バラ色のキャンパスライフなど存在しないのだ。 > なぜなら世の中はバラ色ではない。 > 実に雑多な色をしているからねぇ。」 アニメ化もされてるよ。 あ、パンクをもっと見せてよ クリスタンブラー