--- title: 台湾人エンジニアが調べてわかった台湾のSaaSの近況と代表的なtoC SaaS description: 台湾のSaaSの発展は、日本と似たような感じで、8年前ではあんまりありませんでしたが、今では特にBtoBを中心に、マーケティングやCRM、ERP、経理などのB2B分野を中心に様々なソリューションが開発され、中には台湾の株式市場に上場を果たした企業もいました。しかし一方で、B2Cの分野では、具体的なデータはないんですが日本と比べると体感的には国産SaaSがまだまだ少ないのが現状です。また、B2B分野のSaaSでも、どちらかと言うとトータルソリューションがクライアントから求められることが多いです。確かに台湾の市場は小さく、人口2300万人ほどの国では日本のように国内市場だけで行けるようなtoCやtoBサービスが存在しにくいのが事実です。だからと言って、全く良いものがないわけでもありません。そこで今回は、個人の独断で、特に私自身が好きなB2C分野で、いくつか有名な台湾発のSaaSをピックアップしてご紹介します。 lang: ja-jp tags: Blog, SaaS image: https://i.imgur.com/1JMKwsU.png --- ![](https://i.imgur.com/gGsMAjk.png) # 台湾人エンジニアが調べてわかった台湾のSaaSの近況と代表的なtoC SaaS ###### tags: `Blog` `SaaS` `Taiwan` **目次** [TOC] ## はじめに はじめまして、元グロースハッカーで現フロントエンドエンジニアのあきみねです。 この記事は、2021年5月に開催された#SaaSLovers_バトンブログ企画イベントの16日目の内容です。 [#SaaSLovers](https://twitter.com/search?q=%23SaaSLovers&src=hashtag_click)への参加は今回が2回目ですが、悔しいことに自分はSaaSの運営側としての経験は、主催の小松さんや他の日にちの素晴らしい執筆者たちのように長くありません。 そのため、今回参加するかどうかはかなり悩みました。 それでも自分自身のSaaS熱に答えたい思いで応募しました。 執筆にあたり、どんなテーマにしようか、そして自分の経験を活かせる物はなんなのかを考えた結果、出身地である台湾のSaaSの紹介に決めました。 しかし台湾のSaaS全般を紹介するには、それこそ専門誌ひとつ立ち上げるくらいの内容量になると思います。一記事としてのボリュームをも考慮して、今回は下記の内容に絞らせて紹介します。 ### この記事に含まれる物、含まれない物 #### 含まれる物: - 台湾発のBtoC SaaS - 個人事業主または個人向けのサービス - toBも可能なもののみで、純粋のtoCは除く - そのうち自分が紹介したい物のみ #### 含まれない物 - 台湾発のBtoC SaaS(その他未紹介のもの) - 台湾発のBtoB SaaS - 台湾以外発のSaaS ### この記事の対象読者 #### 対象読者 - 台湾のBtoC SaaSに興味を持つ方 - 新しいSaaSを試してみたい方 ## SaaSとは 詳しい説明は割愛しますが、SaaSとは、簡単に言うと「オンラインで利用するサービス」です。英語の「Software as a Services」の略称で、直訳すると「サービスとしてのソフトウェア」です。台湾華語では「軟體即服務^[1]^」と訳されていますが、台湾でも一般的に日本と同じく英語の略称「SaaS」を使っています。 ## 台湾のSaaSの今 台湾のSaaSの発展は、日本と似たような感じで、8年前ではあんまりありませんでした^[2]^が、今では特にBtoBを中心に、マーケティングやCRM、ERP、経理などのB2B分野を中心に様々なソリューションが開発され^[3]^、中には台湾の株式市場に上場を果たした企業^[4]^もいました。 しかし一方で、B2Cの分野では、具体的なデータはないんですが日本と比べると体感的には国産SaaSがまだまだ少ないのが現状です。また、B2B分野のSaaSでも、どちらかと言うとトータルソリューションがクライアントから求められることが多い^[3]^です。 確かに台湾の市場は小さく、人口2300万人ほどの国では日本のように国内市場だけで行けるようなtoCやtoBサービスが存在しにくいのが事実です。 だからと言って、全く良いものがないわけでもありません。そこで今回は、個人の独断で、特に私自身が好きなB2C分野で、いくつか有名な台湾発のSaaSをピックアップしてご紹介します。そして最初から海外市場も視野に入れているためか、ほとんどのサービスは英語版、そして一部のサービスは日本語版も用意されています。 ※誤解を招きたくないので先に断っておきますが、**この記事はアフィリエイト案件ではありません**。 ## 台湾発のBtoCSaaSサービス ### オードリー・タンも利用しているナレッジ共同編集ツール【HackMD】 https://hackmd.io/ 無料プラン:○ 日本語版:○ HackMDとは、オンラインで共同編集できるテキスト作成ツールです。Markdownと言う記述方式を利用し、リアルタイムで共同編集・レビューができます。開発チームのナレッジ管理ツールとして様々な企業団体に採用されています。[Rustのコンパイラチーム](https://hackmd.io/@rust-compiler-team?fbclid=IwAR0dEiDqYD3V_3yF2SqYcnl8diTem_qjgJQ4u3URlb11VvMgU-KBsxGLEPs)や[Nulab](https://nulab.com/ja/blog/nulab/hackmd-hack/)、[CrowdWorks](https://qiita.com/k-waragai/items/63cbab2584c0299288be)、そしてあの台湾のIT大臣オードリー・タンがコアメンバーを務める[g0vでも利用](https://g0v.hackmd.io/?nav=overview)されていて、直近では日本でもニュースになった「[飲食店実連制ツール](https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210520/k10013040811000.html)」の[公式マニュアル](https://g0v.hackmd.io/@au/HkmyoS-Fu)をHackMDにてご本人が作成しました。 社内限定でナレッジ管理ツールとしての利用ももちろん可能で、それに[g0v](https://g0v.hackmd.io/?nav=overview)やこの記事のようにナレッジ全体もしくは個別の記事をパブリックに公開することも可能で、日本語対応もされているのでフリープランだけでも結構使えます。そしてGithubとの連携が可能のため、バージョン管理もできるので、エンジニアとしても嬉しいです。 同社からはオープンソース版の「[CodiMD](https://github.com/hackmdio/codimd)」も公開されているので、簡単に個人・自社のオンプレ環境で構築できます。 ### クラウド会計ソフト【NexTrek】 https://www.nextrek.co/ 無料プラン:× 日本語版:× NexTrekとは、クラウド会計ソフトです。日本の[freee](https://www.freee.co.jp/)のようなサービスです。基本的に[中小企業をターゲット](https://www.nextrek.co/about-us.html)としていますが、もちろん個人契約も可能です。 台湾では副業をやっている人も多く、中では個人事業主として仕事の傍にやっている人は少なくないんですが、日本と同じく自分で会計業務ができるかと言うと難しい人が多いなので、FreeeもNexTrekそんな方にとっての[最適なソリューション](https://help.nextrek.co/zh-TW/articles/2630326-%E5%B0%8E%E5%85%A5nextrek%E5%89%8D%E5%B8%B8%E8%A6%8B%E5%8D%81%E5%A4%A7%E5%95%8F%E9%A1%8C)になるでしょう。 ### アンケート作成【SurveyCake】 https://www.surveycake.com/ 無料プラン:○ 日本語版:×(英語版あり) SurveyCakeとは、アンケートに特化したオンラインフォーム作成サービスです。似たようなサービスとしてGoogleフォームがありますが、Googleフォームと違ってあくまでアンケート作成に特化しています。そして無料でも使えるので、台湾の学術界隈で重宝されています。自分もSNSでよく見かけますが、大学院生や大学生、教授や先生から研究のためにアンケートに協力してほしいと言われたときは、決まってSurveyCakeのリンクも添付されるくらいでした(最近ではGoogleフォーム勢も増えてきたが)。 [無料プラン](https://www.surveycake.com/en/pricing)で使える機能のうち、Googleフォームにないのが「テンプレート機能」、「アンケート表紙」、「iframe差し込み」、有料プランではSPSSへのエクスポート機能やアンケートの上限数と回答期限、親子アンケート機能があります。toBのエンタープライズ版では企業向けのカスタマも承っているようです。 ### 学校先生のオンライン講座作成・運営の味方【1know】 http://1know.net/ 無料プラン:○ 日本語版:×(英語版あり) 1knowとは、eラーニングコース(オンラインオープン講座)の作成・運用・管理ができるサービスです。台湾ではMOOCS(Massive open online courses、磨課師)と呼ばれるオンラインオープン講座は、教育部主導で大学を始め各学校で提供されています。しかしただでさえ忙しい授業と研究の合間に、オンライン講座まで手が回る時間が少ないので、自然的にこういった作成、運用、管理が全てできるサービスを使うことになります。実際、今もこの1know上では学校の先生たちが作ったオンライン講座が10000件を超えています。 また、似たようなサービスとして台湾の[hahow好學校](https://hahow.in/)がありますが、こちらは企業や個人でも開設できる有料講座を中心に提供しているサービスですので、1knowは基本的に学校のMoocsのためのツールであって、パブリック(誰でも受けられる授業)かクローズ(学校の学生しか受けられない授業)の区別はあるものの授業を有料にすることはできません。 ### ライブコーマスのソリューション【koo.live】 https://koolive.koodata.com/ 無料プラン:○(ベータ版のため全て無料) 日本語版:×(英語版あり) 台湾では、個人でも気軽にライブをやっているライブエンターテイメント(ライブストリーミング)市場が存在しています(有名なのが[17Live](https://jp.17.live/)、こちらも台湾発です。)。そこに目をつけてライブコマースを行う企業や個人事業主も多いので、それらの企業と個人向けのソリューションを提供するサービスがこちらのkoo.live。koo.liveは、対応のプラットフォームがFacebookのみで、ライブストリーミングを使って通販を行うためのサポートツールです。 筆者自身はライブエンターテイメントは何年か前に[YouNOW](https://www.younow.com/)を利用したっきりなので正直あんまりよくわかりませんが、かなり大きい市場のようで、ライブコマースもそこそこでかいビジネスだそうです。 ### 秒速でSNS用PR動画作成サービス【vivido】 https://www.vivido.video/ 無料プラン:× 日本語版:×(英語版あり) vividoとは、動画編集経験がないマーケッター向けのSNS用PR動画作成サービスです。日本の[VideoBRAIN](https://video-b.com/)のようなサービスです。こちらもメインは中小企業ですが、個人事業主でも気軽に契約できます。契約しなくても無料会員登録後[テンプレート](https://www.vivido.video/Templates)から試せるし、出来上がった動画を後から単体で購入することもできます。 ちなみにこのvividoは、koo.liveと同じベンチャー発のプロダクトです。 ## 終わりに 今回は軽く台湾のSaaSをtoCを中心に幾つかをピックアップして紹介しましたが、何せまだSaaS勉強中の身なので、内容的には薄いっぺら感がします。それでも最後まで読んでいただいてありがとうございます。 今年の下半期の個人目標に「SaaSを作る」を掲げていますが、今回の執筆にあたってかれこれ調べてみるうちにすごく焦ってきました。まだまだ知らないことが多いのと、出身国である台湾から離れているためか、台湾のSaaSについて何一つ知りませんでした。(汗) しかし今回をきっかけに、台湾のtoBとtoCのSaaSの現状を以前より把握できましたので、これからSaaSを作るのにきっと役に立つことを願っています。 そして、**HackMDはかなり便利**(笑) ## 注釈 [1] 軟體:ソフトウェア、服務:サービス [2] 台湾の資策会(全名:財團法人資訊工業策進會、日本のIPA独立行政法人情報処理推進機構にあたる)によると台湾のSaaSのシェアは2013年ではわずか8%しかありません。[[出典](https://www.netadmin.com.tw/netadmin/zh-tw/feature/73A9B150781B42F5833E7BDAAF173666)] [3] https://mic.iii.org.tw/news.aspx?id=432&List=144 [4] https://www.bnext.com.tw/article/62535/91app-ipo-2021