Try   HackMD

いわゆる「凍結師」の問題点と凍結時対応マニュアル

記事について

こちらの記事は SttyK(してぃーきっず)が書いた記事ではありません。記事の作成者が自分の身を案じたために(記事の公開によって標的にされてTwitterアカウントが凍結されるのを避けたいとのこと)、私が代理で公開することにしました。

概要

最近「凍結師」による twitter アカウントの凍結が活性化しており、すまほん (@sm_hn) やイオシス (@iosys_official) といった、比較的フォロワーの多いアカウントまでアカウント凍結 / 脅迫の被害に遭っています。
 この記事では、法的な問題から実際の対応、twitter 社への内容証明郵便を送り付ける段階までについて、順を追って説明を行います。

はじめに

凍結のための手法

いわゆる「凍結師」の行動パターンは大きく以下の 3 つに分けられます。

  • 愉快犯的な虚偽通報・凍結
  • 依頼者から金銭を受け取っての虚偽通報・凍結代行
  • (『凍結されたくなければ / 解除してほしければ金を払え』といった) 被害者から金銭を求める恐喝

このいずれも、twitter の通報システムを悪用したものです。twitter アカウントのロック・凍結の基準として、一定以上の通報を受けた場合、機械的に凍結を行うような仕組みが利用されており、特に twitter の「認証済アカウント」からの通報は通常のアカウントよりも強力な意見として採用され、真正 / 虚偽の通報に関わらずアカウントが凍結される場合が多いようです。このような「認証済アカウント」についても、乗っ取りを受けたアカウントの情報が販売されており、こういった行為に利用されています。

法的にはどうなるか?

凍結させる目的で通報を行っている人 (「凍結師」)

まず、虚偽 DMCA 通報の場合と同じく、虚偽の通報により twitter 社の自動的な事務処理を阻害した、誤らせたとして、私電磁的記録不正作出及び供用罪が成り立つと考えられます。

(虚偽 DMCA 通報の場合)

Hiromitsu Takagi (@HiromitsuTakagi)

「(……きこえますか…きこえますか…全国の田舎&都会警察サイバー課の…みなさん… サイバーセキュリティ月間です… 今… あなたの…心に…直接… 呼びかけています… 虚偽DMCA通報犯…これこそがここ数年最悪の新しいサイバー犯罪…社会的法益侵害犯です…虚偽DMCA通報者の一斉摘発をするのです…)」

https://twitter.com/HiromitsuTakagi/status/1231213521490214917

また、凍結させられたアカウントが企業のアカウントである場合は、偽計業務妨害罪や威力業務妨害罪が、凍結された / されるアカウントの持ち主に「金銭を支払わなければ凍結させるぞ」と金銭を求め脅迫した場合、恐喝罪にも問われることになります。(この記事では罪数の話や牽連犯の話についてはしません。とりあえず、いくつもの罪に当てはまるかもしれない という点だけです。)

私電磁的記録不正作出及び供用罪は、被害者からの被害届なしに捜査を開始できる非親告罪ですが、当然、被害者が居た方が捜査されやすくなります。被害を受けた場合は (実際に解決されるかは別ですが) 最寄りの警察・サイバー課の方に相談しに行くと良いかと思われます。

他人を凍結させる目的でいわゆる「凍結師」に依頼をした人

殺し屋に殺人を依頼した人も、当然罪を問われることになりますよね。「凍結師」に他人のアカウントの凍結を依頼した場合でも、教唆犯として「凍結師」と同じ刑が科されることになります。

(刑法)
第六十一条 人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。

「凍結師」が捕まらないという保証はありません。あなたの依頼もバレてしまうことでしょう。

対策

twitter 社の対応がクソということもあり、現状では「対策」と言えるほどの対策は存在しませんが、以下のような予防措置が考えられます。

  • 鍵垢にする

先に書いた通り「凍結師」は、あなたのツイートに因縁を付ける形で虚偽の通報を行いアカウントを凍結していきます。通報を行うアカウント (認証済アカウント) から、あなたのツイートが見れなければ通報することができません。ただこれは、自分は悪いことをしていないというのに、悪質な「凍結師」や twitter 社の不備のために自分の行動を変容する必要があるという点で、正しい行動と呼べるかは微妙です。しかし、金銭を求められ恐喝されているような場合には有効で、虚偽の通報を受ける前に行えば凍結される可能性を下げることができるでしょう。

  • この話題について反応しない

「凍結師」†Frozner† は金銭目的で悪質な虚偽通報を行っていると共に、世間の反応を面白がっている愉快犯でもあります。これに反応するのは相手の思うつぼであり、フォローしに行ったり、リツイート / いいね / リプライを付けるのは止めましょう。予め「凍結師」のアカウントをブロックするといったことも、「凍結師」に気づかれて虚偽通報・凍結の対象となる場合があるため避けましょう。

また、絶対に金銭を支払わらないようにしましょう。相手に金銭的なメリットを与えると、あなた自身や、あなたが属する界隈全体のリテラシーが低く金を稼げると判断され、より一層の攻撃を招きかねません。

対応の手順

「凍結師」から恐喝を受けた場合 (まだ凍結されていない場合)

アカウントを鍵垢に切り替え、恐喝を無視して、ほとぼりが冷めるまで鍵垢のまま過ごしましょう。また、余裕のある方は、最寄りの警察署・サイバー課の方まで相談に行きましょう。根本的には twitter の仕組みの不備が原因であるため、これ以上の対応を取ることはできません。

「凍結師」によってアカウントを凍結させられてしまった場合

基本的には以下の記事・ツイートの内容と同様です。これに加え、以前 twitter アカウントの永久凍結を受けた際に、筆者が実際に送付した内容の解説を含みます。

Komittee Express「『脅迫行為を推奨』Twitterアカウントが凍結されたけど取り戻した話」

https://express.komittee.net/posts/twitter-suspend-my-account-carelessly/

あそっく🍼(乳脂肪分38%)

(1/4)ツイッターアカウント凍結から凍結解除までの流れ ・平成29年12月1日頃、本アカウントが凍結される。 ・ツイッター公式ヘルプページより、案内にそって異議申立を行う。 ・"暴力や脅迫を奨励するコンテンツを投稿しているため、凍結は永久に解除出来ない"と返答が来る。(続く)

https://twitter.com/asock9562/status/961185124816535552

ITmedia「『仕事にも支障が』 Twitterを凍結され、日本法人を訪れて抗議したエンジニアに聞く」

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1710/01/news035.html

如月真弘 (@mahirokisaragi)「#山本五十子の決断 カバーイラストがTwitter社から『成人向けの性的な商品やサービス』とされ作者がTwitter Japan社に行った話」

https://twitter.com/i/events/963960415393792000

  1. まずは、通常通り凍結に対する異議申し立てを行いましょう。

    twitter ヘルプセンター: https://help.twitter.com/ja

  2. 反応がない / 却下を受けた場合、問い合わせのメールに対して返信の形式で再度説明文を送りましょう。

  3. 複数回の対応を行っても反応がない / 却下され続ける場合、twitter 日本法人宛に下記の内容を記した内容証明郵便を送るか、カリフォルニアの twitterHQ 宛に同内容の FAX を送付しましょう。

    含まれていると良いと思われる内容

    • twitter 本社での凍結解除の対応をお願いする文面
    • 時間をおった状況説明
      • 今回のような「凍結師」の虚偽通報による凍結である場合、特に恐喝されたのであればその説明
    • 問題とされたツイート文面とURL
    • 問題とされたツイートが当該 twitter ルールに違反していないことの説明
    • 問い合わせの返信先となるべき住所・名前
    • 問い合わせのケースID (Case #00000000 といった形式のもの)

    以下の内容は、私が以前 twitter 日本法人に送付した内容を、より一般的に利用可能な形式に書き換えたものです。参考にしてください。

 # アカウント凍結解除に関する要望書  
 
 前略

 20XX年X月X日から貴社のサービスが使用できず、「ユーザー名」(ID:@[twitterid]) のアカウントにログインができない状態が続いております。
 [このアカウントはどのように利用しているアカウントという簡単な説明、健全な運用を行っている旨の説明]
 一刻も早くTwitterHQでアカウント凍結解除の対応をしていただきたくお願い申し上げます。
 
 草々

 ## 発生状況と経過
 20XY年N月M日、「ユーザー名」(ID:@[twitterid]) アカウント (以下当該アカウント) にて、

「[問題とされたツイート1の文面]」
 [問題とされたツイート1のURL]

「[問題とされたツイート2の文面]」
 [問題とされたツイート2のURL]

とのツイートを行ったところ、20XX年X月X日「ユーザー名」(ID:@[twitterid]) に登録されているメールアドレス「[登録メールアドレス]」宛に「[twitterから受けた警告メールの文面]」との警告メールがあった。

 この状態で、ツイッターサポート宛に「アカウントの凍結またはロックに異議申し立てをする」から問い合わせを行ったところ、「[異議申し立ての却下メールの文面]」との自動返信メールがあった。
「[]」との指示に従い、当該メッセージへの返信を複数回行った。
しかしながら、最初の自動返信メール以外の返信・対応はなく、20XX年X月Y日現在も解決に至っていません。

 上記の問題とされたツイートは、[因縁を付けられた内容] ではなく [真正なものと説明する内容] であり、これはツイッタールール([問題とされたルールが説明されているURL])に違反するものではありません。

 至急当該アカウントの凍結解除のご対応をよろしくお願い申し上げます。


アカウント使用者

[住所]
[電話番号]

[ユーザー名] (ID: @[twitterid]) こと
[名前]

Case# [問い合わせのケース番号]
[複数のケース番号がある場合は全て列挙]


令和X年Y月Z日
運営会社 (受取人)
Twitter Japan株式会社
東京都中央区京橋3丁目1-1
東京スクエアガーデン19F

差出人
[住所]
[名前]
[電話番号]

私のケースでは、上記のような文面とその英訳を、行政書士から twitter 日本法人オフィス宛に内容証明郵便で送付してもらい、郵便の到着から 5 日で凍結解除となりました。

英訳の必要性についてですが、恐らく無くとも twitter 本社側の日本語のサポートを行っているスタッフの方に読んでもらえると思われます。しかし、素早い凍結解除のためには、添付して置いた方が良いのではないでしょうか。また、私のケースではそうしましたが、内容証明郵便を行政書士や弁護士から送る必要はありません。上記の記事やツイートによると、ご自身から送った場合でも対応して頂けるようです。Word で作成し、e 内容証明を利用して送ると良いかと思われます。

若干補足となりますが、twitter 日本法人は、twitter の運営部分には一切関与しておらず、アカウントの凍結・規制などに関する権限も持っていないため、ただ単に米国本社の対応チームへのメッセンジャー・中継役として利用することになります。「twitter 日本法人のオフィスまで話をしに行く」という場合もありますが、こちらについても、対応する社員さんに権限がある訳では無いので、最初から全てを記した郵便を送り付けた方がスマートであるかと思われます。(先に挙げた記事によると、オフィスに凸した場合でも、上と同様の説明をした文章を書く必要があるみたいです。)

上記の内容は、問題とされたツイートが twitter ルールに違反していない、虚偽の通報・誤検知であった場合に有効です。もしあなたが流行り病やワクチンに関する陰謀論をツイートしていたり、文脈的にも問題がある脅迫ツイートをしていて、そのツイートが問題となって凍結された場合など、通報の内容が真正なものである場合、上記の対応を行っても、凍結解除されることは多分無いので、諦めてください。

さいごに

このような「凍結師」がはびこる原因は、

  • より強い力を持った認証済アカウントの「認証バッジ付与後」のフォローがほぼ無い
  • より強い力を持った認証済アカウントに対してより強力なセキュリティ措置を強制していない (二要素認証等)
  • 誤って凍結されるアカウントの存在を認知しているのに一向に凍結 / 凍結解除のフローを改善しない
  • 「凍結師」に利用されている認証済アカウントへの凍結対応が遅い / 行われていない

といった twitter 社の不備にあります。最終的に訴えが通って凍結解除されるとしても、凍結から対応が完了するまで 数日 ~ 数か月間アカウントを利用で出来ず、大変な不利益を被ることになります。いい加減改善して欲しいものです。

BTC: bc1qh6y5q7shqam0kws5sy9mpqj3amrhdjsk2qand8

XMR: 45pSUamubHEJbg5w3xX8NFa4Vr31aGiB4PqLMcZ9KEUS1jk816w1zpZfMe7jBE9s59PDvyJVx7Zn5YTo2dqHVLYfPrDxsk1

追記 12/28 PM19:00

下記ツイートの趣旨に賛同し、記事内の「凍結屋」表現を「凍結師」に改めました

すまほん!!動画 (@smhntv)
通称「凍結屋」について。「屋」ではまるで業としてやってるかのような呼称であるが、依頼者が存在する保証もないし、恐喝罪、偽計業務妨害罪の犯罪組織である実態を鑑み、「凍結師」等の名称を用いる方が適当ではないか(転売屋は一部違法、ダフ屋も違法なので、不適当とまでは言えない)

https://twitter.com/smhntv/status/1475701186057891842