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    # 第1章 総説 ## 第 1 節 改訂の経緯及び基本方針  今の子供たちやこれから誕生する子供たちが,成人して社会で活躍する頃には,我が国 は厳しい挑戦の時代を迎えていると予想される。生産年齢人口の減少,グローバル化の進 展や絶え間ない技術革新等により,社会構造や雇用環境は大きく,また急速に変化してお り,予測が困難な時代となっている。また,急激な少子高齢化が進む中で成熟社会を迎え た我が国にあっては,一人一人が持続可能な社会の担い手として,その多様性を原動力と し,質的な豊かさを伴った個人と社会の成長につながる新たな価値を生み出していくこと が期待される。 こうした変化の一つとして,進化した人工知能(AI)が様々な判断を行ったり,身近 な物の働きがインターネット経由で最適化される IoT が広がったりするなど,Society5.0 とも呼ばれる新たな時代の到来が,社会や生活を大きく変えていくとの予測もなされてい る。また,情報化やグローバル化が進展する社会においては,多様な事象が複雑さを増 し,変化の先行きを見通すことが一層難しくなってきている。そうした予測困難な時代を 迎える中で,選挙権年齢が引き下げられ,更に平成 34(2022)年度からは成年年齢が 18 歳へと引き下げられることに伴い,高校生にとって政治や社会は一層身近なものとなると ともに,自ら考え,積極的に国家や社会の形成に参画する環境が整いつつある。 このような時代にあって,学校教育には,子供たちが様々な変化に積極的に向き合い, 他者と協働して課題を解決していくことや,様々な情報を見極め,知識の概念的な理解を 実現し,情報を再構成するなどして新たな価値につなげていくこと,複雑な状況変化の中 で目的を再構築することができるようにすることが求められている。 このことは,本来我が国の学校教育が大切にしてきたことであるものの,教師の世代交 代が進むと同時に,学校内における教師の世代間のバランスが変化し,教育に関わる様々 な経験や知見をどのように継承していくかが課題となり,子供たちを取り巻く環境の変化 により学校が抱える課題も複雑化・困難化する中で,これまでどおり学校の工夫だけにそ の実現を委ねることは困難になってきている。 こうした状況の下で,平成 26 年 11 月には,文部科学大臣から,新しい時代にふさわし い学習指導要領等の在り方について中央教育審議会に諮問を行った。中央教育審議会にお いては,2年1か月にわたる審議の末,平成 28 年 12 月 21 日に「幼稚園,小学校,中学 校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答 申)」(以下「平成 28 年 12 月の中央教育審議会答申」という。)を示した。 平成 28 年 12 月の中央教育審議会答申においては,“よりよい学校教育を通じてよりよ い社会を創る”という目標を学校と社会が共有し,連携・協働しながら,新しい時代に求 められる資質・能力を子供たちに育む「社会に開かれた教育課程」の実現を目指し,学習 指導要領等が,学校,家庭,地域の関係者が幅広く共有し活用できる「学びの地図」とし ての役割を果たすことができるよう,次の6点にわたってその枠組みを改善するととも に,各学校において教育課程を軸に学校教育の改善・充実の好循環を生み出す「カリキュ ラム・マネジメント」の実現を目指すことなどが求められた。 ① 「何ができるようになるか」(育成を目指す資質・能力) ② 「何を学ぶか」(教科等を学ぶ意義と,教科等間・学校段階間のつながりを踏まえた 教育課程の編成) ③ 「どのように学ぶか」(各教科等の指導計画の作成と実施,学習・指導の改善・充 実) ④ 「子供一人一人の発達をどのように支援するか」(子供の発達を踏まえた指導) ⑤ 「何が身に付いたか」(学習評価の充実) ⑥ 「実施するために何が必要か」(学習指導要領等の理念を実現するために必要な方 策) これを踏まえ,文部科学省においては,平成 29 年3月 31 日に幼稚園教育要領,小学校 学習指導要領及び中学校学習指導要領を,また,同年4月 28 日に特別支援学校幼稚部教 育要領及び小学部・中学部学習指導要領を公示した。 高等学校については,平成 30 年3月 30 日に,高等学校学習指導要領を公示するととも に,学校教育法施行規則の関係規定について改正を行ったところであり,今後,平成 34 (2022)年4月1日以降に高等学校の第1学年に入学した生徒(単位制による課程にあっ ては,同日以降入学した生徒(学校教育法施行規則第 91 条の規定により入学した生徒で 同日前に入学した生徒に係る教育課程により履修するものを除く。))から年次進行により 段階的に適用することとしている。また,それに先立って,新学習指導要領に円滑に移行 するための措置(移行措置)を実施することとしている。 ## 第 2 節 改訂の要点 ### 1 学校教育法施行規則改正の要点 高等学校の教育課程を構成する領域等,各教科・科目の編成,卒業までに修得すべき単 位数等については,学校教育法施行規則第6章に規定している。今回の改訂では,各学科 に共通する教科として「理数」を新設したほか,別表第3に掲げられている各教科に属す る科目の見直しを行った。また,総合的な学習の時間について,より探究的な活動を重視 する視点から位置付けを明確にするため,総合的な学習の時間を「総合的な探究の時間」 に改めた(学校教育法施行規則の一部を改正する省令(平成 30 年文部科学省令第 13 号))。 ### 2 前文の趣旨及び要点 学習指導要領等については,時代の変化や子供たちの状況,社会の要請等を踏まえ,こ れまでおおよそ 10 年ごとに改訂を行ってきた。今回の改訂は,本解説第 1 章第 1 節 2 で 述べた基本方針の下に行っているが,その理念を明確にし,社会で広く共有されるよう新 たに前文を設け,次の事項を示した。 (1) 教育基本法に規定する教育の目的や目標とこれからの学校に求められること  学習指導要領は,教育基本法に定める教育の目的や目標の達成のため,学校教育法に 基づき国が定める教育課程の基準であり,いわば学校教育の「不易」として,平成 18 年の教育基本法の改正により明確になった教育の目的及び目標を明記した。  また,これからの学校には,急速な社会の変化の中で,一人一人の生徒が自分のよさ や可能性を認識できる自己肯定感を育むなど,持続可能な社会の創り手となることがで きるようにすることが求められることを明記した。 (2) 「社会に開かれた教育課程」の実現を目指すこと  教育課程を通して,これからの時代に求められる教育を実現していくためには,より よい学校教育を通してよりよい社会を創るという理念を学校と社会とが共有することが 求められる。  そのため,それぞれの学校において,必要な学習内容をどのように学び,どのような 資質・能力を身に付けられるようにするのかを教育課程において明確にしながら,社会 との連携及び協働によりその実現を図っていく,「社会に開かれた教育課程」の実現が 重要となることを示した。 (3) 学習指導要領を踏まえた創意工夫に基づく教育活動の充実  学習指導要領は,公の性質を有する学校における教育水準を全国的に確保することを 目的に,教育課程の基準を大綱的に定めるものであり,それぞれの学校は,学習指導要 領を踏まえ,各学校の特色を生かして創意工夫を重ね,長年にわたり積み重ねられてき た教育実践や学術研究の蓄積を生かしながら,生徒や地域の現状や課題を捉え,家庭や 地域社会と協力して,教育活動の更なる充実を図っていくことが重要であることを示し り,改訂の趣旨が教育課程の編成及び実施に生かされるようにする観点から,総則にお いて特に重視しているものである。 ① 資質・能力の育成を目指す主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善 ・ 学校教育を通して育成を目指す資質・能力を「知識及び技能」,「思考力,判断 力,表現力等」,「学びに向かう力,人間性等」に再整理し,それらがバランスよく 育まれるよう改善した。 ・ 言語能力,情報活用能力,問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力 や,現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力が教科等横断的な視点に基づ き育成されるよう改善した。 ・ 資質・能力の育成を目指し,主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善 が推進されるよう改善した。 ・ 言語活動や体験活動,ICT 等を活用した学習活動等を充実するよう改善した。 ② カリキュラム・マネジメントの充実 ・ カリキュラム・マネジメントの実践により,校内研修の充実等が図られるよう, 章立てを改善した。 ・ 生徒の実態等を踏まえて教育の内容や時間を配分し,授業改善や必要な人的・物 的資源の確保などの創意工夫を行い,組織的・計画的な教育の質的向上を図るカリ キュラム・マネジメントを推進するよう改善した。 ③ 生徒の発達の支援,家庭や地域との連携・協働 ・ 生徒一人一人の発達を支える視点から,ホームルーム経営や生徒指導,キャリア教育の充実について示した。 ・ 障害のある生徒や海外から帰国した生徒,日本語の習得に困難のある生徒,不登 校の生徒など,特別な配慮を必要とする生徒への指導と教育課程の関係について示 した。 ・ 教育課程外の学校教育活動である部活動について,教育課程との関連が図られる ようにするとともに,持続可能な運営体制が整えられるようにすることを示した。 ・ 教育課程の実施に当たり,家庭や地域と連携・協働していくことを示した。 (2) 構成の大幅な見直しと内容の主な改善事項  今回の改訂においては,カリキュラム・マネジメントの実現に資するよう,総則の構 成を大幅に見直した。すなわち,各学校における教育課程の編成や実施等に関する流れ を踏まえて総則の項目立てを改善することで,校内研修等を通じて各学校がカリキュラ ム・マネジメントを円滑に進めていくことができるようにしている。  上記の観点から,総則は以下のとおりの構成としている。   第1款 高等学校教育の基本と教育課程の役割   第2款 教育課程の編成   第3款 教育課程の実施と学習評価   第4款 単位の修得及び卒業の認定   第5款 生徒の発達の支援   第6款 学校運営上の留意事項   第7款 道徳教育に関する配慮事項 それぞれの款の内容及び主な改善事項を以下に示す。 ① 高等学校教育の基本と教育課程の役割(第1章総則第1款)  従前,「教育課程編成の一般方針」として規定していた内容を再整理し,教育課程 編成の原則(第1章総則第1款1)を示すとともに,生徒に生きる力(確かな学力, 豊かな心,健やかな体)を育む各学校の特色ある教育活動の展開(第1章総則第1款 2),育成を目指す資質・能力(第1章総則第1款3),就業やボランティアに関わる 体験的な学習の指導(第1章総則第1款4),カリキュラム・マネジメントの充実 (第1章総則第1款5)について示している。  今回の改訂における主な改善事項としては,育成を目指す資質・能力を,①知識及 び技能,②思考力,判断力,表現力等,③学びに向かう力,人間性等の三つの柱で整 理したこと,各学校が教育課程に基づき組織的かつ計画的に各学校の教育活動の質の 向上を図るカリキュラム・マネジメントの充実について明記したことが挙げられる。 これは,今回の改訂全体の理念とも深く関わるものである。  なお,就業やボランティアに関わる体験的な学習の指導については,従前同様適切 に行うこととし,それらを通じて,「勤労の尊さ」,「創造することの喜び」の体得, 「望ましい勤労観,職業観」の育成,「社会奉仕の精神」の涵 かん 養を図ることとしている。 ② 教育課程の編成(第1章総則第2款)  各学校の教育目標と教育課程の編成(第1章総則第2款1),教科等横断的な視点 に立った資質・能力の育成(第1章総則第2款2),教育課程の編成における共通的 事項(第1章総則第2款3),学校段階等間の接続(第1章総則第2款4),通信制の 課程における教育課程の特例(第1章総則第2款5)について示している。  主な改善事項を以下に示す。 ア 各学校の教育目標と教育課程の編成(第1章総則第2款1)  本項は,今回新たに加えたものである。各学校における教育課程の編成に当たっ て重要となる各学校の教育目標を明確に設定すること,教育課程の編成についての 基本的な方針を家庭や地域と共有すべきこと,各学校の教育目標を設定する際に総 合的な探究の時間について各学校の定める目標との関連を図ることについて規定し ている。 イ 教科等横断的な視点に立った資質・能力の育成(第1章総則第2款2)  本項も,今回新たに加えたものである。生徒に「生きる力」を育むことを目指し て教育活動の充実を図るに当たっては,言語能力,情報活用能力,問題発見・解決 能力等の学習の基盤となる資質・能力や,現代的な諸課題に対応して求められる資 質・能力を教科等横断的に育成することが重要であることを示している。 ウ 教育課程の編成における共通的事項(第1章総則第2款3)  各教科・科目及び単位数等,各教科・科目の履修等,各教科・科目等の授業時数 等など,教育課程の編成において共通して留意すべき既存の規定を再整理してまと めて示すなどの構成の改善を図っている。  今回の改訂では,「共通性の確保」と「多様性への対応」を軸に,高等学校にお いて育成を目指す資質・能力を踏まえて教科・科目等の構成の見直しを図ってい る。一方で,標準単位数の範囲内で合計が最も少なくなるように履修した際の必履 修教科・科目の単位数の合計(35 単位)や専門学科(専門教育を主とする学科を いう。以下同じ。)において全ての生徒に履修させる専門教科・科目(第1章総則 第2款3(1)ウの表に掲げる各教科・科目,同表に掲げる教科に属する学校設定科 目及び専門教育に関する学校設定教科に関する科目をいう。以下同じ。)の単位数 の下限(25 単位)については従前と変更しておらず,高等学校において共通に履 修しておくべき内容は,引き続き担保しているところである。 エ 学校段階等間の接続(第1章総則第2款4)  本項は,今回新たに加えたものである。初等中等教育全体を見通しながら,教育 課程に基づく教育活動を展開する中で,生徒に求められる資質・能力がバランスよ く育まれるよう,卒業後の進路を含めた学校段階等間の接続について明記したもの である。 オ 通信制の課程における教育課程の特例(第1章総則第2款5) 通信制の課程については,通信制の課程の教育方法が全日制・定時制の課程と異 なることから,従前から特例が定められていたところである。  今回の改訂では,添削指導の充実に向けた留意事項やメディア学習によって面接 指導時間を減免する際の具体的な留意事項等を明記し,通信制の課程における教育 の質の向上を図っている。 ③ 教育課程の実施と学習評価(第1章総則第3款)  各学校におけるカリキュラム・マネジメントの充実のためには,教育課程の編成の みならず,実施,評価,改善の過程を通じて教育活動を充実していくことが重要であ る。  今回の改訂においては,カリキュラム・マネジメントに資する観点から,教育課程 の実施及び学習評価について独立して項目立てを行い,主体的・対話的で深い学びの 実現に向けた授業改善(第1章総則第3款1)及び学習評価の充実(第1章総則第3 款2)について規定している。  主な改善事項を以下に示す。 ア 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善(第1章総則第3款1)  今回の改訂では,育成を目指す資質・能力を確実に育むため,単元や題材など内 容や時間のまとまりを見通しながら,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現に向 けた授業改善を行うことを明記した。加えて,言語環境の整備と言語活動の充実, コンピュータ等や教材・教具の活用,見通しを立てたり振り返ったりする学習活 動,体験活動,学校図書館,地域の公共施設の利活用について,各教科・科目等の 指導に当たっての配慮事項として整理して示している。 イ 学習評価の充実(第1章総則第3款2)  学習評価は,学校における教育活動に関し,生徒の学習状況を評価するものであ る。生徒の学習の成果を的確に捉え,教師が指導の改善を図るとともに,生徒自身 が自らの学習を振り返って次の学習に向かうことができるためにも,学習評価の在 り方は重要であり,教育課程や学習・指導方法の改善と一貫性のある取組を進める ことが求められる。今回の改訂においては,こうした点を踏まえ,学習評価に関す る記載を充実している。 ④ 単位の修得及び卒業の認定(第1章総則第4款)  生徒に卒業までに修得させる単位数(74 単位以上)や課程の修了の認定等につい ては,従前どおりとしている。  なお,学校教育法施行規則等においては,学校外における学修等について単位認定 を可能とする制度が設けられており,それらの制度についても適切な運用がなされる よう,本解説第5章に説明を加えている。 ⑤ 生徒の発達の支援(第1章総則第5款) 今回の改訂においては,生徒の発達の支援の観点から,従前の規定を再整理して独 立して項目立てを行うとともに,記載の充実を図っている。具体的には,生徒の発達 を支える指導の充実及び特別な配慮を必要とする生徒への指導について規定している ところである。  主な改善事項を以下に示す。 ア 生徒の発達を支える指導の充実(第1章総則第5款1)  生徒一人一人の発達を支える視点から,ホームルーム経営や生徒指導,キャリア 教育の充実と教育課程との関係について明記するとともに,個に応じた指導の充実 に関する記載を充実した。 イ 特別な配慮を必要とする生徒への指導(第1章総則第5款2)  障害のある生徒などへの指導,海外から帰国した生徒などの学校生活への適応 や,日本語の習得に困難のある生徒への指導,不登校生徒への配慮など,特別な配 慮を必要とする生徒への対応について明記した。 ⑥ 学校運営上の留意事項(第1章総則第6款)  各学校におけるカリキュラム・マネジメントの充実に資するよう,「教育課程を実 施するに当たって何が必要か」という観点から,教育課程の改善と学校評価,教育課 程外の活動との連携等(第1章総則第6款1),家庭や地域社会との連携及び協働と 学校間の連携(第1章総則第6款2)について記載を充実している。  具体的には,教育課程の編成及び実施に当たっての各分野における学校の全体計画 等との関連,教育課程外の学校教育活動(特に部活動)と教育課程の関連,教育課程 の実施に当たっての家庭や地域との連携・協働について記載を充実している。 ⑦ 道徳教育に関する配慮事項(第1章総則第7款)  小・中学校学習指導要領総則と同様に,道徳教育の充実の観点から,高等学校にお ける道徳教育推進上の配慮事項を第7款としてまとめて示すこととした。  詳細は,次節に記載している。 ## 第 3 節 道徳教育の充実 ###  高等学校における道徳教育に係る改訂の基本方針と要点 (1) 改訂の基本方針  今回の改訂は,平成 28 年 12 月の中央教育審議会の答申を踏まえ,次のような方針の 下で行った。  高等学校における道徳教育は人間としての在り方生き方に関する教育として,学校の 教育活動全体を通じて行うというこれまでの基本的な考え方は今後も引き継ぐととも に,各学校や生徒の実態に応じて重点化した道徳教育を行うために,校長の方針の下, 高等学校において道徳教育推進を主に担当する教師(以下「道徳教育推進教師」とい う。)を新たに位置付けた。  また,高等学校の道徳教育の目標等については,先に行われた小学校及び中学校学習 指導要領の改訂を踏まえつつ,学校の教育活動全体を通じて,答えが一つではない課題 に誠実に向き合い,それらを自分のこととして捉え,他者と協働しながら自分の答えを 見いだしていく思考力,判断力,表現力等や,これらの基になる主体性を持って多様な 人々と協働して学ぶ態度の育成が求められていることに対応し,公民科に新たに設けら れた「公共」及び「倫理」並びに特別活動を,人間としての在り方生き方に関する教育 を通して行う高等学校の道徳教育の中核的な指導の場面として関連付けるなど改善を 行った。 (2) 改訂の要点  今回の高等学校学習指導要領においては,総則の中で,道徳教育に関連して以下のと おり改善を図っている。 ア 高等学校教育の基本と教育課程の役割  道徳教育の目標について,「人間としての在り方生き方を考え,主体的な判断の 下に行動し,自立した人間として他者と共によりよく生きるための基盤となる道徳 性を養うこと」と簡潔に示した。また,道徳教育を進めるに当たっての留意事項と して,道徳教育の目標を達成するための諸条件を示しながら「主体性のある日本人 の育成に資することとなるよう特に留意すること」とした。また,第1章総則第7 款を新たに設け,小・中学校と同様に,道徳教育推進上の配慮事項を示した。 イ 道徳教育に関する配慮事項  学校における道徳教育は,教育活動全体を通じて行うものであることから,その 配慮事項を以下のように付け加えた。 (ア)  道徳教育は,学校の教育活動全体で行うことから,全体計画の作成において は,校長の方針の下に,道徳教育推進教師を中心に,全教師が協力して道徳教育 を行うこと。その際,公民科の「公共」及び「倫理」並びに特別活動が,人間と しての在り方生き方に関する中核的な指導の場面であることを示した。 (イ)  各学校において指導の重点化を図るために,高等学校において道徳教育を進め るに当たっての配慮事項を示した。 (ウ)  就業体験活動やボランティア活動,自然体験活動,地域の行事への参加などの 豊かな体験の充実とともに,道徳教育がいじめの防止や安全の確保等に資するよ う留意することを示した。 (エ)  学校の道徳教育の全体計画や道徳教育に関する諸活動などの情報を積極的に公 表すること,家庭や地域社会との共通理解を深めることを示した。 # 第2章 教育課程の基準 ## 第 1 節 教育課程の意義 教育課程は,日々の指導の中でその存在があまりにも当然のこととなっており,その意 義が改めて振り返られる機会は多くはないが,各学校の教育活動の中核として最も重要な 役割を担うものである。教育課程の意義については様々な捉え方があるが,学校において 編成する教育課程については,学校教育の目的や目標を達成するために,教育の内容を生 徒の心身の発達に応じ,授業時数との関連において総合的に組織した各学校の教育計画で あると言うことができ,その際,学校の教育目標の設定,指導内容の組織及び授業時数の 配当が教育課程の編成の基本的な要素になってくる。 学校教育の目的や目標は教育基本法及び学校教育法に示されている。まず,教育基本法 においては,教育の目的(第1条)及び目標(第2条)とともに,学校教育の基本的役割 (第6条第2項)が定められている。これらの規定を踏まえ,学校教育法においては,高 等学校の目的(第 50 条)及び目標(第 51 条)に関する規定がそれぞれ置かれている。 これらの規定を踏まえ,学校教育法施行規則においては,各学科に共通する各教科とし て,国語,地理歴史,公民,数学,理科,保健体育,芸術,外国語,家庭,情報及び理数 を,主として専門学科において開設される各教科として,農業,工業,商業,水産,家 庭,看護,情報,福祉,理数,体育,音楽,美術及び英語を示しており,これらの教科並 びに総合的な探究の時間及び特別活動によって教育課程を編成することとしている。 各学校においては,こうした法令で定められている教育の目的や目標などに基づき,生 徒や学校,地域の実態に即し,学校教育全体や各教科等の指導を通して育成を目指す資 質・能力を明確にすること(第1章総則第1款3)や,各学校の教育目標を設定(第1章 総則第2款1)することが求められ,それらを実現するために必要な各教科・科目等の教 育の内容を,教科等横断的な視点をもちつつ,各教科・科目等の相互の関連を図りながら 組織する必要がある。 授業時数は,教育の内容との関連において定められるべきものであるが,学校教育は一 定の時間内において行わなければならないので,教育の内容とどのように組み合わせて効 果的に配当するかは,教育課程の編成上重要な要素になってくる。高等学校の各教科・科 目は,小・中学校の各教科のように,標準授業時数を学校教育法施行規則に定めているの ではなく,単位制を採用して,1単位の算定に必要な一定の単位時間数,すなわち1単位 当たりの授業時数を定めている。したがって,高等学校の各教科・科目及び総合的な探究 の時間における授業時数の配当に当たっては,その標準単位数等に基づいて,内容との関 連を踏まえつつ,具体的な単位数を配当することが重要である。 各学校においては,以上のことを踏まえ,教育基本法や学校教育法をはじめとする教育 課程に関する法令に従い,学校教育全体や各教科・科目等の目標やねらいを明確にし,そ れらを実現するために必要な教育の内容を,教科等横断的な視点をもちつつ,各教科・科 目等の相互の関連を図りながら,授業時数との関連において総合的に組織していくことが 求められる。こうした教育課程の編成は,第1章総則第1款5に示すカリキュラム・マネ ジメントの一環として行われるものであり,総則の項目立てについては,各学校における 教育課程の編成や実施等に関する流れを踏まえて,①高等学校教育の基本と教育課程の役 割(第1章総則第1款),②教育課程の編成(第1章総則第2款),③教育課程の実施と学 習評価(第1章総則第3款),④単位の修得及び卒業の認定(第1章総則第4款),⑤生徒 の発達の支援(第1章総則第5款),⑥学校運営上の留意事項(第1章総則第6款),⑦道 徳教育に関する配慮事項(第1章総則第7款)としているところである。 ## 第 2 節 教育課程に関する法制 ### 1 教育課程とその基準 学校教育が組織的,継続的に実施されるためには,学校教育の目的や目標を設定し,そ の達成を図るための教育課程が編成されなければならない。 高等学校は義務教育ではないが,公の性質を有する(教育基本法第6条第1項)もので あるから,全国的に一定の教育水準を確保し,全国どこにおいても同水準の教育を受ける ことのできる機会を国民に保障することが要請される。このため,高等学校教育の目的や 目標を達成するために各学校において編成,実施される教育課程について,国として一定 の基準を設けて,ある限度において国全体としての統一性を保つことが必要となる。 一方,教育は,その本質からして生徒の心身の発達の段階や特性及び学校や地域の実態 に応じて効果的に行われることが大切であり,また,各学校において教育活動を効果的に 展開するためには,学校や教師の創意工夫に負うところが大きい。 このような観点から,学習指導要領は,法規としての性格を有するものとして,教育の 内容等について必要かつ合理的な事項を大綱的に示しており,各学校における指導の具体 化については,学校や教職員の裁量に基づく多様な創意工夫を前提としている。前文にお いて,「学習指導要領とは,こうした理念の実現に向けて必要となる教育課程の基準を大 綱的に定めるものである。学習指導要領が果たす役割の一つは,公の性質を有する学校に おける教育水準を全国的に確保することである。また,各学校がその特色を生かして創意 工夫を重ね,長年にわたり積み重ねられてきた教育実践や学術研究の蓄積を生かしながら, 生徒や地域の実態や課題を捉え,家庭や地域社会と協力して,学習指導要領を踏まえた教 育活動の更なる充実を図っていくことも重要である」としているのも,こうした観点を反 映したものである。 具体的には,全ての生徒に対して指導するものとして学習指導要領に示している内容を 確実に指導した上で,生徒の学習状況などその実態等に応じて必要がある場合には,各学 校の判断により,学習指導要領に示していない内容を加えて指導することも可能である(学 習指導要領の「基準性」)。また,これまでどおり学校設定教科・科目を設けたり,授業の 1単位時間を弾力的に運用したりすることを可能としていること,総合的な探究の時間に おける各学校の創意工夫を重視していることなどにも変更はない。 各学校においては,国として統一性を保つために必要な限度で定められた基準に従いな がら,創意工夫を加えて,生徒や学校,地域の実態に即した教育課程を責任をもって編成, 実施することが必要である。 また,教育委員会等の設置者は,それらの学校の主体的な取組を支援していくことに重 点を置くことが大切である。 ## 2 教育課程に関する法令 我が国の学校制度は,日本国憲法の精神にのっとり,学校教育の目的や目標及び教育課 程について,法令で種々の定めがなされている。 (1) 教育基本法  教育の目的(第1条),教育の目標(第2条),生涯学習の理念(第3条),教育の機 会均等(第4条),義務教育(第5条),学校教育(第6条),私立学校(第8条),教員 (第9条),幼児期の教育(第 11 条),学校,家庭及び地域住民等の相互の連携協力(第 13 条),政治教育(第 14 条),宗教教育(第 15 条),教育行政(第 16 条),教育振興基 本計画(第 17 条)などについて定められている。 (2) 学校教育法,学校教育法施行規則  学校教育法では,教育基本法における教育の目的及び目標並びに義務教育の目的に関 する規定を踏まえ,義務教育の目標が 10 号にわたって規定されている(第 21 条)。そ の上で,高等学校の目的について「中学校における教育の基礎の上に,心身の発達及び 進路に応じて,高度な普通教育及び専門教育を施す」(第 50 条)とするとともに,高等 学校教育の目標について次のように定められている。 学校教育法 第 51 条 高等学校における教育は,前条に規定する目的を実現するため,次に掲 げる目標を達成するよう行われるものとする。 一 義務教育として行われる普通教育の成果を更に発展拡充させて,豊かな人間 性,創造性及び健やかな身体を養い,国家及び社会の形成者として必要な資質 を養うこと。 二 社会において果たさなければならない使命の自覚に基づき,個性に応じて将 来の進路を決定させ,一般的な教養を高め,専門的な知識,技術及び技能を習 得させること。 三 個性の確立に努めるとともに,社会について,広く深い理解と健全な批判力 を養い,社会の発展に寄与する態度を養うこと。  また,第 62 条の規定により高等学校に準用される第 30 条第2項は,「前項の場合に おいては,生涯にわたり学習する基盤が培われるよう,基礎的な知識及び技能を習得さ せるとともに,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力 その他の能力をはぐくみ,主体的に学習に取り組む態度を養うことに,特に意を用いな ければならない。」と規定している。更に,これらの規定に従い,文部科学大臣が高等 学校の教育課程の基準を定めることになっている(第 52 条)。  なお,教育基本法第2条(教育の目標)及び学校教育法第 51 条(高等学校教育の目標)は, いずれも「目標を達成するよう行われるものとする。」と規定している。これ らは,生徒が目標を達成することを義務付けるものではないが,教育を行う者は「目標 を達成するよう」に教育を行う必要があることに留意する必要がある。  この学校教育法の規定に基づいて,文部科学大臣は,学校教育法施行規則において, 高等学校の教育課程に関するいくつかの基準を定めている。すなわち,高等学校の教育 課程は,各教科に属する科目,総合的な探究の時間及び特別活動によって編成すること (第 83 条),各教科に属する科目の種類(別表第3)及び卒業に必要な修得単位数(第 96 条)を定めている。これらの定めのほか,高等学校の教育課程については,教育課 程の基準として文部科学大臣が別に公示する高等学校学習指導要領によらなければなら ないこと(第 84 条)を定めている。 (3) 学習指導要領  学校教育法第 52 条及び学校教育法施行規則第 84 条の規定に基づいて,文部科学大臣 は高等学校学習指導要領を告示という形式で定めている。学校教育法施行規則第 84 条 が「高等学校の教育課程については,この章に定めるもののほか,教育課程の基準とし て文部科学大臣が別に公示する高等学校学習指導要領によるものとする」と示している ように,学習指導要領は,高等学校教育について一定の水準を確保するために法令に基 づいて国が定めた教育課程の基準であるので,各学校の教育課程の編成及び実施に当 たっては,これに従わなければならないものである。  前述のとおり,学習指導要領は「基準性」を有することから,全ての生徒に対して指 導するものとして学習指導要領に示している内容を確実に指導した上で,生徒の学習状 況などその実態等に応じて必要がある場合には,各学校の判断により,学習指導要領に 示していない内容を加えて指導することも可能である(第1章総則第2款3(5)ア)。ま た,各教科等の指導の順序について適切な工夫を行うこと(第1章総則第2款3(5)イ) や,授業の1単位時間の設定を弾力的に行うこと(第1章総則第2款3(3)キ),総合的 な探究の時間において目標や内容を各学校で定めることなど,学校や教職員の創意工夫 が重視されているところである。  今回の改訂においては,後述するとおり,各教科・科目等の目標や内容について,第 1章総則第1款3(1)から(3)までに示す,資質・能力の三つの柱に沿って再整理してい る。この再整理は,各教科・科目等において示す目標,内容等の範囲に影響を及ぼすも のではなく,それらを資質・能力の観点から改めて整理し直したものである。したがっ て各教科・科目等の目標,内容等が中核的な事項にとどめられていること,各学校の創 意工夫を加えた指導の展開を前提とした大綱的なものとなっていることは従前と同様で ある。 (4) 地方教育行政の組織及び運営に関する法律  公立の高等学校においては,以上のほか,地方教育行政の組織及び運営に関する法律 による定めがある。すなわち,教育委員会は,学校の教育課程に関する事務を管理,執 行し(第 21 条第5号),法令又は条例に違反しない限度において教育課程について必要 な教育委員会規則を定めるものとする(第 33 条第1項)とされている。この規定に基 づいて,教育委員会が教育課程について規則などを設けている場合には,学校はそれに 従って教育課程を編成しなければならない。  私立の高等学校においては,学校教育法(第 62 条の規定により高等学校に準用され る第 44 条)及び私立学校法(第4条)の規定により,都道府県知事が所轄庁であり, 教育課程を改める際には都道府県知事に対して学則変更の届出を行うこととなっている (学校教育法施行令第 27 条の2)。また,地方教育行政の組織及び運営に関する法律(第 27 条の5)の規定により,都道府県知事が私立学校に関する事務を管理,執行するに 当たり,必要と認めるときは,当該都道府県の教育委員会に対し,学校教育に関する専 門的事項について助言又は援助を求めることができる。  各学校においては,以上の法体系の全体を理解して教育課程の編成及び実施に当たっ ていくことが求められる。 # 第3章 教育課程の編成 ## 第 1 節 高等学校教育の基本と教育課程の役割 ### 1 教育課程編成の原則(第1章総則第1款1) 各学校においては,教育基本法及び学校教育法その他の法令並びにこの章以下に示 すところに従い,生徒の人間として調和のとれた育成を目指し,生徒の心身の発達の 段階や特性等,課程や学科の特色及び学校や地域の実態を十分考慮して,適切な教育 課程を編成するものとし,これらに掲げる目標を達成するよう教育を行うものとす る。 (1) 教育課程の編成の主体  教育課程の編成主体については,第1章総則第1款1において「各学校においては, …適切な教育課程を編成するものとし」と示している。また,第1章総則第1款2で は,学校の教育活動を進めるに当たっては,各学校において「創意工夫を生かした特色 ある教育活動を展開する」ことが示されており,教育課程編成における学校の主体性を 発揮する必要性が強調されている。  学校において教育課程を編成するということは,学校教育法において「校長は,校務 をつかさどり,所属職員を監督する。」(第 62 条の規定により高等学校に準用される第 37 条第 4 項)と規定されていることから,学校の長たる校長が責任者となって編成す るということである。これは権限と責任の所在を示したものであり,学校は組織体であ るから,教育課程の編成作業は,当然ながら全教職員の協力の下に行わなければならな い。総合的な探究の時間をはじめとして,創意工夫を生かした教育課程を各学校で編成 することが求められており,教科や学年等の枠を超えて教師同士が連携協力することが ますます重要となっている。  各学校には,校長,副校長,教頭のほかに教務主任をはじめとして各主任等が置か れ,それらの担当者を中心として全教職員がそれぞれ校務を分担処理している。各学校 の教育課程は,これらの学校の運営組織を生かし,各教職員がそれぞれの分担に応じて 十分研究を重ねるとともに教育課程全体のバランスに配慮しながら,創意工夫を加えて 編成することが大切である。また,校長は,学校全体の責任者として指導性を発揮し, 家庭や地域社会との連携を図りつつ,学校として統一のある,しかも一貫性をもった教 育課程の編成を行うように努めることが必要である。 (2) 教育課程の編成の原則  本項が規定する「これらに掲げる目標」とは,学習指導要領を含む教育課程に関する 法令及び各学校が編成する教育課程が掲げる目標を指すものである。また,「目標を達 1 教育課程編成の原則(第1章総則第1款1) 成するよう教育を行うものとする」の規定は,前述のとおり,教育基本法第2条(教育 の目標),学校教育法第 51 条(高等学校教育の目標)が,いずれも「目標を達成するよ う行われるものとする」と規定していることを踏まえたものであり,生徒が目標を達成 することを義務付けるものではないが,教育を行う者は,これらに掲げる目標を達成す るように教育を行う必要があることを示したものである。  本項は,そうした教育を行うための中核となる教育課程を編成するに当たって,次の 5点が編成の原則となることを示している。 ア 教育基本法及び学校教育法その他の法令並びに学習指導要領の示すところに従うこ と  学校において編成される教育課程については,公教育の立場から,本解説第2章第 2節において説明したとおり法令により種々の定めがなされている。本項が規定する 「教育基本法及び学校教育法その他の法令」とは,教育基本法,学校教育法,学校教 育法施行規則,地方教育行政の組織及び運営に関する法律等の法令であり,各学校に おいては,これらの法令に従って編成しなければならない。  なお,学校における政治教育及び宗教教育については,教育基本法に次のように規 定されているので,各学校において教育課程を編成,実施する場合にも当然これらの 規定に従わなければならない。  教育基本法 (政治教育) 第 14 条 良識ある公民として必要な政治的教養は,教育上尊重されなければなら ない。 2 法律に定める学校は,特定の政党を支持し,又はこれに反対するための政治教 育その他政治的活動をしてはならない。 (宗教教育) 第 15 条 宗教に関する寛容の態度,宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生 活における地位は,教育上尊重されなければならない。 2 国及び地方公共団体が設置する学校は,特定の宗教のための宗教教育その他宗 教的活動をしてはならない。  次に,本項に規定する「この章以下に示すところ」とは,言うまでもなく学習指導 要領を指している。  学習指導要領は,学校教育法第 52 条を受けた学校教育法施行規則第 84 条において 「高等学校の教育課程については,この章に定めるもののほか,教育課程の基準とし て文部科学大臣が別に公示する高等学校学習指導要領によるものとする。」と示して いるように,法令上の根拠に基づいて定められているものである。したがって,学習 指導要領は,国が定めた教育課程の基準であり,各学校における教育課程の編成及び 実施に当たって基準として従わなければならない。  教育課程は,生徒の心身の発達の段階や特性等,課程や学科の特色及び学校や地域 の実態を考慮し,教師の創意工夫を加えて学校が編成するものである。教育課程の基 準もその点に配慮して定められているので,教育課程の編成に当たっては,法令や学 習指導要領の内容について十分理解するとともに創意工夫を加え,学校の特色を生か した教育課程を編成することが大切である。 イ 生徒の人間として調和のとれた育成を目指すこと  前述アのとおり,学習指導要領は,法令上の根拠に基づいて国が定めた教育課程の 基準であると同時に,その規定は大綱的なものであることから,学校において編成さ れる教育課程は,生徒の心身の発達の段階や特性等,課程や学科及び学校や地域の実 態を考慮し,創意工夫を加えて編成されるものである。教育課程の基準もその点に配 慮して定められているので,各学校においては,校長を中心として全教職員が連携協 力しながら,学習指導要領を含む教育課程に関する法令の内容について十分理解する とともに創意工夫を加え,学校として統一のあるしかも特色をもった教育課程を編成 することが大切である。  本項が規定する「生徒の人間として調和のとれた育成を目指」すということは,ま さに教育基本法や学校教育法の規定に根ざした学校教育の目的そのものであって,教 育課程の編成もそれを目指して行わなければならない。学習指導要領総則において も,知・徳・体のバランスのとれた「生きる力」の育成(第1章総則第1款2)や, そのための知識及び技能の習得と,思考力,判断力,表現力等の育成,学びに向かう 力,人間性等の涵かん 養という,いわゆる資質・能力の三つの柱のバランスのとれた育成 (第1章総則第1款3),中学校教育との接続や高等学校卒業以降の教育や職業との 円滑な接続など学校段階等間の接続(第1章総則第2款4)など,生徒の発達の段階に 応じた調和のとれた育成を重視していることに留意する必要がある。 ウ 生徒の心身の発達の段階や特性等を十分考慮すること  第1章総則第1款1においては,「各学校においては,…生徒の心身の発達の段階 や特性等…を十分考慮して,適切な教育課程を編成する」と示している。これは,各 学校において教育課程を編成する場合には,生徒の調和のとれた発達を図るという観 点から,生徒の発達の段階と特性等を十分把握して,これを教育課程の編成に反映さ せることが必要であるということを強調したものである。  高等学校段階は,身体,生理面はもちろん,心身の全面にわたる発達が急激に進む 時期である。また,義務教育の基礎の上に立って,自らの在り方生き方を考えさせ, 将来の進路を選択する能力や態度を育成するとともに,社会についての認識を含め, 興味・関心等に応じ将来の学問や職業の専門分野の基礎・基本の学習によって,個性 の一層の伸長と自律を図ることが求められている。  これらを踏まえ,教育課程の編成に当たっては,生徒の一般的な発達の段階に即し ながら,個々の生徒についての能力・適性,興味・関心や性格,更には進路などの違 いにも注目していくことが大切である。各学校においては,生徒の発達の過程を的確 に捉えるとともに,個々の生徒の特性等に適切に対応し,その一層の伸長を図るよう 適切な教育課程を編成することが必要である。  なお,能力・適性,興味・関心や性格などの個人の属性を「特性」とし,進路や学 習経験などそれ以外の事情と併せ「特性等」としている。 エ 課程や学科の特色を十分考慮すること  第1章総則第1款1においては,「各学校においては,…課程や学科の特色…を十 分考慮して,適切な教育課程を編成する」と示している。  ここでいう「課程」とは,全日制の課程,定時制の課程及び通信制の課程並びに学 年による教育課程の区分を設けるいわゆる学年制の課程及びその区分を設けない単位 制による課程のことであり,「学科」とは,普通科,専門学科(農業科,工業科,商 業科,理数科,音楽科等)及び総合学科のことである。  もとより,高等学校教育としては,課程や学科の別を問わず,その目標とするとこ ろに変わりはないが,教育課程としては,必履修教科・科目の履修や卒業に必要な 74 単位以上の修得を共通の基礎要件とし,これに加えてそれぞれの課程や学科の特 色を生かした教育を行うことを考えて編成する必要がある。  特に定時制の課程においては,勤労青年のほか,多様な入学動機をもつ者,生涯学 習の一環で学ぶ者など,生徒の実態が多様化していることを踏まえ,各学年への各教 科・科目の配当を弾力化するなどの教育課程編成上の工夫や,個に応じた指導を充実 する観点から,学年による教育課程の区分を設けない単位制による課程の活用を進め るとともに,多様な学習の機会を確保していくため,実務代替等の自校以外の学習成 果の単位認定制度の積極的な活用が望まれる。  通信制の課程については,様々な事情で毎日通学することが困難な生徒の学習の場 を確保するため,教育・指導の充実を図っていくことが大切である。  学年による教育課程の区分を設けない単位制による課程については,多様な科目を 開設し,選択幅の広い教育課程を編成するとともに,適切な科目の履修ができるよ う,ガイダンスの機能の充実を図ることや,集団活動の機会の充実を図ることが必要 である。  いわゆる学年制をとる学校についても,高等学校においては単位制が採用され,修 得した各教科・科目及び総合的な探究の時間の単位数の合計が卒業までに必要な単位 数を上回った場合に全課程の修了を認定することとしている趣旨を踏まえ,適切な教 育課程の編成,実施が望まれる。  また,普通科においては,各学科に共通する各教科・科目(以下「共通教科・科 目」という。)だけでなく,生徒の特性や進路等,学校や地域の実態を踏まえながら, 専門教科・科目を適切に開設するなど,それぞれの生徒や学校の実態等に一層対応し た教育課程の編成が求められる。専門学科は,産業の動向等に適切に対応できるよ う,専門性の基礎・基本の教育に重点を置くとともに,実際的,体験的学習を重視 し,産業界等との連携をより一層深めることが必要である。総合学科は,共通教科・ 科目及び専門教科・科目にわたる多様な科目の中から生徒が主体的に履修したい科目 を選択でき,生徒の多様な興味・関心,進路希望等に応じた学習を可能にするという 特質を生かした教育課程の編成が要請される。 オ 学校や地域の実態を十分考慮すること (ア) 学校の実態  学校規模,教職員の状況,施設設備の状況,生徒の実態などの人的又は物的な体 制の実態は学校によって異なっている。  教育課程の編成は,第1章総則第1款5に示すカリキュラム・マネジメントの一 環として,このような学校の体制の実態が密接に関連してくるものであり,教育活 動の質の向上を組織的かつ計画的に図っていくためには,これらの人的又は物的な 体制の実態を十分考慮することが必要である。そのためには,特に,生徒の特性や 教職員の構成,教師の指導力,教材・教具の整備状況,地域住民による連携及び協 働の体制に関わる状況などについて客観的に把握して分析し,教育課程の編成に生 かすことが必要である。 (イ) 地域の実態  教育基本法第 13 条は「学校,家庭及び地域住民その他の関係者は,教育におけ るそれぞれの役割と責任を自覚するとともに,相互の連携及び協力に努めるものと する。」と規定している。また,学校教育法には「高等学校は,当該高等学校に関 する保護者及び地域住民その他の関係者の理解を深めるとともに,これらの者との 連携及び協力の推進に資するため,当該高等学校の教育活動その他の学校運営の状 況に関する情報を積極的に提供するものとする」と定められている(第 62 条の規 定により高等学校に準用される第 43 条)。  これらの規定が示すとおり,学校は地域社会を離れては存在し得ないものであ り,生徒は家庭や地域社会で様々な経験を重ねて成長している。  地域には,都市,農村,山村,漁村など生活条件や環境の違いがあり,産業,経 済,文化等にそれぞれ特色をもっている。こうした地域社会の実態を十分考慮して 教育課程を編成することが必要である。とりわけ,学校の教育目標や指導内容の選 択に当たっては,地域の実態を考慮することが重要である。そのためには,地域社 会の現状はもちろんのこと,歴史的な経緯や将来への展望など,広く社会の変化に 注目しながら地域社会の実態を十分分析し検討して的確に把握することが必要であ る。また,地域の教育資源や学習環境(近隣の学校や大学,研究機関,社会教育施 設,生徒の学習に協力することのできる人材等)の実態を考慮し,教育活動を計画 することが必要である。  なお,学校における教育活動が学校の教育目標に沿って一層効果的に展開される ためには,家庭や地域社会と学校との連携を密にすることが必要である。すなわち, 学校の教育方針や特色ある教育活動の取組,生徒の状況などを家庭や地域社会 に説明し,理解を求め協力を得ること,学校が家庭や地域社会からの要望に応える ことが重要であり,このような観点から,その積極的な連携を図り,相互の意思の 疎通を図って,それを教育課程の編成,実施に生かしていくことが求められる。保 護者や地域住民が学校運営に参画する学校運営協議会制度(コミュニティ・スクー ル)や,幅広い地域住民等の参画により地域全体で生徒の成長を支え地域を創生す る地域学校協働活動等の推進により,学校と地域の連携・協働が進められてきてい るところであり,これらの取組を更に広げ,教育課程を介して学校と地域がつなが ることにより,地域でどのような生徒を育てるのか,何を実現していくのかという 目標やビジョンの共有が促進され,地域とともにある学校づくりが一層効果的に進 められていくことが期待される。 以上,教育課程の編成の原則を述べてきたが,校長を中心として全教職員が共通理解を 図りながら,学校として統一のあるしかも特色をもった教育課程を編成することが望まれ る。 ### 2 生きる力を育む各学校の特色ある教育活動の展開(第1章総則第1款2) 学校の教育活動を進めるに当たっては,各学校において,第3款の1に示す主体 的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を通して,創意工夫を生かした特色あ る教育活動を展開する中で,次の(1)から(3)までに掲げる事項の実現を図り,生徒に 生きる力を育むことを目指すものとする。 本項は,学校の教育活動を進めるに当たっては,後述するとおり,第1章総則第3款1 に示す主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を通して,創意工夫を生かした 特色ある教育活動を展開する中で,知・徳・体のバランスのとれた「生きる力」の育成を 目指すことを示している。 「生きる力」とは,平成8年7月の中央教育審議会答申「21 世紀を展望した我が国の教 育の在り方について(第一次答申)」において,基礎・基本を確実に身に付け,いかに社 会が変化しようと,自ら課題を見付け,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し, よりよく問題を解決する資質や能力,自らを律しつつ,他人とともに協調し,他人を思い やる心や感動する心などの豊かな人間性,たくましく生きるための健康や体力である旨, 指摘されている。 平成 21 年の改訂においては,新しい知識・情報・技術が社会のあらゆる領域で重要性 を増す,いわゆる知識基盤社会において,確かな学力,豊かな心,健やかな体の調和を重 視する「生きる力」を育むことがますます重要になっているという認識が示され,知・ 徳・体のバランスのとれた育成(教育基本法第2条第1号)や,基礎的な知識及び技能を 習得させるとともに,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表 現力その他の能力を育み,主体的に学習に取り組む態度を養うこと(学校教育法第 30 条 第2項)など,教育基本法や学校教育法の規定に基づき,生徒に「生きる力」を育むこと が重視されたところである。 平成 28 年 12 月の中央教育審議会答申を受け,今回の改訂においては,情報化やグロー バル化といった社会的変化が,人間の予測を超えて加速度的に進展するようになってきて いることを踏まえ,複雑で予測困難な時代の中でも,生徒一人一人が,社会の変化に受け 身で対処するのではなく,主体的に向き合って関わり合い,自らの可能性を発揮し多様な 他者と協働しながら,よりよい社会と幸福な人生を切り拓ひら き,未来の創り手となることが できるよう,教育を通してそのために必要な力を育んでいくことを重視している。 こうした力は,学校教育が長年その育成を目指してきた「生きる力」そのものであり, 加速度的に変化する社会にあって「生きる力」の意義を改めて捉え直し,しっかりと発揮 できるようにしていくことが重要となる。このため,本項において「生きる力」の育成を 掲げ,各学校の創意工夫を生かした特色ある教育活動を通して,生徒に確かな学力,豊か な心,健やかな体を育むことを目指すことを示している。なお,本項では(1)から(3)まで にわたって,それぞれが確かな学力,豊かな心,健やかな体に対応する中心的な事項を示 す項目となっているが,これらは学校教育を通じて,相互に関連し合いながら一体的に実 現されるものであることに留意が必要である。 (1) 確かな学力(第1章総則第1款2(1)) (1) 基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させ,これらを活用して課題を解決 するために必要な思考力,判断力,表現力等を育むとともに,主体的に学習に取り 組む態度を養い,個性を生かし多様な人々との協働を促す教育の充実に努めるこ と。その際,生徒の発達の段階を考慮して,生徒の言語活動など,学習の基盤をつ くる活動を充実するとともに,家庭との連携を図りながら,生徒の学習習慣が確立 するよう配慮すること。  教育基本法第2条第1号は,教育の目的として「幅広い知識と教養を身に付け,真理 を求める態度を養」うことを規定し,学校教育法第 62 条の規定により高等学校に準用 される第 30 条第2項は,高等学校教育の実施に当たって,「生涯にわたり学習する基盤 が培われるよう,基礎的な知識及び技能を習得させるとともに,これらを活用して課題 を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくみ,主体的に学 習に取り組む態度を養うことに,特に意を用いなければならない」と規定している。  本項は,こうした法令の規定を受け,生徒が確かな学力を身に付けることができるよ う,基礎的・基本的な知識及び技能の習得と,思考力,判断力,表現力等の育成,主体 的に学習に取り組む態度の涵 かん 養を目指す教育の充実に努めることを示している。加え て,変化が激しく予測困難な時代の中でも通用する確かな学力を身に付けるためには 自分のよさや可能性を認識して個性を生かしつつ,多様な他者を価値のある存在として 尊重し,協働して様々な課題を解決していくことが重要であることから,学校教育法第 30 条第2項に規定された事項に加えて,「個性を生かし多様な人々との協働を促す」こ とを示している。  こうした知識及び技能の習得や,思考力,判断力,表現力等の育成,主体的に学習に 取り組む態度,多様性や協働性の重視といった点は,第1章総則第1款3(1)から(3)ま でに示す資質・能力の三つの柱とも重なり合うものであることから,その詳細や資質・ 能力の三つの柱との関係については,本解説第3章第1節3において解説している。ま た,確かな学力の育成は,第1章総則第3款1に示すとおり,単元や題材など内容や時 間のまとまりを見通した,主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を通して 実現が図られるものであり,そうした学習の過程の在り方については,本解説第4章第 1節1において解説している。  本項においては,確かな学力の育成に当たって特に重要となる学習活動として,生徒 の発達の段階を考慮して,まず「生徒の言語活動など,学習の基盤をつくる活動を充実 する」ことを示しており,学習の基盤となる資質・能力の育成については第1章総則第 2款2(1)において,言語活動の充実については第1章総則第3款1(2)においてそれぞ れ規定している。  加えて本項では,「家庭との連携を図りながら,生徒の学習習慣が確立するよう配慮 すること」の重要性を示している。小・中・高等学校を通して学習習慣を確立すること は,その後の生涯にわたる学習に影響する極めて重要な課題であることから,家庭との 連携を図りながら,宿題や予習・復習など家庭での学習課題を適切に課したり,発達の 段階に応じた学習計画の立て方や学び方を促したりするなど家庭学習も視野に入れた指 導を行う必要がある。 (2) 豊かな心(第1章総則第1款2(2)) ① 豊かな心や創造性の涵 かん 養(第1章総則第1款2(2)の1段目) (2) 道徳教育や体験活動,多様な表現や鑑賞の活動等を通して,豊かな心や創造性 の涵かん 養を目指した教育の充実に努めること。  教育基本法第2条第1号は,教育の目的として「豊かな情操と道徳心を培う」こと を規定しており,本項では,道徳教育や体験活動,多様な表現や鑑賞の活動等を通し て,豊かな心や創造性の涵かん 養を目指した教育の充実に努めることを示している。創造 性とは,感性を豊かに働かせながら,思いや考えを基に構想し,新しい意味や価値を 創造していく資質・能力であり,豊かな心の涵 かん 養と密接に関わるものであることか ら,本項において一体的に示している。  豊かな心や創造性の涵かん 養は,第1章総則第3款1に示すとおり,単元や題材など内 容や時間のまとまりを見通した,主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善 を通して実現が図られるものであり,そうした学習の過程の在り方については,本解 説第4章第1節1において解説している。  本項で示す教育活動のうち,道徳教育については次に示す②から④までの解説のと おりであり,体験活動については第1章総則第3款1(5)において示している。多様 な表現や鑑賞の活動等については,芸術科における表現及び鑑賞の活動や,保健体育 科における表現運動,特別活動における文化的行事等の充実を図るほか,各教科等に おける言語活動の充実(第1章総則第3款1(2))を図ることや,教育課程外の学校 教育活動などと相互に関連させ,学校の教育活動全体として効果的に取り組むことも 重要となる。 ② 高等学校における道徳教育(第1章総則第1款2(2)の2段目)  学校における道徳教育は,人間としての在り方生き方に関する教育を学校の教育 活動全体を通じて行うことによりその充実を図るものとし,各教科に属する科目 (以下「各教科・科目」という。),総合的な探究の時間及び特別活動(以下「各教 科・科目等」という。)のそれぞれの特質に応じて,適切な指導を行うこと。  道徳教育は人格形成の根幹に関わるものであり,同時に,民主的な国家・社会の持 続的発展を根底で支えるものでもあることに鑑みると,生徒の生活全体に関わるもの であり,学校で行われる全ての教育活動に関わるものである。  各教科,総合的な探究の時間及び特別活動にはそれぞれ固有の目標や特質があり, それらを重視しつつ教育活動が行われるが,それと同時にその全てが教育基本法第1 条に規定する「人格の完成を目指し,平和で民主的な国家及び社会の形成者として必 要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成」を目的としている。したがって,そ れぞれの教育活動においても,その特質を生かし,生徒の一般的な発達の段階や個々 人の特性等を適切に考慮しつつ,人格形成の根幹であると同時に,民主的な国家・社 会の持続的発展を根底で支える道徳教育の役割をも担うことになる。  道徳教育は,豊かな心をもち,人間としての在り方生き方の自覚を促し,道徳性を 育成することをねらいとする教育活動であり,社会の変化に主体的に対応して生きて いくことができる人間を育成する上で重要な役割をもっている。今日の家庭や学校及 び地域社会における道徳教育の現状や生徒の実態などからみて,更に充実を図ること が強く要請されている。  高等学校における道徳教育は,人間としての在り方生き方に関する教育の中で, 小・中学校における「特別の教科である道徳」(以下「道徳科」という。)の学習等を 通じた道徳的諸価値の理解を基にしながら,自分自身に固有の選択基準・判断基準を 形成していく。これらは様々な体験や思索の機会を通して自らの考えを深めることに より形成されてくるものであり,人間としての在り方生き方に関する教育において は,教師の一方的な押しつけや先哲の思想の紹介にとどまることのないよう留意し, 生徒が自ら考え,自覚を深める学習とすることが重要である。  高等学校においては,生徒の発達の段階に対応した指導の工夫が求められることや 小・中学校と異なり道徳科が設けられていないことからも,学校の教育活動全体を通 じて行う道徳教育の指導のための配慮が特に必要である。このため,高等学校におけ る道徳教育の考え方として示されているのが,人間としての在り方生き方に関する教 育であり,公民科の「公共」及び「倫理」並びに特別活動を中核的な指導場面として 各教科・科目等の特質に応じ学校の教育活動全体を通じて,生徒が人間としての在り 方生き方を主体的に探求し豊かな自己形成ができるよう,適切な指導を行うものとし ている。公民科の「公共」及び「倫理」並びに特別活動は,それぞれの目標に「人間 としての在り方生き方」を掲げている。小・中学校においては,「自分自身」,「人と の関わり」,「集団や社会との関わり」,「生命や自然,崇高なものとの関わり」の四つ の視点から示されている内容について,道徳科を要として学校の教育活動全体を通じ て道徳教育を行うこととされているが,小・中学校における道徳教育も踏まえつつ, 生徒の発達の段階にふさわしい高等学校における道徳教育を行うことが大切である。 ③ 道徳教育の目標(第1章総則第1款2(2)の3段目)  道徳教育は,教育基本法及び学校教育法に定められた教育の根本精神に基づき, 生徒が自己探求と自己実現に努め国家・社会の一員としての自覚に基づき行為しう る発達の段階にあることを考慮し,人間としての在り方生き方を考え,主体的な判 断の下に行動し,自立した人間として他者と共によりよく生きるための基盤となる 道徳性を養うことを目標とすること。  学校における道徳教育は,生徒がよりよく生きるための基盤となる道徳性を養うこ とを目標としており,生徒一人一人が将来に対する夢や希望,自らの人生や未来を拓ひら いていく力を育む源となるものでなければならない。 ア 教育基本法及び学校教育法の根本精神に基づく  道徳教育は,まず,教育基本法及び学校教育法に定められた教育の根本精神に基 づいて行われるものである。  教育基本法においては,我が国の教育は「人格の完成を目指し,平和で民主的な 国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期 して行」うことを目的としていることが示されている(第1条)。そして,その目 的を実現するための目標として,「真理を求める態度を養」うことや「豊かな情操 と道徳心を培う」ことなどが挙げられている(第2条)。また,義務教育の目的と して「各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い, また,国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的」 とすることが規定されている(第5条第2項)  学校教育法においては,義務教育の目標として,「自主,自律及び協同の精神, 規範意識,公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し, その発展に寄与する態度を養うこと」(第 21 条第1号),「生命及び自然を尊重する 精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと」(同条第2号),「伝統と文化を 尊重し,それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養うとともに,進ん で外国の文化の理解を通じて,他国を尊重し,国際社会の平和と発展に寄与する態 度を養うこと」(同条第3号)などが示されている。その上で,高等学校教育の目 標として,「義務教育として行われる普通教育の成果を更に発展拡充させて,豊か な人間性,創造性及び健やかな身体を養い,国家及び社会の形成者として必要な資 質を養うこと」(第 51 条第1号),「社会において果たさなければならない使命の自 覚に基づき,個性に応じて将来の進路を決定させ,一般的な教養を高め,専門的な 知識,技術及び技能を習得させること」(同条第2号),「個性の確立に努めるとと もに,社会について,広く深い理解と健全な批判力を養い,社会の発展に寄与する 態度を養うこと」(同条第3号)が示されている。  学校で行う道徳教育は,これら教育の根本精神に基づいて行われるものである。 イ 自己探求と自己実現に努め国家・社会の一員としての自覚に基づき行為しうる発 達の段階  高等学校段階の生徒は,自分の人生をどう生きればよいか,生きることの意味は 何かということについて思い悩む時期である。また,自分自身や自己と他者との関 係,更には,広く国家や社会について関心をもち,人間や社会の在るべき姿につい て考えを深める時期でもある。それらを模索する中で,生きる主体としての自己を 確立し,自らの人生観・世界観ないし価値観を形成し,主体性をもって生きたいと いう意欲を高めていくのである。高等学校においては,このような生徒の発達の段 階を考慮し,人間の在り方に深く根ざした人間としての生き方に関する教育を推進 することが求められる。 ウ 「人間としての在り方生き方」を考える  人間は,同じような状況の下に置かれている場合でも,必ずしも全て同じ生き方 をするとは限らず,同一の状況の下でもいくつかの生き方が考えられる場合が少な くないが,こうした考えられるいくつかの生き方の中から,一定の行為を自分自身 の判断基準に基づいて選択するということが,主体的に判断し行動するということ である。社会の変化に対応して主体的に判断し行動しうるためには,選択可能ない くつかの生き方の中から自分にふさわしく,しかもよりよい生き方を選ぶ上で必要 な,自分自身に固有な選択基準ないし判断基準をもたなければならない。このよう な自分自身に固有な選択基準ないし判断基準は,生徒一人一人が人間存在の根本性 格を問うこと,すなわち人間としての在り方を問うことを通して形成されてくる。 また,このようにして形成された生徒一人一人の人間としての在り方についての基 本的な考え方が自分自身の判断と行動の選択基準となるのである。  このような自分自身に固有な選択基準ないし判断基準は,具体的には,様々な体 験や思索の機会を通して自らの考えを深めることにより形成されてくるものであ る。人間としての在り方生き方に関する教育においては教師の一方的な押し付けや 単なる先哲の思想の紹介にとどまることのないように留意し,人間としての在り方 生き方について生徒が自ら考え,自覚を深めて自己実現に資するように指導の計画 や方法を工夫することが重要である。その際,第1章総則第1款4でも示している よう,就業やボランティアなどに関わる体験的な活動を重視することが大切であ る。 エ 主体的な判断の下に行動する  生徒が日常生活の様々な道徳的な問題や自己の生き方についての課題に直面した ときに,自らの「主体的な判断の下に行動」することが重要である。「主体的な判 断の下に行動」するとは,生徒が自立的な生き方や社会の形成者としての在り方に ついて自ら考えたことに基づいて,人間としての在り方に根ざしよりよく生きるた めの行為を自分の意志や判断によって選択し行うことである。人間としての在り方 に根ざしよりよく生きていくためには,道徳的価値についての理解を基に,自己を 見つめ,人間としての在り方生き方について深く考え,道徳的価値を実現するため の適切な行為を自分の意志や判断によって選択し,実践することができるような資 質・能力を培う必要がある。  またそれは,生徒が日常生活での問題や自己の生き方に関する課題に正面から向 き合い,多様な価値観から考え方の対立がある場合にも,誠実にそれらの価値に向 き合い,自らの力で考え,よりよいと判断したり適切だと考えたりした行為の実践 に向けて具体的な行動を起こすことである。 オ 自立した人間として他者と共によりよく生きる  一人一人の生徒が「自立した人間」へと成長するためには,自己の生き方を模索 し自己の価値観を確立することが必要となる。どのように生きるべきか,いかなる 人間になることを目指すべきかを探求することを通して,自分自身に固有な判断基 準となる自らの価値観をもつことができる。  「自立した人間」としての自己は,他者との関わりの中で形成されていく存在で あり,同時に「他者と共に」よりよい社会の実現を目指そうとする社会的な存在と しての自己を志向する。人は誰もがよりよい自分を求めて自己の確立を目指すとと もに,他者と共に心を通じ合わせて生きようとしている。したがって,他者との関 係を主体的かつ適切にもつことができるようにすることが求められる。 カ そのための基盤となる道徳性を養う  こうした思考や判断,行動などを通してよりよく生きるための営みを支える基盤 となるのが道徳性であり,道徳教育はこの道徳性を養うことを目標とする。  道徳性とは,人間としての本来的な在り方やよりよい生き方を目指して行われる 道徳的行為を可能にする人格的特性であり,人格の基盤をなすものである。それは また,人間らしいよさであり,道徳的諸価値が一人一人の内面において統合された ものと言える。個人の生き方のみならず,人間の文化的活動や社会生活を根底で支 えている。道徳性は,人間が他者と共によりよく生きていく上で大切にしなければ ならないものである。  学校における道徳教育においては,各教育活動に応じて,特に道徳性を構成する 諸様相である道徳的判断力,道徳的心情,道徳的実践意欲と態度を養うことを求め ている。  道徳的判断力は,それぞれの場面において善悪を判断する能力である。つまり, 人間として生きるために道徳的価値が大切なことを理解し,様々な状況下において 人間としてどのように対処することが望まれるかを判断する力である。的確な道徳 的判断力をもつことによって,それぞれの場面において機に応じた道徳的行為が可 能になる。  道徳的心情は,道徳的価値の大切さを感じ取り,善を行うことを喜び,悪を憎む 感情のことである。人間としてのよりよい生き方や善を志向する感情であるとも言 える。それは,道徳的行為への動機として強く作用するものである。  道徳的実践意欲と態度は,道徳的判断力や道徳的心情によって価値があるとされ た行動をとろうとする傾向性を意味する。道徳的実践意欲は,道徳的判断力や道徳 的心情を基盤とし道徳的価値を実現しようとする意志の働きであり,道徳的態度 は,それらに裏付けられた具体的な道徳的行為への身構えと言うことができる。  これらの道徳性の諸様相は,それぞれが独立した特性ではなく,相互に深く関連 しながら全体を構成しているものである。したがって,これらの諸様相が全体とし て密接な関連をもつように指導することが大切である。そして,道徳的行為が生徒 自身の内から自発的,自律的に生起するよう道徳性の育成に努める必要がある。 ④ 道徳教育を進めるに当たっての留意事項(第1章総則第1款2(2)の4段目)  道徳教育を進めるに当たっては,人間尊重の精神と生命に対する畏敬の念を家 庭,学校,その他社会における具体的な生活の中に生かし,豊かな心をもち,伝統 と文化を尊重し,それらを育んできた我が国と郷土を愛し,個性豊かな文化の創造 を図るとともに,平和で民主的な国家及び社会の形成者として,公共の精神を尊 び,社会及び国家の発展に努め,他国を尊重し,国際社会の平和と発展や環境の保 全に貢献し未来を拓ひら く主体性のある日本人の育成に資することとなるよう特に留意 すること。  第1章総則第1款2(2)の4段目においては,道徳教育の目標に続けて,それを進 めるに当たって留意すべき事項について次のように示している。 ア 人間尊重の精神と生命に対する畏敬の念を家庭,学校,その他社会における具体 的な生活の中に生かす  人間尊重の精神は,生命の尊重,人格の尊重,基本的人権,人間愛などの根底を 貫く精神である。日本国憲法に述べられている「基本的人権」や,教育基本法に述 べられている「人格の完成」,更には,国際連合教育科学文化機関憲章(ユネスコ 憲章)にいう「人間の尊厳」の精神も根本において共通するものである。  民主的な社会においては,人格の尊重は,自己の人格のみではなく,他の人々の 人格をも尊重することであり,また,権利の尊重は,自他の権利の主張を認めると ともに,権利の尊重を自己に課するという意味で,互いに義務と責任を果たすこと を求めるものである。具体的な人間関係の中で道徳性を養い,それによって人格形 成を図るという趣旨に基づいて,「人間尊重の精神」という言葉を使っている。  生命に対する畏敬の念は,生命のかけがえのなさに気付き,生命あるものを慈し み,畏れ,敬い,尊ぶことを意味する。このことにより人間は,生命の尊さや生き ることのすばらしさの自覚を深めることができる。生命に対する畏敬の念に根ざし た人間尊重の精神を培うことによって,人間の生命があらゆる生命との関係や調和 の中で存在し生かされていることを自覚できる。更に,生命あるもの全てに対する 感謝の心や思いやりの心を育み,より深く自己を見つめながら,人間としての在り 方や生き方の自覚を深めていくことができる。これは,生徒の自殺やいじめに関わ る問題,環境問題などを考える上でも,常に根本において重視すべき事柄である。  道徳教育は,この人間尊重の精神と生命に対する畏敬の念を生徒自らが培い,そ れらを家庭での日常生活,学校での学習や生活及び地域での活動,行事への参画な どの具体的な機会において生かすことができるようにしなければならない。 イ 豊かな心をもつ  豊かな心とは,例えば,困っている人には優しく声を掛ける,ボランティア活動 など人の役に立つことを進んで行う,喜びや感動を伴って植物や動物を育てる,自 分の成長を感じ生きていることを素直に喜ぶ,美しいものを美しいと感じることが できる,他者との共生や異なるものへの寛容さをもつなどの感性及びそれらを大切 にする心である。道徳教育は,生徒一人一人が日常生活においてこのような心を育 み,生きていく上で必要な道徳的価値を理解し,様々な体験や思索の機会を通し て,自分自身に固有の選択基準ないし判断基準を形成していくことができるように しなければならない。 ウ 伝統と文化を尊重し,それらを育んできた我が国と郷土を愛し,個性豊かな文化 の創造を図る  個性豊かな文化の継承・発展・創造のためには,古いものを改めていくことも大 切であり,先人の残した有形・無形の文化的遺産の中に優れたものを見いだし,そ れを生み出した精神に学び,それを継承し発展させることも必要である。また,国 際社会の中で主体性をもって生きていくには,国際感覚をもち,国際的視野に立ち ながらも,自らの国や地域の伝統や文化についての理解を深め,尊重する態度を身 に付けることが重要である。  したがって,我が国や郷土の伝統と文化に対する関心や理解を深め,それを尊重 し,継承,発展させる態度を育成するとともに,それらを育んできた我が国と郷土 への親しみや愛着の情を深め,世界と日本との関わりについて考え,日本人として の自覚をもって,文化の継承・発展・創造と社会の発展に貢献し得る能力や態度が 養われなければならない。 エ 平和で民主的な国家及び社会の形成者として,公共の精神を尊び,社会及び国家 の発展に努める  人間は個としての尊厳を有するとともに,平和で民主的な国家及び社会を形成す る一人としての社会的存在でもある。私たちは,身近な集団のみならず,社会や国 家の一員としての様々な帰属意識をもっている。一人一人がそれぞれの個をその集 団の中で生かし,よりよい集団や社会を形成していくためには,個としての尊厳と ともに社会全体の利益を実現しようとする公共の精神が必要である。  また,平和で民主的な社会は,国民主権,基本的人権,自由,平等などの民主主 義の理念の実現によって達成される。これらが,法によって規定され,維持される だけならば,一人一人の日常生活の中で真に主体的なものとして確立されたことに はならない。それらは,一人一人の自覚によって初めて達成される。日常生活の中 で社会連帯の自覚に基づき,あらゆる時と場所において他者と協同する場を実現し ていくことは,社会及び国家の発展に努めることでもある。  したがって,道徳教育においては,単に法律的な規則やきまりそのものを取り上 げるだけでなく,それらの基盤となっている人間としての道徳的な生き方を問題に するという視点にも留意して取り扱う必要がある。 オ 他国を尊重し,国際社会の平和と発展や環境の保全に貢献する  民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに,世界の平和と人類の福祉の向 上に貢献することは,教育基本法の前文において掲げられている理念である。  平和は,人間の心の内に確立すべき課題でもあるが,日常生活の中で社会連帯の 自覚に基づき,他者と協同する場を実現していく努力こそ,平和で民主的な国家及 び社会を実現する根本である。また,環境問題が深刻となる中で,持続可能な社会 の実現に努めることが重要な課題となっている。そのためにも,生命や自然に対す る感受性や,身近な環境から地球規模の環境への豊かな想像力,それを大切に守ろ うとする態度が養われなければならない。  このような努力や心構えを,広く国家間ないし国際社会に及ぼしていくことが他 国を尊重することにつながり,国際社会に平和をもたらし環境の保全に貢献するこ とになる。 カ 未来を拓ひら く主体性のある日本人を育成する  未来を拓 ひら く主体性のある人間とは,常に前向きな姿勢で未来に夢や希望をもち, 自主的に考え,自律的に判断し,決断したことは積極的かつ誠実に実行し,その結 果について責任をもつことができる人間である。道徳教育は,このような視点に立 ち,生徒が自らの人生や新しい社会を切り拓ひら く力を身に付けられるようにしていか なければならない。  このことは,人間としての在り方の根本に関わるものであるが,ここで特に日本 人と示しているのは,歴史的・文化的に育まれてきた日本人としての自覚をもって 文化の継承,発展,創造を図り,民主的な社会の発展に貢献するとともに,国際的 視野に立って世界の平和と人類の発展に寄与し,世界の人々から信頼される人間の 育成を目指しているからである。 (3) 健やかな体(第1章総則第1款2(3)) (3) 学校における体育・健康に関する指導を,生徒の発達の段階を考慮して,学校の 教育活動全体を通じて適切に行うことにより,健康で安全な生活と豊かなスポーツ ライフの実現を目指した教育の充実に努めること。特に,学校における食育の推進 並びに体力の向上に関する指導,安全に関する指導及び心身の健康の保持増進に関 する指導については,保健体育科,家庭科及び特別活動の時間はもとより,各教 科・科目及び総合的な探究の時間などにおいてもそれぞれの特質に応じて適切に行 うよう努めること。また,それらの指導を通して,家庭や地域社会との連携を図り ながら,日常生活において適切な体育・健康に関する活動の実践を促し,生涯を通 じて健康・安全で活力ある生活を送るための基礎が培われるよう配慮すること。  教育基本法第2条第1号は,教育の目的として「健やかな身体を養う」ことを規定し ており,本項では,体育・健康に関する指導を,生徒の発達の段階を考慮して,学校の 教育活動全体として取り組むことにより,健康で安全な生活と豊かなスポーツライフの 実現を目指した教育の充実に努めることを示している。健やかな体の育成は,心身の調 和的な発達の中で図られ,心身の健康と安全や,スポーツを通じた生涯にわたる幸福で 豊かな生活の実現と密接に関わるものであることから,体育・健康に関する指導のねら いとして,心身ともに健康で安全な生活と豊かなスポーツライフの実現を一体的に示し ているところである。  これからの社会を生きる生徒に,健やかな心身の育成を図ることは極めて重要であ る。体力は,人間の活動の源であり,健康の維持のほか意欲や気力といった精神面の充 実に大きく関わっており,「生きる力」を支える重要な要素である。生徒の心身の調和 的発達を図るためには,運動を通して体力を養うとともに,食育の推進を通して望まし い食習慣を身に付けるなど,健康的な生活習慣を形成することが必要である。また,東 日本大震災をはじめとする様々な自然災害の発生や,情報化等の進展に伴う生徒を取り 巻く環境の変化などを踏まえ,生徒の安全・安心に対する懸念が広がっていることか ら,安全に関する指導の充実が必要である。更に,心身の健康の保持増進に関する指導 を適切に行うとともに,生徒が心身の成長発達について正しく理解することが必要であ る。  こうした現代的課題を踏まえ,体育・健康に関する指導は,健康・安全で活力ある生 活を営むために必要な資質・能力を育て,心身の調和的な発達を図り,健康で安全な生 活と豊かなスポーツライフの実現を目指すものである。こうした教育は,第1章総則第 3款1(1)に示すとおり,単元や題材など内容や時間のまとまりを見通した,主体的・ 対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を通して実現が図られるものであり,そうし た学習の過程の在り方については,本解説第4章第1節1において解説している。  本項で示す体育に関する指導については,積極的に運動する生徒とそうでない生徒の 二極化傾向が指摘されていることなどから,生涯にわたって運動やスポーツを豊かに実 践していくとともに,現在及び将来の体力の向上を図る実践力の育成を目指し,生徒が 自ら進んで運動に親しむ資質・能力を身に付け,心身を鍛えることができるようにする ことが大切である。  このため,教科としての保健体育科において,基礎的な身体能力の育成を図るととも に,体育祭,集団宿泊活動や集会などの特別活動や,運動部活動などの教育課程外の学 校教育活動などを相互に関連させながら,学校の教育活動全体として効果的に取り組む ことが求められている。  健康に関する指導については,生徒が身近な生活における健康に関する知識を身に付 けることや,必要な情報を自ら収集し,適切な意思決定や行動選択を行い,積極的に健 康な生活を実践することのできる資質・能力を育成することが大切である。  特に,学校における食育の推進においては,栄養摂取の偏りや朝食欠食といった食習 慣の乱れ等に起因する肥満や生活習慣病,痩せ,食物アレルギー等の健康課題が見られ るほか,食品の安全性の確保等の食に関わる課題が顕在化している。こうした課題に適 切に対応するため,生徒が食に関する正しい知識と望ましい食習慣を身に付けることに より,生涯にわたって健やかな心身と豊かな人間性を育んでいくための基礎が培われる よう,栄養のバランスや規則正しい食生活,食品の安全性などの指導が一層重視されな ければならない。また,これら心身の健康に関する内容に加えて,自然の恩恵・勤労な どへの感謝や食文化などについても教科等の内容と関連させた指導を行うことが効果的 である。食に関する指導に当たっては,保健体育科,家庭科,特別活動などの指導を相 互に関連させながら,学校の教育活動全体として効果的に取り組むことが重要である。 その際,教師間の連携に努めるとともに,学校や地域の実情に応じて栄養教諭等の専門 性を有する教職員や地域の有識者等との連携に努めることにも配慮することが大切であ る。 また , 安全に関する指導においては,様々な自然災害の発生や,情報化やグローバル 化等の社会の変化に伴い生徒を取り巻く安全に関する環境も変化していることから,身 の回りの生活の安全,交通安全,防災に関する指導や,情報技術の進展に伴う新たな事 件・事故防止,国民保護等の非常時の対応等の新たな安全上の課題に関する指導を一層 重視し , 安全に関する情報を正しく判断し,安全のための行動に結び付けるようにする ことが重要である。  更に,心身の健康の保持増進に関する指導においては,情報化社会の進展により, 様々な健康情報や性・薬物等に関する情報の入手が容易になっていることなどから,生 徒が健康情報や性に関する情報等を正しく選択して適切に行動できるようにするととも に,薬物乱用防止等の指導が一層重視されなければならない。なお,生徒が心身の成長 発達に関して適切に理解し,行動することができるようにする指導に当たっては,第1 章総則第5款1(1)に示す主に集団の場面で必要な指導や援助を行うガイダンスと一人 一人が抱える課題に個別に対応した指導を行うカウンセリングの双方の観点から,学校 の教育活動全体で共通理解を図り,家庭の理解を得ることに配慮するとともに,関連す る教科等において,発達の段階を考慮して,指導することが重要である。  体育・健康に関する指導は,こうした指導を相互に関連させて行うことにより,生涯 にわたり明るく豊かで活力ある生活を営むための基礎づくりを目指すものである。  したがって,その指導においては,体つくり運動や各種のスポーツ活動はもとより, 保健や安全に関する指導,給食を含む食に関する指導などが重視されなければならな い。このような体育・健康に関する指導は,保健体育科の時間だけではなく家庭科や特 別活動のほか,関連の教科,総合的な探究の時間なども含めた学校の教育活動全体を通 じて行うことによって,その一層の充実を図ることができる。  各学校において,体育・健康に関する指導を効果的に進めるためには,生徒の体力や 健康状態等を的確に把握し,学校や地域の実態を踏まえて,それにふさわしい学校の全 体計画を作成し,地域の関係機関・団体の協力を得つつ,計画的,継続的に指導するこ とが重要である。  また,体育・健康に関する指導を通して,学校生活はもちろんのこと,家庭や地域社 会における日常生活においても,自ら進んで運動を適切に実践する習慣を形成し,生涯 を通じて運動に親しむための基礎を培うとともに,生徒が積極的に心身の健康の保持増 進を図っていく資質・能力を身に付け,生涯を通じて健康・安全で活力ある生活を送る ための基礎が培われるよう配慮することが大切である。  なお,高等学校にあっては,教科担任制を原則としているために,体育・健康に関す る指導が保健体育科担当の教師に任されてしまうおそれがある。しかし,体育・健康に 関する指導は,学校の教育活動全体を通じて適切に行われるべきものであり,その効果 を上げるためには,保健体育科担当の教師だけでなく,全教職員の理解と協力が得られ るよう,学校の実態に応じて指導体制の工夫改善に努めるなど,組織的に進めていくこ とが大切である。 ### 3 育成を目指す資質・能力(第1章総則第1款3) 2の(1)から(3)までに掲げる事項の実現を図り,豊かな創造性を備え持続可能な社 会の創り手となることが期待される生徒に,生きる力を育むことを目指すに当たって は,学校教育全体及び各教科・科目等の指導を通してどのような資質・能力の育成を 目指すのかを明確にしながら,教育活動の充実を図るものとする。その際,生徒の発 達の段階や特性等を踏まえつつ,次に掲げることが偏りなく実現できるようにするも のとする。 (1) 知識及び技能が習得されるようにすること。 (2) 思考力,判断力,表現力等を育成すること。 (3) 学びに向かう力,人間性等を涵かん 養すること。 本項は,生徒に知・徳・体のバランスのとれた「生きる力」を育むことを目指すに当 たっては,各教科・科目等の指導を通してどのような資質・能力の育成を目指すのかを明 確にしながら教育活動の充実を図ること,その際には生徒の発達の段階や特性等を踏ま え,「知識及び技能」の習得と「思考力,判断力,表現力等」の育成,「学びに向かう力, 人間性等」の涵かん 養という,資質・能力の三つの柱の育成がバランスよく実現できるよう留 意することを示している。 今回の改訂は,「生きる力」の育成という教育の目標が各学校の特色を生かした教育課 程の編成により具体化され,教育課程に基づく個々の教育活動が,生徒一人一人に,社会 の変化に受け身で対処するのではなく,主体的に向き合って関わり合い,自らの可能性を 発揮し多様な他者と協働しながら,よりよい社会と幸福な人生を切り拓ひら き,未来の創り手 となるために必要な力を育むことに効果的につながっていくようにすることを目指してい る。そのためには,「何を学ぶか」という教育の内容を重視しつつ,生徒がその内容を既 得の知識及び技能と関連付けながら深く理解し,他の学習や生活の場面でも活用できる生 きて働く知識及び技能となることを含め,その内容を学ぶことで生徒が「何ができるよう になるか」を併せて重視する必要があり,生徒に対してどのような資質・能力の育成を目 指すのかを指導のねらいとして設定していくことがますます重要となる。 このため,学習指導要領においては,各教科・科目等の指導を通して育成する資質・能 力を明確にすることの重要性を本項で示すとともに,第2章以降において各教科・科目等 の目標や内容を,資質・能力の観点から再整理して示している。これは各教科等の指導に 当たって,指導のねらいを明確にするための手掛かりとして学習指導要領が活用されやす いようにしたものである。 平成 28 年 12 月の中央教育審議会答申において指摘されているように,国内外の分析に よれば,資質・能力に共通する要素は,知識に関するもの,思考や判断,表現等に関わる 力に関するもの,情意や態度等に関するものの三つに大きく分類できる。本項が示す資 質・能力の三つの柱は,こうした分析を踏まえ,生きる力や各教科等の学習を通して育ま れる資質・能力,学習の基盤となる資質・能力(第1章総則第2款2(1)),現代的な諸課 題に対応して求められる資質・能力(第1章総則第2款2(2))といった,あらゆる資質・ 能力に共通する要素を整理したものである。 生徒に育成を目指す資質・能力を三つの柱で整理することは,これまで積み重ねられて きた一人一人の生徒に必要な力を育む学校教育の実践において,各教科等の指導を通して 育成してきた資質・能力を再整理し,教育課程の全体として明らかにしたものである。そ のことにより,経験年数の短い教師であっても,各教科等の指導を通して育成を目指す資 質・能力を確実に捉えられるようにするとともに,教科等横断的な視点で教育課程を編 成・実施できるようにすること,更には,学校教育を通してどのような力を育むのかとい うことを社会と共有することを目指すものである。 これらの三つの柱は,学習の過程を通して相互に関係し合いながら育成されるものであ ることに留意が必要である。生徒は学ぶことに興味を向けて取り組んでいく中で,新しい 知識や技能を得て,それらの知識や技能を活用して思考することを通して,知識や技能を より確かなものとして習得するとともに,思考力,判断力,表現力等を養い,新たな学び に向かったり,学びを人生や社会に生かそうとしたりする力を高めていくことができる。 なお,資質や能力という言葉は,教育課程に関する法令にも規定があるところであり, 例えば,教育基本法第5条第2項においては,義務教育の目的として「各個人の有する能 力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い,また,国家及び社会の形成者と して必要とされる基本的な資質を養うこと」を規定している。この「資質」については, 教育を通して先天的な資質を更に向上させることと,一定の資質を後天的に身に付けさせ るという両方の観点をもつものとされていることから,教育を通して育まれるもののどれ が資質でどれが能力かを分けて捉えることは困難である。これまでも学習指導要領やその 解説においては,資質と能力を一体的に扱うことが多かったところでもあり,今回の改訂 においては,資質と能力を一体的に捉え「資質・能力」と表記することとしている。 また,確かな学力については,第1章総則第1款2(1)においてそれを支える重要な要 素が明記されているが,豊かな心の涵 かん 養や健やかな体の育成も,それを支えているのは 「知識及び技能」の習得と「思考力,判断力,表現力等」の育成,「学びに向かう力,人間 性等」の涵 かん 養という,資質・能力の三つの柱である。すなわち,資質・能力の三つの柱 は,学校教育法第 30 条第2項や第1章総則第1款2(1)に示された要素と大きく共通する とともに,確かな学力に限らず,知・徳・体にわたる「生きる力」全体を捉えて,共通す る重要な要素を示したものである。 ① 知識及び技能が習得されるようにすること  資質・能力の育成は,生徒が「何を理解しているか,何ができるか」に関わる知識 及び技能の質や量に支えられており,知識や技能なしに,思考や判断,表現等を深め ることや,社会や世界と自己との多様な関わり方を見いだしていくことは難しい。一 方で,社会や世界との関わりの中で学ぶことへの興味を高めたり,思考や判断,表現 等を伴う学習活動を行ったりすることなしに,生徒が新たな知識や技能を得ようとし たり,知識や技能を確かなものとして習得したりしていくことも難しい。こうした知 識及び技能と他の二つの柱との相互の関係を見通しながら,発達の段階に応じて,生 徒が基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得できるようにしていくことが重要で ある。  知識については,生徒が学習の過程を通して個別の知識を学びながら,そうした新 たな知識が既得の知識及び技能と関連付けられ,各教科・科目等で扱う主要な概念を 深く理解し,他の学習や生活の場面でも活用できるような確かな知識として習得され るようにしていくことが重要となる。また,芸術系教科・科目における知識は,一人 一人が感性などを働かせて様々なことを感じ取りながら考え,自分なりに理解し,表 現したり鑑賞したりする喜びにつながっていくものであることが重要である。教科の 特質に応じた学習過程を通して,知識が個別の感じ方や考え方等に応じ,生きて働く 概念として習得されることや,新たな学習過程を経験することを通して更新されてい くことが重要となる。  このように,知識の理解の質を高めることが今回の改訂においては重視されてお り,各教科等の指導に当たっては,学習に必要となる個別の知識については教師が生 徒の学びへの興味を高めつつしっかりと教授するとともに,深い理解を伴う知識の習 得につなげていくため,生徒がもつ知識を活用して思考することにより,知識を相互 に関連付けてより深く理解したり,知識を他の学習や生活の場面で活用できるように したりするための学習が必要となる。  こうした学習の過程はこれまでも重視され,習得・活用・探究という学びの過程の 充実に向けた取組が進められている。今回の改訂においては,各教科等の特質を踏ま え,優れた実践に共通して見られる要素が第1章総則第3款1(1)の「主体的・対話 的で深い学び」として示されている。  技能についても同様に,一定の手順や段階を追っていく過程を通して個別の技能を 身に付けながら,そうした新たな技能が既得の技能等と関連付けられ,他の学習や生 活の場面でも活用できるように習熟・熟達した技能として習得されるようにしていく ことが重要となるため,主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善が必要と なる。  今回の改訂においては,こうした知識及び技能に関する考え方は,確かな学力のみ ならず「生きる力」全体を支えるものであることから,各教科・科目等において育成 することを目指す「知識及び技能」とは何かが,発達の段階に応じて学習指導要領に おいて明確にされたところである。 ② 思考力,判断力,表現力等を育成すること  生徒が「理解していることやできることをどう使うか」に関わる「思考力,判断 力,表現力等」は,社会や生活の中で直面するような未知の状況の中でも,その状況 と自分との関わりを見つめて具体的に何をなすべきかを整理したり,その過程で既得 の知識や技能をどのように活用し,必要となる新しい知識や技能をどのように得れば よいのかを考えたりするなどの力であり,変化が激しく予測困難な時代に向けてます ますその重要性は高まっている。また,①において述べたように,「思考力,判断力, 表現力等」を発揮することを通して,深い理解を伴う知識が習得され,それにより更 に思考力,判断力,表現力等も高まるという相互の関係にあるものである。  学校教育法第 30 条第2項において,「思考力,判断力,表現力等」とは,「知識及 び技能」を活用して課題を解決するために必要な力と規定されている。この「知識及 び技能を活用して課題を解決する」という過程については,平成 28 年 12 月の中央教 育審議会答申が指摘するように,大きく分類して次の三つがあると考えられる。 ・ 物事の中から問題を見いだし,その問題を定義し解決の方向性を決定し,解決 方法を探して計画を立て,結果を予測しながら実行し,振り返って次の問題発 見・解決につなげていく過程 ・ 精査した情報を基に自分の考えを形成し,文章や発話によって表現したり,目 的や場面,状況等に応じて互いの考えを適切に伝え合い,多様な考えを理解した り,集団としての考えを形成したりしていく過程 ・ 思いや考えを基に構想し,意味や価値を創造していく過程  教育課程においては,これらの過程に必要となる「思考力,判断力,表現力等」 が,各教科等の特質に応じて育まれるようにするとともに,教科等横断的な視点に 立って,それぞれの過程について,例えば第1章総則第2款2(1)に示す言語能力, 情報活用能力及び問題発見・解決能力,第1章総則第2款2(2)に示す現代的な諸課 題に対応して求められる資質・能力の育成を目指す中で育まれるようにすることが重 要となる。 ③ 学びに向かう力,人間性等を涵 かん 養すること  生徒が「どのように社会や世界と関わり,よりよい人生を送るか」に関わる「学び に向かう力,人間性等」は,他の二つの柱をどのような方向性で働かせていくかを決 定付ける重要な要素である。生徒の情意や態度等に関わるものであることから,他の 二つの柱以上に,生徒や学校,地域の実態を踏まえて指導のねらいを設定していくこ とが重要となる。  我が国の学校教育の特徴として,各教科・科目等の指導を含めて学校の教育活動の 全体を通して情意や態度等に関わる資質・能力を育んできたことを挙げることができ る。例えば,国語を尊重してその能力の向上を図る態度(国語科),科学的に探究し ようとする態度(理科),明るく豊かで活力ある生活を営む態度(保健体育科)など, 各教科等においてどういった態度を育むかということを意図して指導が行われ,それ ぞれ豊かな実践が重ねられている。  生徒一人一人がよりよい社会や幸福な人生を切り拓ひら いていくためには,主体的に学 習に取り組む態度も含めた学びに向かう力や,自己の感情や行動を統制する力,より よい生活や人間関係を自主的に形成する態度等が必要となる。これらは,自分の思考 や行動を客観的に把握し認識する,いわゆる「メタ認知」に関わる力を含むものであ る。こうした力は,社会や生活の中で生徒が様々な困難に直面する可能性を低くした り,直面した困難への対処方法を見いだしたりできるようにすることにつながる重要 な力である。また,多様性を尊重する態度や互いのよさを生かして協働する力,持続 可能な社会づくりに向けた態度,リーダーシップやチームワーク,感性,優しさや思 いやりなどの人間性等に関するものも幅広く含まれる。  こうした情意や態度等を育んでいくためには,前述のような我が国の学校教育の豊 かな実践を生かし,体験活動を含めて,社会や世界との関わりの中で,学んだことの 意義を実感できるような学習活動を充実させていくことが重要となる。教育課程の編 成及び実施に当たっては,第1章総則第5款に示す生徒の発達の支援に関する事項も 踏まえながら,学習の場でもあり生活の場でもある学校において,生徒一人一人がそ の可能性を発揮することができるよう,教育活動の充実を図っていくことが必要であ る。  なお,学校教育法第 30 条第2項に規定される「主体的に学習に取り組む態度」や, 第1章総則第1款2(1)が示す「多様な人々と協働」することなどは,「学びに向かう 力,人間性等」に含まれる。資質・能力の三つの柱は,確かな学力のみならず,知・ 徳・体にわたる生きる力全体を捉えて整理していることから,より幅広い内容を示す ものとなっているところである。  このように,今回の改訂は,日常の指導における創意工夫のために「何のために学 ぶのか」という学習の意義を,我が国の学校教育の様々な実践の蓄積を踏まえて,学 習指導要領において育成を目指す資質・能力として明示している。 ### 4 就業やボランティアに関わる体験的な学習の指導(第1章総則第1款4) 学校においては,地域や学校の実態等に応じて,就業やボランティアに関わる体験 的な学習の指導を適切に行うようにし,勤労の尊さや創造することの喜びを体得さ せ,望ましい勤労観,職業観の育成や社会奉仕の精神の涵かん 養に資するものとする。 今回の改訂においては,従前と同様,「就業やボランティアに関わる体験的な学習の指 導」を適切に行うこととし,それらを通じて,「勤労の尊さ」,「創造することの喜び」の 体得,「望ましい勤労観,職業観」の育成,「社会奉仕の精神」の涵かん 養を図るべきことを示 している。 「就業やボランティアに関わる体験的な学習の指導」については,生徒を取り巻く生活 環境の変化の中で,生徒の社会的な体験の機会が減少している状況を踏まえ,社会の構成 員としての自覚を深め,知・徳・体の調和のとれた人間形成を図るとともに,学校教育を 地域社会に開かれたものにし,地域との連携を強めることを趣旨として示されてきたもの である。今回の改訂においても,この基本的な趣旨を変えるものではなく,体験的な学習 の指導がより具体性をもって,各教科・科目,総合的な探究の時間及び特別活動のそれぞ れにおいて更に充実するよう,「就業やボランティアに関わる体験的な学習の指導」を進 めると示したものである。このような体験的な学習は,高等学校段階の生徒にとって,自 分と社会の関わりに対する理解と認識を深め,生徒が自己の在り方生き方を考える上でも 極めて重要となっている。 就業体験活動(インターンシップ)については,平成 20 年1月に示された「幼稚園, 小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)」 (以下「平成 20 年1月の中央教育審議会答申」という。)において,社会人・職業人とし て自立していくためには,生徒一人一人の勤労観,職業観を育てるキャリア教育を充実す ることが重要であり,その一環として小学校での職場見学,中学校での職場体験活動,高 等学校での就業体験活動等を通じた体系的な指導を推進することが提言されている。就業 体験活動は,職業の現場における実際的な知識や技術・技能に触れることが可能となると ともに,学校における学習と職業との関係についての生徒の理解を促進し,学習意欲を喚 起すること,生徒が自己の職業適性や将来設計について考える機会となり,主体的な職業 選択の能力や高い職業意識の育成が促進されること,生徒が教師や保護者以外の大人と接 する貴重な機会となり,異世代とのコミュニケーション能力の向上が期待されることな ど,高い教育効果を期待できるものである。就業体験活動については,職業教育に関する 配慮事項としても,学校においては,キャリア教育を推進するために,地域や産業界など との連携を図り,産業現場等における長期間の実習を取り入れるなど就業体験活動の機会 を積極的に設けるよう配慮すべきことを示している(第1章総則第5款1(3))。なお,平 成 28 年 12 月の中央教育審議会答申においては,これまで主に高等学校卒業後に就職を希 望する生徒が多い普通科や専門学科での実習を中心に行われてきたが,今後は,大学進学 希望者が多い普通科の高等学校においても,例えば大学・大学院等での学習や研究経験を 必要とする職業に焦点を当て,大学等の専門機関において実施する就業体験活動(いわゆ る「アカデミック・インターンシップ」)を充実するなど,それぞれの高等学校や生徒の 特性を踏まえた多様な展開について提言されている。 また,ボランティア活動は,生徒が社会の一員であることを自覚し,互いが支え合う社 会の仕組みを考える上で意義があると同時に,単に社会に貢献するということだけでな く,自分自身を高める上でも大きな教育的意義がある。生徒は,自分が価値のある大切な 存在であることを実感するとともに,他人を思いやる心や社会生活を営む上での規範を学 ぶことができる。また,ボランティア活動は,国際協力,環境保全,少子高齢社会への対 応など様々な社会問題に対する生徒の問題意識を広げたり深めたりすることにも資するも のである。 就業やボランティアに関わる体験的な学習活動は,地域や学校の実態に応じて,学校の 教育活動全体の中に位置付けて実施するよう配慮することが大切である。そのため,各学 校が教育課程を編成するに当たっては,次のような教育課程上の位置付けが考えられる。 第一は,各教科・科目において実施する場合である。学習指導要領に示す各教科・科目 については,職業に関する各教科の「課題研究」等の中で産業現場等における実習が位置 付けられているほか,各学科に共通する教科である家庭科の「家庭総合」において,ボラ ンティア活動への参加をはじめ,身近な高齢者との交流の機会をもつよう努めることとさ れている。 また,職業に関する各教科・科目における実習については,その各教科・科目の内容に 直接関係のある就業体験活動により替えることができることとされており(第1章総則第 2款3(7)エ(ア)),更に,定時制・通信制の課程においては,職業における実務等を各教 科・科目の履修の一部に替えることのできる実務代替の仕組みが設けられている(第1章 総則第2款3(7)エ(ウ))。 このほか,就業体験活動やボランティア活動を行うための学校設定教科・科目を設ける ことも考えられる。特に,学校設定教科に関する科目として設けることができる「産業社 会と人間」については,就業体験活動等を通じた指導に配慮すべきこととしている(第1 章総則第2款3(1)オ(イ))。 第二は,特別活動で実施する場合である。今回の改訂では,従前と同様に,ボランティ ア活動や就業体験活動など勤労に関わる体験的な活動の機会をできるだけ取り入れること を示していることに加え,学校行事の勤労生産・奉仕的行事の中で就業体験活動を例示と して明確に示している。特に,ボランティア活動については,生徒会活動及び学校行事の それぞれにおいて取り上げることとしている。また,学校行事においては,幼児,高齢 者,障害のある人々などとの触れ合い,自然体験や社会体験などの工夫を求めている。 第三は,総合的な探究の時間における学習活動として実施する場合である。総合的な探 究の時間においては,自己の在り方生き方を考えながら,よりよく課題を発見し解決して いくための資質・能力の育成を目指して,地域や学校の実態,生徒の特性等に応じた探究 課題を設定し,その解決に向けた様々な学習活動を展開する。そうした探究課題の一つと して,職業や自己の進路に関する課題を設定し,ボランティア活動,就業体験活動などを 通じ,自己の在り方生き方や進路について考察する学習活動もこの時間の活動の一つの柱 となることが考えられる。 第四に,学校外における就業体験活動やボランティア活動に対して単位の修得を認定す る方法である。学校教育法施行規則第 98 条及び平成 10 年文部省告示第 41 号の規定によ り,平成 10 年4月より,学校外におけるボランティア活動,就業体験活動等を科目の履 修とみなし,当該科目の単位を与えることが可能となっている。これは,関連する既存の 科目の増加単位として修得を認定したり,学校外活動に単位を認定するための独自の学校 設定教科・科目を設けたりするなど,様々な方法が考えられるものである。 就業やボランティアに関わる体験的な学習の教育効果を高めるためには,そのねらいを 明確にすることが重要である。主なねらいとしては,①勤労の尊さや創造することの喜び の体得に資すること,②望ましい勤労観や職業観の育成に資すること,③自分の能力・適 性の判断や高等学校卒業後の進路の選択に資すること,④職業生活,社会生活に必要な知 識・技術の習得及び創造的な能力や態度の育成に資すること,⑤社会の構成員として共に 生きる心を養い,社会奉仕の精神の涵かん 養に資することなどが挙げられる。 就業やボランティアに関わる体験的な学習は,地域の実態や学校の諸条件の違い等に よってその進め方が様々に異なってくるものである。各学校においては,地域や学校の実 態に応じて,入学年次から卒業年次までを見通した指導計画の作成に創意工夫を加えるこ とが望まれる。 ### 5 カリキュラム・マネジメントの充実(第1章総則第1款5) 各学校においては,生徒や学校,地域の実態を適切に把握し,教育の目的や目標の 実現に必要な教育の内容等を教科等横断的な視点で組み立てていくこと,教育課程の 実施状況を評価してその改善を図っていくこと,教育課程の実施に必要な人的又は物 的な体制を確保するとともにその改善を図っていくことなどを通して,教育課程に基 づき組織的かつ計画的に各学校の教育活動の質の向上を図っていくこと(以下「カリ キュラム・マネジメント」という。)に努めるものとする。 本項は,各学校が教育課程に基づき組織的かつ計画的に各学校の教育活動の質の向上を 図っていくことができるよう,カリキュラム・マネジメントとは何かを定義するとともに その充実について示している。 教育課程はあらゆる教育活動を支える基盤となるものであり,学校運営についても,教 育課程に基づく教育活動をより効果的に実施していく観点から組織運営がなされなければ ならない。カリキュラム・マネジメントは,学校教育に関わる様々な取組を,教育課程を 中心に据えながら組織的かつ計画的に実施・評価し,教育活動の質の向上につなげていく ことであり,本項においては,平成 28 年 12 月の中央教育審議会答申の整理を踏まえ次の 三つの側面から整理して示している。具体的には,生徒や学校,地域の実態を適切に把握 した上で, ・ 教育の目的や目標の実現に必要な教育の内容等を教科等横断的な視点で組み立てて いくこと, ・ 教育課程の実施状況を評価してその改善を図っていくこと, ・ 教育課程の実施に必要な人的又は物的な体制を確保するとともにその改善を図って いくこと などを通して,教育課程に基づき組織的かつ計画的に各学校の教育活動の質の向上を図っ ていくことと定義している。 また,総則の項目立てについても,各学校におけるカリキュラム・マネジメントを円滑 に進めていく観点から,教育課程の編成,実施,評価及び改善の手続を踏まえて,①高等 学校教育の基本と教育課程の役割(第1章総則第1款),②教育課程の編成(第1章総則 第2款),③教育課程の実施と学習評価(第1章総則第3款),④単位の修得及び卒業の認 定(第1章総則第4款),⑤生徒の発達の支援(第1章総則第5款),⑥学校運営上の留意 事項(第1章総則第6款),⑦道徳教育に関する配慮事項(第1章総則第7款)としてい るところである。各学校においては,こうした総則の全体像も含めて,教育課程に関する 国や教育委員会の基準を踏まえ,自校の教育課程の編成,実施,評価及び改善に関する課 題がどこにあるのかを明確にして教職員間で共有し改善を行うことにより学校教育の質の 向上を図り,カリキュラム・マネジメントの充実に努めることが求められる。 ア 生徒や学校,地域の実態を適切に把握すること  教育課程は,第1章総則第1款が示すとおり「生徒の心身の発達の段階や特性等,課 程や学科の特色及び学校や地域の実態を十分考慮して」編成されることが必要である。 各学校においては,各種調査結果やデータ等に基づき,生徒の姿や学校及び地域の現状 を定期的に把握したり,保護者や地域住民の意向等を的確に把握した上で,学校の教育 目標など教育課程の編成の基本となる事項を定めていくことが求められる。 イ カリキュラム・マネジメントの三つの側面を通して,教育課程に基づき組織的かつ計 画的に各学校の教育活動の質の向上を図っていくこと  学校の教育活動の質の向上を図る取組は,教育課程に基づき組織的かつ計画的に行わ れる必要がある。各学校においては,第1章総則第6款1アに示すとおり,「校長の方 針の下に,校務分掌に基づき教職員が適切に役割を分担しつつ,相互に連携しながら, 各学校の特色を生かしたカリキュラム・マネジメントを行う」ことが必要である。ま た,教育課程は学校運営全体の中核ともなるものであり,同じく第1章総則第6款1ア に示すとおり,学校評価の取組についても,カリキュラム・マネジメントと関連付けな がら実施するよう留意が必要である。  組織的かつ計画的に取組を進めるためには,教育課程の編成を含めたカリキュラム・ マネジメントに関わる取組を,学校の組織全体の中に明確に位置付け,具体的な組織や 日程を決定していくことが重要となる。校内の組織及び各種会議の役割分担や相互関係 を明確に決め,職務分担に応じて既存の組織を整備,補強したり,既存の組織を精選し て新たな組織を設けたりすること,また,分担作業やその調整を含めて,各作業ごとの 具体的な日程を決めて取り組んでいくことが必要である。  また,カリキュラム・マネジメントを効果的に進めるためには,何を目標として教育 活動の質の向上を図っていくのかを明確にすることが重要である。第1章総則第2款1 に示すとおり,各学校の教育目標を明確にするとともに,教育課程についての基本的な 方針を家庭や地域とも共有していくことが求められる。 (ア) 教育の目的や目標の実現に必要な教育の内容等を教科等横断的な視点で組み立てて いくこと  教育課程の編成に当たっては,教育課程に関する法令や各学校の教育目標が定める 教育の目的や目標の実現を目指して,指導のねらいを明確にし,教育の内容を選択し て組織し,それに必要な単位数や授業時数を配当していくことが必要となる。各学校 においては,教育の目的や目標の実現に必要な教育の内容等を選択し,各教科・科目 等の内容相互の関連を図りながら指導計画を作成したり,生徒の生活時間を教育の内 容との効果的な組み合わせを考えたりしながら,年間や学期,月,週ごとの授業時数 を適切に定めたりしていくことが求められる。  その際,今回の改訂では,「生きる力」の育成という教育の目標が教育課程の編成 により具体化され,よりよい社会と幸福な人生を切り拓ひら くために必要な資質・能力が 生徒一人一人に育まれるようにすることを目指しており,「何を学ぶか」という教育 の内容を選択して組織していくことと同時に,その内容を学ぶことで生徒が「何がで きるようになるか」という,育成を目指す資質・能力を指導のねらいとして明確に設 定していくことが求められていることに留意が必要である。教育課程の編成に当たっ ては,第1章総則第2款2に示す教科等横断的な視点に立った資質・能力の育成を教 育課程の中で適切に位置付けていくことや,各学校において具体的な目標及び内容を 定めることとなる総合的な探究の時間において教科等の枠を超えた横断的・総合的な 学習が行われるようにすることなど,教科等間のつながりを意識して教育課程を編成 することが重要である。 (イ) 教育課程の実施状況を評価してその改善を図っていくこと  各学校においては,各種調査結果やデータ等を活用して,生徒や学校,地域の実態 を定期的に把握し,そうした結果等から教育目標の実現状況や教育課程の実施状況を 確認し分析して課題となる事項を見いだし,改善方針を立案して実施していくことが 求められる。こうした改善については,校内の取組を通して比較的直ちに修正できる ものもあれば,教育委員会の指導助言を得ながら長期的に改善を図っていくことが必 要となるものもあるため,必要な体制や日程を具体化し組織的かつ計画的に取り組ん でいくことが重要である。  こうした教育課程の評価や改善は,第1章総則第6款1アに示すとおり,学校評価 と関連付けながら実施することが必要である。文部科学省が作成している「学校評価 ガイドライン〔平成 28 年改訂〕」(平成 28 年 3 月)では,各学校や設置者において設 定する評価項目・指標等の参考例として,学力調査や運動・体力調査の結果など,生 徒の学力・体力の状況を把握するデータを例示している。また,平成 30 年3月に制 度化され平成 31 年度から本格的に利活用が開始される予定の「高校生のための学び の基礎診断」(高等学校における生徒の基礎学力の定着度合いを測定する民間の試験 等を文部科学省が一定の要件に適合するものとして認定する仕組み)を高等学校にお ける多様な学習成果を測定するツールの一つとして活用し,生徒自身の学習の改善や 教師による指導の改善に生かすことも考えられる。 (ウ) 教育課程の実施に必要な人的又は物的な体制を確保するとともにその改善を図って いくこと  教育課程の実施に当たっては,人材や予算,時間,情報といった人的又は物的な資 源を,教育の内容と効果的に組み合わせていくことが重要となる。学校規模,教職員 の状況,施設設備の状況などの人的又は物的な体制の実態は,学校によって異なって おり,教育活動の質の向上を組織的かつ計画的に図っていくためには,これらの人的 又は物的な体制の実態を十分考慮することが必要である。とりわけ高等学校において は,課程,学科が様々で,生徒の特性や進路に対応するため類型や選択科目の配当等 が多様であることから,各学校の実態を踏まえて体制を工夫し,組織体としての総合 的な力を発揮していくことが特に重要となる。その際,特に,教師の指導力,教材・ 教具の整備状況,地域の教育資源や学習環境(近隣の学校や大学,研究機関,社会教 育施設,生徒の学習に協力することのできる人材等)などについて客観的かつ具体的 に把握して,教育課程の編成に生かすことが必要である。  本項では,こうした人的又は物的な体制を確保することのみならず,その改善を 図っていくことの重要性が示されている。各学校には,校長,副校長や教頭のほかに 教務主任をはじめとして各主任等が置かれ,それらの担当者を中心として全教職員が それぞれ校務を分担して処理している。各学校の教育課程は,これらの学校の運営組 織を生かし,各教職員がそれぞれの分担に応じて教育課程に関する研究を重ね,創意 工夫を加えて編成や改善を図っていくことが重要である。また,学校は地域社会にお ける重要な役割を担い地域とともに発展していく存在であり,学校評議員制度や学校 運営協議会制度,地域学校協働活動等の推進により,学校と地域の連携・協働を更に 広げ,教育課程を介して学校と地域がつながることにより,地域でどのような子供を 育てるのかといった目標を共有し,地域とともにある学校づくりが一層効果的に進め られていくことが期待される。  以下,それぞれの項目の趣旨を踏まえて学校において実際に教育課程の編成や改善 に取り組む際の手順の一例を参考として示す。もっとも,編成した教育課程に基づき 実施される日々の教育活動はもとより,教育課程の編成や改善の手順は必ずしも一律 であるべきではなく,それぞれの学校が学習指導要領等の関連の規定を踏まえつつ, その実態に即して,創意工夫を重ねながら具体的な手順を考えるべきものである。こ の点に十分留意することが求められる。 手順の一例) (1)  教育課程の編成に対する学校の基本方針を明確にする。  基本方針を明確にするということは,教育課程の編成に対する学校の姿勢や作業計 画の大綱を明らかにするとともに,それらについて全教職員が共通理解をもつことで ある。 ア 学校として教育課程の意義,教育課程の編成の原則などの編成に対する基本的 な考え方を明確にし,全教職員が共通理解をもつ。 イ 編成のための作業内容や作業手順の大綱を決め,作業計画の全体について全教 職員が共通理解をもつ。 (2) 教育課程の編成・実施のための組織と日程を決める。  教育課程の編成・実施は,校長のリーダーシップの下,組織的かつ計画的に取り組 む必要がある。教育課程の編成・実施を担当する組織を確立するとともに,それを 学校の組織全体の中に明確に位置付ける。  また,編成・実施の作業日程を明確にするとともに,学校が行う他の諸活動との調 和を図る。その際,既存の組織や各種会議の在り方を見直し必要に応じ精選を図るな ど業務改善の視点をもつことも重要である。 ア 編成・実施のための組織を決める。 (ア)  編成・実施に当たる組織及び各種会議の役割や相互関係について基本的な考 え方を明確にする。 (イ)  編成・実施に当たる組織及び各種会議を学校の組織全体の中に位置付け,組 織内の役割や分担を具体的に決める。 イ 編成・実施のための作業日程を決める。  分担作業やその調整を含めて,各作業ごとの具体的な日程を決める。 (3)  教育課程の編成のための事前の研究や調査をする。  事前の研究や調査によって,教育課程についての国や教育委員会の基準の趣旨を理 解するとともに,教育課程の編成に関わる学校の実態や諸条件を把握する。 ア 教育課程についての国の基準や教育委員会の規則などを研究し理解する。 イ 生徒の心身の発達の段階や特性,進路,学校及び地域の実態等を把握する。そ の際,保護者や地域住民の意向,生徒の状況等を把握することに留意する。 (4)  学校の教育目標など教育課程の編成の基本となる事項を定める。  学校の教育目標など教育課程の編成の基本となる事項は,学校教育の目的や目標及 び教育課程の基準に基づきながら,しかも各学校が当面する教育課題の解決を目指 し,両者を統一的に把握して設定する。 ア 事前の研究や調査の結果を検討し,学校教育の目的や目標に照らして,それぞ れの学校や生徒が直面している教育課題を明確にする。 イ 学校教育の目的や目標を調和的に達成するため,各学校の教育課題に応じて, 学校の教育目標など教育課程の編成の基本となる事項を設定する。 ウ 編成に当たって,特に留意すべき点を明確にする。 (5)  教育課程を編成する。  教育課程は学校の教育目標の実現を目指して,各教科・科目等及び指導内容を選択 し,組織し,それに必要な単位数や授業時数を定めて編成する。 ア 学校の教育目標の効果的な達成を図るため,重点を置くべき事項を明確にしな がら,修得総単位数や各年次の修得単位数,類型の有無や種類,必履修教科・科 目と選択科目などの構成と履修年次,総合的な探究の時間,特別活動の位置付け 等教育課程の基本的な構造について,相互の関連を考慮しながら定める。 イ 各教科・科目等及びその指導内容を選択し,定める。 (ア)  各教科・科目(必履修教科・科目,選択科目,学校設定教科・科目)の構 成,総合的な探究の時間の内容,特別活動の構成等を具体的に定める。 (イ)  指導内容について,その基礎的・基本的な知識及び技能を明確にする。 (ウ)  各教科等の指導において,基礎的・基本的な知識及び技能の確実な習得と思 考力,判断力,表現力等の育成を図るとともに,主体的に学習に取り組む態度 を養う指導の充実や個に応じた指導を推進するよう配慮する。 (エ)  学校の教育活動全体を通じて行う道徳教育,体育・健康に関する指導及び就 業やボランティアに関わる体験的な学習の指導について,適切な指導がなされ るよう配慮する。 (オ)  学習の基盤となる資質・能力や現代的な諸課題に対応して求められる資質・ 能力など,学校として,教科等横断的な視点で育成を目指す資質・能力を明確 にし,その育成に向けた適切な指導がなされるよう配慮する。 (カ)  生徒や学校,地域の実態に応じて学校が創意を生かして行う総合的な探究の 時間を適切に展開できるよう配慮する。 (キ)  各教科等の指導内容に取り上げた事項について,主体的・対話的で深い学び の実現に向けた授業改善を通して資質・能力を育む効果的な指導ができるよ う,単元や題材など内容や時間のまとまりを見通しながら,そのまとめ方や重 点の置き方を検討する。 ウ 各教科・科目等及びその指導内容を組織する。 (ア)  基礎的,基本的な指導を重視するとともに,発展的,系統的な指導ができる ように類型や年次に応じ,各教科・科目等を配列し組織する。また,指導のま とめ方,指導の順序及び重点の置き方に工夫を加える。 (イ)  各教科・科目,総合的な探究の時間及び特別活動について,各教科・科目等 間の指導内容相互の関連を図る。 (ウ)  各教科・科目等の指導内容相互の関連を明確にする。 (エ)  発展的,系統的な指導ができるように指導内容を配列し組織する。 エ 単位数や授業時数を配当する。 (ア)  指導内容との関連において,各教科・科目,総合的な探究の時間及び特別活 動について,それぞれの単位数や授業時数を定める。 (イ)  各教科・科目等や学習活動の特質に応じて,創意工夫を生かし,1年間の中 で,学期,月,週ごとの各教科・科目等の授業時数を定める。 (ウ)  各教科・科目等の授業の1単位時間を,生徒の発達の段階及び各教科・科目 等や学習活動の特質を考慮して適切に定める。 (6)  教育課程を評価し改善する  実施中の教育課程を検討し評価して,その改善点を明確して改善を図る。 ア 評価の資料を収集し,検討する。 イ 整理した問題点を検討し,原因と背景を明らかにする。 ウ 改善案をつくり,実施する。

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