みすアドカレ
この記事は みす51代 Advent Calender 2018 21日目の記事です。
こういった記事を書いて公開するということ自体が初めてなので至らぬ点も多いでしょうがご容赦を。
さて、何を書けばよいのか全然思いつかなかったので最近読んだ本のことでも話します!
皆さん時間が空いているとき何していますか? アニメを観たり、ゲームをしたり、漫画を読んだり、いろいろありますよね。でもよく名が挙がる名作って大体長編で、時間が足りなかったり、体力が必要だったり…。この頃体力の衰えを感じます。
そんなわけで短編作品を読むのが最近の推しです。オススメを紹介しますので年末のお供にいかがでしょうか。
913 (米澤穂信)
「氷菓」(古典部シリーズ)でお馴染みの米澤さんの作品です。
謎解き上手な図書委員の男子2人組が、美人の先輩女子から「おじいさんが遺した開かずの金庫」の暗号を解いてほしいと頼まれます。
なんか「サマーウォーズ」っぽくてワクワクしますね。暗号解読はもちろんですが、「そもそも何で僕らに頼んだろう?」ってところも上質なミステリーになっています。
ねむり姫の星 (今野緒雪)
「眠れる森の美女」は良く知られた童話です。王子さまのキスで目が覚めて、結婚してハッピーエンド。…でも「永い眠りから目覚めた時そこにいた」というだけで人を愛せるものなのでしょうか?
人類が地球を捨てて数百年。未知の惑星に不時着した少年は茨に囲まれた古びた宇宙船を発見します。中にいたのは、百年もの間コールドスリープで眠っていたと語る少女でした。
いや、まぁ、どう考えたってこれ運命だよね。でも童話のようにはいかない二人の関係がほんとに面白いです。単純なSFとしても楽しめます。
他8篇
じごくゆきっ (桜庭一樹)
高校一年生・花の十六歳の「わたし」と若い副担任「由美子ちゃんセンセ」の駆け落ちの話。あれ?これって百合。
一月の終わりのことだった。はらはらと牡丹雪が校庭に舞い落ちて、放課後のその時間は、寒々とした教室だけが世界から裁ち鋏で切り取られたように、しぃんと凍えていた。
唐突な「センセと、どこか、逃げましょうか?」という誘いを受けて二人は夜汽車に乗り込みます。
「ここではないどこかへ逃げたい」って感情を抱いたこと、ありませんか?この二人はそれを実行してしまいます。ふわふわと夢のようで現実味のない逃避行。上に引用したような美しい描写も合わさって、とても魅力的な作品になっています。
陽だまりの詩 (乙一)
乙一さんは結構好きな作家なので「ZOO」という短編集で既に知っていましたが、何度も読み返している作品です。
滅亡後の世界が舞台。女性型アンドロイドが主人公。彼女を作った男は言います。僕はもうすぐ死ぬ。僕を正しく埋葬するために君には『死』を学んでほしい。
言ってしまえば、感情が無い(とされる)存在が感情を獲得していく物語です。近い感じだと「ペルソナ3」のアイギスとか「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」のヴァイオレットとか? すぐに読み切ってしまえる分量ですが、世界に触れて変化していく彼女のココロがよく描かれています。
他10篇
コンビニ日和!
お笑いのコントのような作品です。
自営業で、繁盛してない夜のコンビ二(午前七時~午後十時)。いかにもやる気のない店員といった二人組のもとに強盗が現れます!しかしレジには紙幣すらない有様で盗る金がない。ケガをしたくない二人は、じゃあ商品を持ってってください、と強盗に協力し始めちゃいます。でも穏便に済みそうなところで警官が来たり…
何といってもキャラと、キャラ同士のかけ合いが面白いです。お笑いがそうであるように、人づてに聞いても面白くないでしょうからご自分で読んでみるのが一番です。
ホワイト・ステップ
雪の降り積もった街って清浄で独特の雰囲気がありますよね。
一人寂しく元旦を過ごしていた主人公は、雪面に残された不可解に途切れた足跡を発見します。それどころか誰もいないのに足跡が出現!透明人間の足跡?いいえ、足跡の主は同じ町に住む人間のようです。でも微妙に食い違いがあるようで…。
作品の基本アイデアは「積雪を通してのみ結ばれる平行世界」というものです。これだけでも素敵ですが、織りなされるストーリーも感動的です。ちょうど今の季節にぴったりの作品です。読了後は町に繰り出してみたくなるかもしれません。
他4篇
辻村さんも個人的に好きな作家さんです。十代位の瑞々しい感じとか、人間が抑圧しがちな感情とかを描き出すのが上手いなぁと思っています。その意味では「光待つ場所へ」なんかがオススメです。
この作品集は「こわいはなし」がテーマです。といっても完全なホラーという感じではありません。学校の怪談とか、コックリさんとか、都市伝説とか。小さい頃に感じた、そういったものに対する不安や困惑、それでもつい目を向けてしまう好奇心を思い出させてくれます。
踊り場の花子
学校の怪談の定番といえば「トイレの花子さん」です。この学校にはこんな七不思議があります。
一つ目、『この学校の花子さんは階段に棲んでいる』
二つ目、『花子さんに会いたければ、彼女の棲む階段を心の底から一生懸命、掃除すること』
三つ目、『花子さんのくれる食べ物や飲み物を口にすると呪われる』
四つ目、『花子さんの質問に、嘘を吐くと呪われる』
五つ目、『花子さんが「箱」をくれると言っても、もらってはならない』
六つ目、『花子さんにお願いごとをする時は、花子さんが望むものを与えること』
七つ目、『花子さんの与える罰は、階段に閉じ込める、無限階段の刑』
夏休み期間のいつもとは違った小学校。日直の男性教師と忘れ物を取りにきたという教育実習生、二人の大人が学校を巡ります。
こういった怪異とそれに対するルールが提示される作品ってそれだけで魅力的ですよね。ゲームだと「流行り神」とか「死印」とかです(共に未プレイ)。皆さんが通った学校にも何かしらの「怖いうわさ」があったのではないでしょうか?小説家の手による「怖いうわさ」はやはり一味違います。
他4篇
八年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡する。そう予告されてから五年が過ぎた頃。当初は絶望からパニックに陥った世界も、いまや平穏な小康状態にある。仙台北部の団地「ヒルズタウン」の住民たちも同様だった。彼らは余命三年という時間の中で人生を見つめ直す。
二番目に挙げた「短編工場」に収録されていた「太陽のシール」という作品が気に入ったので手に取った一冊です。実は現在進行形で読んでいるので全体を通しての感想はまだなんとも…
太陽のシール
優柔不断の夫と、スパスパ決断できる妻の夫婦が主人公。長いこと子どもに恵まれなかったが、終末を前にして妊娠の診断を受ける。無事に生まれたとしても三年の命。出産するべきか否か決断を迫られます。
私たちは普段から多くの決断をします。何気ない決断でも実は人生において大きな意味をもっているかもしれません。終末という場面設定の中で考えた「生きる意味」はそのまま日常に結び付くような気がしてきます。
他7篇
読んでくださった方、ありがとうございました。私自身そんなに沢山の本を読んでいるわけではないのでピント外れな紹介・感想になってしまっている箇所があるかもしれません。
読書自体は一人で楽しむ趣味ですが、読んだ本や好きな作家さんについて人と話す時間もまた素敵なものです。心に残る作品と出会うきっかけとなれたら幸いです。
明日は Shikugawa さんの記事です。お酒とかごはんについてらしいです。楽しみです!