# A method to measure marine particle aggregate disruptiuon in situ ## 1 今日は、新しい手法を開発したぞという内容の論文を紹介します。 内容としては、環境中で凝集体を乱流にさらし、粒度分布が変化する過程をとらえたいというものです。 ## 2 イントロとしては僕の研究とほとんど同じなのでだいぶ省略します。 流れの中の凝集体は流れによって受ける力と凝集体の強さが釣り合うサイズで安定しています。 ## 3 僕の研究では、凝集体に加わる力を記述できるせん断流れ中で、維持される凝集体サイズから粒子同士のくっつく力を算出することを試みていました。 今日紹介する論文では、海の中の凝集体を乱流にさらして粒子サイズの分布がどう変わるかを見てみよう、というアイデアを実現する装置が提案されています。 ## 4 装置の概観はこのようになっています。環境中の海水と粒子が通るチューブとチャンバー、そしてLISST-100Xというものの3つから成ります。 チューブの中を通る流体の速度が速いとき、内部は発展した乱流状態となるので、流体の速度を変えることで乱流の強さを変え、それによる粒子サイズ分布の変動をセンサーで捉えます。 まず、チューブを用いた乱流生成について説明し、そのあとでLISSTによる粒子サイズ分布の測定方法を説明します。 ## 5 チューブ内に生成される乱流は先行研究で計算されていて、流れの平均速度から算出ができます。ここで、ρは環境の海水密度、dは管の径、たうwは壁面せん断応力で、uバーが平均速度です。 この装置では、流れを作り出すためにROVスラスターを用いていて、このスラスターの回転速度を変えることで、流れの平均速度を変化させることができます。 ## 6 次に、LISSTを用いた粒子サイズ測定について説明します。 LISSTは、近前方散乱を測定できる装置で、これに加えて670 nm波長でのスペクトル減衰も測定できます。 近前方散乱の測定、あるいはスペクトル減衰の測定はどちらも液中の懸濁態を特徴づけるために用いる手法です。 近前方散乱は、粒子で散乱する光を測定することで粒子体積のデータを得ることができます。本研究でみていくメインのデータです。 また、スペクトル減衰は、粒子がたくさんある条件で光を通すと、粒子によって光がさえぎられるため、どのくらい遮られたかという値から粒子の濃度を測定できます。 ## 7 チューブとLISSTを組み合わせたものがiDASという装置です。簡単な構造なので、数万円で作成可能と述べています。 本論文では、この装置を用いて得られるデータの妥当性と、解釈の仕方について考察しています。 では、本論文で示されているデータについて順にみていきます。 筆者らはまず、本装置で生成される乱流の強さ・正確さについて述べています。この式からわかるように、この装置内に生成される乱流の強さは基本的に流速のみによって変動します。 問題になるのはROVスラスターの正確性ですが、この研究で使われたROVスラスターは回転数の出力ができないタイプのようで、流す電流の周波数によって決定されるため、誤差が生じます。そこで、実際に大きなバケツに入れた水を流すことで回転速度に対する流速を測定しました。 ## 8 図3 この図は、横軸が回転速度縦軸が流速です。赤と青のプロットはスラスターの誤差を確かめるため2つのモーターで行った実験それぞれのデータです。 黒い点線は二次の多項式回帰で得られたもので、こういう式になりました。R2値は0.97でした。この誤差については、モーターを適切に処理することで小さくできると述べています。 iDASで達成できた最大の流速は0.7 m/sでした。また、回転数が低い条件ではレイノルズ数が2300を下回り、層流状態となることがわかりました。 レイノルズ数が2300を上回る回転速度から、0.7 m/sの回転速度の間で、前述の式を用いて乱流のエネルギー散逸率を算出したところ、10^-3から10^-1Wkg^-1でした。10^-3wkg-1は海洋表層で観測される乱流の強さです(Thorpe 2005)。 ## 8 この装置から、このようなデータが得られます。 iDASは、コンティニュアスフロー方式の装置ですので、出力されるデータは横軸が経過時間となります。ここでは、近前方散乱のデータを例として取り上げており、縦軸は粒子体積です。 iDASは簡便に流速の変更が可能なので、一定時間同じ乱流にさらしたあと、別の速度にという作業ができます。これを4段階で行った例がこの図です。 管内の安定化のため、速度を変えた後は一定時間定常化させる間を待ち、最後の2分ほどのデータを用いています。 ここで、4つの色分けは次に出てくる粒度分布のグラフに対応しています。 → そして、赤色のデータは先ほどのグラフに従うと層流条件でのデータなので、現場の粒子サイズをそのまま反映しているといえます。 ## 9 LISSTからそれぞれの時間において得られるデータは、cのようなものとなっています。1.09μmから184 μmまでの区間で、それぞれのサイズの粒子の単位体積当たりの体積が得られます。そのプロットが図cです。ここから、最小平均粒子体積Vpを算出します。これは、あるサイズbinの中に存在する様々な体積の粒子について、その最小値を取り出したもので、すべての流れ条件のデータから算出しています。これが、図bに示しているものです。 各サイズビン内の平均粒子体積から最小平均粒子体積を引くことで、一次粒子と凝集体との間でどのように粒子が移動できたかを理解できます。 まず、赤いラインについて。層流条件ではもともとの粒度分布に対して一次粒子が増えることはないので、低いほうのピークが消えています。 対して、エネルギー散逸率が高くなっていくにつれて大きなサイズのピークが減り、一時粒子サイズの粒子の体積が増えていく様子が見て取れます。 いっぽう、高いエネルギー散逸率では流れ条件によって凝集体から小さな粒子へと再配分が生じたことが見て取れます。 ## 10 筆者らはこの手法を使って、カオリナイトとモンモリロナイトという粘土粒子を用いたテストを行いました。 このグラフは、LISSTから出力されたデータで、先ほどの操作は行っていません。 上の部分は95%粒子径で、軸が異なっていることに注意してください。 テストでは、10 psuの人工海水を満たした450 Lのタンクに、カオリナイトとモンモリロナイトを入れました。 //それぞれ質量濃度が8.8 mg/Lと11.1 mg/Lとなった条件が用いられました。 //一次粒子の平均粒子サイズはカオリナイトが5 um、モンモリロナイトが4 umでした。 この条件で、このようなデータが得られました。先ほどと同じく横軸が粒子サイズ、縦軸がそれぞれのサイズbinごとの体積濃度です。 凝集体のサイズピークは、カオリナイトで7.9 um。モンモリロナイトでは41.5 umでした。しかし、最も高い乱流条件で、100 um以上のサイズで体積が増加しました。これは、LISST範囲外のサイズの粒子が崩壊し、生じたものであろうと述べています。 そこで、100 um以下に限定して解析を行ったところ、D95はカオリナイトで11.8 um。モンモリロナイトでは60.9 umでした。 ///網掛け部分はD95の近似範囲です。 ## 11 また、凝集体のサイズD95はモンモリロナイト、カオリナイトともに乱流の最小渦サイズより小さく、乱流が弱まるにつれて凝集体サイズは非線形に増加しました。このグラフは横軸がエネルギー散逸率の逆数、縦軸がD95で、点線は乱流の最小渦サイズを示しています。 また、粘土フロックが弱い静電力によって保持されていることから、渦のサイズを超えないことが予想できると述べています。 ///LISST、短軸長さをよく表す。先行研究だよね? ## 12 次に、ベントナイトの粘土粒子を用いた実験によって、実験時間が長くなった際に粒子が沈降することの影響を評価しました。 これは70分間の間、5分おきに層流と乱流を交互に変化させた実験の結果です。横軸が時間で、縦軸は先ほどからたびたび出てきている粒子体積と、 ビーム減衰です。青いラインは粒子体積で左側のじく、赤いラインはビーム減衰です。 乱流は、0.008 Wkg-1から0.313Wkg-1までだんだん強くしていきました。 この図から、まずLISSTで得られる32のサイズビン合計の粒子体積とcがどちらも時間経過にともない減少していく様子がみてとれます。これは、粒子の沈降の結果と考えられます。 とはいえ、沈降による長期変動は乱流による変動と桁違いに異なりました。 ## 13 また、粒子の密度変化からも、凝集・崩壊が沈降と比べて重要であることが示されました。 凝集体には間隙があるので、凝集体が崩壊すると密度の増加が引き起こされます。 ビームの減衰cは密度に依存するので、これと粒子体積Vpの比から、見かけ密度の変動を確認できます。 つまり、粒子の体積に対して密度が大きいとき、凝集体が少なく、 体積に対して密度が小さいとき、凝集体が多いと考えられます。 このグラフからもわかるように、時間経過に伴って体積に対する密度の値は大きくなっています。 このことから凝集・崩壊の相対的な重要性がわかります。 ## 14 実際に、先ほどのグラフから各サイズbinの一次粒子の体積を引いたところ、 粘土、両方ともでprimaryの最大サイズより大きいV’p分布内で崩壊が確認されました。 また、一次粒子体積の増加は凝集体体積の減少より小さいことがみてとれます。先ほどの密度のデータと、この再分布のデータから、凝集体が疎な構造であること、そして崩壊による一次粒子体積の増加の傾向はカオリナイトとモンモリロナイトとで異なることがわかりました。 ## 14 ここまでで、この手法の妥当性が検討されました。そこでここから、実際に現場海水での確認を行っていきます。 本研究では米国東海岸の3地点で観測が行われました。場所は、SRはメリーランド州アナポリスの海軍学校、NCCはノースカロライナ州のアメリカ陸軍工兵隊のリサーチピア。LISはロングアイランド湾です。 水深1 mで観測を行い、同時にPSDとクロロフィルa、水温、アナポリスでは濁度も測定しました。 それぞれの観測地点で得られたデータがこのグラフです。一番上が、各サイズビンの粒子体積を積算したものの時間変動。真ん中はLISST-100xから得られたデータで、一番下は最小平均粒子体積を減算したものです。 実験室内での結果と同じく、複数のピークに分けられる形状をしており、乱流が強くなるにつれて粒度分布が小さい粒子にシフトしています。各地点で一次粒子のサイズは異なっていました。また、ピークの数が複数みられる地点もあり、これは天然粒子の成分が不均質であるためと考えられます。 粘土実験と異なる点として、自然環境でのVpはLISSTのサイズ範囲を超えていました。これはNCCとLISのデータセットで特徴的で、環境中の大きな粒子の存在を示しています。