## テイラー展開
### はじめに:複雑な関数を多項式で近似したい!
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関数 $\sin x$, $\cos x$, $e^x$, $\log x$ など、複雑な関数、抽象度の高い関数を、簡単な式(多項式)で近似できたら嬉しいですよね?実は、うまく条件を満たした関数なら、「関数を多項式で近似する方法」がちゃんとあります。
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### 1. テイラー展開の導出:係数はどう決まる?
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関数 $f(x)$ が $x=c$ の付近で以下のような多項式で近似できると仮定しましょう:
$$
f(x) = a_0 + a_1(x-c) + a_2(x-c)^2 + a_3(x-c)^3 + \cdots.
$$
もちろん、$(x-c)$ のべき乗でまとめたのは、$x=c$ 付近を考えているからで、高校数学の接線を求める問題を想像してもらうとこれが自然であることはすぐ分かるでしょう。この両辺を1回、2回、…と微分してから、それぞれの結果に $x=c$ を代入していくと:
- $f(c) = a_0,$
- $f'(c) = a_1,$
- $f''(c) = 2a_2,$
- $f^{(3)}(c) = 3!a_3,$
- $\cdots,$
- $f^{(n)}(c) = n!a_n,$
- $\cdots.$
となります。元の式には $\cdots$ と、無限個の項の存在が示唆されていますが、$(x-c)$ であろうが $(x-c)^2$ であろうが $(x-c)^{100}$ であろうが、$x=c$ を代入すると消せるわけです。これを逆に解けば:
$$
a_n = \dfrac{1}{n!}f^{(n)}(c),
$$
となることから、テイラー展開の一般式が得られます:
> **【テイラー展開】**
>
> 微分可能性や連続性などの基本的な条件を満たす関数 $f(x)$ に対して、
>
> $$
> f(x) = \sum_{n=0}^\infty \dfrac{1}{n!} f^{(n)}(c)(x-c)^n.
> $$
>
> **【マクローリン展開】**
>
> テイラー展開において $c=0$ と取ったもの:
>
> $$
> f(x) = \sum_{n=0}^\infty \dfrac{1}{n!} f^{(n)}(0)x^n.
> $$
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### 2. 有名関数のマクローリン展開
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#### 三角関数 $\sin x$ の例:
実際に $\sin x$ を何回か微分して、$x=0$ を代入してみましょう。
| 階数 $n$ | $f^{(n)}(x)$ | $f^{(n)}(0)$ |
|:--------:|:------------:|:-------------:|
| 0 | $\sin x$ | $0$ |
| 1 | $\cos x$ | $1$ |
| 2 | $-\sin x$ | $0$ |
| 3 | $-\cos x$ | $-1$ |
| 4 | $\sin x$ | $0$ |
| 5 | $\cos x$ | $1$ |
| … | … | … |
$n$ が偶数であれば 0、奇数であれば $(-1)^{(n-1)/2}$ のように変化します。したがって:
> $$
> \sin x = x - \dfrac{x^3}{3!} + \dfrac{x^5}{5!} - \dfrac{x^7}{7!} + \cdots
> $$
#### その他の代表的なマクローリン展開(結果のみ)
- $e^x = 1 + x + \dfrac{x^2}{2!} + \dfrac{x^3}{3!} + \cdots,$
- $\cos x = 1 - \dfrac{x^2}{2!} + \dfrac{x^4}{4!} - \cdots,$
- $\log (1+x) = x -\dfrac{x^2}{2} + \dfrac{x^3}{3} - \cdots,$
- 他にも演習問題に登場するいくつかの関数については覚えておくべし
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### 3. 発展話題:ランダウの記号と剰余項
### 3.1 ランダウの記号
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「ある関数が他の関数と比べて、せいぜい定数倍で押さえられる」ことを、以下のように書きます:
- $f(x) = O(g(x))$ as $x \to c$ ($|f(x)| \leq k|g(x)|$ が $x \to c$ で成り立つ)
また、$f(x)$ が $g(x)$ よりも速く0に近づく場合:
- $f(x) = o(g(x))$ as $x \to c$ $\left(\displaystyle \lim_{x \to c} \dfrac{f(x)}{g(x)} = 0\right)$
"as $x\to c$"" の部分はしばしば省略される。
#### 例:
- $x^2 = o(x)$ (なぜなら $\dfrac{x^2}{x} = x \to 0$)
- $2x^2 = O(3x^2)$ (定数倍なのでOK)
以下はいずれも正しい:
- $\sin x = x - \dfrac{1}{3!}x^3 + O(x^4)$ (省略されている項は、$x^4$ 以上の高次項)
- $\sin x = x - \dfrac{1}{3!}x^3 + O(x^5)$ (実際には$x^4$の係数は$0$であることを加味して)
- $\sin x = x - \dfrac{1}{3!}x^3 + o(x^3)$ (省略された項は$x^3$よりも速く $0$ に近づくので)
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### 3.2 収束半径(ラグランジュとコーシーの剰余項)
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テイラー展開を有限の項で打ち切った場合、残りの誤差を「剰余項」と呼びます。
> $$
> f(x) = \sum_{k=0}^{n-1} \dfrac{f^{(k)}(c)}{k!}(x-c)^k + R_n.
> $$
テイラーの定理によると、このときの剰余項は:
> $$
> \text{ラグランジュの剰余項}: R_n = \dfrac{f^{(n)}(\xi)}{n!}(x-c)^n, \quad \text{ただし } \xi \in (c, x),
> $$
>
> あるいは
> $$
> \text{コーシーの剰余項}: R_n = \dfrac{f^{(n)}(\xi)}{(n-1)!}(x-\xi)^{n-1}(x-c), \quad \text{ただし } \xi \in (c, x).
> $$
>
いずれも、展開の中心 $c$ と関数を評価しようとしている地点 $x$ の間のどこかの $n$ 階微分を使って、テイラー展開を有限個の項で打ち切ることで出てくる残差が書けるという主張になっています。収束半径を調べる際に、どちらか都合の良いものを使えばいいです。
#### 例:指数関数
> $$
> e^x = 1 + x + \dfrac{x^2}{2!} + \cdots + \dfrac{x^n}{n!} + R_{n+1}.
> $$
このとき、ラグランジュの剰余項は $R_{n+1} = \dfrac{e^\xi}{(n+1)!}x^{n+1}$ で、$x$の値に依らず $n\to\infty$ でゼロに近づきます。 よって、指数関数のテイラー展開は $-\infty \lt x \lt \infty$ で常に収束します。
#### 例:対数関数
> $$
> \log(1+x) = x - \dfrac{x^2}{2} + \dfrac{x^3}{3} - \cdots.
> $$
このとき、コーシーの剰余項は、$0<\xi<x$ または $-1<x<\xi<0$ を満たす $\xi$ を用いて $R_{n+1} = \dfrac{(-1)^{n}}{(1+\xi)^{n+1}}(x-\xi)^{n}x$ で、これは $-1<x\leq 1$ で収束。すなわち、この展開は $-1 < x \leq 1$ の範囲で収束します。これが「収束半径」です。
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### おまけ:分数式の極限評価
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> $$\displaystyle \lim_{x \to 0} \dfrac{\sin x}{x} = 1.$$
これは、$\sin x = x - \dfrac{x^3}{6} + \cdots$ と展開すればすぐに分かります:
$$
\frac{\sin x}{x} = 1 - \dfrac{x^2}{6} + \cdots \to 1 \quad (x \to 0).
$$
このように、テイラー展開は**極限の評価にも有効**です。あるいは
> $$\displaystyle \lim_{x \to 0} \dfrac{1-\cos x}{x^2} = \dfrac{1}{2},$$
もすぐに分かるでしょう。
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### まとめ
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- テイラー展開は、関数を多項式で近似する強力な手法。
- 有名関数($\sin x$, $\cos x$, $e^x$, $\log(1+x)$ など)のマクローリン展開はもはや覚えておいた方が早い(何度も登場するので、そのうち覚える)。
- 誤差評価にはランダウの記号 $O(x^n)$ や剰余項が使える。
- 収束性の話題は、展開の適用範囲を考える上で重要。
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