# Eulerの五角数定理の組合せ論的証明 **五角数**は、正五角形の内部に点を図のように並べたとき、含まれる点の総数です 一般項は $a_n=\frac{n(3n-1)}{2}$ と表されます ![](https://i.imgur.com/ko65I16.png) **Eulerの五角数定理**はこの五角数に関する定理であり、[分割数の母関数](https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%88%86%E5%89%B2%E6%95%B0#%E5%88%86%E5%89%B2%E6%95%B0%E3%81%AE%E6%AF%8D%E5%87%BD%E6%95%B0)とも深い関係があります $\begin{align} \prod_{k=1}^\infty (1-x^k)=\sum_{k=-\infty}^\infty (-1)^kx^{\frac{k(3k-1)}{2}} \end{align}$ この証明としては「ヤコビの三重積」を用いたものが主流ですが、今回はFranklinによる組合せ論的証明を見ていきます ### 下準備 左辺を展開していったときの様子を観察すると、 $x^N(N \in \mathbb{N})$ 次の係数は > $\sum \lambda_k=N,\lambda_k>\lambda_{k+1}(1 \leq k < M)$ を満たすような長さ $M$ の整数列 $\{\lambda_k\}$ それぞれについて、 $M$ が偶数なら $1$ 、奇数なら $-1$ としたときの総和 を表していることが分かります 例えば $N=7$ のとき、 $M$ が偶数となるのは $\{6,1\},\{5,2\},\{4,3\}$ 、奇数となるのは $\{7\},\{4,2,1\}$ なので、 $x^7$ の係数は $3-2=1$ となります 上記のように、自然数を和が $N$ の整数列 $\lambda$ として表現する操作を**分割**と呼びます $D_{even}(N):N$ の分割 $\lambda$ のうち $M$ が偶数となるものの個数 $D_{odd}(N):N$ の分割 $\lambda$ のうち $M$ が奇数となるものの個数 と定義すると、五角数定理は $D_{even}(N)-D_{odd}(N)=\begin{cases} (-1)^k \ (\exists k \in \mathbb{N},N=\frac{k(3k \pm 1)}{2}) \\ 0 \ (otherwise) \end{cases}$ と言い換えられます(定数項は無視、 $\frac{-k\{3(-k)-1\}}{2}=\frac{k(3k+1)}{2}$ に注意) ### 分割とYoung図形 分割 $\lambda$ について、上から $k$ 段目に $\lambda_k$ 個のマスを置いていったときの図形を**Young図形**と呼び、これは各分割と1対1に対応しています 下図は $N=10,\lambda=\{5,4,1\}$ としたときのYoung図形を示しています ![](https://i.imgur.com/9LjBAJN.png) Young図形の $i$ 段目にある $j$ 番目のマスを $(i,j)$ と表します $S$ をYoung図形 $\lambda$ の最上段で一番右のマスからちょうど左下に存在するマスの集合 $\{(1,\lambda_1),(2,\lambda_1-1), \cdots ,(|S|+1,\lambda_1-|S|)\}$ 、 $T$ を最下段に存在するマスの集合 $\{(M,1),(M,2), \cdots ,(M,\lambda_M)\}$ とします そして $\phi(\lambda)$ を、 > $|S|<|T|$ なら、$S$ を $T$ の下段に移動 > $|S| \geq |T|$ なら、 $T$ を $S$ の右側に移動 という操作を行った後のYoung図形とします もし $|S|=|T| \lor |S|=|T|-1$ のとき操作を行うと、そもそも移動先のマスが足りなかったり $\lambda_k$ が相異なるという条件に違反するので、 $\phi(\lambda)$ は存在しません 逆に $|S| \neq |T| \land |S| \neq |T|-1$ を満たすとき、 $\phi(\lambda)$ が表す分割は $M$ の偶奇が反転したものになるので、 $D_{even}(N)$ と $D_{odd}(N)$ に1対1の関係が導き出せます したがって $D_{even}(N)-D_{odd}(N)$ は、 $|S|=|T| \lor |S|=|T|-1$ となる「例外」の分割についてのみ考慮すればよく、 $|S|=M$ より総和としてあり得るのは $N=\frac{M(3M \pm 1)}{2}$ のみになるので、五角数定理が示されました ### おわりに HackMDで初めて記事を書いてみました 今後はこのサイトでの投稿がメインになると思います ### 参考文献 1. Chapman, Robin. "Franklin's argument proves an identity of Zagier." arXiv preprint math/0009036 (2000).