--- robots: noindex, nofollow lang: ja dir: ltr breaks: true slideOptions: transition: fade theme: white --- <style> .slides h1{ font-size: 200%; } .slides h2{ font-size: 170%; } .slides h3{ font-size: 140%; /* text-align: left;*/ } .slides h4{ font-size: 120%; font-weight: 300; /* text-align: left;*/ } .slides h6{ font-size: 0%; font-weight: 300; /* text-align: left;*/ } .slides li{ margin: 20px 0px 20px 0px; line-height: 1.1em; font-weight: 200; } .slides p{ text-align: left; line-height: 1em; font-weight: 200; } .slides ul{ list-style-type: disc; } .slides ul ul{ list-style-type: circle; } .slides ul ul ul{ list-style-type: square; } .slides .footnotes{ font-size: 70%; } </style> ###### tags: `初年次ゼミ2019` 信憑性が増す「伝播性」アルツハイマー病説 (記事) === #### 2019年3月号 ## マウスの実験で、脳変性疾患に関連する粘着性タンパク質が伝達される可能性があるという確証が得られた。しかし、ヒトでのリスクは恐らく極めて低いだろうと研究者は言う。 神経変性疾患の顕著な特徴の1つである粘着性タンパク質は、特定の条件下ではヒトからヒトへ伝達される可能性があり、伝達された人の脳に新たな損傷を与える場合があるという仮説を裏付ける神経科学的証拠がさらに多く集まっている。神経科学者たちは、そうした研究結果はアルツハイマー病などの疾患が伝染性だと示唆しているわけではないと強調しているものの、特定の内科的、外科的手順によって、そのようなタンパク質がヒトからヒトに伝播するリスクがあり、それが数十年後に脳疾患を引き起こすかもしれないという懸念が浮上する。「リスクは低いという結果が出るかもしれませんが、緊急に調べる必要があります」とロンドン大学ユニバーシティカレッジの神経科医John Collingeは言う。彼はNature 2018年12月20/27日号に発表された研究を率いた。 この研究は、Collingeの研究チームが2015年に発表した挑発的な研究をさらに進めたものだ。研究者たちは、英国で4人の脳の死後研究を行った際に、アミロイドβと呼ばれるタンパク質が大量に沈着していることを発見した。4人は幼年期に小人症の治療のために、数千人のドナーの死後の脳下垂体から抽出された成長ホルモン製剤を投与されていた(2015年12月号「成長ホルモン療法の患者にアルツハイマー病の恐れ」参照)。 レシピエントたちは、クロイツフェまれルト・ヤコブ病(CJD)と呼ばれる稀だが致死的な神経変性疾患により中年で亡くなった。CJDを引き起こすプリオン(感染性のミスフォールドされたタンパク質)が成長ホルモン製剤に含まれていたためだった。しかし、そのような若年齢でアミロイド蓄積が見られたことは病理学者たちにとって予想外だった。Collingeらは、少量のアミロイドβが成長ホルモンの試料から伝達され、特徴的なアミロイド斑の「シード」となったのではないかと考えた。 ### 災いの種 脳血管のアミロイド斑は、脳のアミロイドアンギオパチー(CAA)と呼ばれる病気の顕著な特徴の1つで、局所で出血を引き起こす。しかし、アルツハイマー病では、アミロイド斑は通常、タウと呼ばれる別のタンパク質と共に見られる。Collingeらは、タウもまた同様に伝播するのではないかと懸念している。しかし、前述の4人のCJD患者の脳ではこうしたことは見られず、代わりにCAAの特徴がいくつか見られた。 研究チームは現在、汚染された生物学的製剤を介してこれらのタンパク質がヒトからヒトへ伝播する可能性があるという仮説をより直接的に検証している。英国は、1985年にヒト死体に由来する成長ホルモンによる治療を中止し、合成成長ホルモンを使用する治療に切り替えた。しかし、Collingeのチームは、南イングランドにある国立公衆衛生複合研究施設であるポートンダウンの研究室に粉末として室温で数十年間保管されていた成長ホルモン製剤の古いバッチの所在を突き止めることができた。 試料を分析したところ、彼らの疑いが正しかったことが確認された。バッチのいくつかには、かなり高い濃度のアミロイドβとタウタンパク質が含まれていたことが分かったのだ。 ### マウスで実験 これらのバッチに含まれていたアミロイドβがアミロイド疾患を引き起こす可能性があるかどうかを調べるために、彼らは、遺伝子組換えによりアミロイド疾患を発症しやすくなっている若齢のマウスの脳に試料を直接注入した。中齢までに、マウスの脳には大量のアミロイド斑とCAAが生じていた。全く処置を受けなかった、または合成成長ホルモンによる処置を受けた対照マウスではアミロイド蓄積は起こらなかった。 Collingeらは今、別のマウス実験で、タウタンパク質でも同じ結果が得られるかどうかを調べている。 「これは重要な研究です。もっとも、結果は非常に予想通りのものでしたが」と、ハーティー臨床脳研究所(ドイツ・チュービンゲン)のMathias Juckerは言う。Juckerは、2006年にヒトの脳から抽出されたアミロイドβによってマウスの脳でCAAとアミロイド斑が生じる可能性があることを示した。また、それ以後、他の多くのマウス研究でもこのことが確認されてきた。 ### 外科手術における意味 数十年経ってからもアミロイドβの伝播性が保たれていたことから、注意を喚起する必要性が強調されたとJuckerは言う。粘着性のアミロイドは手術器具に使用される材料にしっかりとくっついて、標準的な汚染除去法では取り除くことができない。しかし、Juckerは、変性疾患は発症まで長い時間がかかるので、伝達の危険性が最も関係するのは、高齢者に使用された器具が子どもの手術に使用される場合だとも述べる。 これまでのところ、疫学者たちは、手術の既往が晩年の神経変性疾患発症のリスクを高めるかどうかについて検討を行えていない。医療データベースはこの種のデータを含んでいない傾向があるからだ。 しかし、ロンドン大学インペリアルカレッジの疫学者Roy Andersonは、研究者たちはこの可能性を真剣に受け止め始めていると言う。米国のフラミンガム心臓研究など主要な人口コホート研究では、他の医療データと共に、参加者の過去の外科手術についての情報も集め始めている。 2015年の発表に刺激を受けた世界中の病理学者たちは、ヒト死体由来の成長ホルモン製剤で治療を受けた患者について、自らが関わった症例の再検討を始めた。同時に、汚染されたヒト脳膜を修復用パッチとして使用した脳外科手術を受けた後にCJDを発症した患者についても再検討が行われている。これまでに、保存されていた脳の標本の多くに異常なアミロイド斑が大量に蓄積していたことが報告されている。さらに、ある研究では、1970年代と1980年代にフランスで使用された成長ホルモン製剤のいくつかのバッチがアミロイドβとタウに汚染されていたこと、そして、24人の患者のうちの3人でタウも見つかったことが示されている。 Collingeは、2015年に彼の論文が発表された後に、手術器具の汚染除去技術を開発するための助成金を申請したが、承認を得られなかったと言う。 「私たちは重要な公衆衛生上の問題を提起しました。それなのに、それがまだ対処されていないことにいら立ちを覚えます」。しかし彼は、神経外科による実際のリスクはまだ明確にはされていないと述べている。