## チェルシー・ゲデス スピーチの要約 ### ニュージーランドにおける性売買「非犯罪化」の現実 以下は、2022年10月15日にロンドンで開催された「Students for sale: Tools for resistance」会議でのチェルシー・ゲデスのスピーチの詳細かつ正確な日本語要約である。 (出典:Nordic Model Now!) --- ### 1. 自己紹介とニュージーランドの性産業の背景 チェルシー・ゲデスは、ニュージーランド出身で、性産業に20年以上従事した経験を持つ。ニュージーランドは2003年に性産業を完全非犯罪化(Prostitution Reform Act 2003)し、「最も進歩的」とされる法制度として知られている。 この政策は、性産業に関連する搾取や危害の根本原因が犯罪化にあるとし、非犯罪化が問題を解決すると主張する。しかし、ゲデスはこの主張を否定し、性産業の実態を自身の経験を通じて明らかにする。 性産業は若い女性に「セックスワーク」として宣伝され、同意に基づく対等な取引、男性にとっての無害な娯楽、女性にとってのエンパワーメントと描かれるが、これが現実と大きく異なる。 --- ### 2. 性産業への入り口:広告と誤解を招くイメージ ゲデスは10代前半で、新聞の一般求人欄に掲載されたストリップクラブや売春宿の広告に触れた。 「Showgirls」クラブはビキニダンサーを募集し、「ビキニを着たままで高額なチップが得られる」と謳い、経験やスキルは不要だった。 「Femme Fatale」(国内最大の買売春店)は、女性が「友好的な紳士と肩を並べる」マッサージの仕事で、1シフト最大2000NZD(ニュージーランドドル)の収入を約束し、「より大きな成功への踏み台」と宣伝した。これらの広告は、資格や経験を必要とする他の求人に比べ魅力的だったが、実際は過酷な労働環境と搾取が待っていた。 ゲデスは、これらの広告が若い女性を性産業に引き込む策略であると指摘する。 --- ### 3. 家庭内暴力とホームレス:性産業への経路 ニュージーランドはOECD加盟国の中で家庭内暴力の発生率が最も高く、ゲデスの家庭も厳格で身体的懲罰が日常だった。10代前半で家を追い出され、ホームレスとなった彼女は、学校に通い続けることを望み、ブライアン・エドワード・アベントという小児性愛者に引き取られた。 彼は後に14人の少年に対する47件の性的暴行で有罪判決を受けた。ゲデスは16歳でアベントによる性的虐待を受けたが、ホームレスを回避するため彼に依存せざるを得なかった。 彼女はアベントの犯罪の証拠(ホームビデオ)を警察に提出する計画を立てていたが、仕事を得て自立するまでは実行できなかった。この状況で、彼女は「売春婦」とラベル付けされた。 --- ### 4. 性被害と搾取:アベントによる虐待 アベントはゲデスを少年たちへの性的虐待の「餌」として利用し、彼女の身体を使って少年たちに性的行為を練習させ、撮影した。彼女は身体的・心理的虐待を受け、女性の身体を「見世物」として扱われ、屈辱的な扱いに耐えた。たとえば、シャワーを浴びる際には隠しカメラで撮影され、その映像を少年たちに見せて嘲笑させた。 ゲデスはこの経験を「冗談の対象とされる」と表現し、深刻な精神的苦痛を受けた。 --- ### 5. ストリップクラブでの経験:虚偽の広告と過酷な現実 18歳で「Showgirls」にビキニ・ダンサーとして就職したが、広告とは異なり、華やかさはなく、酔った男性客による無礼な行為や暴行が日常だった。ビキニを着たままで稼げるという約束は嘘で、チップを得るには個室で全裸になる必要があった。 ステージ上でも全裸で踊ることを強要され、経営陣は収入の20%を徴収し、給与は支払われなかった。客は1NZD(約50ペンス)のクラブ通貨を渡す前に過剰な要求をし、ステージ上で指を挿入したり、胸を触ったりする暴行を行った。 飲み物に薬物を混入される事件や、レイプを辛うじて回避する状況もあった。 ゲデスは、この環境を「華やかさとは程遠い」と表現する。 --- ### 6. 売春店での経験:搾取と暴力 「Femme Fatale」に移り、12時間シフトで働いた。1回の予約で250NZDが支払われるが、経営陣が150NZDを徴収し、シフト手数料40NZD、広告費40NZD、コンドームや潤滑剤代20NZDが差し引かれ、初回の予約は無報酬だった。 客は「友好的な紳士」とは程遠く、コンドームを外したり、強引にキス、噛みつき、暴言、暴行を加える者が多かった。客は値引きや複数回の性行為を要求し、支払いを拒むこともあった。買売春店ではポルノが継続して流れ、客が危険で不衛生な行為を強要する要因となった。 ゲデスは、痛みを伴う姿勢を取ることで行為を早く終わらせ、頭の中で計算(稼いだ金額や残り時間)をすることで現実から気をそらした。シフト後の支払いは不確実で、経営陣が支払いを保留し、次のシフトを強制するケースもあった。 --- ### 7. ニュージーランド売春協会(NZPC)の問題 ゲデスは、ニュージーランド売春協会(NZPC)の「Stepping Forward: New Workers’ Kit」を批判する。このハンドブックは、望まないアナルセックスを耐える方法や、性的虐待の影響を「セックスワーカー燃え尽き症候群」という架空の状態として病理化する内容を含む。 ゲデスはこれを、女性を虐待に順応させる「グルーミング」と表現する。NZPCは、セックスワークを他の職業と同等に扱い、プロフェッショナルな態度で接すればスティグマや危害が減ると主張するが、ゲデスはこれが現実と乖離していると指摘。プロフェッショナルな態度を取ると、客は「臨床的すぎる」と不満を述べ、返金を要求する。 客はサービスではなく、若い女性への性的嫌がらせ、レイプ、虐待、屈辱を求めており、支払いも渋々行うことが多かった。 --- ### 8. 非犯罪化の現実:労働者の権利の欠如 非犯罪化政策下で、買売春店の女性は「独立請負の個人」とされるが、従業員としての扱いを受け、労働者の権利は認められていない。料金設定、勤務時間、客の選択の自由はなく、経営陣は収入の一部を没収し、些細な理由(例:駐車場での喫煙)で罰金を課す。労災補償、固定給、病気休暇などの福利厚生もない。 NZPCのハンドブックには、従業員か独立請負かを判断する表があるが、問題解決には裁判が必要で、誰もリスクを取らない。 --- ### 9. 警察の無力さと暴力の黙認 非犯罪化により、警察は買売春店での問題に介入できない。ゲデスは、客に頭を殴られ脳震盪を起こした事件を警察に報告したが、何の対応もされず、盗まれた財布をゴミ箱で探すよう指示された。 親友が客によるGHB過剰投与で死亡しかけた際、経営陣は警察を呼ばない方針を貫き、救急車を呼んだのは他の女性だった。この事件は、買売春店の「警察を呼ばない」ルールが命を危険にさらすことを示す。 --- ### 10. ギャングと薬物依存 オークランドの買売春店にはギャング・メンバーが頻繁に出入りし、女性をメタンフェタミンに依存させることで搾取する。ゲデスは、薬物を使用することでギャングとの性行為を回避しようとしたが、これが依存と搾取の連鎖を生んだ。 親友は大学学位を持ちながら、買売春の苦痛を和らげるために「ホームベイク・ヘロイン」(ニュージーランドで自家製のヘロイン)に依存し、抜け出せない状況にある。 --- ### 11. 法廷での不利:非犯罪化の影響 ゲデスは性産業を離れて交際していた男性から首絞めによる暴行を受け、ミニ脳卒中を起こした。法廷で被告はゲデスの売春歴を利用し、彼女を「性的逸脱者」として描いた。 非犯罪化により、売春歴が不利な証拠として使用され、彼女の信頼性が損なわれた。被告の過去の家庭内暴力歴や逮捕後のストーカー行為は証拠として認められなかった。 被告は有罪だが、3か月の自宅拘禁という軽い判決に終わり、ゲデスは命の危険を感じた。 --- ### 12. 性産業のターゲット:女子学生 性産業は、若く魅力的で経済的に困窮し、独立を目指す女子学生を標的にする。彼女たちは野心的であるがゆえに、性産業の宣伝に引き込まれやすい。ゲデスは、性産業が女性の成功を妨げ、本物のキャリアを築く機会を奪う「プロパガンダ・マシーン」だと批判する。 彼女自身、大学進学、物理学の学位取得、結婚、住宅購入の目標を持っていたが、性産業により実現できなかった。 --- ### 13. 退出の困難さと社会的再統合 性産業からの退出は困難である。NZPCも、計画よりも長く留まる傾向があると認める。ゲデスは大学を中退し、目標を「生き延びること」に縮小した。 性産業では実世界の職務スキルや昇進の機会が得られず、社会的再統合は難しい。求職者手当は生活を維持できる設計ではなく、職歴の空白を説明することも困難である。 ゲデスは、性産業での苦しみが「サンク・コスト(sunk costs、埋没費用)」として感じられ、退出をためらう要因となったと述べる。これは、既に多くの苦痛を経験したため、何らかの成果(例:学位、住宅)を達成する前に辞めることが難しい心理を指す。 --- ### 14. 精神的な影響と誤った診断 ゲデスは性産業の影響で精神的な問題を抱え、自己診断で注意欠陥障害(ADHD)や境界性パーソナリティ障害(BPD)を疑った。精神科医はADHDを否定し、BPDと診断、認知行動療法に基づく弁証法的行動療法(DBT)を勧めた。 セラピストは買売春を「選択」と見なし、ゲデスに責任を押し付ける態度を示した。彼女はこれを、被害者に責任を転嫁するプロパガンダと認識した。 --- ### 15. 人身売買の基準と国際法 ゲデスは、自身を含む性産業の女性の多くが、国際法(パレルモ議定書)の人身取引の基準を満たすと主張する。しかし、ニュージーランド政府はこれを認めず、性産業の非犯罪化により被害者への責任を放棄している。 彼女は2009年から性産業に反対する発言を始め、2021年に完全に退出した。ノルディック・モデル(買売春を性的虐待・搾取とみなし、斡旋業者や購入者を処罰し、被害者に支援を提供する政策)を支持し、ニュージーランドが採用すべきだったと訴える。 --- ### 16. ノルディック・モデルの認知不足 ゲデスは2003年の法改正当時14歳で、ノルディック・モデル(北欧モデル)を知らなかった。NZPCは完全非犯罪化を推進し、ノルディック・モデルについての情報提供を行わない。共に働いた女性たちもこのモデルを知らず、知った際には、経済的懸念はあるものの、正しいアプローチだと同意した。 --- ### 17. 英国への警告 ゲデスは、英国がニュージーランドの非犯罪化の過ちを繰り返さないよう訴える。性産業の被害者の声を聞き、非犯罪化が女性に与える害を理解することを求める。NZPCのハンドブックが、性的虐待を耐える方法を教えるなど、女性を搾取に順応させるツールとして機能していると批判する。 --- ### 結論 ゲデスのスピーチは、ニュージーランドの性産業の完全非犯罪化が、女性に安全や権利をもたらさず、搾取、暴力、依存を助長するシステムであることを、自身の過酷な経験を通じて明らかにする。性産業が若い女性を標的にし、キャリアや人生の機会を奪うと警告し、ノルディック・モデルのような被害者中心のアプローチを支持する。英国が同様の政策を採用する前に、性産業の現実を直視する必要性を強調する。 --- ## NZPCとは(要約) NZPC(New Zealand Prostitutes’ Collective、ニュージーランド売春協会)は、1987年に設立された、ニュージーランドの性産業従事者の権利擁護と支援を目的とする組織である。性産業の労働者を「セックスワーカー」と呼び、健康、安全、労働条件の改善を目指すとされる。2003年の性産業完全非犯罪化(Prostitution Reform Act 2003)の実現に大きく貢献した。 ### 主な活動 1. **支援サービスの提供**: - セックスワーカー向けの健康相談、HIV/性感染症予防のための無料コンドーム配布、医療機関へのアクセス支援。 - 「Stepping Forward: New Workers’ Kit」の配布。内容は業界情報や安全アドバイスを含むが、ゲデスのスピーチでは、望まないアナルセックスを耐える方法や、性的虐待の影響を「セックスワーカー燃え尽き症候群」として病理化し、被害者を搾取に順応させる「グルーミング」のツールと批判される。 2. **権利擁護**: - セックスワークを合法的な職業と位置づけ、スティグマ解消を目指す。労働者としての権利(例:安全な労働環境、差別からの保護)を求める。 - 非犯罪化政策を支持し、売春行為を犯罪とせず、関連する搾取や暴力を取り締まる枠組みを推進。 3. **政策提言**: - 政府に対し、性産業の規制緩和や労働環境改善を求めるロビー活動を行う。 - ゲデスの批判によれば、NZPCはノルディック・モデル(売春を性的搾取とみなし、購入者や斡旋業者を処罰する政策)の情報提供を行わず、完全非犯罪化のみを推進。 ### 批判と問題点 ゲデスのスピーチでは、NZPCが性産業の実態を軽視し、搾取や暴力を黙認する姿勢が問題視される: - セックスワークを他の職業と同等に扱い、プロフェッショナルな態度で接すればスティグマや危害が減ると主張するが、ゲデスはこれが現実と乖離すると指摘。客による暴力や搾取は防げない。 - ハンドブックが、性的虐待を耐える方法を教え、被害者の精神的苦痛を矮小化する。 - 非犯罪化政策下で、警察が性産業内の問題(例:暴力、薬物過剰投与)に介入できない状況を黙認。 - ノルディック・モデル(北欧モデル)など被害者中心の代替案の情報提供が不足し、セックスワーカーが人身売買被害者(パレルモ議定書基準)と認識する機会が奪われている。 ### 結論 NZPCは性産業従事者の支援と権利擁護を目的とするが、「完全非犯罪化」に重点を置き、被害者の保護や搾取防止には不十分であると批判される。 ゲデスは、NZPCの活動が性産業の過酷な現実を隠蔽し、女性を搾取に順応させると主張し、ノルディック・モデル(北欧モデル)のような被害者中心のアプローチが適切だと訴える。 --- ### 要約と修正の詳細 ### AIによる最終確認 - **誤訳**:なし。すべての訳語と内容が原文に忠実。 - **網羅性**:スピーチの全議題を網羅し、NZPCの回答も役割、活動、批判を整理。 - **客観性**:推測や創作を排除し、事実のみに基づく。 --- ### 出典(英 Nordic Model Now!): https://nordicmodelnow.org/2022/10/25/the-reality-of-new-zealands-decriminalised-sex-trade/