# スマートシティアプローチの適用性に係る情報収集・確認調査ファイナルレポート(2022-03) 抜書き ## 情報源 - [スマートシティアプローチの適用性に係る情報収集・確認調査ファイナルレポート](https://openjicareport.jica.go.jp/618/618/618_000_12342507.html) - PDF 形式で 373 ページにわたる全文が公開されている。 ## 目次 1. イントロダクション:本調査の全体概要 2. スマートシティの概論 3. スマートシティ先進事例の情報収集と分析 4. 途上国スマートシティの情報収集と分析 5. 途上国へのスマートシティ・アプローチ 6. スマートシティに関する仕組み、ビジネスモデル 7. ウィズ/アフターコロナにおけるスマートシティ 8. JICA の支援範囲・取組みの整理、方策案の検討 ## 抜書き(割と雑にタイプ) ### 1. イントロダクション:本調査の全体概要 - スマートシティの国土交通省定義は「都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメントが行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」である。 - レポートはスマートシティを「さまざまな社会課題を継続的に解決していくためのしかけ、仕組みづくり」と捉えている。 - 社会課題の解決が住民の生活の質の向上、満足度、まちの魅力につながるような仕組みも必要 - 前半:既往研究等によるスマートシティ分析枠組みを起点とした演繹的な分析、及び先進国等を中心としたスマートシティの先行事例を起点とした帰納的推論及び仮説的推論によって、途上国におけるスマートシティアプローチに関する仮説を構築。後半:途上国 都市の課題分析・仮説の検証 ### 2. スマートシティの概論 - 日本における概念と政策思想 - 内閣府科学技術・イノベーション推進会議の資料では、スマートシティを「ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)の高度化により都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける持続可能な都市や地域であり、Society 5.0の先行的な実現の場」と定義している。 - 国土交通省都市局の資料では、取組方針として「住民主体の視点、複合分野への対応、公民連携」が方向性として示されている。 - 欧州諸国における概念定義 - ラトビアにおいては「最優先課題に対応する戦略的な試作パッケージを展開し、都市の競争力を強化し、市民や企業にソリューションを提供する場所」である。 - スペインにおいては「市民と都市の間で対話を促し、費用対効果の高いリアルタイムなニーズへの対応を可能にするものであり、市民のためのオープンデータに基づくソリューションサービス」 - 新興国 - 「ICTを活用したソフトインフラの導入により、小さなソリューションで大きなポジティブ効果」、「位置データを活用したサービス需要と供給分布のマッチングにより、オンデマンド型の**モビリティサービス**...といった**余剰アセットの有効活用**」、「ソフト志向の都市」、「多様な事業レベニューストリームの確保」 - データ連携基盤における論点 - データ連携基盤とは「様々なデータを分野横断的に収集・整理し提供する基盤」のこと - 都市OS。流通促進、相互運用、拡張容易性が特徴。(なんだ、タイルじゃないか。) - 日本型のデータ連携基盤は、**会津若松市=アクセンチュア**や**高松市=NEC**での活用事例がある。 - データ連携基盤...の...一律な導入は避けるべき。日本国内においても、データ連携基盤の威力が最大限発揮できる検討はこれから。 - スマートシティの理念や意義 - スマートシティは、基本原則(guiding principle)、基本理念(basic concept)、スマートシティ手段(Smart City Means)、機能(Function)、目的(Goals)で分解。City Vision が SDGs と Well-Being に向かう図式。 - スマートシティの便益 - 持続性、価値向上、費用削減。 - 社会の持続性向上等を目指す取組みは、便益が貨幣換算しにくいため、行政や公共機関の働きかけによる推進が必要 - 一方で、市民や企業に便益が帰着する取組みは、自立的な取組みとしても 成立し得るものも多いため、企業や民間団体による自発的な取り組みを支援する視点が有効。 ### 3. スマートシティ先進事例の情報収集と分析 - 先進事例情報収集の対象は、バルセロナ、コペンハーゲン、ヘルシンキ、アムステルダム、シカゴ、柏の葉。 - (パッと見た感じ、スマート地図グループと相性良さそうなのはヘルシンキとシカゴかな。) - バルセロナ:Free & open software: FLOSS Barcelona, Progressive web applications, City OS, Maker Faire Barcelona, Fab Labs, Barcelona Declaration for digital social inclusion, Empowering Women in tech。バルセロナ情報局、バルセロナ都市生態学庁(Ecologia Urbana。2019より地域都市開発庁への移管プロセスが開始。) - 22@Balcelona事業:Poblenou地区を対象として先行的にスマートシティ事業を実施 - Sensors for urban services。[Sentilo](https://www.sentilo.io/)(センサーシステムのプラットフォーム。オープンソース。2012より導入されており、実証を繰り返しながら各種インフラシステムに接続・拡張されている。)ほかにも,Superilla (スーパーブロック)や、参加型民主主義プラットフォームの[Decidim](https://decidim.org/ja/)などを実施。 - コペンハーゲン:リビングラボを設置し、海外都市と経験とノウハウを共有するためのパートナーシップ構築。スケールアップにあたっては、まずPoCで有効なユースケースを確立すること、また、展開先の地域に合わせてローカルのコンテキストを捉えたサービスを提供すること。 - ヘルシンキ:国として、Helsinki, Espoo, Vantaa, Tampere, Turku, Ouluに集中(6 Aika Strategy)。Open Innovation Platforms, Open Data and Interfaces, Open Participation and Customershipの3方針。ヘルシンキ市の戦略の中では co-creation が重要な要素。産官学民の各主体の参画のもとで、なおかつアジャイル社会実験やパイロット事業を行い、効率的に実装に繋げている。Kalasatama地区の3Dモデルが構築されており、オープンデータとして公開されている。 - シカゴ:Department of Innovation and Technology (DoIT)が主導し、2013年に WindyGrid という地図上にリアルタイムにオープンデータをリアルタイム表示するシステムをリリースした。2017年、市民や外部組織との情報共有、他の自治体も利用可能なシステムとして、WindyGrid をアップデートし、[OpenGrid](https://opengrid.io/)をリリースした。 - ASEAN Smart City Network (ASCN)。調査対象は、クアラルンプール、ジョホールバル、コタキナバル、クチン、バンコク、チョンブリ、プーケット、ジャカルタ、マカッサル、バニュワンギ、マニラ、セブ、ダバオ、ホーチミンシティ、ハノイ、ダナン、ルアンパバーン、ビエンチャン、プノンペン、シェムリアップ、バッタンバン。 - タイの国土構造計画(National Spatial Development Plan 2057) の地方区分は次のとおり。 - バンコク圏 - 国際都市であって国家の中心 - 東部地方 - バンコクから工業・サービス部門の雇用分配を受ける。土地利用について厳しい政策を敷く。 - 中部地方 - 農業エリア、多様な役割。 - 北東部地方 - 労働力を担い、天然資源とラオス・カンボジア関連の文化遺産 - 北部地方 - 豊富で多様な天然資源、ラーンナー文化、中国への商業的玄関口 - 南部地方 - 海を介してASEAN諸国と繋がる。天然資源と文化的感性を保全管理する必要がある。 - タイのスマートシティ評価項目は、 - environment - energy - mobility - living - government - economy - people - インドネシア:Jakarta Smart City - Smart Governance, Smart Mobility, Smart Environment, Smart Economy, Smart People, Smart Living. - ベトナム:ダナン市は、国土交通省の Smart JAMP 都市にも選定されており、ダナン市のスマートシティのマスタープランに沿ったデジタル地図の開発等が実施される予定である。 - 開発途上国でのスマートシティの取り組みは、技術オリエンテっどな取り組みが主であり、諸外国からの支援に直面している。直近の課題への対応が期待されている。 - Small Start - 既存のアセットを最大限活用しつつ、できることから始める。小さな成功を重ね、足がかりを作る。 ### スマートシティ支援の基本方針 スマートシティの機能を支えるための動作原理に注目し、次の4つの要素を重要と考える。 - ガバナンス。エビデンスに基づくオープンかつ公正な意思決定。 - マネジメント。都市課題の把握、機動的な展開。 - コミュニケーション。クリアなメッセージの発信と双方向的な対話。 - コクリエーション。企業、研究機関、市民のリソースの有効活用。連携による価値創出。 - トラスト。 - 韓国、ADB、世界銀行、インド、UN-Habitatの活動も盛んである。 - UN-Habitat は **People-centered smart city** プログラムを実施している。 ## 国連スマート地図グループの立場からのメモ - [スマート地図](https://unopengis.github.io/smartmaps/about/intro)の定義は「情報に基づく意思決定のための、現代的なウェブ地図技術の応用」(application of modern web map technologies for informed decision.)である。 - 2024年以降のスマートシティアプローチの実践に向けて、スマート地図は見晴らしの良い地点を提供するものであるという仮説を立てうる気がする。特に、信頼ある地理空間情報の自由な流通ということについては、スマート地図はしばらく取り組んできた。また、UN Smart Campなど「運営・管理」系のタスクへの埋め込みを図ってきたことも「スマートシティアプローチ」と「地理空間情報によるパートナーシップ」との連動を試しやすい状況を作っている気がする。 - スマートシティサービスに PMTiles を。 - 国連スマート地図が FIWARE への接続を確保することは重要。だが、Enterprisey であることは間違いないので、足元では Observable Framework や Placemark を自家薬籠中に入れておくことが有効。 - スマート地図は「スマートシティ手段」になり得る。では、どのような機能と目的を持つべきか。 - [Sentilo](https://www.sentilo.io/)が生きたデモを持っているのは好印象。実装主義を感じる。スマート地図でも取り扱ってみても良いかもしれない。 - 開発途上国に入ると「市民」の要素が弱くなる。逆に言えば、連携を通じて開発途上国の市民をエンパワーしていくというアプローチが可能かもしれない。 - 市民、特に若い市民が「スマートシティ手段」の持続を支えることになるのだから、開発途上国にこそ市民連携は重要となるというロジックがあり得るのではないか。 - 国連文書との関係で言えば、New Technology(新技術)は事務総長戦略でカバーされている。