# 朝 「んっ...」 急速に浮上する意識が、まどろんだ脳を覚醒させる。重い瞼を開くと、そこには霞んだ世界が映っていた。いつもの部屋、夜の帳が落ちた、暗い部屋。今日は休日だから惰眠を貪っていたかったけれど、せっかくの早朝の目覚めを無碍にしたくないと思い、すっかりぬくくなった布団から体を引き摺り出す。途端にピリリとした寒さが全身を包んだ。日本列島全体を包む冬の冷たい大気は、どうやらこんな愉快な朝であっても否応なしに襲ってくるらしい。そういえば昨日の夜のニュースでは、明日は今年1番の寒さだって言ってたっけ。 時刻を確認すると、まだ午前6時10分。いつもならまだまだ布団に包まれながら意識を閉じている頃合いだ。でも、せっかくの早起きを無駄にしたくないと思い、ふとカーテンを開く。そこには黒とオレンジと群青に染まった、朝だけの世界が広がっていた。 街は暗闇に溶け、眠りに落ちている。暗闇の彼方から萌え出ずる朝の光。そして遥か高く澄み渡った群青の空。12月の夜明けの空気は、とても冷たい。 目を覚ますために、あたたかなコーヒーを沸かす。芳醇な豆の香りが鼻腔をくすぐり、覚醒を促す。そんな朝の香りに酔いしれながら、ベランダに降り立った。冬の大気は、否応なしに身体を包み込む。冷たい朝の空気を大きく吸い込み、肺を満たす。そして深く吐き出す。真っ白に凍った息は、煙のように夜明けの空に舞い上がった。 先ほど沸かしたコーヒーを、使い込んだマグカップに注ぐ。黒い液体から立ち上る湯気が、メガネをそっと曇らせた。朝のコーヒーは格別だ。眠った身体を覚醒させる苦味は、辛く厳しい世の中で生きるには不可欠である。すっかり冷え切った喉を、熱々のコーヒーにそっと潜らせ、今日という日を生きるエネルギーを補充する。 窓の外を見てみると、空はすっかりと白んでいて、朝の到来を告げていた。黒とオレンジと群青に染まる世界は、一日においてもほんの一時しか訪れない。さらに、天候にも左右されるため、とても貴重な瞬間なのだ。こんな時間に偶然居合わせるなんて、なんで運がいいのだろう。なんて、普段は考えないようなことを考えてしまうのは、きっといつもとちょっと違う、特別な朝を過ごすことができたからだろう。 午前6時半、バイクのエンジン音が遠くから聞こえてくる。ブルブルと大気を震わせるようなその音は、まるで街の目覚めを象徴しているかのよう。なんだか今日はいいことがありそうだ。そんな期待感を胸に、朝の支度を始めるのだった。 ### 元ネタ - https://twitter.com/9z0q/status/1472314731306561537 - https://twitter.com/9z0q/status/1472315318358126592 ちなみにこの文書はフィクションで、現実の僕はこの後惰眠を貪っていました。