# 生理学授業メモ【吉岡先生】 --- ## ANIMAL PHYSIOLOGY(Schmidt-Nielsen) --- ## 【12月14日】 --- 【導入】 ・なぜ、イルカの写真が表紙に使われているのか? →イルカは、哺乳類であるにも関わらず、人間やその他の陸上哺乳類とは異なる性質を持つ。したがって、比較生理学においてイルカやクジラはとても興味深い動物なのである。 ![](https://i.imgur.com/kZ89PL3.png) --- ## 【12月21日】 --- 前回の復習 海生哺乳類 ・絶滅危惧種の海生哺乳類 二ホンアシカ、ステラーカイギュウ ### ・定義 一生のうちの一部、あるいはその全てを水中(特に海)で過ごす哺乳動物群を**海生哺乳類**(海産哺乳類)と言う。 ### ・海生哺乳類(Marine Mammals)の分類 |分類|具体例|種数|特徴| |:-|:-|:-|:-| |食肉目(クマ科)|ホッキョクグマ|1|海への依存度が低い| |食肉目(イタチ科)|ラッコ|1| |(食肉目)鰭足類|アシカ、アザラシ|35(アシカ科16、アザラシ科18、セイウチ科1)| |海牛目|ジュゴン、マナティ|4(ジュゴン1,マナティ3)|草を食べる(生息地が温かい海の沿岸に限られる)| |(鯨偶蹄類)鯨類|クジラ、イルカ|91|肉食(生息地が限られない)| ★**下へ行くごとに水中への適用度は高い(海への依存度が高い)** ・130種(哺乳類の約2%) ### ・鯨類が完全に水中生活をするにあたって克服すべき生理学的な問題【重要】 #### ・陸から海へ ・水は空気の100倍の**粘性**→動きにくい ・水の**熱伝導率**は空気の24倍→熱が奪われやすい ・**浮力**の影響→体が浮きやすい #### 1.呼吸の効率化 ・鼻孔が頭頂に移動している→**テレスコーピング**(頭蓋骨の変化:延長) ・尾びれが水平についている→容易な上下移動 #### 2.体熱保持 ・皮下脂肪が多い→**脂皮**(blubber)が断熱材の役割 ・動脈のまわりを静脈が取り囲む→**対向流システム**(counter current system) (注)脂皮と皮脂は意味が全く異なるので間違えないように。 #### 3.浸透圧調節 ・餌から水を取り入れる(水分の多いエサ) →小腸の柔毛発達(陸上哺乳類同様) →**アクアポリン**(膜貫通型タンパク質)の関与 ・**代謝水**を利用する →糖、タンパク質、脂肪はエネルギーを出すと同時に$CO_2,H_2O$を出す。この代謝過程で出てきた水を代謝水と言う。 (注)イルカは海水を飲まない #### ・水分の補給? **アクアポリン**(AQP)とは ・・・細胞の表面にある膜タンパク質で、水分子を選択的に取り入れることができる。ちくわみたいな形 (Prop) ・ちくわのような形をしたタンパク質 ・水分子が選択的にその穴を通り抜ける ・細胞膜に分布して(”穴をあける”)水の浸透をスピーディにする ![](https://i.imgur.com/t33BQQ9.png) --- ## 【1月18日】 --- ### 3.水分補給の続き ・水の喪失対策→汗腺がない→呼吸数が少ない(呼気による喪失減) ・尿の浸透圧傾向【重要】 **低水分の餌食性→夜会(濃縮率高)** **高い水分の餌食性→低い(濃縮率高い)** ・ホルモンによる制御 ![](https://i.imgur.com/Jd7EMYH.png) (コラム) **・バイオロギング** ・・・バイオ(生き物)+ロギング(記録を取る)を組み合わせた和製英語。ペンギンの羽やカメの甲羅など、動物の体に記録計を取り付けて動物の行動を記録する技術のこと。 ### 4.潜水適応 ・肺の高いガス交換率 一回の呼吸で肺中の**80~90**%を交換(酸素交換率が高い) ・柔軟な胸部と丈夫な気管 10m潜る→1気圧上昇(水圧でも灰がつぶれない形態的適応) ・血液量が体もわりに多い ・血液内にヘモグロビン($Hb$)が多い ・筋肉中に**ミオグロビン**($Mb$)が多い。(筋肉が黒い原因) →つまり、深く潜る種ほど**筋肉が黒い** ・潜水中は心臓の動きが急速に低下 →**心拍緩徐**(かんじょ)または**徐脈**(じょみゃく)といい、これは**潜水反射**として現れる現象である。 ・**ブラッドシフト**($blood shift$) ・・・臓器には必要最低限の酸素しか送らず、体表への血液の流れを減らすこと。水圧の変化に対して、脳・心臓・肺・肝臓など生命に重要な臓器だけに血液を循環させることのできる現象。 ・**潜水病**(医:減圧症、潜函病) 潜る →気体分圧アップ →溶媒に溶ける気体の量増加(へんりー) →血液中に溶ける窒素の量が増加する →窒素酔い(麻酔作用により判断力低下) 鯨類は減圧症にかからないが、その仕組みはまだ解明されていない。 ![](https://i.imgur.com/hsjEyZE.png) ・1~4回:名田先生 ・5~7回:加賀谷先生 ・8~10:神原先生 ・11~13回:吉岡先生