# 天声人語 12/22 1958年に来日した米国の社会学者が住んだのは「M町」の借家だった。住民の懐に==飛び込み==、冷蔵庫の選び方から子育て、嫁姑(しゅうとめ)の問題まで1年かけて根掘り葉掘り調べた。後にM町は千葉県の市川市だったと明かす ▼==若き日==のエズラ・ボーゲルさんである。ハーバード大教授として79年に刊行した『ジャパン・アズ・ナンバーワン』はベストセラーに。経済発展を==遂げた==要因を解説し、日本人の自国観にも多大な影響を与えた ▼組閣時に側近ばかりを厚遇せず、派閥均衡に==努める==首相。社員を社宅に住まわせ、社歌や運動会で忠誠心を育てる経営者。列挙された日本の「強み」は、いま読むと「そんなことまで褒められていたのか」と気恥ずかしい ▼「この本は日本では発売禁止にした方がいい」。元駐日大使のライシャワー氏の評だ。日本が思い上がることを懸念したという。ボーゲルさん自身は刊行の狙いをこう説明する。「停滞した米国にとって日本こそ最善の鏡。米国の人々に目を覚ましてほしかった」 ▼その後の日本は、バブル崩壊で失速し、「失われた20年」の間に低迷した。世界1位どころか、経済力はいずれ8位に落ちると予測される。民主主義の度合いは24位、男女格差では121位との指標も。残念ながら、どれもいまの実相だろう ▼知日派のボーゲルさんが亡くなった。改めて著書を読むと、日本の弱みや将来への懸念も随所に論じられている。人口も経済も==縮み==ゆくわが国に向けた警告の「鏡」でもあった。 飛び込み^とびこみ^: 1. 突然はいり込むこと。「飛び込みで宿をとる」 2. 突然はいって来ること。「飛び込みの客」「飛び込みの仕事」 根掘り葉掘り^ねほりはほり^: 1. 徹底的に。しつこくこまごまと。「わけを根掘り葉掘り尋ねる」 若き日^わかきひ^: 1. 若い人。若者。 遂げる^とげる^: 1. 目的を達する。果たす。なしおえる。「志を―・げる」「思いを―・げる」 2. 最後にそのような結果となる。「非業の死を―・げる」「急成長を―・げる」 努める^つとめる^: 1. 精を出して仕事をする。努力して事を行う。「看護に―・める」「サービスに―・める」 2. 無理をしたり、がまんしたりして行う。こらえてする。「泣くまいと―・める」 縮む^ちぢむ^: 1. 間が詰まったり中身が減ったりして、長さや面積・容積などが短くなったり小さくなったりする。「湯通しをして布が―・まないようにする」「風船が―・む」 2. 期間・時間が短くなる。「寿命が―・む」「タイムが―・む」 ###### tags: `日本語` `天声人語`