# 天声人語01/05 巣ごもりを余儀なくされたこの年始、海外ドラマ「ザ・クラウン」に==引きこまれる==場面があった。舞台は1952年のロンドン。濃霧に大気汚染が加わる災害が起き、患者で病院が逼迫(ひっぱく)する ▼ときの宰相チャーチルの耳には、不安に沈む人々の声が届かない。重い腰を上げて病院へ足を運んだ日、患者と医療者の苦境を目の当たりにし、自分の鈍感さを悔いる。ドラマゆえの脚色は多々あろうが、民意をすくい上げられない首相の姿を描いてリアルだった ▼首都圏に再び緊急事態宣言が出される==見通し==となった。きのう菅義偉首相の会見を聞きながら思ったのは、昨秋以降の政府の見通しの甘さ、動きの鈍さである。各地で感染が増え続け、医療の逼迫もたびたび指摘されていたのに ▼事態が深刻になり、政策の==行き詰まり==がだれの目にも明らかになって、ようやく方針を転換する。この展開はGoTo停止で見たばかりだ。*後手後手の流れはもう繰り返してほしくない* ▼〈「最善を尽くす」と口にしても無駄なことだ、必要とされることをやり遂げない限り〉。ドラマではなく実在のチャーチルが残したこの言葉を、いま菅首相に届けたい。実効性のある対策を国としてやり遂げない限り、コロナという難関はとても乗り切れない ▼ちょうど9カ月前、初めての緊急事態宣言が出される直前の、重く張り詰めた空気を思い出す。これで収束に向かうのか。暮らしは大丈夫か。いま不安に沈む人々の声は首相の耳に届いているのだろうか。 余儀^よぎ^: 1. 他のこと。他にとるべき方法。また、別の意見。 引き込む^ひきこむ^: 1. 引っ張って中へ入れる。引いてきて入れる。「電線を―・む」「田に水を―・む」 2. 仲間に誘い入れる。「悪の道に―・む」 3. 人の心を引き寄せて夢中にさせる。「観客を―・む見事な演技」「思わず話に―・まれる」 見通し^みとおし^: 1. 初めから終わりまで見つづけること。「朝からテレビの―だ」 2. さえぎるものがなく遠くまで見えること。また、その場所。「―のきく展望台」 3. 人の心や目に見えない内面の物事を見抜くこと。洞察。「何でもお―だ」 4. 物事のなりゆきや、将来のことを予測すること。「復旧の―がつかない」 行き詰まり^いきづまり^: 1. 行く手がさえぎられ、それ以上先へ進めなくなること。また、その場所。いきづまり。「路地の行き詰まりの家」 2. 物事が先へ進まなくなること。また、その状態。いきづまり。「政策の行き詰まり」 ###### tags: `日本語` `天声人語`