# 天声人語 01/06 かのアマビエより歴史のある疫病退散の守り神がいる。そう聞いて、京都府の長岡京市を先月訪ねた ▼「蘇民将来(そみんしょうらい)」という伝説の人物は、神話に登場するスサノオノミコトに旅の宿を提供し、貧しい^まずしい^ながらも精いっぱいもてなした。その恩でスサノオは蘇民の子孫を末永く疫病から守る。伝承がもととなって、「蘇民将来の子孫」と書いた札が厄よけに使われるようになった ▼日本最古の蘇民の護符は長岡京市内で20年前、市埋蔵文化財センターの中島皆夫さん(55)らが発掘した。8世紀の木簡だった。センターはコロナ禍の昨夏来、最古のお守りを缶バッジにし、来館者に無料で配って^くばる^いる ▼蘇民の言い伝えは各地に残る。宗教学者の島田裕巳(ひろみ)さん(67)は「歴史の古さでも、地域の広がりでもアマビエより格段に上でした」。京都の祇園祭では厄よけのちまきにその名を記す。岩手県では無病息災や豊作を祈る蘇民祭がいまも続く ▼作家デフォーの『ペスト』を読むと、17世紀の英国ではペストの猛威に==おののいた==人々が「アブラカダブラ」という言葉を家の玄関先に貼ったという。福島県の民芸品「赤べこ」にも疫病退散の願いがこめられている。天然痘から子どもたちを守ったと言い伝えられてきた ▼==ふりかえれば==、人類は古今東西、大きな危機に直面するたび何かにすがってきた。まじないの言葉やお守り、そして妖怪まで。それらを愚かな迷信と切り捨てられるのだろうか。私たちはたしかなコロナ対策をまだ手にしていない。 戦く/慄く^おののく^: 1. 恐ろしさ・寒さ・興奮などのために、からだや手足が震える。わななく。「恐怖に―・く」「期待に―・く」 振り返る^ふりかえる^: 1. 後方へ顔を向ける。振り向く。「背後の物音に―・る」 2. 過ぎ去った事柄を思い出す。回顧する。かえりみる。「この一年を―・る」 ###### tags: `日本語` `天声人語`