# 天声人語 12/17 標準語で「寒い」というよりも、それぞれのお国言葉を口にするほうが寒さが身に==迫って==くる。そう感じるのは筆者だけだろうか。東北では広く「*しばれる*」が言われ、秋田には「*さんび*」の言葉がある。新潟は「*さーめ*」である ▼この冬いちばんの寒気が日本列島を==覆って==いる。いつもより==早め==のドカ雪に、早めの雪下ろし。秋田や新潟などから届くニュースに、映像では分からないであろう苦労を思う ▼江戸時代、雪国を==全く==知らぬ人々に実情を伝えようとしたのが越後の文人鈴木牧之(ぼくし)であり、世に送った書物が『北越雪譜』である。構想から40年にして江戸で出版に==こぎつける==までの経緯が、近刊『雪国を江戸で読む』(森山武著)にある ▼支援を頼った著名文人が次々と亡くなるなど不運が重なった。出版が決まってからも苦労はあり、方言がわかりにくいと注文がついた。労作を開くと、地元言葉が丁寧に==ちりばめられて==いる。例えば雪は==払う==というような==生易しい==ものではなく「雪掘(ゆきほり)」という ▼その雪を空き地に積み上げるのが「掘揚(ほりあげ)」だと知れば、降雪の多さを感じる。==かんじき==をはいて雪中を歩くのは「雪を漕(こぐ)」。実感のこもった筆致は江戸の人々の関心を引いたようで、よく売れた。各地の気象に思いをはせるのは、今も昔も変わらない ▼〈朝戸繰りどこも見ず唯冬を見し〉原石鼎(せきてい)。雪国でなくても、朝起きて雨戸を開ける瞬間、少し覚悟がいるようになった。きょうも冬型の気圧配置が続くという。どうかご自愛を。 迫る^せまる^ 1. **圧倒するような勢いで近づいてくる。押し寄せる。また、せり出している。「噴出した溶岩が人家に―・る」「激しく敵陣に―・る」「鬼気が身に―・る」「山が背後に―・っている地勢」** 2. 空間的、時間的に隔たりが小さくなる。接近する。「両岸が―・っている渓谷」「死期が―・る」 3. 詰まって苦しむ。特に、呼吸が激しくなって息苦しくなる。感情が高ぶってきて胸がしめつけられる感じになる。「息が―・る」「思いが胸に―・る」 覆る^くつがえる^ 1. ひっくり返る。裏返る。転覆する。「―・った船体」 2. 倒れ滅びる。「政権が―・る」 3. それまで正しいものとされてきた考え方や決定が根本から変えられる。「最高裁で判決が―・った」 早め^はやめ^: 1. **きまった時刻・時期よりもいくらか早いこと。また、そのさま。「早めの夕食」「早めに家を出る」** 2. 速度がふつうよりいくらか速いさま。「少し早めに歩く」 全く^まったく^: 1. 完全にその状態になっているさま。すっかり。「全く新しい企画」「回復の希望は全く絶たれた」 2. **打消しの語を伴って、完全な否定の意を表す。決して。全然。「彼は事件とは全く関係がない」「全く話にならない」** 3. ある事実・判断を強調する気持ちを表す。本当に。実に。「今日は全く寒い」「全くけしからん話だ」「全く君の言う通りだよ」 4. )話し言葉で、相手の言葉を受けて、それを強く肯定または否定する意を表す。「『腹が立つといったら、殴りたい気分だよ』『全くだね』(肯定)」「『旅行の準備はできたかね』『全くですよ』(否定)」 > 全く vs 全然 : > 全く→ 肯定句及否定句皆可使用 > 全然→ 僅用於否定句 散りばめる^ちりばめる^: 1. 金銀・宝石などを、一面に散らすようにはめこむ。また比喩的に、文章のところどころに美しい言葉などを交える。「螺鈿(らでん)を―・めた小箱」「甘言を―・めた手紙」 払う^はらう^ : 1. 本体にとって邪魔・不要・無益なものなどを、手や道具を用いて取り除く。除去する。「杉の下枝を―・う」「すすを―・う」「クモの巣を―・う」 生易しい^なまやさし^: 1. 簡単である。たやすい。下に打消しの語を伴って用いる^もちいる^。「思ったほど―・い仕事ではない」 かんじき: 1. 雪の上などを歩くとき、深く踏み込んだり滑ったりしないように、靴などの下につけるもの。木の枝やつるなどを輪にして滑り止めの爪をつけたものや、堅雪のときに使う鉄製のものがある。 ###### tags: `日本語` `天声人語`