# **卒業研究** ### **今回の目標** 一般的な論理的思考力について調べる ### **今回分かったこと** ・論理的思考力は、いくつかの細かい能力に分けて考えることができる。 ・能力ごとに、得意不得意の差があること ・表現形式によって、正答率に差があること ・習慣によって、論理的思考力に差が生じる可能性があること ### **論理的な思考に必要と考えられる活動** ① 規則、定義、条件等を理解し適用する ・資料から読み取ることができる規則や定義等を理解し、それを具体的に適用する。 ② 必要な情報を抽出し、分析する ・多くの資料や条件から推論に必要な情報を抽出し、それに基づいて分析する。 ③ 趣旨や主張を把握し、評価する ・資料は、全体としてどのような内容を述べているのかを的確にとらえ、それについて評価する。 ④ 事象の関係性について洞察する ・資料に提示されている事象が、論理的にどのような関係にあるのかを見極める。 ⑤ 仮説を立て、検証する ・前提となる資料から仮説を立て、他の資料などを用いて仮説を検証する。 ⑥ 議論や論証の構造を判断する ・議論や論争の論点・争点について、前提となる暗黙の了解や根拠、また、推論の構造などを明らかにするとともに、その適否を判断する。 ### 実験内容 各問題を表現形式によって、一般的な表現形式の問題(調査Ⅰ)と、数学的な表現形式の問題(調査Ⅱ)に分け、さらに調査Ⅰ、Ⅱの中で内容A、Bの2種類に分けて出題した。 また、調査対象の状況や、生徒を指導する教師や学校の状況等を把握するために質問紙調査を行った。 調査時間の関係から、内容Aは18問(調査Ⅰ:13問、調査Ⅱ:5問)、内容Bは12問(調査Ⅰ:9問、調査Ⅱ:3問)とした。 ### 調査問題について ①から⑥を明確に区別することは難しいが、①から⑥には順序性がなく、また、調査という特性から、できるだけいずれかの活動として位置付けるよう配慮し、調査問題を作成した。 一般的な表現形式は、人文・社会科学や自然科学、日常生活や実社会の事象など、私たちが関わるあらゆる状況における表現形式を含むものであり、国語をはじめ全ての教科等に関わるものである。また、問題の状況として、国語、数学、理科、論理モデル、情報数理、学校生活、家庭生活、社会生活に関するものを設定した。 数学的な表現形式は、特に数学の状況に焦点を当てたものであり、数式や図形などの表現を用いている。数学的な表現形式では、既に数学化された数式や図形を理解し使えるだけではなく、実世界の事象を数学化して数式や図形を作り出すことも重要なものとなっている。また、問題の状況として、数学、家庭生活、社会生活に関するもので、数学的内容については、比、文字式、平面図形、相似に関するものを設定した。 ### 調査問題の内容 ①に関する問題(一般) ![](https://hackmd.io/_uploads/ryKZc-nI2.png) ![](https://hackmd.io/_uploads/B1tZqZ2I2.png) 問題の趣旨としては「規則に関する記述を正しく読み取り、それを実際の場面で適用し、さらに、それを別の条件下で応用できるかどうかをみる」ものである。 ②に関する問題(一般) ![](https://hackmd.io/_uploads/HkPBjZ3L3.png) ![](https://hackmd.io/_uploads/SkvHs-hU3.png) ![](https://hackmd.io/_uploads/SyDHoWnU3.png) 問題の趣旨としては「自然科学に関する文章から情報を的確に読み取り、それを基に推論することができるかどうかみる」ものである。 ③に関する問題(一般) ![](https://hackmd.io/_uploads/SJCka-n8h.png) ![](https://hackmd.io/_uploads/ryCkpW3Ln.png) ![](https://hackmd.io/_uploads/HkAkTZnL2.png) 問題の趣旨としては「人文科学に関する文章を読み、文章の内容を的確に把握し、かつ応用できるかどうかをみる」ものである。 ④に関する問題(一般) ![](https://hackmd.io/_uploads/Hkmtp-3Un.png) ![](https://hackmd.io/_uploads/By5F6b2L2.png) 問題の趣旨としては「論理的なものの見方、考え方ができるかどうかを見る」ものである。 ⑤に関する問題(一般) ![](https://hackmd.io/_uploads/By2tA-hLh.png) ![](https://hackmd.io/_uploads/BkhK0Zn83.png) ![](https://hackmd.io/_uploads/r1aFAWhLn.png) ![](https://hackmd.io/_uploads/Skht0ZnIn.png) ![](https://hackmd.io/_uploads/rknFA-3Lh.png) ![](https://hackmd.io/_uploads/B1hKA-nUn.png) 問題の趣旨としては「前提となる資料から必要な情報を取り出して仮説を立て、必要な資料を基にその妥当性を検証することができるかどうかをみる」ものである。 ⑥に関する問題(一般) ![](https://hackmd.io/_uploads/HkcH0X282.png) ![](https://hackmd.io/_uploads/B15rRQ2L2.png) ![](https://hackmd.io/_uploads/Hk5r07nIn.png) ![](https://hackmd.io/_uploads/rJ9B0QnUn.png) ![](https://hackmd.io/_uploads/B1XYAQnUh.png) 問題の趣旨としては「根拠を明確にしたり、論拠の妥当性を評価したりすることができるかどうかをみる」ものである。 ①に関する問題(数学) ![](https://hackmd.io/_uploads/r1Lm1N2Lh.png) ![](https://hackmd.io/_uploads/HkIX1N2In.png) 問題の趣旨としては「与えられた文字式の意味を理解した後、具体的な数の組がその文字式で表現可能か否かを判断できるようにする」ものである。 ②に関する問題(数学) ![](https://hackmd.io/_uploads/BkQ31V2Ln.png) ![](https://hackmd.io/_uploads/rk72y4hLn.png) 問題の趣旨としては「現実事象を数学化し、論理的な見方考え方ができるかどうかを見る」ものである。 ③に関する問題(数学) ![](https://hackmd.io/_uploads/H1b9xN2Uh.png) ![](https://hackmd.io/_uploads/HyZ5l428h.png) 問題の趣旨としては「他者の説明や証明の誤りについて指摘し、修正できるかをみる」ものである。 ### 結果 この実験を通して、以下のことが分かった。 ・「通過率」…調査実施生徒数に対して正答又は準正答であった生徒数の割合 全問題の平均通過率は53.5%であり、活動別の平均通過率は、 ①規則、定義、条件等を理解し適用する 60.1% ②必要な情報を抽出し、分析する    30.3% ③趣旨や主張を把握し、評価する    43.3% ④事象の関係性について洞察する    67.9% ⑤仮説を立て、検証する        59.1% ⑥議論や論証の構造を判断する     52.2% であり、「④ 事象の関係性について洞察する」力に関わる問題の通過率が最も高く、「② 必要な情報を抽出し,分析する」力などに関わる問題の通過率は、全問題の平均通過率を下回った。 次に、表現形式別の平均通過率は、 一般的な表現形式  59.7% 数学的な表現形式  36.4% であり、数学的な表現形式の通過率が大きく劣っていた。 また、今回の調査問題の問題間の通過状況は、全体的に相関が高く、ほとんどの問題間で5%有意水準で相関が認められた。そして、一般的な表現形式の問題の得点と、数学的な表現形式の問題の得点との相関係数を、内容A、Bのそれぞれにおいて求めると、内容Aでは 0.62、内容Bでは 0.46 であり、いずれも相関は高く、一般的な表現形式の問題ができることと、数学的な表現形式の問題ができることは関係しているといえた。 さらに、内容AとBの平均点についてみると、 内容A(18 点満点) 平均 10.5 点 標準偏差 4.4 点 内容B(12 点満点) 平均 5.6 点 標準偏差 2.6 点 となり、問題Aのほうが簡単であったといえる。 また、得点分布をグラフで見ると、内容Aは平均値より高い値を、内容Bは平均値あたりを、それぞれ峰とした分布となっている。![](https://hackmd.io/_uploads/Hk1BwWnI2.png) 最後に、質問紙調査と通過率の関係を調べた。 まず、生徒への課題研究等の実施の有無を比べると、課題研究等を行っている学校の平均通過数は、内容A:10.6問、内容B:5.7問、課題研究等を行っていない学校の平均通過数は、内容A:7.5問 、内容B:4.1問となった。 次に、通過問題数で上位20%に該当する生徒や、その生徒を指導する学校は、日ごろから自分で思考し、意見を交換する機会が多いと感じるアンケート結果だった。 また、一般的な表現形式の問題を解いたことがあると答えた生徒は3割ほどで、解いていて楽しいと感じる人は約5割だった。次に、教師のアンケートで、生徒の問題への取り組み方は国語と数学で同じような傾向だったが、国語の授業では、よくコミュニケーションをとる授業方法で、数学の授業は、先生が説明する授業を聞く授業方法が一般的だった。 ### まとめ 今回調べた論文から、論理的な思考力は、複数の能力から成り立っていて、得意不得意がはっきりしていることが分かった。特に、事実を理解し適用する能力や、関係性について洞察する能力は高いことが多いが、必要な情報を抽出し、分析する能力は低い傾向があった。 また、一般的な表現形式に比べ、数学的な表現形式の通過率が低いが、数学的な知識の有無による影響も考えられるが、式を書いてくれている問題が多かったので、単純に一般的な表現形式のほうが理解しやすい傾向にあると考える。 次に、質問紙調査から、論理的な思考力を身に着けるには、習慣的に考える機会が必要ということが分かった。また、国語の授業が数学の授業に比べ、コミュニケーションをとって行われていることと、表現形式による通過率の差を見ると、他者へ説明すること等が論理的思考力の成長に関係する可能性があると思った。 ### 参考資料 ・[国立教育政策研究所 教育課程研究センター(2013),”特定の課題に関する調査 (論理的な思考) 調査結果 ~21 世紀グローバル社会における論理的に思考する力の育成を目指して~”](https://www.nier.go.jp/kaihatsu/tokutei_ronri/pdf/10_tyousakekka.pdf)