# 映画のこと <p style="text-align:right;"> 秋山翠花 </p> みなさんは、映画をご覧になりますか。テレビで、映画館で、あるいは配信サービスで、大なり小なり映画を観ている人、多いんじゃないでしょうか。 かくいう私も、ときどき映画館に足を運ぶ程度には、映画ファン――ファンは言いすぎかも、常連?――であるわけで。 そういうわけで、今回のエッセイ集には、映画について普段考えていることを、ぽつぽつ書いていきたいと思います。 ## なぜ映画を観るのか 人様に映画の話をするからには、自分が映画を観る理由も、ちゃんと説明できなければいけない……とは思うものの、そこまではっきりした理由があるわけではないのです。言葉を選ばずに言ってしまえば、時間つぶしなのかもしれません。しかし、世の中に数多ある時間つぶしのなかで、どうして映画を選ぶのか、ということは、説明に値するような気がします。 みなさんのお気に入りの時間つぶし、なにかありますか。読書とか、ゲームとか、あるいは創作とか。私は最近、軽い読書にはまっています。研究のために読む本よりも、もっと明るくて楽しいもの。推理小説とか、面白いですよね。 さまざまな時間つぶしの選択肢があるなかで、特に「映画」を選びたい! と思うのって、どんな時でしょう。まとまった空き時間があるとき。気分転換に、ちょっと出かけたいとき。私が映画を選ぶのは、そんなときです。 映画のいちばんの特徴って、やっぱり上映時間がきちんと決まっていることだと思うのです。もちろん、自宅で録画を観たり、配信サービスを使ったりするときは関係ないのですが、映画館で映画を観ようとするときには、上映スケジュールを確認して、入場時間に間に合うように算段しなければいけません。私は何事も先延ばしにしがちで、人との約束がない限り、出発が1-2時間遅れることもよくあります。本来は外出していたはずの時間を、家でぼーっとしながら過ごすのは、なんだか勿体ないなあと思ったりします。そこで、開始時刻の決まっている映画が有用になるわけです。いくら怠惰な私でも、外出しなければならない時刻がはっきり決まっていれば、なんとか時間通りに行動することができます。締切さえあれば進捗が生まれる、というのと、同じようなものですね。 また、月並みですが「非日常」というのも、映画の重要な一面です。映画の内容はもちろん、「映画館」という建物それ自体が、非日常を構成する要素となっています。薄暗いカウンターでチケットを買って、小さなエレベーターに乗り、迷路のような廊下を通って、シアターの椅子に座る。手元には、映画館以外でめったに食べないポップコーンや、大きな紙コップのジュースがあるかもしれません。映画館によって毛色の違う内装・デザインも、魅力の一つといえるでしょう。 このように、時間通りに外出させてくれたり(ちょっと変な使い方ですが……)、非日常を味わわせてくれたりする映画を、私はちょくちょく観続けているわけです。 ## どんな映画館が好きか 日本には、たくさんの映画館があります。特に、このエッセイが頒布されるであろう東京には、無数の映画館が散らばっているわけで。 「キネマップ[^1]」って、聞いたことありますか。なかったら、アクセスしてみてください。全国のシネコン・ミニシアターを Google Map 上にプロットした地図です。日本列島、真っ白になっちゃいましたね。これ、全部ミニシアターです。さらに、地図の左上メニューから、シネコンを表示させてみてください。今度は、地図が真っ黒になりました。東京や大阪などの大都市圏は、特に多くなっていることが分かると思います。 さて、このマップでみなさんのおうちの近くを見ると、どうですか。馴染みの映画館がありますか。それとも、存在すら知らなかったシアターが出てきたりしましたか。 この「キネマップ」によると、私の地元、静岡市には、5つの映画館があるようです。そのうち2つ、「シネシティザート」と「MOVIX清水」は、商業施設に併設されているシネコン(ざっくり言うと、大きい映画館のこと)です。また、清水の駅前には、私ですら行ったことのないミニシアター「夢町座」というのがあるようです。 さて、残りのふたつ、「静岡シネ・ギャラリー」と「静岡東宝会館」は、私が特に気に入っている映画館なので、これらを紹介しつつ、私の好きな映画館というものについて、少し考えてみたいと思います。 ### 上映作品 私が映画館を選ぶとき、まず何より最初にチェックするのは「上映作品」です。当たり前ですよね。どんなに素敵な映画館でも、面白い作品がなければ、行きたいと思わないわけです。この基準で選ぶと、「静岡シネ・ギャラリー」はかなり魅力的に映ります。 映画館によって、上映される作品が微妙に違うの、お気づきかと思います。シネコンでは、邦画やアメリカ映画のエンタメ・話題作が上映され、ミニシアターでは、あまり有名ではない作品や、世界各国の映画が上映される、といったように。 私はなんとなく、ミニシアターで上映されるような映画が好きなので、そういう映画をたくさんかけているシネ・ギャラリーによく行きます。最近は、「ユニバーサル・ランゲージ」という映画を観ました。カナダ映画で、フランス語とペルシア語が公用語の架空のケベックを舞台にした不条理映画です。その前は、「La Cocina(厨房)」というアメリカ映画(!)も観ました。ニューヨークの巨大レストランで働く移民たちの悲喜こもごもを描いた映画です。 さて、静岡の映画館を紹介されても……と思っている方もいるかもしれませんが、このような上映傾向の映画館は、むしろ大都市に多い気がします。渋谷であれば、シアター・イメージフォーラムやヒューマントラストシネマ、シネ・クイントなど。新宿であれば、武蔵野館など。このあたりの映画館を探すと、いわゆる「ミニシアター系」「単館系」と呼ばれるような映画が見つかると思います。おすすめです。 ### 非日常感 非日常感も、やっぱり大事です。逆に、非日常感のない映画館って何? という話もあるのですが。 特に古い映画館に多いのですが、複数の階層に分かれていたり、通路が迷路みたいだったり、全体的に薄暗かったりするの、好きなんですよね。単純に、古い建物が好き、という一言で要約できてしまうのかもしれませんが。 私はこれを、「非日常感」という言葉でまとめています。古い建物に入ることも、迷路のような廊下を抜けることも、あるいは古くて小さなエレベーターに乗ることも、毎日できるものではありません。こういう手続きを踏むと、映画館に来たということを、より実感できるような気がします。 この「非日常感」をいちばん感じやすいのが、私の地元だと「静岡東宝会館」にあたります。静岡にはもともと「映画館街」といえるような界隈があって、東宝会館もその中に建っていました。ところが、東宝会館以外の映画館は、みんな新しくできたシネコン「シネシティザート」に移転してしまったのです。そういうわけで、東宝会館が、静岡で一番古い映画館ということになりました。もちろん、何度か改装はしているのですが、それでもなお、古い映画館の雰囲気を色濃く残しています。 東京にこのような映画館があるか、私はよく知りません。強いて言えば、早稲田松竹なんかは古そうですよね。ただ、あそこはシアターが一つしかないので、構造がそこそこ単純です。東京の、古くて「非日常」的なシネコン情報、お待ちしています。 ## 字幕か吹替か 外国映画を日本に持ち込むとき、字幕がついたり、日本語の吹替音声がついたりしますよね。みなさんは、字幕版と吹替版があったら、どちらを選びますか。 私の場合は、字幕版の映画を観ることが多いです。もちろん、私がよく観る「単館系」の外国映画は、吹替版を制作する予算がなく、そもそも選択の余地がない、という事情もあるかもしれません。でも、仮に吹替版があったとしても、字幕版を選択するだろうなあと思います。 字幕版を選ぶ一番の理由は、私が外国語好きであることです。映画を観ていて、台詞が完全に理解できるような言語はあまり多くないですが、いくつかの単語が理解できる言語は多少あります。あるいは、自分の知っている言語と、共通の単語がある場合もあるかもしれません。「この単語は、もしかして!?」という体験があるから、字幕版が好きになってしまうのかも…… これに加えて、演者の微妙な抑揚とか、そういうものをそのまま聴きたい、という理由もあったりはするのですが、これは外国映画ファン全員が言っていることなので、ここでは割愛します。それに、吹替版も、声優さんの素晴らしい演技が聴けたりして、結構おもしろかったりするんですよね。本当は両方のバージョンで観てみたい、という話もあります。なかなかそんな時間は取れないのですが…… ところで、字幕といえば、「日本語字幕つき上映」というのをご存知ですか。テレビなどでは、「字幕つき放送」というのもときどき見かけますが、映画館でも、日本語の映画に日本語の字幕をつけた作品を上映することがあるのです。 東京では、田端の CINEMA Chupki が、全ての映画について字幕・解説音声(座席にイヤホンジャックが付いていて、映画と同じタイミングで解説音声が流れます)付きの上映を行っています。私は先日、劇場版ぼっち・ざ・ろっくを、廣井きくりさんの(!)解説付きで観ました。本来は、字幕は耳が聞こえにくい人のため、解説音声は目が見えにくい人のためのものかもしれませんが、ここではその役割を十分果たしつつ、それ以外の人々も楽しめるような工夫がされていて、良いなあと思いました。 ## おわりに: これからの映画について これから、映画ってどうなっていくんでしょうね。一時期は、斜陽産業とか、絶滅危惧種とか、散々な言われようでしたけど、最近は『鬼滅の刃』や『国宝』が大ヒットを記録していて、また持ち直してきているのかな? と思ったりもします。いつまでも映画文化が続くように……とか、今ある映画館が永久に潰れないように……なんてことを言うつもりはないですが、せめて私が映画を好きなうちは、残っていてほしいなあ、なんて思います。 それと同時に、「みんなが楽しめる映画」というのも、これから重要になっていくのかなあと思います。最後に触れた CINEMA Chupki はちょっと極端かもしれませんが、全国の劇場で、個人のスマホを使って字幕を見たり、解説音声を聴いたりできる「Hello Movie[^2]」というアプリもあったりします(いま調べたのですが、映画の音声をマイクで聞き取って、そのタイミングに合った字幕や解説音声を流しているみたいです。よく考えられていますね……)。私が将来よぼよぼになって、目や耳で映画を楽しみづらくなっても、それでもなお、映画館が気兼ねなく行ける場所であってほしいなあ、なんて思います。 ## リンク [^1]: https://kinelp.com/map [^2]: https://hellomovie.info/
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