# 認知行動療法 ## メンタルヘルス コロナによってストレスを感じる機会が多くなっていますが、以前から私たちは、ストレスがあらゆるところから降り注ぐ社会の中で暮らしています。 うつ病が社会でよく知られるようになったとともに、その数は増加し続け、現在は15人に1人がうつ病になると言われています。今、ストレス社会から心の健康を保つためにメンタルヘルスの重要性が高まっているように思えます。 メンタルヘルスケアアプリ[emol](https://emol.jp/)の開発者も「メンタルヘルスは現代において複雑かつ重要な課題」としているとともに、「ヘルスケアを収益化する難しさがあり、日々ビジネスモデルを研究中」だといい、メンタルヘルスの普及の重要性と難しさが感じられます。 私は大学1年次にメンタルを崩して引きこもりになりました。留年と休学を経て現在は復学していますが、その間で自分のメンタルを強くしてくれたのは、「自分自身の考えが絶対ではない」という学びを掴んだことだったと思います。この経験は調べると認知行動療法という精神療法に当てはまると思い、認知行動療法について、カウンセラーへのインタビューや書籍や動画を参考に自分なりにまとめることにしました。 ## 認知とは 「認知」とは脳に入ってくる情報を処理することで、「情報処理」とよく例えられます。 ([心理学辞典](https://kotobank.jp/word/%E8%AA%8D%E7%9F%A5-22774)では以下のように説明されています。) > *認知とは,何かを認識・理解する心の働きを指す場合,その結果を指す場合,あるいはそうした認識を可能にする能力,構造,機構を指す場合などに用いられる語。* たとえば、出来事に対して即座に浮かぶ「怖い」や「好き」などのイメージを作り出す過程が認知です。 これからわかるように思考と感情には結びつきがあり、感情の背後には認知を制御する思考がいつも隠れていて、それらはほとんど無意識のうちに自動的に湧き上がってきます。 認知が歪んでしまうと、特定の感情を強く抱くようになり危険な状態になります。 こうしたときに、認知を見直すことで自動的な判断をSTOPし、手動的に考えられるようになれれば、感情をコントロールすることができるのです。 自動的な思考にはそれを生み出す根本の"癖"が個人の中にあり、それを"スキーマ"と言います。普段は相対するスキーマと一緒に存在し両者のバランスが保たれているので、人は当然のように矛盾する考えを両立させながら生きているのです。 ## 認知の見直し方 認知が歪むと言いましたが、この世界に一切歪みのない認知を持っている人などいません。通常は偏った心の癖は一時的なものですが、それが永続化してしまうと、自分を苦しめることがあります。「白黒思考」や「べき思考」がその例です。 ただし、癖が**ある**から悪いというわけではありません。その違いは**程度の問題**だという理解が大切で、短所は長所でもあるのです。 ## 認知行動療法とは ## 歴史 1960年代にアメリカの精神科医アーロン・ベックが提唱しました。 精神療法で当時主流だった精神分析的な療法は、5~10年ほど治療期間が必要でしたが、それに比べて認知行動療法はコストパフォーマンスが高く、短期(3ヶ月程度)の構造化された精神療法ということで注目されました。 アーロン・ベックは、現実への影響を重視する考えを持っていたため、認知行動療法を提唱して以来、さまざまな実験によりエビデンス(効果証明)を提示してきました。 ## 特徴 認知行動療法の特徴は、**短期で効果が期待でき、エビデンスが多い**ことです。 一方、日本では、従来からある精神分析による療法が根強く残っており、認知行動療法のエビデンスはまだまだ少ないと言います。文化による違いに対応するために、実証実験が日々行われています。 ## 認知行動療法の考え方 感情に直接働きかける方法を自分たちは持っていません。受け取り方や行動を変えることが間接的に感情を変化させる方法になります。 自動的に湧き上がる思考を見直し、より現実的に考える。その手助けをするのが認知行動療法です。 「考えに縛られずに、考えを実証する」を基本の考え方であり、「マイナス思考をプラス思考にする」わけではありません。 例えば、職場の上司にたくさん叱られて、嫌われているのではないかと悩んでいる人に、「もっとポジティブに考えようよ、嫌われているんではなくて、期待しているんだよ。」という言葉にはなんの根拠もなく、合理的ではありません。 現実に目を向けて、課題解決を目的にした手段の一つとして認知の修正があります。その課題がその人の個人の考えではなく、環境の影響を受けた可能性も十分にあり、また反対に、患者の考えが環境を作り出すこともあります。 つまり、その人にとってベストな解決策が認知の修正でない場合もあるのです。 このような様々な現実をしっかり捉え、「今ここで」の課題解決をすることが認知行動療法が目指すことです。  問題解決モードになってから初めて認知の修正へと向かえるため、気力低下・動揺モードの時には、「行動活性化」という技法を利用して働きかける方法が有効です。(行動活性化とは、簡単にできて少し元気になる行動(小ネタ)を増やしていく技法です。) ## 大事なポイント 認知行動療法を患者に使用する上で大事だと言われているポイントは以下です。 - **「今ここで」の問題解決を目指す** 個人の課題はとても複雑です。その考えが適切かどうかは、現実をしっかり見てみないとわかりません。 例えば、コップに水が半分入っているとき、「水が半分**しか**入っていない」という考え方と「水が半分**も**入っている」という考え方は、その時の状況によって適切かどうかが変わります。 「今ここで」課題解決をするために、認知行動療法は現実との結びつきを大切にします。 - **患者と治療者の協働的経験主義** 患者のネガティブな直感は正しいことが多いといいます。現実を見るのは辛く大変でそこから逃げ出すために、認知が歪むことがよくあります。 現実を変えるためではなく、次なる手立てを考える材料を得るため、すなわち次に進むために現実を確認する必要があります。そのサポートを治療者がすることで、患者が課題に対してしっかり向き合うための手助けをします。 患者が発する「どうせ」「やっぱり」などの言葉には根拠がありません。言葉によって現実を見ることから逃げていることも多く、そのような言葉に注目して、ともに深掘りをしていくのが治療者の役割です。 患者のいうことが絶対ではないので、患者の言葉を多く聞くことで真意を**ともに**確かめることが重要です。 カウンセラーの高垣さんは、患者の発言から導き出される症例があったとしても「仮説1」として、その仮説をすり合わせながらその他の可能性も考慮に入れながらカウンセリングを続けると言います。 患者とともに課題解決に取り組むことで、最後には、患者自身が自分のセラピストとなれることを目指します。 - **宿題が大事** 心理教育を宿題として患者の精神療法に対する理解を促します。 心理教育とは、正しい知識や情報を心理面への十分な配慮をしながら伝え、病気や障害の結果もたらされる諸問題 ・諸困難に対する対処法を習得してもらう事によって、主体的に療養生活を営めるように援助する方法です。 ## 認知行動療法の進め方 調べてみると、認知行動療法はある程度決まった形式があることがわかりました。厚生労働省が正式にマニュアルを出しています。(https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/01.pdf) ポイントは以下です。 - 1回30分×16回が基本 - 最初の2~3回までは信頼関係構築が最優先 信頼関係構築は基本で最優先。「症例の概念化」が有効。 - 「症例の概念化」を通して患者を理解する。 - 認知の変化と行動の変化は結びついている。 - 最後の1~2回は再発予防のための時間に使う。 ## 定型的認知行動療法 このような形式の決まった療法は**定型的認知行動療法**と言います。 うつ病に効果的だと言われる認知行動療法ですが、うつ病患者の0.1%以下しかこの認知行動療法を取り入れていないという現状があり、定型的認知行動療法の現状として、76%の治療者が「ユーザーのニーズに十分に応えられていない」と回答しています。 ## 定型的認知行動療法の課題 「スーパービジョン研修」という大規模で短期的な研修を通して定型的認知行動療法を行う治療者を育てる取り組みなどが行われていますが、効率が悪く、また、専門家の仕事を減らすために医師や看護師などが力を合わせて取り組むチーム医療という考えが提唱されましたが、大規模な普及には至っていません。 また、受診に至った患者は実際の患者の4分の1程度と言われており、受診を躊躇う患者への支援が求められてきました。 ## 簡易的認知行動療法 こうした問題を解消するために少ないマンパワーで安定した効果を期待して、より簡単に行う方法のことを、**簡易的認知行動療法**と言います。 簡易的認知行動療法の具体的な手段には、電話やメール、インターネットや配布資料による方法があります。 ## iCBT 簡易的認知行動療法の一つで、インターネットを用いたものを、iCBT(internet-based cognitive behavioral therapy)と言います。 iCBTには大きく分けて以下の二つの方法があります。 ①専門家サポートなしのiCBT ②専門家サポートありのiCBT ①はコストが低く普及しやすい一方で、脱落率が高く、安全管理が難しいなどの課題があります。 現在最も効率的だと考えられているのは、インターネットと対面を組み合わせて認知行動療法を行う②です。 ②では定型的認知行動療法をベースにして(1回30分×12回)、iCBTを組み合わせたハイブリット形式の治療を行います。 ベースとなる定型的認知行動療法には以下のテーマから成り立っています。 - 認知行動スキルの理解 - 行動活性化 - 自動思考を捕まえる - 現実と照らし合わせる - 問題解決 - コミュニケーションスキル - 振り返り 今まではこれら全てを治療者とともに行なっていましたが、その一部を患者のみで行うようにすることで、効果を安定させたまま、少ないマンパワーで認知行動療法が提供できるという仕組みです。 ## iCBTの利点 日本でiCBTを用いて企業を対象にした実験によって、心が健康な人に対しては、コストパフォーマンスの向上が見られ、心が疲れた人には、うつ病度の改善が見られました。このようにiCBTは心が疲れた人のみに対してでなく全ての人に対して、良い効果が期待できることがわかっています。 また、iCBTは治療者の成熟レベルに影響して効果が変化することがないため、認知行動療法の初学者(治療者側)でも始めやすいというメリットもあります。 患者側としては、人と話さずに治療を進めれるという利点があります。メンタルヘルスに対して「対面よりもロボットの方が話しやすい」と答えた人が80%を超えている調査があるように、本音を話せるような関係構築が大切な認知行動療法ですが、対人関係のストレスを減らす上でiCBTは有効だとも思えます。 ## 参考サイト [認知行動療法 eラーニング](https://cbtt.jp/videolist/)
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