# FARMTORY Kitchen Recipes 2 ※半分以上フィクション ## 食べることは、循環の環を繋ぐこと いま、わたしたちのコロニーは危機に瀕しています。 かつて人類が生み出したあらゆる技術と文化の中から、少ないエネルギーと少ない労力で使い続けられるものを選別し、わずかに残った人類が生きながらえられるような生活の体系「FARMTORY」を編み出した、偉大な指導者「TINKER」は病床に臥せっており、ネットワーク端末越しに語りかけてくることも稀になってしまいました。 「FARMTORY」は一見極めてシンプルに見えて、極めて難しい体系でした。 「TINKER」が姿を表さなくなったいま、わたしたち人類は誰も 「FARMTORY」の正しい実践方法を知らないことに気付いたのです。 「FARMTORY」を実践できなくなった我々は、無気力な生活を送るようになってしまいました。 「食事」は、前世紀の巨大産業文明が生産した「完全栄養食(コンプリートフード)」の備蓄を食べることと化していました。 いっぽう、栽培自動化装置「DEMETER」は太陽熱発電の電力で稼働を続け、「ラボ」の屋上で芋や玉ねぎなどを生産し続けていました。 しかし、「FARMTORY」の実践を諦め、ネットワーク端末の前でうずくまって「完全栄養食」をかじる無気力な生活を送っていたわたしたちは、芋やたまねぎに見向きもしませんでした。 芋やたまねぎは次々と腐っていきました。 しかしある日ふと思いました。 「TINKER」はなぜ、「完全栄養食」の備蓄がこれほどあるのに、「DEMETER」の開発を急いだのでしょう。 「完全栄養食」の備蓄は、あと1000年ぶんはあります。前世紀の科学の結晶であるアルミニウム炭素繊維高分子ポリマーでラッピングされた「完全栄養食」は1000年経っても腐りません。[^1] 私はネットワーク端末越しに仲間と何度も議論を重ねるうちに、ひとつの結論に辿り着きました。 「食」というのはただ人間が栄養を摂取するだけの行為ではなく、「人間と大地の循環」なのです。 「DEMETER」は豊穣の女神などではなく、ただその循環の一部を、数が少なくなってしまった人間にかわって結んでくれているだけに過ぎなかったのです。 いま、その循環の環は途切れてしまっています。 わたしたちのコロニーのあちこちで起こっている問題は、すべてこの循環が途切れてしまったことに起因するものではないかと考えました。 循環の環を再び繋ぐには。 私は、「DEMETER」が籠に積めている大量の芋とたまねぎに目をつけました。 これを「食べる」ことができれば、再び循環の環の一部がつながるはずだ! すぐに「大書庫(アーカイヴ)」を検索すると、「大災厄(クライシス)」前に書かれたのであろう料理のレシピが見つかりました。 どうやら、芋はローズマリーといっしょに焼くととてもうまいらしいのです。 「TINKER」の住まう場所でもある「ラボ」の屋上にローズマリーがたくさん生えていることを思い出しました。 「TINER」はこのことを知っていたのでしょうか。 知っていたのなら、なぜ我々に教えてくれなかったのでしょうか。 私は、「ラボ」の屋上のローズマリーと、「DEMETER」が生産した芋以外に、合いそうな食材を探し、「循環」を再びまわすことを決めました。 [^1]:余談ですが、わたしたちは「完全栄養食」を食べ終わったあと、アルミニウム炭素繊維高分子ポリマーのフィルムを服や靴の素材として使います ## ローズマリーポテトオーブン焼き 私は防護服を着込んで日比谷ラインに乗り、旧御徒町エリアの廃墟「ヨシイケ」を目指しました。 「大災厄」以前は10両編成で運行されていた日比谷ラインですが、現在はアルミフレーム同士を3Dプリンタが出力したPETポリマーの部品でつなぎ合わせた簡素な車体を走らせています。送電網は漏電が激しく使うことができなかったため、鉛と希硫酸のバッテリーを積んでいます。このバッテリーは厄介な代物で、倒れると希硫酸がこぼれるし、使っていないときも電圧をかけておかないとすぐに劣化してしまいます。 ネットワーク端末から参照できる「大書庫(アーカイヴ)」にはかつて存在したバッテリーの製造方法がいくつも書かれていましたが、リチウムイオン電池は爆発性のリチウムの扱いが難しすぎる、ニッケルカドミウム電池もやはりカドミウムの扱いが難しすぎます。今のわたしたちの技術で製造して維持管理できるのは、鉛の板と希硫酸さえあれば製造ができる鉛蓄電池だけでした。ちなみに「大災厄」前の技術の結晶である「電気二重層キャパシタ」は軽量で劣化せず今でも使え、空を飛ぶ自立機械でのみ使われる貴重品です。 バッテリーの話が長くなってしまいましたが、なかなか大変な思いをしてまで「ヨシイケ」に向かったのは、もちろん肉を入手するためです。「DEMETER」は肉までは生み出してくれません。ブロイラーやウサギに「完全栄養食」を食べさせて育てようとしたこともありましたが、すぐ死んでしまいました。人間にとっての「完全」は彼らにとっては違ったようです。 「ヨシイケ」はもともとなんの施設だったのかはよくわからないですが、地上7階建てで、地下に巨大な冷凍倉庫があります。冷凍倉庫はリアクタからの電力で稼働を続けているようですが、リアクタの周辺は放射線が強く近づくことができません。リアクタからの放射線を避けて、いちばん遠い区画で冷凍肉を探します。 「もちぶたなんこつ」と書かれたパックを見つけました。なんの肉なのかはよくわかりませんでしたが、「ぶた」とはいっているのでおそらく豚の肉なのでしょう。 ## 夏野菜とチキンのオーブン焼き
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