# カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで ## 2022/04/05 齋藤 ## 書籍情報 「カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで」市谷聡啓 新井剛 https://www.amazon.co.jp/dp/4798153346/ ## どんな本? 主人公の「江島さん」が、ソフトウェア開発現場で多種多様な問題に遭遇し、 ある時は個人で、ある時はチームで、様々なカイゼン手法を実施しながらプロジェクトを成功へと導く、サクセスストーリー。 物語形式になっており、大体下記順序で進行していく ``` [ストーリーパート]何かしら問題が発生 ↓ [解説パート]カイゼン手法の解説 ↓ [ストーリーパート]カイゼン手法の実施により問題が解決 ``` 3部構成になっており、それぞれカイゼンしていく規模が異なる - 第1部:一人から始める - 一人から始められるカイゼン手法の紹介 - 第2部:チームで強くなる - チームで行うカイゼン手法の紹介 - 第3部:みんなを巻き込む - チーム間、部署間、会社間を越境して行うカイゼン手法の紹介 本書で解説される手法や法則、考え方は54種類にも及ぶ(齋藤調べ) 下記に列挙する - タスクマネジメント - タスクボード - ふりかえり - KPT - YWT - 朝会 - 緊急重要のマトリクス - 1on1 - XP(eXtreme Programming) - 素朴理論と建設的相互作用 - 氷山モデル - スクラム - ゴールデン・サークル - Working Agreement - 成功循環モデル - 期待マネジメント - インセプションデッキ - ドラッカー風エクササイズ - ファイブフィンガー - クネビンフレームワーク - 狩野モデル - むきなおり - YWT - 星取表(スキルマップ) - モブプログラミング - TWI研修(Training Within Industry)のJI(Job Instruction) - バリューストリームマッピング - ECRS - カンバン - ポストモーテム - タイムラインふりかえり - 感謝のアクティビティ - タックマンモデル - リーダーズインテグレーション - モダンアジャイル(心理的安全な場) - プランニングポーカー - リリースプランニング - CCPM(Critical Chain Project Management) - パーキンソンの法則 - スクラム・オブ・スクラム - SoE/SoR - デイリーカクテルパーティー - デザインプロセス - ユーザーストーリー - INVEST - ギャレットの5段階 - 仮説キャンパス - ビジネスモデルキャンバス - リーンキャンバス - ユーザーストーリーマッピング - MVP - ユーザーインタビュー - SL理論 - ハンガーフライト ## 参考にすべきトピック 全てを解説できないので、PJで使えると思ったものをかいつまんで解説します。 ### チームビルディング三種の神器 チーム発足時(PJ発足時)に行うと良いと紹介されていたものです。下記が該当します。 - インセプションデッキ - ドラッカー風エクササイズ - 星取表(スキルマップ) #### インセプションデッキ プロジェクトのWhyとHowを明らかにするための手法。 プロジェクトの向かいたい先や成約を明らかにして、それらを全員で合意し、透明性をもって運営していくために行われる 具体的には下記10個の質問にメンバー全員で答えていく - <Whyを明らかにする問い> 1. われわれはなぜここにいるのか:プロジェクトのミッションは何か 2. エレベーターピッチ:プロダクトのニーズ、顧客、差別化ポイントが何かそれぞれ答える 3. パッケージデザイン:ユーザーから見たプロダクトの価値とは何か 4. やらないことリスト:スコープ。特にスコープに入らないことは何か 5. 「ご近所さん」を探せ:チームを取り巻くステークホルダーは誰か - <Howを明らかにする問い> 6. 技術的な解決策:採用するアーキテクチャは何が考えられるか 7. 夜も眠れない問題:不安やリスクには何があるか 8. 期間を見極める:必要な開発期間はどのくらいか 9. トレードオフスライダー:ローンチ時期、スコープ、予算、品質はどのような優先順位か 10. 何がどれだけ必要か:期間、費用、チーム編成について答えよ #### ドラッカー風エクササイズ 期待をマネジメントする手法の一つで、主にチームメンバー間の期待(内側の期待と表記)をマネジメントする手法。(ちなみにアジャイルサムライで紹介されている) 下記の4つの質問を通じて、チームメンバー間の期待をすり合わせていく 1. 自分は何が得意なのか? 2. 自分はどうやって貢献するつもりか? 3. 自分が大切に思う価値は何か? 4. チームメンバーは自分にどんな成果を期待していると思うか? メンバーは上記質問に対する回答を書き出し、他のメンバーに共有する(付箋などで張り出す) このときのポイントは、リーダーが心理的安全な場を作り出すこと。(得意と思っていることに対して否定などの発言をしないことを最初に約束したりすること) 上記を終えたあと、4つ目の質問に対して、メンバーがそれぞれ5段階で合っているか合っていないかを回答する 1. 完全に合っていない 2. あまり合っていない 3. ふつう 4. だいたい合っている 5. 完全に合っている これを終えて、勝手な期待や過度なプレッシャーを無くす。 #### 星取表(スキルマップ) 星取票はチーム形成時にメンバーのスキルと指向性を全員が把握するために行う。 具体的には、そのPJで使用するスキルに対して、下記5段階で現状のスキルをそれぞれが書き込む - ☆:エース級 - ◯:一人前 - △:ヘルプが必要 - ↑:習得希望 - 空白:できない 本書では下記のような表記になっていた | | スクラム | 設計 | Git | AWS | RSpec | Ruby | Rails | Node.js | HTML5 | | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | | 江島 | △ | ↑ | ◯ | △ | ↑ | ◯ | ◯ | | | | ウラット | | | ◯ | ↑ | ◯ | ☆ | △ | ◯ | ◯ | | 土橋 | | ◯ | △ | | ◯ | | | | ↑ | | 七里 | | ↑ | ◯ | △ | ◯ | ◯ | ☆ | ↑ | ◯ | | 蔵屋敷 | ☆ | ☆ | ☆ | ◯ | ◯ | ☆ | ☆ | | ◯ | | 浜須賀 | | | △ | ↑ | ◯ | ◯ | △ | ↑ | △ | 項目はメンバーで決定する。ITスキルに加えて業務知識なども具備する。 この表により、困ったときに誰に聞くのか、また誰の支援が必要なので、誰に何の教育をすべきなのかがはっきりして、透明性が上がる。 ラクーンのスキルシートは広義の星取表。 ### ファイブフィンガー ファイブフィンガーは、メンバー個人個人が本当はどう思っているかを5本の指で表明するプラクティス。 メンバーの危険信号を早めにキャッチのに有効とされている。 朝会(デイリースクラム)などで、スプリントや現在の自分の仕事の状況を自分の考えで表明する。 - 5本:とってもうまくやれている - 4本:うまくやれている感触あり - 3本:可もなく不可もなく - 2本:不安は少しある - 1本:全然ダメで絶望的 メンバー全員の答えがでたら、一斉に指を出す。 その後は一番本数が少ないメンバーから話を聞いていく。ポジティブな意見のあとはネガティブな意見は言いにくいので。 もちろんその人の意見を吊るし上げる何てことはしない。 全員のファイブフィンガーの表明によって、問題を抱えている人をチームでサポートする状況が自然と出来上がる ### パーキンソンの法則とCCPM(Critical Chain Project Management) パーキンソンの法則は「仕事の量は完成のために与えられた時間を満たすまで膨張する」という法則。 つまり、各作業にバッファを追加してもいつの間にか無くなってしまう・・・というもの。 これを解消するための手法が「CCPM」。 CCPMは、各個人の作業は見積もりぴったりの時間でスケジュールし、最後にプロジェクトの共有バッファを設定する。 プロジェクトバッファの決め方は色々あるが、本書では各作業のスケジュールのクリティカルパスの半分をバッファとして積む。 何らかの理由で個々の作業が遅延した場合、プロジェクトバッファから切り崩して補填していく。 プロジェクトバッファは朝会などでマネジメントしていく。 CCPMを導入するにあたって、メンバーの信頼関係が必要不可欠となる。 プロジェクトバッファを使っても責められない場作りが必要。 見積もり自体かなり難しい作業であることの共有認識と、ファイブフィンガーなどでの個々の調子を共有することが、 信頼関係構築の鍵となりそう。 ## 所感 個人での業務改善から、チームビルディング、プロダクトマネジメント、プロジェクトマネジメントまで一通り取り扱いがある本で学びが多かったです。 物語内で起きる問題が、開発現場であるあるの物が多くそれに対するプラクティスが参照できるので、逆引き的にも使えると思いました。 ストーリーがあるので読みやすいですが、紹介されているプラクティスが膨大なので、1回で全てを把握するのはかなり厳しいと思います。 ストーリー自体は結構ドラマティックで面白いと思いました。(そんなにうまくいかないだろとは思いつつ) ## お勧め度(★★★★★)星5 読めば確実に引き出しが増えます。 実際に次のPJでやってみようと思えるものも多く、使える本だと思いました。 チームビルディング系のプラクティスは、目的をしっかりと理解している人でやると効果が上がると思うので、 是非色んな人に読んでもらいたいと思います。 ## 質疑応答 - ドラッカー風エクササイズは、デザイン部で新しい人が入ったときに同じようなことをやってみたら、とても良い受け入れになった - 氷山モデルってどんなモデル? - 人の行動や言動は、氷山のような表層の部分で、その背景やメンタリティなどはもっと奥深くにあるというモデル。それを理解しないと問題の本質などには行き着かないという話 - 感謝のアクティビティとは? - PJが終わったあとに、各メンバーへの感謝の言葉をカードに書き出し送り合うアクティビティ。次のPJに向けて絆を深める。終わりよければ全てよし的な考え方に近い部分もありそう - インセプションデッキなどは、何を目的としてやるかをみんなが理解している状態でなければ、十分な効果が得られ無さそう