## 2021/12/16 細川 ## 書籍情報 「[グロービスMBAキーワード 図解 ビジネスの基礎知識50―――知っていると差がつくワンランク上のセオリー](https://www.amazon.co.jp/dp/447806833X)」グロービス ## どんな本? 経営大学院で教えられているビジネス用語のうち、重要なものを50個ピックアップして解説している本、知っておくと役に立つ原理を対象としている。我々は意識せずともこれらの法則の中で仕事をしている。しっかりと理解して効果的に活用できるようになりましょう。 ## 参考にすべきトピック 各キーワードごとに学びがあります。 ### 本の構成 用語ごとに - 分野 - スコアリング(習得必須度、有効性、応用性、理解容易度、回避容易度) - 意識・活用すべき場面 - 考え方 - 事例 - コツ・留意点 が述べられています。 本全体としてはビジネスの基礎知識をカバーするものとなっております。 今回紹介するのは組織マネジメントの章のみです。(20~29章) これからの紹介では時間の都合で、分野と事例は省略させていただきます。 スコアは、習得必須度、有効性、応用性の合計点(最大15点)を紹介します。 ### 20.パーキンソンの第一法則と第2法則 14.5/15点 - 官僚の数は仕事の量に関係なく、自己増殖を続ける #### 意識・活用すべき場面 - 企業のスタッフ機能の膨張を避ける - 無駄な仕事のために人員を貼り付けていないかを見極める #### 考えかた - パーキンソンの第一法則は、官僚というのはステータスシンボルとして部下が増えることを望む、互助的に仕事を作り合うことを好むという特性に起因するとされている。官僚を一般企業に当てはめると企画室が典型と言える。頭の切れる人材なら理由をつけていくらでも仕事を増やし人員を増大させることができる。それらの部署は組織の中で権力を持ち、幹部への登竜門となっていることが往々にあり、さらに肥大化の傾向は高まる。 #### コツ・留意点 - 時間が余った人は、必要以上に仕事に時間を使ってしまう傾向がある。コンサルティング業界では、多忙なコンサルタントに仕事をさらにアサインすることがある。その方が早く終わる傾向があるとのこと。 ### 21.パーキンソンの凡俗法則 組織はどうでもいい物事に対して、過剰にエネルギーを使うという法則 14.5/15点 #### 活用・意識すべき場面 - 重要な業務に組織の経営資源が適切に配分されているかを確認する - 特に時間単価の高いリーダーの時間が適切に使われているかを把握する #### 考え方 例えば、ある委員会が、原子力発電所と自転車置き場の建設について審議をする。原子炉の建設費用は巨額ののぼります。しかし、話は難しく一部の人しか理解できない。結果、会議は淡々と進む。一方で自転車置き場については誰もが進んで発言をして、議論は非常に盛り上がります。誰もが自分の存在を誇示するかのように発言をして無駄に時間が過ぎ去っていきます。 このように物事の重要さと費やすエネルギーが関係しなくなります。 #### コツ・留意点 - 回避する最も効果的な方法は、物事の重要性を正しく見極めること - 企業の上級管理職の時間を経営資源の中で最も貴重なものであるという認識を正しく持ち、やらなくて良いことは周りに移譲する ### 22. 2-6-2の法則 あらゆる組織において、仕事が良くできる人が2割、まずまずの人が6割、仕事ができない人は2割の割合で存在する(経験則) 12/15点 #### 活用・意識すべき場面 - 組織の人材バランスがうまく取れているかを検討する - 仕事のアサインメントや、個人に対する指導方法のヒントとする - 理想的な組織像と対比させながら、採用や育成方法のヒントを得る #### 考え方 働き蟻の集団を観察するとこの法則が当てはまっていることが観察できます。 それは、なぜか人間にも当てはまります。原因は複雑で特定できません。 #### コツ・留意点 - 一見生産性が低い人材にもポテンシャルがある可能性があります。 - 下位2割の人材についてはスキルの問題なのか、モチベーションの問題なのか、アサインメントの問題なのかをしっかり認識する必要があります。 ### 23.ピーターの法則 組織は管理職も含めてどんどん無能な人々によって埋め尽くされてしまうという法則 14/15点 #### 活用・意識すべき場面 - 組織の管理職が適切なスキルを持っているかを検討する - 組織の昇進・昇格の方針が適切かを検討する - 管理職の能力開発が適切になされているかを検討し、改善案のヒントを得る #### 考え方 無能な人は現在のポジションにとどまり、優秀な人は評価され出世します。 しかし一段下のポジションで優秀だった人が新しいポジションで優秀であるとは限りません。 やがて次の評価が行われると、優秀であった場合にはまた出世をします。それを繰り返していくと多くのポジションは無能な人で埋め尽くされます。 日本企業は職能別の組織になっていることが多いためより当てはまりやすいと言われています。 MBA的な経営学の学習機会が少なく、管理職研修が不足しています。 #### コツ・留意点 - 組織全体として防ぐ努力が必要。その際、仕事のパフォーマンスだけではなく意識の調査も行うと効果的。 - 典型的な無能化する管理職の特徴は、部下の能力開発や動機付けが下手であること。能力不足に起因するならまだ良いが、嫉妬や恐怖心に起因する場合もある。 ### 24.グレシャムの法則 悪い習慣などがはびこると、良い習慣が消えてしまう もともとは経済学の法則で「悪貨は良貨を駆逐する」でも知られる法則。 14.5/15点 #### 活用・意識すべき場面 - 組織を蝕むような悪い組織文化やその萌芽が生まれていないかを監視する - 他に悪影響を与えるような人材が増えていないかを監視する #### 考え方 組織の中で「悪貨が良貨を駆逐する」理由は次のものが考えられる - 悪化を避けようとして良貨が逃げてしまう - 人間は易きに流れやすいため、保守的な人の振る舞いを真似してしまう #### コツ・留意点 - トップが自ら慎重にチェックする。採用を慎重に行う。 - どうしても一定の割合で「悪貨」が発生してしまうことを念頭に置き、良家の駆逐を予防するために地道な教育とキーパーソンの情報発信が大切 ### 25ゆでガエル現象 人や組織は急な環境変化には気付きやすいが、ゆっくりとした環境変化にはなかなか対応できないという現象 14.5/15点 #### 活用・意識すべき場面 - 自社を取り巻く環境変化のスピードや大きさ、重要度などを再確認する - 自身や自社が、環境変化に対して鈍感になっていないか、適切な対応を取っているかを確認する #### 考え方 2匹のカエルのうち1匹を冷たい水に入れます。そして水の温度を徐々に上げていきます。水温上昇に慣れたカエルは動きません。気がついた頃には体が茹って死に至ってしまいます。 もう一匹のカエルは最初にカエルが死んでしまった温度にいきなり放り込みます。驚いたカエルはお湯から飛び出し死を免れます。 人や組織は急激な環境変化には気付きやすく、それなりの反応は見せるものの、環境が徐々に変わっていくケースでは、いつの間にか危機的な状況になったとしてもそれに対応できず、破滅的な結果に至ることもあるということです。 変えることより現状維持のほうがリスクも小さく見えます。慣れた仕事なら簡単にミスなくこなすことができます。 その結果、ちょっとした変化には見栄を背けてしまうのです。 #### コツ・留意点 - トップが勇気を持って現実を直視することが大切です。また、変化によって損をする抵抗勢力への対応も必要 - 環境変化を常にウォッチしそれに合わせて企業を変えていくことが当然という企業文化を構築する。 ### 26.共有地の悲劇 15/15点 メンバー全員が協調的行動をとっていれば、皆に恩恵が齎される状態だったにも関わらず、各自が合理的な判断のもとに個別に行動した結果、皆にとって好ましくない結果が持たらされる現象 #### 活用・意識すべき場面 - フリーアクセスできる共有財産について、適切な利用ルールを定める - 各人の個別最適な行動をとる結果、全体最適が達成されないことを防ぐアイデアを検討する #### 考え方 例として一つが村人10人が共有する100頭養える牧草地があったとします。それぞれが10頭をかっていればきちんと羊は育っていたのですが、個別最適の結果それ以上の飼育を始め、羊の栄養状態が下がって羊は値下がりしてしまいます。 原因は、一人ひとりの無自覚や、自分だけ真面目にやっても損をするという考え、全体に対する各個人の影響力の小ささによって起きる。 予防するためには強制力を持つ人によるルール作りが必要 #### コツ・留意点 - 加速してしまう原因の一つには「悪貨は良貨を駆逐する」という要素もある - 類似するものとして囚人のジレンマがあるそちらの構造と対策も理解しておきたい。本書割愛 ### 27.ルールのすり抜け 何らかの規則があがってもそれを回避する行動をとって自分に都合の良い結果を得ようとする人々の性質 15/15点 #### 活用・意識すべき場面 - 組織を正しい方向に導くようなルール作りやその運用のヒントを得る - 既存の業界の常識を打ち破り、革新的な新商品開発やビジネスモデル構築のためのヒントを得る #### 考え方 ルールに満たすこと自体を目的とすれば、ルールの裏を書いて本来の目的の達成を回避して目的を達成することができます。 例として大学の授業における「代返」や自動車メーカーの検査不正事件です。 どんな仕組みやルールにはも必ず欠陥や抜け道があるものです。 それを理解した上で、適切なルールと運用の仕組みを作ることが望まれています。 #### コツ・留意点 - ルールに従わせるための方法として、重いペナルティを貸すというのもがあります。効果がある反面、思わぬ副作用をもたらすことがあるので注意が必要。例として禁酒法により密造酒が広がりマフィアの資金源と粗悪な密造酒による健康被害が多発した。 - ルールのみに頼って人の行動を律するのは危険です。それ以上に大切なのは、共感される理念やビジョン、組織文化と上司と部下のコミュニケーションです。 ### 28.集団浅慮 集団の圧力により、その集団で考えていることが適切かどうかの判断能力が損なわれ、本来は好ましくない結論を出してしまう傾向。 14.5/15点 #### 活用・意識すべき場面 - 会議などで出た結論が本当に望ましい結果をもたらすような結論なのかを再確認する - より好ましい結論を出すための会議運用のヒントを得る - #### 考え方 通常は集団で話し合えば良いアイデアが出てくるものです。一方でしばしば集団浅慮という逆の現象が起こります。 心理学者はこれを「集団での一見の一致を重視する現実を無視する思考様式と定義付けた」 次のような予防策が提案され地える - 集団として最終結論を出す前にリーダーが各メンバーと1on1する - 集団の外部に別のリーダーを持つ立案評価グループを設置する - 外部の専門家を招く - 多数派に常に反対する役割を設ける - 集団を分割してそれぞれで検討させる #### コツ・留意点 - 集団浅慮の兆候は次のものがある。代替案を十分に検討しない。目標を十分意見と失い。結果のリスクを検討しない。一旦否定された選択肢は再検討しない。情報を集めない。非常事態を考慮しない。 - 同調圧力に流されてしまうのは当事者意識の欠如とも言える ### 29.機長症候群 リーダーの意見に押し切られて議論や反論をやめてしまい、好ましくない結果を招いてしまう傾向 13.5/15点 #### 活用・意識すべき場面 - リーダーが主導して出した結論が本当に望ましい結論なのかを再確認する - より好ましい結論を出すための会議運営のヒントを得る #### 考え方 元々は基調の誤った判断を副操縦士らが翻意させることができず墜落に至ってしまったケースから。 上司と部下の力関係だけではなく、リーダーが優秀な場合、フォロワーは自律的に考えたり、リーダーと議論することをしなくなる。結果的に盲信してしまいがちなことが問題の本質 #### コツ・留意点 - 機長症候群を恐れて、リーダーが意思決定を止める必要はありません。最終決定はリーダーがするべきです。サーバントリーダーシップを行い、メンバーの自律支援の視点を持つことが回避の手段 - 予防のために大切なのは良いフォロワーが存在していること。どれだけ優秀な人間でも間違いはあることを意識して勇気を持って発言する ## 所感 キーワードごとに、知識として学びがあり、自分を省みるのにも役立つ気づきがありました。 ## お勧め度(☆☆☆☆☆) ★★★★★ ## 質疑応答
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