# OODA LOOP ## 2022/04/05 駒崎 ## 書籍情報 OODA LOOP(ウーダループ)―次世代の最強組織に進化する意思決定スキル https://www.amazon.co.jp/dp/B07ND6QTN4 チェット・リチャーズ著 ## どんな本? (Amazonの紹介文) 世界最強組織のアメリカ海兵隊が行動の基本原則とするOODAループが、 いまアメリカの優良企業に広がっている。 OODAループとは何か? PDCAサイクルと何が違うのか? 第1章 強い者が戦いに勝つとはかぎらない 第2章 目に見える数字だけでは最悪の結果を招く 第3章 OODAループ──勝つべくして勝つための最強ツール 第4章 OODAループはビジネスに何をもたらすのか 第5章 OODAループを高速で回すための組織文化 第6章 機動戦の原則をビジネスに応用する 第7章 OODAループで実際に何をするべきか 原書は15年位前に出版されている。 OODAループ自体はPDCAと同じ1950年代に発明。 ## 参考にすべきトピック - 序文 ジョン・ボイド(OODAループの提唱者)とは何者? - 軍人(凄腕パイロット)・軍事戦略家 - 戦闘機(F-15,F-16)の設計や戦術に大きな影響を与えた - 戦闘機の最適戦術を数学的にモデル化することに成功(エネルギー機動性理論:EM理論) - F-16はEM理論に基づいて開発された - もともとは戦闘機パイロットのための意思決定理論 - 第3章 OODAループ──勝つべくして勝つための最強ツール - 電撃戦を成功させる4つの属性 - 相互信頼 分隊長から小隊長、中隊長へと昇進する間、彼らは同じ部隊に所属し続ける。共通のバックグラウンドを共有し、お互いの長所、短所を知り尽くしている。 故に少ない言葉で迅速かつ正確に意思疎通できる。 - 皮膚感覚 混乱し混沌とした状況にあっても鋭く洞察することができる。 状況を想定した訓練が重要。 侍が刀を自分の体の一部のように感じるまで鍛錬するようなもの。 - リーダーシップ契約 暗黙の意思疎通ができるレベルまで部隊が成長すると、上司と部下ではなく、「達成すべきビジョンを持つもの」「ビジョン達成のために支援するもの」の関係になる。 ミッション型命令とは上官と部下の仮想的な契約。 命令に従うか、背くか。旧ドイツ軍ではリソース不足や理不尽な命令に背くことが認められていた。 - 焦点と方向性 組織の主要な任務を理解し、自分たちがそれを支援することを了解している 焦点が明示されているミッションを遂行する場合は、いつでも自発的に動き、困難な状況を切り開くことが期待される。 - OODAループとはなにか? - F-86がMiGに一方的に勝っていたが、エネルギー機動性理論ではその優位性を説明できなかった - F-86の優位性は非対称的高速遷移にある、とたどり着いた - 高速遷移は空中戦だけでなく、あらゆる戦いの中に見いだせた ![](https://i.imgur.com/1kz7pAH.jpg) - OODAループ - 観察: Observe 環境を観察しなければならない。 観察とは見る以上ことで、「吸収する」というほうが近い。 観察力を高めるためには可能な限りいろいろな訓練(経験)をしたほうがよい。 - 情勢判断: Orient 観察して得た情報を自らの遺伝的特質や社会環境、過去の経験に基づく断片的なアイデア、情報、推測、印象などと組み合わせ「多面的で暗黙的な相互言及」を作り出す - 意思決定(Decide)と行動(Act) 意思決定によって行動にシフトする。 個人レベルなら観察や情勢判断が適切に行われれば、何をすべきか明らかになっている。 集団レベルでは、明示的な意思決定は主要な活動の中身を設定し、多くの個人に焦点と方向性を与える。 ただし、理想の意思決定は暗黙的であるべき。 明示的な意思決定は必要なく、情勢判断が直接行動を統制する。 (O→O→D→Aは例外で、O→O→Aであるべき) - 暗黙的 暗黙的コミュニケーションは以心伝心・阿吽の呼吸のようなもの。 前述の4属性の上に成り立つコミュニケーション。 - 同じ時間軸で高速でOODAループを回す回数が多いほどアジリティが高いと言う 情勢判断された状態から、新たに情勢判断された状態への以降に要する時間が短いことが競争力を高める - 第4章 OODAループはビジネスに何をもたらすのか - スピードを主要な武器として活用 - 状況を素早く把握し(ニーズや欲求を迅速に発見し)、対応できる - ホンダ・ヤマハ戦争 18ヶ月でヤマハは37種類しか投入できなかったが、ホンダは113種類もニューモデルを投入し、消費者が何を受け入れ何を受け入れないか学び、改善した。 ## 所感 OODAループは戦闘機パイロット向けの意思決定理論から指揮官向けの意思決定理論となり、アメリカ全軍だけでなくNATOに採用されている。 湾岸戦争のあたりはボイド理論(OODAループ)を学んだ指揮官が多く、作戦成功に大きく貢献したと言われる。 2000年代から企業にも多く採用され成功している企業も多い。(トヨタも採用企業) PDCAは比較的長期な視点で品質や生産性を改善させるもの。 OODAループは現時点で置かれている状況を分析し、想定していた状況との差から先の読めない状況に対応する方法を考え出すもので、同じ軸の方法論ではない。 前提とも言える組織の下地について、地道な積み重ねを論じているのは意外だった。 ## お勧め度(★★☆☆☆) 軍事系の読み物としては面白い。 第二次世界大戦のドイツ軍の事例が多い。電撃戦についてはかなり評価している。 OODAループは実用的な理論だと思うが、興味があるなら他の書籍をお勧めする。 ## 質疑応答