# ユニコーン企業のひみつ ―Spotifyで学んだソフトウェアづくりと働き方 ## 2021/08/30 水口 ## 書籍情報 ### 著者/訳者: - Jonathan Rasmusson(著) ※「アジャイルサムライ」の著者 - 島田 浩二、角谷 信太郎(訳) ### 発売日: 2021/04/26 ※原著は2020/03/31 ### ページ数: 212ページ ## どんな本? - 本書のテーマはユニコーン企業の「組織文化」。 - どうやってスケールさせているか - どうやって組織化しているか - どうやって権限を与えているか - どうやって信頼しているか - 対象読者は、業務としてソフトウェアデリバリーに関わっている人だけでなく、特に経営リーダーを始めとした、チームをプロダクトやソフトウェアのデリバリーにフォーカスさせる組織づくりの担当者。 - デリバリー: - アイデアを機能するソフトウェアに変換して、本番の動作環境でユーザーに届ける - ユニコーン企業は、10億ドル規模の企業でありながら、スタートアップみたいに運営されている企業(本書の定義)。 - スタートアップの特徴: - 少なくとも初期段階では、自分たちは顧客が本当に求めているものが何なのかを正確に把握していないことを認める - それを突き止める覚悟をする - 学習と発見を大切にする - 早めのリリースによる本当の顧客からの迅速なフィードバックを通じて、顧客のニーズにぴったり合うまで、プロダクトのイテレーションを継続的に重ねていく - エンタープライズとスタートアップの比較: | エンタープライズ | スタートアップ | | -------- | -------- | | 内向き | 外向き | | 計画に従う | 学習する | | 既存業務の自動化 | 新規プロダクト開発 | | 未知が少ない | 未知が多い | | プロジェクト起動 | プロダクト起動| | 一回限り | リリースを重ねていく | | 納期と予算 | 顧客とインパクト | | トップダウン | ボトムアップ | | 弱い権限と信頼 | 強い権限と信頼 | | 計画に忠実 | 計画を生み出す | - Spotifyはスウェーデンで生まれた世界最大手の音楽ストリーミングサービスを運営。Spotifyではスクラムはやっておらず、Spotifyモデルという大規模アジャイル開発手法を実践している。 - 章立ては以下の通り。 - 1章 スタートアップはどこが違うのか - 2章 ミッションで目的を与える - 3章 スクワッドに権限を与える - 4章 トライブでスケールさせる - 5章 ベットで方向を揃える - 6章 テック企業で働くということ - 7章 生産性向上に投資する - 8章 データから学ぶ - 9章 文化によって強くなる - 10章 レベルを上げる:ゆきてかえりし物語 ## 参考にすべきトピック ### Spotifyモデル - ミッション - ミッションは経営リーダーが設定する抽象度が高めの長期的目標でチームがオーナーシップを持つ。 - 例)車の中での音楽体験を史上最高にする - ミッションを実現させる方法はチームが自分たちで探っていく。 - 例1)主要な自動車メーカーをサポートする。 - 例2)2大プラットフォーム(Apple CarPlayとAndroid Auto)と連携する。 - プロジェクトとミッションの比較: | プロジェクト | ミッション | | -------- | -------- | | 予算がある | チームの人数が予算 | | 終わりがある | 期間に定めがない | | 短期間 | 長期間 | | プロジェクトマネージャーがいる | プロジェクトマネージャーがいない | | 開発だけして引き継ぐ | 開発もメンテナンスもする | | 完成したら解散する | チームは一緒のまま | | 計画にフォーカス | 顧客にフォーカス | | 期待に応じることが価値 | インパクトが価値 | | トップダウン | ボトムアップ | - スクワッド - 権限を持った小さな職能横断のチーム(小さなスタートアップのような存在) - ミッションを所有する - 自分たちで自分たちの仕事を生み出す - 作ったものは自分たちでメンテナンスする - 多くの場合は8名以下で構成される - トライブ - 類似、関連しているミッションを持つスクワッドのまとまり - 例)「ハードウェア」トライブ(自動車、テレビ、スピーカー) - 近しいスクワッド同士の相乗効果が期待される - 特定のビジネス領域のすべての責任を持つ - トライブ内にはスクワッドを横断した同じ専門性を持つメンバーのグループ(チャプター)があり、現場の最前線で専門的なサポートを提供する - 例)トライブ内のテスター全員で構成される品質保証チャプター - スクワッドは「何を」にフォーカスし、チャプターは「どうやって」にフォーカスする。 - ギルド - 全社を横断して作られる、同じ専門分野に興味のあるメンバーからなるグループ - 正式な組織ではない - 誰でも自由に作れるし、誰でも参加できる - 例)iOSギルド、Androidギルド - 全社を横断したコラボレーションを可能にする - カンパニーベット - 全社で取り組みべき重要事項に優先順位をつけたリスト - 重要なことから終わらせていく - 社内のメンバーの流動性を高める - フォーカスを強制する - 全社横断の連携を可能にする - 例)1.PlayStation対応、2.Chromecast対応、3.日本上陸、・・・ - 戦略チームは四半期ごとに優先順位付けする ### Spotifyの文化 - Spotifyの文化の中核は、権限付与と信頼、安全、そしてチーム(以下は著者の感覚) - あなたならやれるはず - みんなのことも信じて大丈夫ですよ - 私たちはみんな一緒にいますよ - 誰もが助けるためにいるんです - 恐れることはありません - 応援してますよ - 何か必要なことはある? - オープンで誠実にいきましょう - 他者を尊重しましょう - 信頼していますよ - それを決める権限がありますよ - がんばって! ## 所感 - ラクーンはSpotifyと同様に自社サービスを提供している企業なので、組織編成でヒントになるトピックが多かったように思える。規模も文化も違うので、Spotifyモデルをそのままコピーできないが、ラクーンの文化に合わせてカスタマイズして適用できる部分があるかもしれない。 - 本書でSpotifyモデルの概要は理解できるが、コピーまで考えている場合は関係者のブログや動画も併せて参照する必要がありそう。 - 前回紹介した「ピープルウェア」ではヤル気をいかに引き出すかというテーマだったが、Spotifyでは権限付与と信頼で従業員に最高の仕事をする機会を与えることでヤル気を引き出しているようである。 ## お勧め度(☆☆☆☆☆) ★★★★☆ ## 質疑応答