# 行動分析学マネジメント-人と組織を変える方法論 ## 2021/07/19 田中 友和 ## 書籍情報 [行動分析学マネジメント-人と組織を変える方法論](https://www.amazon.co.jp//dp/4532490219) ## どんな本? ### なぜこの本を読もうと思ったのか 自分自身の経験や今までマネジメント寺子屋で紹介されてきた本から学んだマネジメントの知識は大きく2種類に分かれると感じていました。 概念論と方法論とでも言うべきでしょうか。 たとえばドラッカーで言うと下記のような構造でマネジメント(マネージャーの仕事)が定義されていると思います。 - マネジメントとは? - 人の強みを生かし、組織の成果につなげる活動すべて - 組織の成果に責任を持っていれば、「マネージャー」 - マネージャーが果たすべき2つの役割 - 投入した資源の総和より、大きなアウトプットを出すこと - 直近の仕事と、将来のための仕事のバランスをとる - マネージャーの5つの仕事 - 目標を設定する - 組織する - 動機づけとコミュニケーションを図る - 評価測定する - 人材を開発する マネジメントの定義からマネージャーの役割、マネージャーの仕事までブレークダウンされて徐々に具体的になっていってきますが、これらは概念的なもので、これらを学ぶことですぐにマネジメントができるようになるわけではなく、マネジメントを学ぶための基礎知識というか前提知識のようなものだと感じています。 それに対して、マネジメント寺子屋で紹介されてきた本の多くでは、もっと具体的な手段としてのマネージメントの方法論が紹介されていて、それは具体的なチームビルディングの方法論だったり、人材開発のための教育方法論だったり、ミーティングを円滑に進行するための方法論であったりします。 質疑応答でのやりとりを聞いていても、概念論より具体的な方法を知りたいという意見が多いように思います。 ただ、私としては方法論だとその方法論を採用する・しない、採用するとしても一部採用するくらいの選択肢があるくらいで、現状を改善できるかどうかはまた別問題というか、紹介されている方法論が目の前にある現実にマッチするかどうかという論点になってしまうように感じていました。 そこで自分の中で少し整理してみたところ、今まで見てきた方法論より粒度の細かい、本に書いてあることをそのまま方法論として採用するものではなく、現状の方法論の改善に使えるようなものを探しているのではないかと思い、この本にたどり着きました。 ### 概要 サブタイトルに「人と組織を変える方法論」とありますが、この本のまえがきには下記のように書かれています。 ``` 人の行動は、変えられる。組織の文化も、変えることができる。 そのための科学的・体系的な方法論を、わかりやすく伝えたい。 ``` また、こうも書かれています。 ``` 「人は変われる」ということに、意義を唱えたくなる方もおられると思います。「三つ子の魂、百までというではないか」と。 その通り。ここで著者たちが主張するのは、人の性格や人格をかえるということではありません。 人の「行動」を変えるということなのです(なので、紛らわしい表現を避けるため、以降、本書では「人を変える」という言い方ではなく、「人の行動を変える」という言い方をします。) ``` つまり、考え方や好き嫌いを変えて行動を変えるのではなく、自然と行動が変わるように促すというか、いつの間にか行動が変わっていくというような手法について、外資系の企業と合併したばかりの会社をケース・ストーリーとして、「具体的なエピソード」→「エピソード内で出てきた手法の説明」という構成で書かれています。 ### 構成 - 序章 今こそ組織・人材マネジメントに「行動の科学」を 序章ではこの本の理論的支柱である「行動分析学」の簡単な説明と、考え方について記述してあります。 まず、「部下が期待通りの仕事をしない」とき、「やる気がない、能力が低い、意識が低い」といったところに原因を求めがちですが、これらは「期待通りの仕事をしない」ことの言い換えであり、行動の結果に対するレッテルに過ぎないため、本当の原因を改善することができないことが指摘されます。 そして、行動分析学では「行動は、行動直後の結果によって制御される」とされていることを説明し、その具体的な事例と解決手法について説明することが本書の狙いであることが述べられています。 - 第1章 褒めてやらねば、人は動かず (好子による強化と弱化) - 第2章 鬼の上司が会社を伸ばす? (嫌子による強化と弱化) 1~2章では基本的な概念である「好子(こうし)」と「嫌子(けんし)」について説明されます。 「好子」とは直前の行動を「強化」する反応のことで“概ね”ポジティブな反応のこと。 「嫌子」とは直前の行動を「好子」とは逆に弱める(「弱化」する)反応のことで、“概ね”ネガティブな反応のことです。 行動の結果として「好子」が増えると行動が増え、逆に「好子」が減ると行動が減り、「嫌子」が増えると行動が減り、逆に「嫌子」が減ると行動が増えることが実験によって確かめられていることが説明されます。 - 第3章 ネガティブ社員はこう扱え (消去) - 第4章 活発な職場を取り戻す (復帰) - 第5章 上手な褒め方、無意味な褒め方 (強化スケジュール) 3~5章では具体的な例を交えて、「好子」や「嫌子」を利用してどのように人々の行動を変えるのかが説明されます。 - 第6章 「頑張れ」というだけでは業績は上がらない (課題分析) 6章では「行動分析学」を応用して具体的な問題を改善するために、課題のブレイクダウンをすることで、変えるべき「行動」とは何なのかを明らかにする手法について説明されています。 例えば上司が「熱心に働いているのに要領が悪いから納期が守れない」といった評価をしている場合に、そのままだと何を改善すればいいか判断がつかないが、問題をブレイクダウンすることで、「他人に仕事を依頼するときに、忙しいのでその後のフォローをしておらず、時間がかかっている」ことが改善すべき問題で、強化すべきなのは「依頼後にフォローをする」という行動であることが判るといった感じです。 - 第7章 ハイ・パフォーマンス集団の作り方 (シェイピング) 7章では行動の改善を継続的に行うことと、効率的に改善を行うこととを目的として、改善の選択と集中をして徐々にハードルを上げていく手法について説明されます。 - 第8章 「勝ち味」を覚えさせよ (チェイニング) 8章では長くて複雑な仕事において、早く達成感を感じさせることにより、効率的な行動マネジメントが行えるようにするバックワード・チェイニングという手法について説明されます。 - 第9章 裏表のない組織を作る (刺激弁別) 「行動分析学」では基本的に行動の直後に何が起こったかに着目するが、9章では逆に直前に何が起こったかについて着目することについて説明されます。 - 第10章 お互いの悪い癖を直す (プロンプト、代替行動) 10章では行動の直前に先行して刺激を与えることで、適切なタイミングで適切な行動を促す方法について説明されます。 - 第11章 表彰制度はこう変えよ (好子の種類) 11章では表彰制度を例に挙げ、効果的な制度設計に「行動分析学」がどのように応用できるかを説明しています。 それに関連し、「好子」の種類についての説明や、交換可能な「好子」としてのトークンについて説明されています。 - 第12章 フィードバックで新人を育てる (フィードバック) 12章では研修制度を通じて、「行動分析学」的に効果が高いフィードバックについて説明されています。 - 第13章 マンネリが組織を不活性化する (確立操作) 13章では「好子」や「嫌子」の「飽和」(マンネリ)を通じて、効率的な行動改善の方法を説明しています。 - 第14章 過去の自分と決別する (自己強化と抹殺法) 14章では今まで見てきた手法を応用し、自己の行動を改善することができることを説明しています。 - 第15章 「苦手な顧客」の克服法 (レスポンデント条件づけ) 15章では「行動分析学」を利用して、苦手意識を改善するための手法を説明しています。 また、有名なパブロフの犬の例が出てくるので、既存の知識とのすり合わせができます。 - 第16章 コンプライアンスを高める (ルール支配行動、トークン) 16章ではルールを守らせるために「行動分析学」がどのように応用できるかを説明し、従いやすいルールを設計するためにも応用できることを説明しています。 - 終章 伸び続ける会社を作る ## 参考にすべきトピック - 行動を強化・弱化するためには極力行動の直後に結果を与えるべき - 行動分析学的には目安として60秒ルールと呼び、60秒以内に起こらない結果はほとんど意味がないと考えている ## 所感 - 明記されてはいないが、報酬や罰則といった行動経済学的な手法に対するアンチテーゼを感じる - 確かに高いお金払ってスポーツクラブに行くようにしても、三日坊主になったりするよね… - 人間の行動の性質を研究し、自然な形で行動変容を促す手法なので、導入による弊害が少ない - 報酬や罰則といった行動経済学的な手法では心理的な圧力がかかりがち - 単体でも導入できるし、行動経済学的手法を強化するような導入の仕方もできるのではないか - 行動分析学の入門の入門というか、とっかかりくらいの無いようであるため、行動分析学そのものの勉強にはならない ## お勧め度(☆☆☆☆☆) ★★★☆☆ ## 質疑応答
×
Sign in
Email
Password
Forgot password
or
By clicking below, you agree to our
terms of service
.
Sign in via Facebook
Sign in via Twitter
Sign in via GitHub
Sign in via Dropbox
Sign in with Wallet
Wallet (
)
Connect another wallet
New to HackMD?
Sign up