# MRI特論1 皆さんこんにちは。luckyです。 この記事は、[法政大学アドベントカレンダー2024](https://adventar.org/calendars/10131) の 7日目の記事です。 さて、アドベントカレンダーということで何を書こうか少し考えましたが、面白いことは思い付かなかったので、今回は自分の研究について話していこうと思います。 実は、私はとある研究室でMRIについての研究をしています(?)。MRIと聞くと皆さん、普段生活していたら、まぁ年に一度くらいは聞いたことがある言葉なのではないでしょうか。一方、幣研究室の学生であればこの「**MRI**」という単語、「**AI**」っていう単語と同じくらいよく聞くと思います。ADやらCNという単語も何故か浸透していますね。 <br> ところでみなさん、MRI って何かご存知ですか? 「ちょっと聞いたことがある」や「白黒の画像っぽいやつ」などと思う人、多いのではないでしょうか。あるいは、MRIと言葉を聞いて皆さんよく思い浮かべるのは <div style="display: flex;"> <img src="https://hackmd.io/_uploads/rkDcBn-zJe.png" alt="Image 1" width="45%" height="100%" style="margin-right: 10px;"> <img src="https://hackmd.io/_uploads/Hygix2-zkl.png" alt="Image 2" width="45%" height="90%"> </div> ※引用 (https://adni.loni.usc.edu/, http://kawano.or.jp/examination-mri/) こんな画像ではありませんか? 画像は見たことあるけど、この画像がどのようにimagingされているのか、どうして脳や体の中が写し出されるのか、知っている人の方が少ないと思います。 そこで、今回はMRIについて皆さんに少しでも知っていただきたいと思い、この記事を書くことにしました。MRIを研究していない方でも、理工学系の大学にいる学生なら、少しは役に立つ内容だと思うので、気になる方は読んでいって下さい。 <br> ### 導入 突然ですが皆さん、リンゴって何色ですか?<font color="red">赤色</font>ですね。 では、中央線の色って何色でしょうか?<font color="ffb677">**オレンジ色**</font>ですね。 このように、私たちは普段の生活で色を認識しています。ところで、私たちはどのように色を認識して、物体によって色が違うと理解しているのでしょうか?それは、人間の知覚機能と物質の特性に由来しています。ここでは後者がポイントになるので、後者について解説していきます。 私たちがリンゴを赤色と認識するのは、リンゴが太陽光を受けて赤い光を反射し、それ以外の光を吸収しているからです。リンゴ(正確にはリンゴの皮)という物質はどういうわけか、赤色の光を反射するんですね。反射した光が私たちの目に届くことで私たちはリンゴが赤色だと認識しています。 向日葵の花が黄色に見えるのも、花びらに含まれている物質が、黄色の光は反射し、それ以外の光は吸収する性質を持っているため、わたしたちは向日葵が黄色だと認識しているのです。 <br> <div style="display: flex;"> <img src="https://hackmd.io/_uploads/HkErXo7Myx.png" alt="Image 1" width="35%" height="100%" style="margin-right: 15px;"> <img src="https://hackmd.io/_uploads/B1waXjmGyx.png" alt="Image 2" width="40%" height="90%"> </div> <br> ここまでは光に焦点を当てました。次は音に焦点を当ててみます。 皆さんは音楽室でピアノが弾かれていたら、ピアノが弾かれていると分かりますよね。また、準備室でヴァイオリンが弾かれていたら、ヴァイオリンが弾かれていると、目をつぶっていても分かりますよね。パッヘルベルのカノンいいですよね(?)。このように、私たちは同じ「**音**」を聞いているはずですが、皆さんは異なる楽器の音を聞けば、ピアノだ、とかチェロだとか、○○○だ、という風に異なる音を、聞き取ることができます。 <br> ではどうして私たちは異なる色や異なる音を区別し、認識することができるのでしょうか...? <div style="margin-top: 700px;"></div> <style> .large-bold-text { font-size: 18px; /* 文字サイズを指定 */ font-weight: bold; /* 太字に指定 */ color: red; /* テキストの色を赤に設定 */ } </style> <p class="large-bold-text">それは、光や音という波の "周波数" が異なっているからです。</p> <br>  ※引用 (https://www.e-garde.co.jp/basicknowledge/antenna-directivity/) 皆さんは上のような図をよく目にしたことがあると思います。この図は(光)エネルギーが各周波数帯でどのように利用されているかを表したものになっていて、人間が目に見える光と目に見えない帯域の光があることがわかりやすく示されています。私たちは普段の生活の中で、これらの周波数が異なるエネルギー(波)を常に身体に浴びていて、私たちが感じ取れる範囲のエネルギー(波)の周波数の違いによって、様々な色を知覚したり、楽器の音色の違いを認識しているのです。 <br> <br> <div style="display: flex;"> <img src="https://hackmd.io/_uploads/BJCSH_6m1e.png" alt="Image 1" width="47%" height="100%" style="margin-right: 15px;"> <img src="https://hackmd.io/_uploads/HyaTBOTQyx.png" alt="Image 2" width="45%" height="100%"> </div> ※引用(<a href="https://www.niconico-do.com/goods/goods_index/goods-2059/">左側:ピアノ</a>、 <a href="https://fret-violin.com/?pid=146351558">右側:ヴァイオリン</a>) <br> #### エネルギーって何? エネルギーは波であることは、皆さん知っていると思います。 (知らない人のために)ちょっと復習すると、光は光子(フォトン)(あるいは光量子)という粒子が進行するもので、振動数 $v$ [Hz] の光の場合、光子1個のエネルギー $E$ [J] は、 <div align="center"> $$ E = hv \text{ [J]} …① $$ </div> で表されます。 (覚えていますか?👀) $①$ 式の $h$ は、 $$ h = 6.626 \times 10^{-34} \, \text{Js} $$ でプランク定数と呼ばれるものです。 $h$ は定数なので、式の通り、光エネルギーというのは周波数(振動数)が高いほどエネルギーが強いということになります。 大事なことなのでもう一度。 <br> <style> .large-bold-text { font-size: 20px; /* 文字サイズを指定 */ font-weight: bold; /* 太字に指定 */ color: red; /* テキストの色を赤に設定 */ } </style> <p class="large-bold-text">光エネルギーの強さとは周波数の高さです。</p> <br> (余談ですが、周波数と振動数はどちらも英文表記は $frequency$、単位はヘルツ[Hz]になります。周波数が主に電気、電波、音響などの工学で用いられるのに対し、振動数は力学的運動などにおける物理現象に用いられることが多く、物理学において等速円運動または単振動などの振動運動や波動が単位時間当たり繰り返される回数を表します。 MRIって工学なんでしょうか?物理学なのでしょうか?) <br> つまり、放射線と呼ばれるX線やガンマ線は周波数がとても高く、強すぎるエネルギーを持っているため、このようなエネルギーを人体が吸収してしまうと、害を受けてしまうのです。また、高いエネルギーを持っているため、原子力発電といった大きなエネルギーが必要な発電に利用されます。 一方で周波数が低いもの、例えば、ラジオ波やマイクロ波、赤外線といったものは、放射線に比べればエネルギーがとても低く、人体に吸収されてもほぼ害がないため、世の中では飛び回っており、電子レンジや遠赤外線ヒーターなどにも利用されているのです。(ただ、ヒーターも火傷はするのでそこは注意) さて、やっと導入が終わりました。皆さんお気付きかと思いますが、本題の **MRI** というのは今まで述べたエネルギーの中で何を使っているかというと、もちろんラジオ波です。MRI が人体に害がない理由は、このエネルギーの小ささということになります。一方、X線やCTスキャンは放射線と呼ばれる高いエネルギーを持つ波を用いているため、MRI のように何度も受診することができないのです。 <br> ### オブジェクトを観測する ここまで、エネルギーという波について説明してきました。次は MRI がどのようにして、脳などのオブジェクトを観測しているのかについて説明します。先ほど述べましたが、皆さんはヴァイオリンとピアノ、どっちが演奏されているかは目をつぶっていても、音を聞けば(観測すれば)簡単に区別することができるわけです。 つまり、私たちは何をしているかというと、「**鍵盤を叩く**」 ・ 「**弦をこする**」という **エネルギー** を与え、そのエネルギーが変換されたもの(あるいは反射されたもの)を観測し、その観測した音の違い、すなわち周波数の違いで物体(物質の違い)を認識することができているのです。このように、エネルギーを与え、そのエネルギーが変換されて返ってきたエネルギーの周波数の違いで物体の識別を機械で実現したものを <div style="text-align: center;"> ``` 分光器 (Nuclear magnetic resonance spectroscopy:スペクトルスコピー) ``` </div> といいます。MRIはこのスペクトルスコピーを利用してオブジェクトがどんなものであるか、どんな形であるのかを測定しているのです。 ここで大事なことは **「エネルギーを物体に当てると、エネルギーが返ってきて、その観測したものによって、オブジェクトがなんであるかをある程度推定できる**」 ということです。 ここまで私たちが普段生活している身の回りの現象について話してきました。当たり障りのない話なので 「そんなこと知ってるよ!」 って思っている方が多いかもしれませんが、導入として大事な話なので、まとめてみました。 <br> きりがよいので、今回の記事はここまでにしたいと思います。 次回をやるつもりなのですが、もしできなかったらすみません。 次回の内容は、MRIにおけるスペクトルスコピーのもう少し詳しい内容について説明していきたいと思います。 <br> <br> <br> それでは
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