# できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか ## 第2章 - **執筆時間は「見つける」のではなくて「割り振る」もの**。時間を決めて,その時間に執筆を行おう。ちなみに本書の著者は月~金曜日の8時~10時を執筆時間に割り振っている。 - **執筆時間は断固として死守する**こと。人と会う予定などもすべて拒否して,決まった時間に執筆を行う。決めた時間を越えて執筆するのは構わないが,それは明日の執筆時間を減らす理由にならない。 - 執筆作業は文字を書くだけではない。データ処理や文献調査,図の作成なども含まれる。すなわち,執筆作業とは執筆にかかわるすべての作業を指す。(なので,1文字も書いていないからといって執筆できていないわけじゃない) - **最良の自己管理とは,自己管理が必要になる状況を避けること**だ。パソコンがインターネットにつながっていなければSNSに気を取られるおそれはない。 ## 第3章 - 明確な目標を立てること。優先度もつけよう。 - 一歩:目標を立てる作業も執筆作業の一環だと考える。 - 二歩:目標事項(書く作業が必要なプロジェクト)を列挙する。乱雑でもよい。出来上がったら清書とかしないで(その時間はもったいない),机のそばに貼っておこう。そして,これらを仕上げるのに何週間かかるだろうかと思いを巡らせよう。 - 三歩:**執筆日ごとに具体目標をリストアップする**。数値目標だと具体的で良い。例えば: - 少なくとも200単語を書く。 - 昨日書いた第1稿を読んで修正する。 - 考察セクションの最初の3段落を書く。 - 進行状況を監視すること。自分がちゃんと目標に向かって進んでいるか確認できるだけでなく,モチベーション維持にも役立つ。著者はSPSSデータに日付ごとに執筆単語数,目標達成度(0/1),プロジェクト名を記録している - 目標を達成したら,自分にご褒美をあげること。例えばおいしいコーヒーとか,昼食とか,アンティークのサイドテーブルとか……。 - スランプというのは書かないこと以外の何物でもない。**スケジュールに従っていれば,スランプに陥ることはない**。 ## 第4章 - 執筆作業について話し合う「**執筆サポートグループ**」が役に立つ。このようなグループの運営に必要なのは以下の五項だ: - 具体的な短期目標を決めて,各メンバーの進捗を毎回確認する。 - 目標は執筆関連に絞り,他の話を持ち込まない。愚痴大会になっては困る。 - 甘いニンジンは鞭の役目も果たす。すなわち,非公式なご褒美は執筆習慣の定着に役立つ。 - 教員と院生のグループは分ける。両者では優先順位の決め方が違うし,学生は教員に萎縮してしまう。 - コーヒーを飲む。ただしメンバーのカフェイン依存度が低ければ,これは無くてもよい。 ## 第5章 - 研究者の書く学術的な文章がダメになる理由は三つある: 1. 賢く見られようとして回りくどい言い方をする。→ 文章を書くときのお手本を変えよう。 2. そもそも良い文章の書き方を習っていない。→ 文章の書き方についての本を読もう。 3. 良い文章を書くための練習時間が足りない。→ **執筆時間を使って実際に練習しよう**。 - 短くてなじみ深い単語を使おう。 - **簡潔明瞭な文を書こう**。パラレルな文(「条件Aの被験者は○○した。条件Bの被験者は××した」のように繰り返す文)は関係性が明瞭になる。セミコロンやダッシュ,同格の句("… ,which is …"を省いた形式)も良い。逆に,"such that"はコロンに置き換えるなどして削ろう。 - 能動的な表現を使う。"not"の代わりに否定的な動詞("miss"や"misunderstand"など)を使おう。"to be"の"be"は適切な動詞に直せることが多い。冗長な表現をなくす。文頭の"however"や"for example"などは文中に移すと良い。 - 文章を紡ぐ作業とそれを手直しする作業とは分けよう。まず書いて,後で直す。**完璧な第1稿を追求するのは間違い**だ。 ## 第6章 - **アウトラインを作らずに文章を書いてはいけない**。 - 論文1本に何もかもを詰め込もうとしない。どうせたくさん論文を書くのだから,2本か3本に分けるべきだ。 - 心の中の想定読者と相談しながら書く。 - **たいていの読者はタイトルとアブストラクトしか読まない**。タイトルは広すぎず,細かすぎず。検索に引っ掛かりやすくなるように単語を入れよう。 - 序論:一番ちゃんと(斜め読みされずに)読んでもらえる部分。優れたひな型を使おう。 - 結果:分析内容をありったけ書くのではなく,明確なストーリーが必要。一番面白くて大事な知見を最初に書くと良い。 - 論文はリジェクトされる前提で書くべきだ。学術雑誌のリジェクト率を考えれば,リジェクトされると仮定するのが合理的である。逆に,**リジェクトを恐れると守りに入った文章になってしまう**。 ## 第7章 ## 第8章 - 執筆スケジュールを守るのは楽しい。書くことが日常の一部になり,毎日気持ちよく一定の分量を書ける。 - 文章をたくさん書いたところで,書くのが楽しくなったりはしない。書くのはいつまでも難しい。それでもスケジュールを立てて机に向かおう。「**何をしたいのかを決め,それをやると決め,そしてやる**(Zinsser, 2001, p. 285)」 - 多くても少なくても,自分が書きたい量を書く。 - 執筆計画を立てることで,仕事と遊びのバランスがとれる。**執筆作業は平日の労働時間内に済ませて,夕方や休日は人生のことに費やすべきだ**。