# KT#29-yokoi DAO(分散型自律組織)にいて ###### tags:`ブロックチェーン` `DAO` ## 近況報告 * コロナになりました。 * 7月15日(金) 発症。コロナ陽性 * 7月26日(火) 自宅療養解除 * 発熱外来は病院のキャパオーバーで断られまくった。 * 実際に流行っているのを肌で実感したので、気をつけてください…… ## 釈明 * DAOやブロックチェーンの説明マジでむずいンゴ。 * ところどころ独自の説明で正確性を欠いてるけど、堪忍やで。 * 何となくの理解でよいなら、ぶっちゃけ中田敦彦のYouTube大学見とけばいい説あるで。 * [【Web3.0とDAO①】インターネット以来の大革命に乗り遅れるとヤバい!ポストGAFAM時代の幕開け](https://youtu.be/dMYRs-2nQAI) ## 話の流れ 1. はじめに 2. 関連知識 3. DAOとは 4. DAOのメリット・デメリット 5. DAOの実例 6. 個人的な所感 ## はじめに NFTやWeb3.0など、ブロックチェーンを用いた技術のキーワードが2021年くらいからバズっている。(参考:[NFTホワイトペーパー(案)Web3.0時代を見据えたわが国のNFT戦略](https://www.taira-m.jp/NFT%E3%83%9B%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC%E6%A1%8820220330_%E6%A6%82%E8%A6%81%E7%89%88.pdf)) このWeb3.0界隈で、DAO("ダオ"と読む)という単語を最近よく聞くようになったので、今回説明する。 DAOとは、"Decentralized Autonomous Organization"の略称である。 日本語で「分散型自律組織(または、自律分散型組織)」という。 中央集権型のようにトップダウンでなく、メンバーが自律的に管理・運営する組織を意味する。(詳細は後ほど) ※ 今回説明するのは、ITエンジニアが使う"Data Access Objects"のことではない ## 関連知識 DAOを解説するにあたり、関連する知識をざっくり説明する。 #### 参考文献 [神ちゃんのKT資料「ブロックチェーン」](https://right-week-f3d.notion.site/b0eba12c04f842d4a3321e85cf4de644) ### ブロックチェーン * 情報を記録する技術の一種(データベースのようなもの) * 取引履歴を過去から一本の鎖のように連鎖させ、取引履歴を記録する * 現実世界では中央集権的に管理していた概念・データを、分散化(民主化)して管理する ### 仮想通貨 * ブロックチェーン技術を使用して発行する暗号資産(デジタル資産) * ビットコインやイーサリアムが仮想通貨の代表格 * 日本円や米ドルなど、国家が発行してきた法定通貨を分散化(民主化)する ### スマートコントラクト * プログラムをブロックチェーン上で実行する技術 * 乱暴に言うと、ブロックチェーンを仮想マシンのように扱う技術 * スマートコントラクトを実行するアプリケーションを、DApps(Decentralized Applications:分散型アプリケーション)という * 仮想通貨取引、ゲームなど様々な分野で、契約(取引ルール)を作って実行する ### DeFi (Decentralized Finance) * 日本語で「分散型金融」という * ブロックチェーン技術、スマートコントラクトを使用して提供する金融サービス * 銀行や証券会社、保険会社、取引所など旧来の金融機関が担ってきたサービスを分散化(民主化)する ### NFT(Non-Fungible Token) * 日本語で「非代替性トークン」という * 仮想通貨のように代替可能なものではなく、代わりがきかないものをNFTという * 代替性と非代替性の例 * A君が持っている1000円札と、B君が持っている1000円札は代替可能 * "AA111111A"と番号がゾロ目になっている、特別な1000円札は代替不可能 * コピーが容易なデジタルデータを、唯一無二のデータへ変換することができ、データを実物のように所有することができる ### Web3.0 * 2021年の後半あたりからバズってるワード * 仮想通貨、DeFi、NFT、DAO、メタバース(今回は説明してない)などのブロックチェーン技術の総称(一種のリブランディング) #### 補足:なんでいきなり3.0? Web1.0、Web2.0という時代が過去にあったから。 (言われてみれば、高校生の頃にWeb2.0風ロゴというキーワードを聞いた) * Web1.0 * 単方向にデータをやりとりする時代 (1990~2004) * ホームページやブログなどが主流。 * Web2.0 * 双方向にデータをやりとりする時代 (2005~2020) * SNSやチャットなどが主流 * Web3.0 * データが分散化(民主化)される時代 (2021~) * ブロックチェーン技術が主流。特定プラットフォーマ(GAFAM)依存からの脱却。 ### 現実世界とブロックチェーンの対比 ブロックチェーン技術は、現実世界の概念・データを分散化(民主化)する技術といえる。 現実世界とブロックチェーンの具体例を比較すると、少し概念がわかりやすくなる。 DAOは、株式会社と比較されることが多い。 | | 現実世界 | ブロックチェーン | | -------- | -------- | -------- | | 通貨 | 法定通貨(日本円、米ドルなど) | 仮想通貨 | | 金融サービス | 銀行、証券会社、保険会社など | DeFi | | 所有権 | 実物(アートなど) | NFT | | 組織 | 株式会社など | DAO | ## DAOとは "Decentralized Autonomous Organization"の略称。日本語で「分散型自律組織」という。 中央集権型のようにトップダウンでなく、メンバーが自律的に意思決定を行い、管理・運営する組織を意味する。 ブロックチェーン技術を使わなくてもDAOは実現できる。 しかし、ブロックチェーン技術を用いることで資金調達・意思決定・利益分配がソフトウェアで可能になり、近年DAOが注目されている。 今回は、ブロックチェーン技術を使ったDAOについて説明する。 ### DAOの3つの特徴 DAOの厳密な定義はないが、以下の3つの特徴をブロックチェーン技術を用いて実現することが多い。 1. 投資家からの資金調達 2. 投票による意思決定 3. 投資家への利益分配 ### 既存組織とDAOの比較 個人的所感:DAOとは、オープンソース・コミュニティに近い | | 既存組織 | DAO | | -------- | -------- | -------- | | 組織構造 | ピラミッド型 | フラット型 | | 組織のルール | 厳しい。雇用契約や就業規則等、ルールで規定 | ゆるい。参加も脱退も自由 | | 意思決定プロセス | 非公開が多い | 公開されている | | 参加 | 審査制が多い | オープン | | ロケーション | ローカル(現実社会の制約を受ける) | グローバル(現実社会の制約を受けない) | ![](https://i.imgur.com/GwjCkgD.png) ## DAOのメリット・デメリット * DAOのメリット * 低コストで気軽に組織の運営ができる * 組織(会社)の設立、資金調達、意思決定のしくみ、(そして解散)までが1クリックでできるようになる * 特定の人に依存せずに組織運営できる * ガバナンスの透明性が高い * 外部からの圧力に強い * メンバーを集めやすい * DAOのデメリット * 法的整理が追いついていない * 賭博法や金融商品取引法に抵触する可能性 * 税金の問題 * システムのバグにより、資金流出のリスクがある * 強烈なイノベーションやブレイクスルーが起こりにくい * 例:iPhoneはスティーブ・ジョブズという独裁者が発明した ## DAOの実例 DAOを具体的に説明するために、典型的な実例を紹介する。 * プロトコルDAO * 投資DAO * コレクターDAO * ソーシャルDAO * DAOを作るためのDAO ### プロトコルDAO * 主にDeFiを支えるために構築されたDAO * MakerDAOが有名 #### 例:MakerDAO * https://makerdao.com/ja/ * DAOの中でも黎明期に構想されたDAOの先駆者であり、現在も成功しているDAOのひとつ * DAOの基本として、どんな特徴があるかわかりやすい * 2つのトークンが利用される * Dai(ダイ) * 仮想通貨 * 1Daiが1ドルの価値と等しくなる、ステーブルトークン * MKR(メイカー) * ガバナンストークン * Daiを管理するための利害関係者が、様々な提案に対する意思決定を行うために使われる * オンチェーンとオフチェーンのガバナンス * オンチェーンのガバナンス * ガバナンス投票:メンバー全体で投票を行い、組織として意思決定を行う * https://vote.makerdao.com/polling * 幹部投票:実際に変更を適用するための投票。ソフトウェアの変更内容を提案し、承認を求める。 * https://vote.makerdao.com/executive * オフチェーンのガバナンス * フォーラム:MKRトークンを持っていない人も、誰でも参加可能な議論の場 * https://forum.makerdao.com/ * チャット:Discordを使った、気軽なコミュニケーションの場 参考: * オンチェーン:ブロックチェーン上で実現すること * オフチェーン:ブロックチェーン外で実現すること ### 投資DAO * 投資すること自体を目的に設立されたDAO * DAOを用いた資金調達が可能 * リーダー不在の組織で、仮想通貨、NFT、実物資産への投資を行う * 以下の活動をブロックチェーン上で実現する。 * 投資家からの資金調達 * 投票による投資先の意思決定 * 利益を投資家に分配 * The DAOが有名 #### 例:The DAO * The DAO上での、4種類の役割 * 作成者:The DAOを実装する人 * 投資家:The DAOに資金を提供する人 * ガバナンストークンは、株そのものに類似 * ガバナンストークンを、仮想通貨で購入する(資金提供する) * ガバナンストークンの保有量に応じて、議決権を有する * ガバナンストークンの保有量に応じて、利益の分配金を受け取れる * 請負者:投資先の提案などの実作業を行う人 * キュレーター:請負者の提案内容を精査して承認する人 ### コレクターDAO * NFTアートを共同で購入、投資することを目的としたDAO * 投資DAOと仕組みは類似 * フラミンゴDAOが有名 ### ソーシャルDAO * オンライン・コミュニティとして同じ目的、同じ考え方を持つ人々が集まり、意見交換し、社会的な活動を行うことを種目的としたDAO * 投資だけを目的にした組織ではない * FWBが有名 #### 例:FWB (Friends With Benefits) * Discordのグループとして発足 * 2020年に、FWBというトークンを発行 * 主な活動内容 * Discordでの情報交換 * マイアミ、パリなどでメンバー限定のパーティを開催 * 投資受け入れの投票 * ベンチャーキャピタルから投資を受け入れる際に、メンバーで投票を実施 * メンバーのなり方 1. 参加申請の登録 2. 運営による審査 3. 審査承認後、FWBトークンの購入 * 5FWB:ローカルメンバー * 75FWB:グローバルメンバー(中心メンバーみたいなもの) ### DAOを作るためのDAO * DAOの仕組みをブロックチェーン上で簡易に実現できるサービス * Aragonが有名 #### 例:Aragon * https://aragon.org/ * クラスメソッドに、Aragonを使ってDAOを作った記事があった * [AragonでDAO(自立分散型組織)立ち上げてみだお 〜MetaMask編〜](https://dev.classmethod.jp/articles/aragon-dao-metamask/) ## 個人的な所感 * 株式会社はなくならない * DAOのメリット・デメリットそれぞれある。 * 株式会社がなくなるのではなく、棲み分けがされていく。 * DAOにブロックチェーンは必須ではない * DAOの成功事例は、オンチェーンとオフチェーンの棲み分けうまくされている。 * ブロックチェーンを使わないDAOの事例もある * まずはDiscordがあれば同様のことができる * 参考 * [【大公開】Ninja DAOでDAOワーク! <プロジェクトの作り方と参加方法>](https://caccablog.com/dao-work/) * [オンチェーンDAOじゃないと危ないのか?](https://nryblog.work/risk-off-chain-dao/) * 地方創生の分野が今アツい * 新潟県 旧山古志村の「Nishikigoi NFT」という取り組みが注目されている * NFTがデジタル住民票としての役割 * 取組内容が面白そうだったので、自分も実際にNFTを購入してDAOに参加してみた。 * 参考 * [公式サイト](https://nishikigoi.on.fleek.co/) * [世界初。人口800人の限界集落が「NFT」を発行する理由](https://note.com/yamakoshi1023/n/n1ae0039aa8a4) * ブロックチェーン関連おもしろい * コンピュータサイエンスだけでなく、経済学、法律、ビジネスの観点からも考えることが多い