# 2024年夏アニメ 7月から労働者になってアニメ視聴に使える時間が減ってしまったので今期も切っていく。 ## 1話を最後まで見た 記述はdアニメストアの掲載順 ### 先輩はおとこのこ 2018年ごろにメンヘラちゃん(現在は[くるみちゃん。](https://store.line.me/stickershop/product/1862778/ja)に改称されている)というLINEスタンプが中国でなぜか流行していた https://github.com/a-wing/Menhera-chan 中国人フォロワー経由でそれを知り、確かに可愛かったのでしばらく作者を追っていたのだが、その作者が漫画連載を始めたということで原作最初の数話は読んでいた。しかし、短い話が定期的に更新されるLINEマンガを追うのは面倒であり、単行本を買うほどの魅力は感じなかったので1巻発売あたりで読まなくなっていた。 アニメも悪くはないと思うのだが、見た目だけで人を好きになる単純なヒロインと、何らかの事情で女装をしているんだろうがいまいち事情が気にならない先輩の話を追いかける積極的な動機がないので1話で止まっている。 ### 真夜中ぱんチ 見るつもりはなかったが評判が良かったので見た。一緒に配信していた仲間への暴力行為で干されたYouTuberの主人公が吸血鬼に一目惚れされて一緒に配信者を目指すという話っぽかった。これも悪くはなさそうだったのだが、自業自得っぽい主人公が特に反省のないまま顔の力だけで新しい仲間を得て復活を目指すのはどうなんだという気持ちが強い。反省の話はいずれやるんだろうが、吸血鬼とかYouTuberとかの話にあんまり興味が持てないので1話で止まっている。 ### 恋は双子で割り切れない 今期は「負けヒロインが多すぎる!」「義妹生活」「恋は双子で割り切れない」が演出の最先端を行っているから見ておけと誰かが言っていたのを見かけたので見てみた。双子の片方が主人公と付き合うことにしたが、もう片方から奪った感じになった罪悪感に耐えきれなくて自分から別れを切り出すというところまでが一話。今後双子で公平に主人公を取り合う話になるんだろう。一話の展開は脚本上の理屈としては分かるのだが、現実に存在する人間の感情としてそうはならないだろうと思ってしまい、いまいち入りこむことができなかった。秋葉原に行ったときにあらゆるところでキャンペーンをやっていてかなり宣伝に力を入れているのを感じたが、not for me感が強く2話以降に手を出せていない。 ### 逃げ上手の若君 見るつもりはなかったが、評判が良かったので1話を見た。鎌倉幕府生き残りの北条家当主が室町幕府に戦いを挑むという話で、アニメにしては本格的な時代物のようだった。制作会社はCloverWorksで作画も期待できそうなのだが、どうも演出が過剰でいまいち受け付けなかった。同じCloverWorks作品のぼっち・ざ・ろっくもやたらと濃い色使いでリアクションを過剰にする傾向があり見ていてつらかったのでアニメ性の違いを感じる。油の多いラーメンが食べられなくなっていくのと同じような老化なのだろうが、自分でも食べられるうどんを食べればいいだけの話なので2話以降は見ていない。 ### 時々ボソっとロシア語でデレる隣のアーリャさん 原作ラノベが話題になっていたときに上坂すみれでアニメ化するんだろうなと思っていたら案の定上坂すみれだった作品。ロシア語といえばこの人という立場を確立できているのは強い。 古典的なツンデレヒロインが(周りには分からないはずの)ロシア語でデレるが、ロシア語が分かる主人公には筒抜けという新規性で攻めていく作品のようだった。ヒロインがデレたときに主人公に突然難聴を発症させることでなかなか二人の距離を近づけさせないというのがラブコメ作劇上の常套手段だったが、自分がデレたことが相手には伝わっていないとヒロインに勘違いさせることで新しい一方通行シチュエーションを生み出したのは確かに発明だと思う。 とはいえ、アニメの面白さは設定だけで決まるものではない。この作品はロシア語要素にあぐらをかいて、ヒロインの可愛らしさの演出や物語を駆動する話の軸を欠いているように感じる。ヒロインはロシア語でデレることを除けば単に自己中心的なだけで魅力が薄く、話としても特に何も起こらなさそうでいまいち続きが気にならない。毎回変わるEDが話題になるのでEDだけ見ているが本編は2話以降見ていない。 ### 義妹生活 前述の演出についてのツイートでとりあえず見てみるかと思ったのと、原作者の長文言い訳ツイートが話題になっていたのがあって1話を見た。両親の再婚で出来た義妹とのラブコメを描く作品……かと思いきや、義妹だからといって関係性の進展には期待するなとヒロインが最初に宣言し、ラブコメ展開が否定されてしまった。実際に義妹ができたらこんな感じなのかもしれないが、リアルさとアニメとしての面白さは全く違う話である。義妹は兄に向けて「(〜という性質を持つ)あなたなら分かるよね」みたいな謎のハイコンテクストセリフを吐いてくるのだが、視聴者にはいまいち伝わっていないように思う。少なくとも僕には分からなかった。主人公・義妹ともにキャラとしての魅力がなく、会話劇としての面白さも感じられなかったので1話で止まっている。 ### 僕の妻は感情がない 友達から原作を勧められて原作は最新巻まで追っている。いまいち腑に落ちない展開もあるが、ロボットを妻・子とする上であまり考えたことのない考察が提示されて興味深いので脱落しないでここまで読んでいる。 原作既読の場合にアニメに期待する要素としては、色・動き・声がつくことから来るディテールの面白さが大きい。その点においてこのアニメはいまいちだと言わざるを得ない。まず声がつくことによってロボットを妻とする主人公の気持ち悪さが際立ってしまっている。漫画なら主人公が気持ち悪くても放っておけばいいのだが、アニメだと強制的に声を聞かないといけないので逃げ道がない。また、妻となるロボットにもいまいち可愛さがない。旧型機なのという設定のため、後に登場する新型機と対比するためにもわざと声や表情を単調にしているのだろうが、画面占有率の高いメインヒロインが可愛くないと視聴モチベがだいぶ下がる。そのような状況であらすじを知っている作品をわざわざ見たいかというとそうでもないので2話で止まっている。 ### 小市民シリーズ 同じ原作者の「氷菓」を以前見たのだが、扱われる謎があまりにしょうもないので途中で見るのをやめてしまった。[日常の謎](https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E5%B8%B8%E3%81%AE%E8%AC%8E)というジャンルに分類されるそうだが、どうも僕には興味が持てなかった。(ちなみに、[ヴァン・ダインの二十則](https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%80%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%81%AE%E4%BA%8C%E5%8D%81%E5%89%87)という推理小説の基本指針があるのだが、それには「7. 長編小説には死体が絶対に必要である。殺人より軽い犯罪では読者の興味を持続できない。」という規則がある。別にこれに違反しているからといってつまらないと決まったわけではないのだが、少なくとも読者の興味を持続できる程度には重大な事件が題材であってほしい) したがってこの作品も期待していなかったのだが、Twitterのおすすめ欄にやたらとこの作品に肯定的な意見が流れてくるので仕方なく見ることにした(おそらく前期でユーフォの話にいいねしていたため、同じ京アニ作品の氷菓とファン層が共通する本作がレコメンドされやすかったのだろう) 1話で取り上げられた事件は女子生徒の所持品がなくなったというこれまたしょうもない事件だったが、事件の真相はともかく、一緒に帰る約束をしていたヒロインを放置して謎の仕切りたがりな男子生徒に協力する主人公の動機や、普通の人間であれば自動的に小市民になるにもかかわらず「小市民になりたい」とかいう願いを持つ主人公組の傲慢さ(「一般人」とか「普通の人」とか言えばいいのに「小市民」という単語を選ぶあたりからしていけ好かない)、大切なお菓子を買ったなら持って歩けばいいのに自転車のカゴに入れたまま目を離して捨てられる防犯意識の低さなど、全然共感できない要素が多すぎて視聴を続ける気にはなれなかったので1話で止まっている。 ### ダンジョンの中のひと 見るつもりはなかったが、周りの評判が良かったので見てみた。悪くはなさそうだったが、ダンジョン経営という題材への興味のなさや、ヒロイン組のキャラデザの淡白さにいまいち惹かれなくて1話で止まっている。 ### 2.5次元の誘惑 見るつもりはなかったが、新宿駅で階段をジャックする広告を打っているのを見かけて、コスプレが題材なのに秋葉原や渋谷ではなくどうして新宿で広告を打つのかという点が気になったので見てみた。コスプレに着替えるシーンで大々的に下着を写すなどしていて、エロで釣る気が満載だと感じたが、話のテンポは悪くなかったので1話時点で切る判断はしていなかった。しかし、dアニメストアの広告にあった原作を読めるリンクをうっかり踏んで、5話相当までの原作を読んでしまった。あらすじが分かったので2話以降の視聴は他の作品の1話を見終わってからにしようと思って後回しにした結果、いつの間にか溜まってしまったので結果的に1話で止まってしまっている。 ### VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた 見るつもりはなかったが、周囲の評判があまりに悪かったので逆に気になって見てみた。酒を飲みまくって下ネタを連発する下品さには辟易したが、佐倉綾音の演技に頼りまくる話の作り方にはむしろ好感が持てた。以前も言及したように、じょしらくの影響で佐倉綾音ヒロインを可愛いと思えない個人的な問題があるのだが、この作品ではヒロインが下品なので問題発生の余地がなく、逆に僕の知っている佐倉綾音はこれなんだよと膝を打った。実在の商品を題材にするエピソードなどに若干興味を引かれるところはあるのだが、VTuberによる配信というテーマへの関心の低さの方が勝って1話で止まっている。 ### しかのこのこのここしたんたん タイトルのおかしさで話題になっていたので見た。監督・脚本・音楽あたりのスタッフがゆるゆり・恋愛ラボ・うまるちゃん・ガヴリールドロップアウト・うちのメイドがウザすぎる!などの好きな動画工房作品と同じであり、主人公こしたんの杉浦綾乃っぽさから来る懐かしさに魅力を感じている。とはいえ、話の内容は支離滅裂であり正直面白くはない。4話までは見たが、今後最後まで見るかは微妙なラインである。 ### 菜なれ花なれ チアリーディングの話らしい。あまり見るつもりはなかったが、バミューダトライアングル 〜カラフル・パストラーレ〜で知った「武田羅梨沙多胡」という変な声優の母親が「武田羅梨沙多胡の母」という名前でクレジットされているという話題を見かけたので1話を見てみることにした。いまいちついていけない変なキャラクター設定と、線画に色をつける謎の色彩設定にあまり魅力を感じられなかったので2話以降は見ていない。しかし、その後周囲の人から群馬設定の面白さなどの話題をたびたび目にするので気が向いたら視聴を再開する可能性はある。 ### 疑似ハーレム 見ようと思っていなかったが、早見沙織の演技がすごいという話だったので試しに見てみた。演劇部のヒロインが一人で声色を使い分けることで擬似的にハーレムを演出するというコンセプトには一定の面白さを感じられたものの、ヘラヘラした主人公に魅力がなく、ヒロインがそこまでしてあげる理由が全く分からなかった。いまいちキャラの絵も可愛くないので1話で止まっている。 ## 6話まで見た ### 負けヒロインが多すぎる! 個人として尊重されるべきキャラクターに負けヒロインという役割を押し付けるタイトルから浅いメタフィクションコメディを想像して最初は見るつもりがなかったが、あまりに評判が良いので見てみることにした。特に魅力のない主人公の周りになぜか美少女が集まりハーレムっぽいものを形成していくラノベにありがちな展開は悪印象だったが、負けヒロインたちが負けると分かっていながらもちゃんと戦いを挑んでいくのには好感が持てて、作画が良いこともあって今も視聴が続いている。 ### ATRI -My Dear Moments- 原作が発売された時にロボット萌え作品であることを知って購入したので、原作プレイ済みである。ATRIをきっかけにモラベックのパラドックスを意識するようになったり、他のロボット萌えゲームをプレイするようになったので割と影響のあった作品ではある。前半のATRIちゃん萌えパートはかなり良かったのだが、後半にロボット萌えオタクとしては許容できない描写があったので全体としての評価はあまり高くない(まあそこにこだわる人はそんなにいないと思うが……)。ラストは賛否両論だが、私は賛成派である。 さて、アニメの方だが、これはATRIちゃんが萌えなのでとても良いアニメ化だと思った。原作の時点で可愛かったATRIちゃんに動きがついたことで、ぴょこぴょこした可愛さが強調されていてアニメ化の意義が達成されていると思う。惜しむべきは、暗算性能を披露して高性能をアピールする描写が削られてしまいモラベックのパラドックスの話ができなくなったことだが、それはとても個人的なことなので良しとする。ストーリーの進行はいまいち緊張感がなくて、ロボット萌え目的以外で見ている人にはあまり評価が高くなくても仕方がないと思うが、自分は毎回楽しみに見ている。 ## 完走した ### 負けヒロインが多すぎる! 2024年夏アニメは負けヒロインのクールだったと言っても過言ではないだろう。覇権アニメはいまいち周囲の萌えオタクには受けないのが通常だと思っていたが、今期ガールズ4選の結果からすると周囲のオタクの心もばっちり掴んでいたようだ。僕も今期ベストガールを選ぶなら温水佳樹に投票する。 この作品を見ようと思ったきっかけは、[1話ED](https://youtu.be/2czbGCYz6gk)が久々のセルアニメであるという[ツイート](https://x.com/loppo_gazai/status/1812156215348305952)を見かけたことであった。実写とアニメを組み合わせたEDが素晴らしいと話題になっていたが、これはアニメではないだろうと思ってしまい、自分の中での評価は特に高くなかった。どうせアニメ驚き屋が騒いでるだけの作品だと思いながらも、周囲のアニメオタクも高く評価していたので継続視聴しているうちに気づいたら完走してしまっていた。 メイン負けヒロイン (?) の八奈見さんは良いキャラであった。放送初期に「食費がかかりそうなのでお嫁さんにしたくはない」という感想を投稿したところ、後日主人公も「ラッコと同じで可愛いが恋愛対象にはならない」という趣旨のことを言っており、主人公のメインヒロインに対する感想が拗らせオタクと一致する珍しい現象が起こっていた。八奈見さんが暴れまわることで最後までコメディ感を維持することができており大変良かった。また、主人公の実妹という生まれながらの負けヒロイン属性を持つ温水佳樹ちゃんも素晴らしかった。有能妹がお兄様呼びしてくる家庭環境をどうやったら成立させられるのか知りたい。 キャラクターの魅力に優れていた一方で、ストーリー展開には首を傾げるところが多かった。アニメ化範囲では負けヒロインたちが失恋を受容できるようになるまでの話が中心だったが、女心の分からない自分ではその行動で問題が解決したのだろうか?と思ってしまう場面が多かった。特に主人公が文芸部部長を引き受けるくだりでは、小鞠ちゃんが前部長から託された役職を奪い取るような形になり彼女の尊厳を否定してしまっているのではないかと思ってしまい、手放しで良い話だと思うことはできなかった。優れたキャラクター性により完走するだけのモチベーションを維持することができたが、ストーリーがいまいちだったので全体としての評価はあまり高くない。 ### ATRI -My Dear Moments- (原作のネタバレが含まれるので未プレイの人は注意) 原作を知っているアニメ作品ではどうしても原作と比較してしまうのだが、多くの場合はアニメ版の評価が低くなることになる。この作品もその例に漏れず、原作の悪いところはそのままに原作の良いところも薄めてしまったアニメ化だったと感じる。 萌え萌えヒューマノイドロボットのATRIちゃんは良いキャラクターであり、アニメ化でもその可愛さは維持されていた。温水佳樹ちゃんと同じセーラーワンピースの服装も可愛らしく、今期はセーラーワンピースのクールであった。 ロボット系作品ではたいてい「ロボットに心はあるのか?」が一度は問われることになる。心があるという結論でも、ないという結論でも良いのだが、その結論に至る過程が見せ所だ。この作品の中盤では、主人公がATRIの手記を見てしまい、心があるように見えるATRIの行動が全てプログラムに過ぎなかったことを悟って激しく動揺する様子が描かれる。作中世界での知的エリートのみが入れる「アカデミー」に通っていたという設定の主人公がその程度のことで動揺するかは疑問なのだが、まあそれは傷心の主人公の心を癒やしてくれた存在への信頼が損なわれたということで理解はできる。問題はその後の展開である。手記の過去のページに落ちていた涙や、ロボット回収おじさんとのやり取りの中でATRIが涙を流す様子を見た主人公は、やはりATRIには心があるという結論に至ってしまった。「涙は女の武器」と言われるように、涙は人の精神に強く訴えかけることができるが、そうであるからこそ感情を偽装するために使われることが多いものであり、涙を見て感情の存在を確信するのはあまりに短絡的である。別作品の単語を借りるとアナログハックをまず疑うべき場面だ。(しっかり見返すともう少し説明があるのかもしれないが、感情があるという結論に至った主要因が涙であるという大筋は間違っていないはずである)また、前半でATRIに「自分には涙を流す機能がない」と言わせている以上、機能がアンロックされたなどの説明がほしいところだが、明確な解説はなかったと記憶している。 心があるという結論に至った経緯にも違和感があったが、その結論自体が大きな問題である。主人公が最初に抱いたATRIに感情があるという心象(テーゼ)に対して、感情がないのではという疑念(アンチテーゼ)をぶつけるのであれば、最終的な結論はその二つを止揚《アウフヘーベン》した考え(ジンテーゼ)になるべきである。たとえば、他のロボット作品だと「プログラムされた感情であっても私が見て心があるように感じられるのであれば、それは心があるのと変わりがない」といった結論が提示されることが多いが、これはジンテーゼと言えるだろう。本作でも一応「人間でも心のありかは分からない」などと言ったセリフがちょこっと出てくるものの、その後の展開からすると単にATRIには心があるという当初の心象に戻ったようにしか見えなかった。これでは心があるかないかという問答は全くの茶番だったことになってしまう。ロボット設定を入れるのであれば、ロボットならではの恋愛観を提示してほしい。(この点においては、西UKO『となりのロボット』が今まで読んだ中で一番良いと思っている。ちなみに百合。) このあたりの展開のまずさで原作を高く評価することができなかったが、この問題点はアニメでもそのまま引き継がれたままだった。むしろ、ロボット回収おじさんの唐突さが上がっており、よりいまいちな展開だったと思う。ATRIが恋愛感情を自覚してからのイチャイチャ描写を大幅にカットして、ホログラムばあさんなどのトンチキ描写を追加したのは理解に苦しむ。原作では水菜萌と結ばれた主人公が人生最後の一日をATRIと過ごすという展開だったが、アニメでは主人公の老化は描かれず謎の仮想空間エンドになっていた。水菜萌が人生の大半を支えたにもかかわらず最後にATRIを選んだ原作展開は水菜萌に対して失礼であり、批判的な意見が多かったので改変したくなる気持ちも分かる。とはいえ、人生の終わりまでATRIちゃんのことを想っていた純愛っぷりが伝わらないアニメ版のラストもいまいちである。ラブライブ!サンシャイン!!以降の花田十輝とは相性が悪いように感じる。 ## 本について 通勤時間が往復合わせて3時間もあるのだが、電車の中でアニメを見るといまいち楽しめないので読書するようにしている。アニメの話が少なかったので最近読んだ小説の感想を軽く紹介する。ネタバレ注意。 ### 白蝶記 『車輪の国』『G線上の魔王』『無能なナナ』などの原作のるーすぼーいによる小説があると知ってだいぶ前に買ったのだが、1巻の暗い雰囲気がつらくて長らく積んでいた。kindleの未読リストから掘り出して読んだところそれなりに面白かったのだが、叙述トリック的な驚きがある展開がなくて物足りなかったのでしばらく叙述トリック本を読んでいくことに決めた。 ### 叙述トリック短編集 叙述トリックは叙述トリックが使われているという事実が最大のネタバレなので叙述トリックがあることに言及するべきではないというのがミステリ読者の常識となっているのだが、この本は全ての短編に叙述トリックが使われていると宣言した挑戦的な本だったので読んでみることにした。叙述トリックにもいろいろあるのだが、本作ではトリックが本編で提示される事件とは関係ないところに使われていることが多く、それは叙述トリックとは呼べないだろうと思うことが多かった。例えば以下の通り。 > 日本人二人が滞在する山荘に外国人の強盗四人組が押し入るが、強盗の一人が殺害される。殺害時に日本人二人はロープで縛られており強盗三人組は一緒に出かけていたため全員にアリバイがある、さて犯人は誰だ?という事件が提示される短編では、縛られていた日本人二人だとミスリードされていた語り手は実はミステリー映画を見ているだけでした(叙述トリック)、ちなみに日本人が縛られたまま犯行に及んだのが事件の真相ですというオチだった 「短編全てに叙述トリックが使われている」という宣言自体が叙述トリックなのではないかとまで疑ったが、そんなことはなく最後までいまいちだなと思いながら読んだ。 ### 殺戮にいたる病 評価が高くない本を読んでも仕方がないと分かったので、「叙述トリック 名作」で検索して出てきた未読の本で一番評価が高そうなこれを読んだ(十角館の殺人が一番評価高そうだったが既読)。殺人描写がかなり残酷で読むのが厳しいところもあったが、読んでいるうちに膨れ上がっていく違和感を最後の一ページで回収する手腕が見事だったので読んで良かった。結論を知ってしまうとしょうもないのだが、それは叙述トリックに共通する問題点である。 ### ハサミ男 その次に評価が高かった本も読んだ。こっちは犯人の名前が明らかになったときに「誰?」と思ってしまい驚きが少なかった上に、無理のあるミスリードをセリフで無理やり説明してこじつけているように感じてしまいあまり楽しめなかった。 ### medium 霊媒探偵城塚翡翠 叙述トリック本を読んでいることを知ったフォロワーにおすすめされた本。ミステリの賞をたくさん取っていてすごそうだったのだが、個人的にはあまり合わなかった。死者の声が聞こえるヒロインの力を使って犯人は分かるのだが、それでは証拠にならないので主人公が合理的な説明を後から考える……という趣旨の短編を3つ読まされた後、最後の短編でヒロインに霊媒能力などなく驚異的な推理能力で主人公とは別の思考回路で犯人を当てていただけだったことが判明する。最初の3短編での推理がかなり微妙で不満に思っていたのだが、その微妙さ自体が伏線だったという点は評価できる。しかし、最後に明かされるヒロインの驚異的な推理は、その程度のささいな描写で犯人を決定できるなら他の誰を犯人にすることも可能だろうと思ってしまうようなもので、3短編の微妙さを補うほどではなかったので全体的な評価は高くない。 とはいえ、この評価は最初の短編の微妙さに引きずられすぎているような気がする。最初の短編では、犯行現場の床に散らばっていたガラスのコップの破片をよく見ると割れたメガネの破片が混ざっていたからメガネを掛けている人が犯人であるという趣旨の推理がなされる。しかし、メガネを日常的に使用している自分からすると、メガネの破片とガラスの破片を見間違えるという描写には違和感がある。現在日本で使用されているメガネの95%はプラスチックレンズであり、メガネを落としてフレームが歪むことがあってもレンズが割れることはなく、ガラスの破片と間違えることはありえない。仮に犯人がガラスレンズのメガネを掛けているのだとしたら5%以下の少数派なので事前に「メガネにはこだわりがあっていつも特注している」などの手がかりを提示しておくべきだ。そういう個人的な事情(とはいえメガネを掛けているミステリ読者はたくさんいるだろうから個人的と言うほどでもない)で最初の短編には悪印象があり、その印象を全編にわたって引きずり続けてしまった。 ### アクロイド殺し イマドキの若い作家はダメだと思ったので、叙述トリックの元祖とされるアクロイド殺しを読むことにした。古典的名作なので犯人が誰だか知っていたのだが、最後に犯人が提示されるまで犯行が露呈する経緯が分からず、しかも探偵の説明は合理的だったので古典的名作の力を感じた。登場人物の名前がカタカナで把握しにくく、複数いる容疑者を除外していく場面が長くて退屈に感じるところもあったが、読む価値のある作品であった。 ### アイの物語 叙述トリックの名作は一通り読んだと思ったので、SFに戻ることにした。人類がロボットに敗北した未来世界で人工知能が開発された年よりも前に人間が書いた物語を収集してる人が主人公で、NovelAIが開発された年よりも前にpixivに投稿されたイラストを収集するオタクとの類似性を感じて著者の先見の明を感じた。そんな主人公にロボットが物語を聞かせるという設定の短編集だった。最初の方の短編以外はいまいちだった(どうも著者の初期作品群らしい)が、最後の二つの短編はそれを補って余りある良さだった。特に老人介護ロボットが人類の愚かさに触れた結果「すべてのヒトは認知症である」という結論を得て、保護対象と認識するように至る話なんかはLLMが人類の知性を越えようとしている今読むのにふさわしかった。 ### 詩羽のいる街 アイの物語が良かったので同じ作者の本で一番評価が高いと作者が言っていた本を読んだ。人助けを生業とする詩羽の独特の生き方を描いた話なのだが、若干説教くさくSFを求めていた自分には合わなかった。 次クールもあまりアニメ視聴時間が取れないことが予想されるが、1話感想を書くのは続けていこうと思っている。
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