## はじめに  モース理論を論じる。 ## 胞体 <u>n 次元胞体</u> $$ \begin{matrix} V^n = \{(x_1, \dots, x_n) ∈ \mathbb{R} | x_1^2 + \cdots + x_n^2 \le 1\}\\ E^n = \{(x_1, \dots, x_n) ∈ \mathbb{R} | x_1^2 + \cdots + x_n^2 < 1\} \end{matrix} $$ を、それぞれ、n 次元単位閉胞体、n 次元単位開胞体という。 ![](https://hackmd.io/_uploads/HyO2bXlph.jpg) $e^n$ を位相空間 $X$ の部分集合とし、連続写像 $φ : V^n → X$ で、$φ|E^n : E^n → e^n$ が同相写像であるとき、$e^n$ を $X$ の n 次元胞体という。 $X$ の 0 次元胞体は点とする。 ![](https://hackmd.io/_uploads/rk_qVXxT2.jpg) ## トーラスの胞体分割 トーラスは次のように胞体に分割される。     $T = e^0 ∪ e^1 ∪ e^1 ∪ e^2$ 下図はこれらの胞体を貼り合わせてトーラスを構成する様子を表している。 ![](https://hackmd.io/_uploads/BJjnSXga3.jpg) ## モース理論 トーラスの胞体分割は、下図のように、トーラスの高さを出す関数の微分係数が 0 になる点で、胞体を貼り合わせていると考えることができる。 ![](https://hackmd.io/_uploads/rya28mxan.jpg) 微分係数が 0 になる点を臨界点という。 トーラスは2次元の多様体なので、局所的には 2 次元座標 $(x, y)$ で表すことができ、高さを表す関数を $f$ とすると、それは 2 変数関数ということになる。このとき、 $\frac{∂}{∂x}f(x_0, y_0) = \frac{∂}{∂y}f(x_0, y_0) = 0$ となる $(x_0, y_0)$ が臨界点である。 トーラスでは、上図のように臨界点が 4 つある。 それぞれの臨界点の近くで臨界点を原点とするような座標を考えると、それは臨界点を中心に円盤をトーラスに貼り付けたようなものになる。そして、直交する座標軸をうまく決めると、上に向かう座標軸と下に向かう座標軸にわけることができる。 上図の臨界点の下から見ると、 $$ \begin{matrix}   & 上に向かう座標軸の数 & 下に向かう座標軸の数 \\ 臨界点1 & 2 & 0 \\ 臨界点2 & 1 & 1 \\ 臨界点3 & 1 & 1 \\ 臨界点4 & 0 & 2 \end{matrix} $$ この「下に向かう座標軸の数」が貼り付ける胞体の次数になっている。これがモースの定理の例になっているのである。 ## モースの定理 <u>非退化な臨界点</u> $M$ がコンパクトな可微分多様体とする。 可微分関数 $f : M → \mathbb{R}$ が、$M$ の局所座標 $(x_1, ... x_n)$ で $\frac{∂}{∂x_1}f(p_0) = \cdots = \frac{∂}{∂x_n}f(p_0) = 0$ となるとき、$p_0$ を臨界点という。 さらに、ヘッセ行列 $\displaystyle H(f)_{p_0} = \begin{bmatrix}\frac{∂^2 f}{∂x_i ∂x_j}(p_0))\end{bmatrix}_{i, j = 1, ... , n}$ が正則のとき、この臨界点を非退化という。 また、ヘッセ行列の負の固有値の数を $f$ の $p_0$ における指数という。 <u>モース関数</u> $M$ がコンパクトな可微分多様体とする。 可微分関数 $f : M → \mathbb{R}$ が、次の条件をみたすとき、これをモース関数という。  (1) $f$ の臨界点はすべて非退化である。  (2) 各臨界点における $f$ の値は異なる。 <u>モースの定理</u> $M$ がコンパクトな可微分多様体で、$f : M → \mathbb{R}$ がモース関数とする。$f$ の臨界点が $p_1, ... , p_k$ でその指数が $r_1, ... , r_k$ とすると、 $M = e^{r_1} ∪ \cdots ∪ e^{r_k}$ $f = f(p_0) + x_1^2 + \cdots + x_k^2 - x_{k+1}^2 + \cdots - x_{k+r}^2$ n次元球面   $S^n = e^{0} ∪ e^{n}$ 実射影空間   $\mathbb{R}P^n = e^{0} ∪ e^{1} ∪ \cdots ∪ e^{n}$ 複素射影空間  $\mathbb{C}P^n = e^{0} ∪ e^{2} ∪ \cdots ∪ e^{2n}$ 参考文献: ミルナー 「モース理論」 横田一郎 「多様体とモース理論」